country-flag

バングラデシュ

不動産関連情報

不動産に関する法制度

不動産関連法・制度の現状

バングラデシュにおける不動産に関する主な権利の種類は以下のとおりである。

  • (1) コモンローに基づく不動産権(estate)
  • コモンローに基づく不動産権として,絶対的土地使用権(Fee simple)を始めとする不動産権が存在する。Fee simpleは,理論的には国家からの土地使用権の付与と位置づけられるが,実質的には無期限かつ譲渡,相続可能であり,日本の土地所有権と異ならない内容となる。

  • (2) 土地を所有しない家族に対する国有地の99年土地使用権の付与
  • 土地を持たない貧しい家族に国有地の使用権を付与する制度であるが,手続の煩雑さ及び制度運用の腐敗により上手く機能していない。

  • (3) リース(leasehold)
  • 概念は他国と同様である。期間は最長99年。

  • (4) 農地の小作権
  • 農地を小作農家が小作権に基づいて使用する場合には,期間は5年以上でなければならず,かつ,地主が土地を第三者に譲渡しようとする場合において小作農家が優先買取権を行使することができる。

  • (5) チッタゴン丘陵地域
  • バングラデシュの南東に位置し,ミャンマーと国境を接するチッタゴン丘陵地域では,仏教の影響を受けた現地の慣習法の影響が強く,土地の権利関係に適用される法規制について他の地域とは異なる場合がある。

  • (6) 輸出加工地区(EPZ)
  • 輸出加工に主に従事すべき企業が入居するEPZについては,上記(1)の不動産権の取得は認められず,入居企業は,30年を上限として(更新可)土地使用権の割当又はリースを受けることになる。当該土地使用権の取得及び譲渡について印紙税は免除されている。

土地・不動産の所有権

1950年国家収用及び賃借法(State Acquisition and Tenancy Act of 1950)により,特定の個人又は企業による33エーカー以上の土地の所有が禁止されている。他人を名義人として用いた場合もこの禁止の範囲に含まれる。農地については1984年土地改革法により21エーカーを土地取得の上限としている。しかしながら,この上限規制については,実務上あまり運用されていないようである。

土地の取得は外資100%企業の他,支店登記を済ませた外国企業も可能であり,外国企業又は外資比率を理由とした土地取得制限は特には存在しない。

土地・不動産の登記

1882年不動産譲渡法(Transfer of Property Act of 1882)及び1908年登記法(Registration Act1908)に従って登記手続が行われる。土地の不動産権の登記の他,リースも登記対象に含まれているが,実務上はリースについて登記がなされることは稀である(登記をしなければ法的には権利保全がなされない)。

土地の登記手続には,3パーセントの印紙税,1パーセントの地方税及び2パーセントの登記手数料の事前納付が必要となり,そのコストは低くない。また,土地収入局での権利登記の確認手続→土地の境界等に関する当局の調査→現地役所からの障害不存在(non-encumbrance)証明書の取得→譲渡証書(Deed)の作成及び印紙税の納付→地方税及び登記手数料の納付→土地収入局での登記変更申請という迂遠な手続きを経る必要があり,半年から1年程度要するのが通常である。しかも,当該手続の運用が腐敗しており,賄賂を渡さなければ円滑に終了しないという批判も存在する。こういった状況により,不動産の登記については所有権についても登記されていないケースが多く,不測の紛争に巻き込まれるリスクが高い。

出典

〔不動産関連法・制度の現状、土地・不動産の所有権、土地・不動産の登記〕

法務省「バングラデシュの基本法制に関する調査研究」(2014年2月28日)

不動産の取引に関する制度

不動産を取引する際の制度

〔制度概要〕

土地売買の際、買主は必要とされる証明書を入手し、印紙税、キャピタルゲイン税、登記費用等を支払った後、Municipal Deed Registry Officeに登記を申請する。登記資料を取得後、土地事務所で所有者の名義変更登記を行い、売買契約を行う。

〔政府所有工業団地に関わる制度概要〕

政府所有工業団地における土地区分ならびに取得照会の発行については、下記の書類を必要とする。

1.レターヘッド付申請書

    2.書式Kaxxivに記入する
  • BIDA (投資庁)登録と同様のオフィスの住所
  • BIDA(投資庁)登録番号と登録日
  • 商業登記所登録日
  • 商品名、おおよその製造量、年間製造量
  • 国内投資分(BDT (バングラデシュタカ)100万単位で)
  • 海外投資分(BDT(バングラデシュタカ)100万単位もしくは米ドルで)
  • 当該事業の進捗レポート ・予定している土地の詳細(書類添付)
  • 備考:BOI局長(Service/Utility Service)宛て申請書類2部と共に必要書類を提出する。

3.必要とする土地について:(a)事業構造、(b)内部の道路、鉄道、水道について、(C)オープンスペースとその活用について

4.設計プラン

5.土地を必要とする理由と現況についての説明

6.減税保持する土地のサイズ(Katha/Bigha)

7.従業員数

消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)

〔消費者保護の規制〕

物品の売買において、消費者はThe Consumers' Right Protection Act,2009で守られている。

不動産行政の方向性(新築・中古、長期・短期、持家・借家)

National Housing Policy による2017年の調査では、2021年までに都市部において約850万戸の住宅が不足するとされている。これを受けて第8次五か年計画において、低所得者層居住地域における住宅事業や、住宅ローンの整備、登記制度の見直しなどの一連の改善策を提示している。

不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)

〔住宅ローンの実態〕

2023年6月末時点の銀行および金融機関からの住宅ローン残高総額は11,910 億タカ(約1兆6,000億円)であり、これは民間部門への融資総額の 8.0パーセントを占めている。

民間商業銀行(PCB)が6,741 億タカの住宅ローン残高を有し、支配的な地位を占めている。唯一の国有機関のバングラデシュ住宅建設金融公社(Bangladesh House Building Finance Corporation)は438 億タカの残高を有している。

非主流の人々への住宅提供のために設立されたGrihayan Tahobilは地方の貧困層に最長 7 年の回収期間で単利 5.5 パーセントの住宅融資を行っており、100,292戸の住宅が建設されている。

不動産のリース(期間、延長・解除の是非)

住宅の通常の契約期間は2~3年であるが、それ以外でも交渉に応じる場合が多い。

The Tranfer of Property Act (1882)第110項・111項において、リース期間に関する規定がある。同規定によると、1年以下のリースの場合は書面における契約は不要とされている。

出典

〔不動産を取引する際の制度〕

JETRO「バングラデシュ ビジネス・スタートアップガイド(第2版)」(2014年04月30日)


〔消費者保護の規則〕

The Consumers' Right Protection Act,2009


〔不動産行政の方向性〕

Bangladesh Bank Annual Report 2015-16


〔不動産行政の方向性、不動産金融〕

National Housing Policy


〔不動産金融〕

Bangladesh Bank Annual Report 2022-23


〔不動産のリース〕

The Tranfer of Property Act

不動産に関する税制

不動産取得に関する税制

土地の登記手続には,3パーセントの印紙税,1パーセントの地方税及び2パーセントの登記手数料の事前納付が必要。

輸出加工地区(EPZ)における当該土地使用権の取得及び譲渡について印紙税は免除されている。

不動産保有に関する税制

〔不動産税〕

賃貸料の5%

その他税制(租税条約等)

利子への課税、 配当への源泉税率、 ロイヤルティー・技術料に対する課税、給料・報酬への課税。日本とは1991年2月、二重課税防止に関する二国間協定締結。

1.利子への課税:10%(最高税率)。ただし、納税者証明書(TIN)がない場合15%。

    2.配当への源泉税率
  • a.法人20%(最高税率)、租税条約締結済国の法人15%。
  • 配当を支払う法人の25%以上の株式を有する場合は10%。
  • b.個人10%、TINがない場合15%。
  • バングラデシュ国外居住の外国人30%(最高税率)。

3.ロイヤルティー・技術料に対する課税
前年度売上高(新プロジェクトについて輸入機材の費用)の6%をロイヤルティーおよび技術料として、本国へ送金できる。ロイヤルティーの金額の10%(最高税率)が課税される。

4.給料・報酬への課税:当該課税年度に合計182日以上滞在した国で課税される。

出典

〔不動産取得に関する税制〕

日本貿易振興機構(JETRO)「バングラデシュ投資ハンドブック」(2020年12月03日)

法務省「バングラデシュの基本法制に関する調査研究」(2014年2月28日)


〔不動産保有に関する税制〕

NATIONAL BOARD OF REVENUE


〔その他税制(租税条約等)〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る バングラデシュ 税制」(2020年12月03日)

不動産取引に関する外国人及び外国資本に対する規制

外資に関する優遇措置もしくは規制

〔規制業種・禁止業種〕

禁止業種(4業種)、規制業種(22業種)。規制業種については、主に政府の事業認可等が必要。

〔出資比率〕

原則、外資100%可。業種や業務に必要なライセンスによっては、出資金額、出資比率についての規制がある。外国資本の合弁は民間部門、公共部門とも可能。

外資参入の許認可制度

不動産業への外資参入について、特別な許認可制度はない。

規制業種については、主に政府の事業認可等が必要。不動産業は規制業種に該当しないものの、一般的に外国人がバングラデシュで事業を始めるのは難しいとされる。しばしば、省庁が不必要な免許や許可を必要とする他、土地登記記録は信頼できず、不動産は十分に保護されていない。

就労ビザ、長期滞在について

〔外国人就業規制〕

経営陣も含めた全従業員数に占める外国人の比率は、製造業で5%(1:20)、サービス業で20%(1:5)を超えてはならない。

〔在留許可〕

Bビザ、Eビザ、PIビザ、A3ビザなどのカテゴリーがある。新たなビザ制度(Visa Policy 2019)は未だ運用されていない。バングラデシュ投資開発庁(BIDA)より「外国の商業オフィスの設立許可手続き、外国人駐在員のビザ推薦およびワークパーミットの発行」に関する通知が2023年5月に発表された。

外国人による不動産の取引について

外国企業でも会社登記すれば、土地の所有は可能。ただし、外国人個人の所有は不可。

土地を購入する際は、次の手続きが必要。

  • 1.土地総額の1.5%相当の収入印紙の購入
  • 2.土地総額の2%または3%相当の地方自治体税の納入
  • 3.土地総額の1%相当の登録手数料、2~8%の登録にかかる税の納入

土地の印紙、税、登録手数料などは、登録局(Directorate of Registration)の計算ツール(ベンガル語)で概算を確認することができる。

輸出加工区(EPZ)の場合、土地を購入することは不可能だが、長期(30年間)使用権を取得することは可能。次の使用料は、1平方メートル当たり。

  • a. チョットグラムEPZ、ダッカEPZ、コミラEPZ、アダムジーEPZ、カルナフリEPZ:2.50ドル/年、賃貸工場:3.00ドル/月
  • b. モングラEPZ、イシュワルディEPZ、ウットラEPZ:1.40ドル/年、賃貸工場:1.75ドル/月
  • c. BEPZA EZ:2.75ドル/年、賃貸工場:3.50ドル/月
出典

法務省法務総合研究所国際協力部「バングラデシュの基本法制に関する調査研究

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る バングラデシュ 外資に関する規制」(2023年10月31日)

日本貿易振興機構(JETRO)「バングラデシュ投資ハンドブック」(2020年12月03日)

日本貿易振興機構(JETRO)「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2023年10月31日)

主要都市等における不動産マーケット情報

主要都市などにおけるマーケット情報

〔工業団地(土地)購入価格〕
  • ダッカ近郊
  • 15~111米ドル/m2
〔工業団地借料〕
  • EPZ内借地 0.12~0.23米ドル/m2月
  • EPZ内貸工場 1.60~3.50米ドル/m2月
〔事務所賃料〕
  • ダッカ 13~33米ドル/m2月
〔市内中心部店舗スペース/ショールーム賃料〕
  • ダッカ 12~42米ドル/m2月
〔駐在員用住宅借上料〕
  • ダッカ 1,392~4,477米ドル/月(高級住宅地 アパート、232~407m2)

(調査実施時期:2022年10月13日~2023年1月6日)

取引履歴・物件情報などのデータベース化

地理情報、地籍情報、属性情報により構成される Land Information System (LIS) が計画されている。

出典

〔主要都市等におけるマーケット情報〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較


〔取引履歴・物件情報などのデータベース化〕

Bangladesh Institute of Planners「Journal of Bangladesh Institute of Planners Vol.2 12 2009 Land Information System (LIS) for Land Administration and Management in Bangladesh」(2009年12月)(p.116?125)

不動産業者に関する情報

主な国内不動産業者

〔デベロッパー〕
〔仲介業〕

不動産業(住宅販売等を含む)を展開する主な日系企業

主な日系企業の進出はない

※データベースについては、関係機関等から収集した情報を掲載しており、必ずしも正確性または完全性を保証するものではありません。掲載情報の詳細については、出典元にお問い合わせいただくようお願いいたします(掲載情報以外の内容については、国土交通省としてお答えできません)。また、閲覧者が当データベースの情報を用いて行う一切の行為について、国土交通省として何ら責任を負うものではありません。

トップへ