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1992年に初めて制定された「土地法」は、2001年8月に改正されている(「2001年土地法」:2001 Land Law)。同「改正土地法」は、不動産所有権および関連権限を保証するため、カンボジアにおける不動産の所有権管理様式を決定することを目的として制定された。また市民が土地を所有する権利を保証するため、近代的な土地登記制度を創設することも、法律改正の目的の一つであった。
「土地法」では、「国土管理・都市計画・建設省(Ministry of Land Management, Urban Planning and Construction)」に、不動産に関する権利書の発行権限と国有不動産の公図管理権限を与えている。
内戦中にカンボジアの土地制度は崩壊し、土地所有権の権利書と登記簿の多くが失われたため、土地所有権を巡る紛争が依然として多発している。従って投資家にとっては、土地使用、土地リース、カンボジア企業を通じた土地所有に関する部分的共有権に関する契約を締結する前に、地主の土地所有権を確認することが非常に重要となる。
2011年12月20日から、民法適用法の施行に伴って「土地法」への民法規定の適用が開始され、相当数の「土地法」条文が修正を受けるか削除されている。従って、土地所有権の売買、譲渡、担保設定、土地の賃貸借などに関しては、民法規定を参照することが重要となっている。
カンボジアでは、自然人または法人にかかわらず、外国人が土地を所有することは禁じられている。憲法第44条は、「カンボジア法人とカンボジア国籍の市民のみが土地を所有する権利を有する」と定めている。「2001年土地法」も、カンボジアにおいてはカンボジア国籍の自然人または法人のみが土地を所有する権利を有し、土地所有者となるために国籍を偽称した外国人は罰せられる旨規定している(同法第8条)。
この場合、カンボジア国籍の法人とは、51%以上の株式をカンボジア人またはカンボジア企業が所有している法人を指している。
コンドミニアムなどの区分所有建物については、2010 年に施行された法令により、地上階および地下階を除き外国人による所有が認められるようになった。ただし、当該建物の総専有面積の 70%が上限。
不動産の所有権は、契約、相続、民法第3編(物権)・第2章(所有権)・第4節(所有権の取得)で定めるもののほか、民法その他の法律の規定により取得することができる(民法第160条)。
民法においては、「永借権」の概念が導入された。永借とは、15年を超える期間の長期賃貸借であり(民法第244条)、書面によらなければならないと規定される(民法第245条)。「永借権」は、それが登記された場合に初めて第三者に対抗することができ、賃借人は不動産の新しい所有者に対して、登記された永借権を主張することができる(民法第246条)。
「永借権」の存続期間は、50年を超えることができない。50年を超える期間をもって永借権が設定されたときは、これを50年に短縮する。また永借権は更新することができるが、その期間は更新の時から50年を超えることはできない(民法第247条)。
カンボジアで登記の対象となる“物”は,土地,区分建物,建物である。
また,登記の対象となる物権は,所有権,特別占有権,永借権,用益権,地役権,先取特権,不動産質権,抵当権,根抵当権である。合意に基づく所有権移転,及び特別占有権の移転を除くこれらの物権の設定,移転及び変更はその旨の登記を行わなければ第三者に対抗できない点では日本と同様である。
省令上、登記に関する証明書は申請から3 日以内に発行されることとなっているが、そもそも権利証の写しがないと申請ができなかったり、地区によっては証明書の発行に1週間以上掛かる。しかも、証明書は手書きのため、登記簿との整合性に一抹の不安が残ります。所有者が権力者であったり、地方の場合は、所有者の了解がないと登記情報にアクセスできないといった事態も発生している。
登記申請にあたっては、実務上、申請書、当事者間の契約書(売買契約書、抵当権設定契約書など)の他に、省令には明記されていない“登記手続用の各種契約書”の提出を求められるのが現在の実務。所要日数は、シンプルな抵当権の設定登記でスムーズにいけば14営業日程度だが、所有権移転登記については不動産譲渡税(譲渡価格の 4%)等の納付手続を挟むため1か月半から2か月かかる。区分所有建物の登記となるとさらに時間がかかる傾向にある。
2017年6月29日付けの鑑定サービス及び不動産サービス事業の管理に関する省令第636号及び2016年8月24日付けの住宅開発事業の管理に関する省令第 965 号によれば、カンボジアにおける不動産に関する事業について、不動産鑑定サービス事業が存在する。この不動産に関する事業を取り扱う者は、経済財政省(以下「MEF」という)から営業ライセンスを取得する必要があるとされている。
鑑定サービス:財産の価格及びその財産上またはこれに付随したその他の利益を定めるための鑑定を行うサービス
資格及び必要条件
鑑定ライセンスを取得するために、申請会社は、以下の条件を満たさなければならない。
その他の詳細な申請条件については、MEF によって定められる。
すべての不動産鑑定サービス、不動産サービス及び住宅開発サービスの提供は、経済財務省(MEF)から事前に事業ライセンス及び専門証明書を取得する必要がある。
〔不動産関連法・制度の現状、土地・不動産の所有権〕
日本貿易振興機構(JETRO)「外資に関する規制」(2023年9月18日)
〔土地・不動産の所有権、土地・不動産の登記〕
日本貿易振興機構(JETRO)「カンボジアにおける不動産取引に関する留意点」(2016年3月)
〔土地・不動産の登記〕
〔不動産の鑑定評価、不動産事業を行う際の免許制度〕
日本貿易振興機構(JETRO)「カンボジア営業ライセンスマニュアル」 (2018年3月)
重大な隠れた瑕疵のある不動産の売買について、無効であることが規定されている。
カンボジアでは、不動産業者が提供する住宅ローンへの需要が過去数年間で急拡大している。これらのローン商品は頭金が不要で、返済期間が30年の長期ローンであることが多い。
ただし、18%程度の高金利が課されるため、実際の返済総額は不動産価格の2~3倍になることがある。一方、銀行の住宅ローンでは物件価格の3割以上が頭金として求められるほか、与信など一連の審査を伴うが、金利は7~12%に抑えられる。
不動産を賃借する場合、賃貸人と賃貸借契約を締結することになる。カンボジアの民法上、賃借権には2種類ある。
短期賃借権や長期賃借権(永借権)の契約を締結する際に、注意すべき事項は以下の通り。
〔不動産を取引する際の制度、不動産のリース(期間、延長・解除の是非)〕
日本貿易振興機構(JETRO)「カンボジアにおける不動産取引に関する留意点」(2016年3月)
〔不動産を取引する際の制度〕
カンボジア開発評議会(Cambodian Investment Board)
〔消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)〕
「カンボジア土地法」
〔不動産行政の方向性(新築・中古、長期・短期、持家・借家)〕
NNA調べ(2017年11月)
〔不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)〕
NNA調べ(2016年9月)
建物や土地等の不動産の所有権の変更は不動産価値の 4%、車両等の所有権の変更は車両等の価値の 4%の資産譲渡税が譲渡人に対して課税
不動産、投資資産や知的財産権などの無形資産、外貨の売却によって得られた利益に対して、20%の資産譲渡税が課せられる。2024年1月1日から適用される見込み。
農地などを除く、評価額1億リエル以上の不動産が対象。不動産評価委員会評価額の0.1%。
都心部や特定の地域にある土地に建築物がない、または使用していない建築物がある場合などに、課税対象となる。税率は、毎年6月30日に未開発土地評価委員会が決定した土地評価額の2%。
土地、建物、特定の機器や倉庫設備を個人が賃貸して収入を得る場合は、関連総賃貸収入の10%。
カンボジアは、二国間の二重課税防止協定(租税条約)締結を始めたところである。日本との二重課税防止協定は、未締結である。
またカンボジアは、OECDの税務情報交換フォーラムにも2017年9月に加盟し、国際的な税の透明性向上、国際的な租税回避行為の防止などへの取り組みも開始した。
〔不動産取得に関する税制、不動産譲渡に関する税制、不動産保有に関する税制、その他税制(租税条約等)〕
日本貿易振興機構(JETRO)「税制」(2023年9月29日)
〔その他税制(租税条約等)〕
国土交通省「日本インフラ産業の海外進出に係る基礎的情報に関する調査研究」(2017年6月)
投資家による土地保有は、カンボジア市民権を有する自然人かカンボジア企業に限って可能であるが、土地使用については、カンボジア政府との契約による土地使用(コンセッション)、15年以上50年を期限とする永借権に基づく長期賃借(最長50年ごとの更新可能)、更新可能な有期の短期賃借などが、外国企業にも認められている。
省令第 636 号及び第 965 号では、鑑定サービス、不動産サービス及び住宅開発事業の運営に関する外資参入の制限が定められておらず、その他の特殊な制限についても定められていないため、外国法人及び外国自然人が自由に参入することができると考られる。
なお、2003 年改正投資法第 16 条によれば、外国法人及び自然人はカンボジアにおける土地を所有する権利を有しないため、住宅開発事業を運営する場合、長期土地賃貸借契約の締結等の土地利用権を設定する必要があると考えられる。
外国人労働者の就業も幅広く受け入れているが、就業には労働許可証の取得が必要である。
2014年8月20日付労働省令第196号では、企業はカンボジア人労働者数の10%以下の人数の外国人を雇用できるとされる。内容は次のとおり。
もっとも、外国人労働者数がカンボジア人労働者数の10%を超える場合であっても、従業員割当申請の際に、後述の特例許可手続をとることが可能である。
外国人労働者がカンボジアに長期滞在するためには、ビジネスビザで入国し、入国後にビザの延長(1回当たり最長1年間)を行うことが必要である。
カンボジアに入国する外国人は、何種類かあるビザのうち、通常は観光ビザ(T)またはビジネスビザ(E)を取得する(この他に、外交ビザ、公用ビザ、学生ビザ、求職者ビザ、退職者ビザなどがある)。
現地法人、支店、駐在員事務所において、カンボジア人を少なくとも何人採用しなければならないといった法律上の定めはない。
外国人(法人)がカンボジアで土地を使用するには、土地を賃貸することが必要である。
賃貸借は短期賃貸借と 15 年を超える期間の長期賃貸借に分けられる。長期賃貸借は、2007 年に公布された民法で「永借」と規定されており、書面によって契約する必要がある。また、永借権は登記された場合に第三者に対抗することができる。永借権は 50 年を超える期間での契約ができないが、50 年未満の更新が認められている。また、譲渡、処分、転貸、相続することも可能。永貸人は、永借人が賃料を 3 年間支払わないときは、永貸借を解除することができる。
基本的に貸借権利関係は改正民法が適用されることになっているが、2001 年土地法に基づき設定された長期賃借権で、その残存期間が 50 年を超えるものについては、残存期間が99 年となる。なお、経済特別区(SEZ)へ入居する場合は、SEZ 管理会社と土地の長期リース契約を締結する。このリース契約は、カンボジア開発評議会への事前報告と名義変更を行うことで転売することができる。
〔外資に関する優遇措置もしくは規制〕
日本貿易振興機構(JETRO)「外資に関する規制」(2023年9月18日)
〔外資参入の許認可制度〕
日本貿易振興機構(JETRO)「カンボジア営業ライセンスマニュアル」 (2018年3月)
〔就労ビザ、長期滞在について〕
日本貿易振興機構(JETRO)「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2023年8月31日)
〔外国人による不動産の取引について〕
国際協力銀行(JBIC)「カンボジアの投資環境/2013年4月」
外資の出資比率が50%を超える企業は土地購入不可
19~27米ドル/m2月 (VAT、サービス料、公共料金別)
(調査実施時期:2022年11月1日~2023年1月6日)
Cambodian Valuers and Estate Agents Association(CVEA)「Exclusive Properties」
(参考)
Open Development Cambodia(ODC)
地図のデータベース化が行われている。
〔主要都市などにおけるマーケット情報〕
日本貿易振興機構(JETRO)「投資コスト比較」
〔取引履歴・物件情報などのデータベース化〕
国際協力機構(JICA)「カンボジアの不動産登記について」(2014年)
国土交通省「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書」(2012年)
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