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オーストラリア

不動産関連情報

不動産に関する法制度

土地・不動産の所有権

オーストラリアの土地は原則的に「王」に属するものとされており、私人による完全な「所有権」はそもそも否定されている。いわゆる「土地所有者」は原則的にはその土地を自ら所有すると同じ権利、すなわちその土地を自由に利用・売却・賃貸したり、担保設定をする権利等である「自由保有権(Freefold)」が認められているということになっている。 不動産としての「土地」を土地取り扱う法律は、連邦議会の専属的権限に含まれていないことから、州の立法権に属するものとされ、各州によって不動産関係法規が定められている。 土地の私有は永住権を持たなくても可能である。また、土地と建物は個別の不動産として扱われるが、通常の物件売買は土地と建物の所有権が含まれている。

土地所有の一般的な原則は「コモン・ロー」に詳述されており、オーストラリアの裁判所では長い時間をかけて確立されてきた。しかし、所有権の範囲は、過去1世紀の間に解釈が大きく変わり、現在では多くの詳細が連邦、州、準州の法律に組み込まれていることに留意する必要がある。

土地・不動産の登記

土地登記のみのトレンス・システム(Torrens System)があり、登記権利者が登記の際に交付を受けた登記証明書を受け、のちに自己が登記義務者となるときにその登記証明書を提出させる。土地登記によって物権変動の効力が発生したとされ、弁護士が登記を行う。

登記情報を縦覧できるシステムとして未登記事項検索システムU.R.D.S (Unregistered Dealing System)があり、登記申請書類が提出・受理されながらまだ登記に至らない未登記事項(dealing)について検索するシステムである。登記所の受付で書類を提出・受理された時、受付係官(Receiving Clerk)が直ちにコンピュータに打ち込み、所定の手数料を支払えば、誰でもこの「未登記事項」の案件リストを取得することができる。

不動産の鑑定評価

Australian Property InstituteのValuation Guidance Notesでは、Sales Comparison Approach、 Income Capitalisation Approach、Cost Approach のうち、1つまたは複数の評価手法を用いるとしている。

不動産鑑定士の資格として、Australian Property Instituteが認証するCertified Practising Valuer(CPV)の制度がある。

2015年2月15日時点、不動産鑑定評価に該当するProperty Valuationの登録者数は665名(重複登録者を含む)

法制度が確認できるWebサイトの紹介

Australia Unlimited 「Land tenure

不動産事業を行う際の免許制度

オーストラリアは6つの州、2つの準州(首都特別地域と北部準州)から成っており、不動産業許可行政については各州が権限をもっており、各州、特別地域で規定が設けられている。

    例)
  • オーストラリア首都特別地域(ACT:Australian Capital Territory)
  • Agents Act 2003により不動産業に関するライセンスが規定されている。
  • New South Wales(NSW)
  • Property, Stock and Business Agents Act 2002により不動産業に関するライセンスが規定されている。
  • Queensland
  • Property Occupations Act 2014により不動産業ライセンスが規定されている。
出典

土地・不動産の所有権

Australian Trade and Investment Commission「Land tenure

JAMS.TV(2014)『オーストラリア生活便利帳 ドーモ・シドニー 2014』 volume7


土地・不動産の登記

法務省「我が国と諸外国の不動産登記制度における登記の真正担保のための方策について オーストラリア

土地・不動産の登記:矢島祥裕「日本人不動産鑑定士がオーストラリアで見て聞いて触ってやってみて感じたこと:オーストラリア鑑定紀行(1)~(3)」『不動産鑑定』2012.6,2012.7,2012.7


不動産の鑑定評価

諸外国における取引価格情報の整備・提供状況」(国土交通省「第2回不動産流通市場における情報整備の在り方研究会 」2012.8


不動産事業を行う際の免許制度

オーストラリア首都特別地域 「Agents Act 2003

New South Wales(NSW)「Property, Stock and Business Agents Act 2002

Queensland 「Property Occupations Act 2014

不動産の取引に関する制度

不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)

持家家主のうち、住宅ローン債務者は36.2%(2010年)である。

貸付機関別のシェアでみると、上位4行 (Commonwealth Bank, Westpac Banking Corporation, Bational Australia Bank, ANZ Banking Group)の融資残高シェアは、2015年10月時点で83%に達している。その他の代表的な融資主体には、建築組合(英国とほぼ同様の制度)、信用組合、モーゲージ機関などがある。

オーストラリアの多くの金融機関は、物件価格の20%あるいは10%の保証金を要求され、借り手はLender's Mortgage Insurance(住宅ローン保険)を支払う必要が生じる。 一般的に、オーストラリアの住宅ローンは30年で設定されており、借り手は変動金利と固定金利を選択可能。オーストラリアの住宅ローンの特徴として、オフセット方式(相殺口座を利用し利払い負担を軽減するスキーム)、リドロー方式(金利先払い方式)、分割ローン、金利キャッシュバックローンなどがある。

不動産のリース(期間、延長・解除の是非)

借主がリース契約で継続のオプションを持つならば、貸主は借主がそのリースを継続することを義務付けられている。通常リース契約に更新オプションが入っており、条件付契約として成り立っている。

地方自治体、州政府、連邦政府を含め、多くの機関が課している貸主/貸家人および賃借人に適用される法規制が存在する。例えば、住宅リースにおける賃借人と賃貸人の権利および義務などに関する事項が定められている Residential Tenancies Actや、 店舗リース契約においてテナント保護の観点から賃貸人がリース契約時に開示することが求められる事項 などが明記されている Retail Leases Act などがある。

出典

不動産金融:倉橋透(2007)「イギリス、オーストラリアにおける住宅金融市場の証券化の歴史と現状(上)」Housing Finance 2007 Autumun,PP.88-97

不動産金融:倉橋透(2007)「イギリス、オーストラリアにおける住宅金融市場の証券化の歴史と現状(下)」Housing Finance 2007

Australian Bureau of Statistics「Australian Social Trends Housing

Australian Prudential Regulation Authority「Monthly Banking Statistics」

不動産のリース:Winter,PP.12-16日本貿易振興機構(2014)『Sydney style』

不動産のリース:Perer Mcmahon (2009)”Issues Relating to Commercial leasing AUSTRALIA (NEW SOUTH WALES”, Lex Mundi,PP.10-14

Residential Tenancies Act, Retail Leases Act「

野村総合研究所調べ

不動産に関する税制

不動産取得に関する税制

不動産を取得する際に課税される税金は、州によって異なるが、州税として印紙税(Stamp Duty)が法定書類、契約書および協定書等に対して課税される。課税対象及び手続き、税率は州によりかなり異なり、印紙税の納税義務者及び各印紙税の納付期限 を定めている。

印紙税は、土地の譲渡、土地およびその他の資産に関する権利に対してオーストラリアのすべての州と特別地域において課され、通常は購入者に支払義務が生じる。 また、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州およびクイーンズランド州では、住宅用物件が外国人により所有または管理をされている購入者によって取得される場合には、サーチャージとして追加の印紙税が課される。

不動産保有に関する税制

不動産の保有に関しても州によって異なっている。現在では、ほとんどの州(state)政府と地方(local)政府の2段階で土地保有に対する課税がある。前者は土地税(land tax)で州の税収の10%程度を占めている。後者はレイト(rates council rate, general rate等)で地方政府の唯一の税源として地方政府の収入の3分の1程度を占めている。

土地税は、原則として、土地の所有者(個人及び法人)に課税されるが、オーストラリア首都特別地域においては、貸借人も納税者とされている。課税ベースは、未改良土地の市場価値である敷地価値となっている。税率は、累進税率が採用されており、個人用不動産と企業用不動産とで、税率構造が異なる所(クイーンズランド州、オーストラリア首都特別地域)もある。慈善・宗教・教育施設は免税とされるほか、政策的配慮から、ほとんどの州で主たる住居の土地及び農地についても免税とされている。したがって、土地税の実態は、事業用用地に対する企業課税となっている。

その他税制

不動産の売却時にはキャピタル・ゲイン税(Capital gains tax、CGT)が課税される。キャピタル・ゲイン税は法人・個人及び居住者・非居住者のいずれにも適用される。ただし、キャピタル・ゲイン税という独立した区分の税ではなく、豪州税制では1985年まで課税対象でなかったキャピタル・ゲイン(およびロス)を課税対象とした時に与えられた名前であり、通常の所得に含めて課税される。一般的に、1985年9月20日以降に取得した資産の譲渡について適用される。1999年9月20日以前に取得された資産については、キャピタル・ゲインは、資産の取得価格にインフレ率を乗じ、物価指数調整を行って計算される(但し、物価指数調整は1999年9月30日に凍結された)。法人に足しては、キャピタル・ゲイン税は、通常の法人税率に基づいて課税される。CGTはCGT資産に生じた事象(譲渡など)を契機に課される。CGT資産には、ほとんどの資産、権利が含まれる。

オーストラリア非居住者によるオーストラリア不動産の売却にあたっては、キャピタルゲイン税制をサポートするかたちで、12.5%の不動産源泉徴収税が適用される。この源泉徴収は、オーストラリアの土地、資源プロジェクト、および資源の豊富な土地を有するオーストラリア人または外国居住者に対し適用される。

出典

不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制、その他税制

篠原正博(2009)『住宅税制論』中央大学出版部、PP.212-222


不動産保有に関する税制

石田和之(2009)「オーストラリアにおける土地保有税」『土地総合研究』2009年春号、PP.28-36


不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制

倉橋透(2007)「イギリス、オーストラリアにおける住宅金融市場の証券化の歴史と現状(上)」Housing Finance 2007 Autumun,PP.88-97


不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制

倉橋透(2007)「イギリス、オーストラリアにおける住宅金融市場の証券化の歴史と現状(下)」Housing Finance 2007 Winter,PP.12-16


その他税制

『オーストラリアの税制と投資』トーマツ

日本貿易振興機構(JETRO)「オーストラリアにおける企業設立および税務等に関するガイド

不動産取引に関する外国人及び外国資本に対する規制

外資に関する優遇措置もしくは規制

外国人投資家および居住者などの外資による土地所有に関しては、ほとんどの場合、権利を取得する前に外国投資審査委員会(FIRB)の認可が必要となっている。

  • 住居用不動産
  • 空き地
  • オーストラリアの不動産企業または信託(第一次産業が行われていない土地/事業(Urban Land)の占める割合が、総資産額50%以上の事業のもの)の株式または物件
  • 外国人投資家が、空き地の居住用および商業用の土地を取得する場合は、金額にかかわらずFIRBの事前認可が必要となっている。

開発された商業用不動産については、FTA締結国(チリ、中国(発効後)、日本、ニュージーランド、韓国、米国)の投資家は10億9,400万豪ドル以上、それ以外の国は2億5,200万豪ドル以上がFIRBの事前認可が必要となっている。

農地については、FTA締結国ではチリ、ニュージーランド、米国の投資家は10億9,400万豪ドル、中国(発効後)、日本、韓国の投資家は1,500万豪ドル以上がFIRBの事前認可が必要となる。

鉱山作業場などについてはチリ、ニュージーランド、米国の投資家は10億9,400万豪ドル以上、それ以外の国はすべての投資に対してFIRBの事前認可が必要となっている。

なお、遺言により相続した権利、または法律の運用により移譲された権利などの場合は、市民権や在留資格の有無に関係なく、FIRBの認可は必要ない。

外国人による不動産の取引について

  • 長期滞在者
  • 中古物件を購入する場合には、外国投資審査委員会(FIRB)に申請しなければならない。オーストラリアに居住しなくなった場合には、購入した物件を3か月以内に売却しなければならない。

長期滞在者は、投資を目的とした住居を購入することはできない。

新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、4年以内に建設を終了しなければならない。

  • 居住者でない外国人
  • 居住者でない外国人が、投資を目的とした中古物件を購入することは、原則できない。新築物件を購入した際には政府に申請しなければならず、空き地を購入した際には、政府に申請を行い、24カ月以内に建設を始めなければならない。

現在オーストラリアでは住宅アフォーダビリティ(取得可能性)改善が課題となり、外国人投資家を対象にした金融機関による住宅融資の制限、一部の州では印紙税の上乗せが実施されている。

出典

外資に関する優遇処置もしくは規制、外国人による不動産の取引について

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る オーストラリア 外資に関する規制

外国投資審査委員会(FIRB)

Guidance notes: Residential Land

主要都市等における不動産マーケット情報

主要都市などにおけるマーケット情報

    〔工業団地(土地)購入価格〕

    2,335米ドル ※物品・サービス税(GST)含む。土地税、弁護士費用(契約書類作成)、保険料、管理費等を除く。


    〔工業団地借料(1平方メートル当たり、月額)〕

    9米ドル ※物品・サービス税(GST)含む。土地税、弁護士費用(契約書類作成)、保険料、管理費等を除く。


    〔事務所賃料(1平方メートル当たり、月額)〕

    61米ドル ※GST含む。土地税、弁護士費用(契約書類作成)、保険料、管理費等を除く。


    〔市内中心部店舗スペース/ショールーム賃料(1平方メートル当たり、月額)〕

    176~1,469米ドル ※GST含む。土地税、弁護士費用(契約書類作成)、保険料、管理費等を除く。


    〔駐在員用住宅借上料(月額)〕

    3,185ドル ※GST含まず。新規契約時に最大4週間分の保証金(Bond)をNSW州政府に預ける。解約時、破損状況等の問題がなければ、保証金額に金利を加えて払い戻される。

出典

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較

不動産業者に関する情報

業界団体

主な国内不動産業者

〔デベロッパー〕

不動産業(住宅販売等を含む)を展開する主な日系企業

  • 積水ハウス
  • スターツコーポレーション 等
出典

日本貿易振興機構(2014)『Sydney style』

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