住宅宿泊管理業者の業務
住宅宿泊管理業者の業務
住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊管理業の適正な遂行のために主に下記の措置等をとる必要があります。
1.誇大な広告の禁止について
2.不当な勧誘等の禁止について
3.管理受託契約の締結前及び締結時の書面の交付について
4.住宅宿泊管理業務の再委託の禁止について
5.住宅宿泊管理業務の実施について
6.従業者証明書の携帯等について
7.帳簿の備付け等について
8.標識の掲示について
9.住宅宿泊事業者への定期報告について
1.誇大な広告等の禁止について
業務に関して広告をするときは、以下の事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはいけません。
・ 住宅宿泊管理業者の責任に関する事項
・ 報酬の額に関する事項
・ 管理受託契約の解除に関する事項
(1)「誇大広告等」について
- 「誇大広告等」だけでなく「虚偽広告」も禁止しています。
- 広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類は問いません。
(2)「誇大広告をしてはならない事項」および例示について
- 「住宅宿泊管理業者の責任に関する事項」についての誇大広告等としては、例えば、実際の管理受託契約上は、住宅宿泊管理業者が宿泊者によって生じた損害について一切責任を負わないこととなっているにもかかわらず、家主に損害の負担が全くないかのように誤認させるようなものが想定されます。
- 「報酬の額に関する事項」についての誇大広告等としては、例えば、実際の管理受託契約上は、宿泊数に比例する料金体系が設定されるようなサービス内容であるにもかかわらず、委託報酬が月額制で上限の定まった定額であるかのように誤認させるようなものが想定されます。
- 「管理受託契約の解除に関する事項」についての誇大広告等としては、例えば、実際の管理受託契約上は、契約期間途中の解約が制限されるにもかかわらず、委託者の求めるときにいつでも解約できるように誤認させるようなものが想定されます。
(3)「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」について
- 「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」と認められるものとは、住宅宿泊管理業についての専門的な知識に関する情報を有していない一般の家主を誤認させる程度のものをいいます。
2.不当な勧誘等の禁止について
住宅宿泊管理業においては、管理受託契約に関する事項に係る不実告知及び委託者の保護に欠ける以下の行為を禁止しています。
- 委託者が迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為
- 委託者が契約の締結又は更新を行わない意思を示したにもかかわらず執拗に勧誘する行為
- 届出住宅の所在地その他の事情を勘案して、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず、当該住宅宿泊管理業務に係る管理受託契約を締結する行為
(1)「委託者に迷惑を覚えさせるような時間」について
- 「迷惑を覚えさせるような時間」については、相手方となる家主の職業や生活習慣等に応じ、個別に判断されるものですが、一般的には、相手方に承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当します。
(2)「住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず、当該住宅宿泊管理業務に係る管理受託契約を締結する行為」について
- 住宅宿泊管理業者の営業所又は事務所の所在地、これらの営業所又は事務所における人員体制、住宅宿泊管理業務の再委託を行う場合の再委託先の事業者の業務体制、届出住宅周辺の交通事情等により、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないこと明らかである場合が該当します。
- 住宅宿泊管理業者が管理受託契約の締結の勧誘をするにあたっては、住宅宿泊管理業務の適切な実施が確保できることを明らかにするため、届出住宅へすみやかに駆けつけることが可能な体制を有していることを委託者に示しながら行ってください。
3.管理受託契約の締結前及び締結時の書面の交付について
管理受託契約の締結に当たって締結前及び締結時に委託者に対し必要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。
<締結前の書面への主な記載事項>
- 住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号
- 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅
- 住宅宿泊管理業務の内容及び実施方法
- 報酬並びにその支払の時期及び方法
- 住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項
- 責任及び免責に関する事項
- 契約期間に関する事項
- 契約の更新及び解除に関する事項
<締結時の書面への主な記載事項>
- 締結前の書面への記載事項に加え、法第40条の規定による住宅宿泊事業者への報告に関する事項(※)
(※)国土交通省では、適切な管理受託契約の締結を確保し、届出住宅の管理の委託が円滑になされるよう、標準的な管理受託契約書を策定しておりますので、トラブル防止等のため積極的にご活用ください。詳細の書式は、国土交通省のホームページをご参照ください。
(1)「住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅」について
- 届出住宅の所在地及び物件の名称、部屋番号、委託の対象となる部分及び維持保全の対象となる附属設備について説明する必要があります。
(2)「住宅宿泊管理業務の内容及び実施方法」について
- 届出住宅の維持保全及び法第5条から第10条までの規定による業務の内容について、届出住宅の状況等に応じて回数や頻度を明示して可能な限り具体的に説明されることが必要です。また、法第7条から第9条までの規定による業務については、説明等の方法について対面による等、具体的方法を明示する必要があります。これらのほか、緊急時の連絡対応等の方法についても明示してください。委託者である住宅宿泊事業者が届出住宅の管理に関する十分な知識や経験を有している場合であっても、当事者間の責任関係を明確にするため、当該事項について説明せずに契約することは認められていません。
(3)「報酬並びにその支払の時期及び方法」について
- 報酬の支払い時期及び支払い方法についても明示されている必要があります。また、報酬とは別に要する費用として、住宅宿泊管理業者が委託業務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費や、委託業務の実施のために要した届出住宅に設置・配置する備品その他届出住宅を住宅宿泊事業の用に供するために必要な物品等の購入に要した費用についても想定されるため、それらの費用の負担方法、支払い時期及び支払い方法についても明示してください。
(4)「住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項」について
- 住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者の承諾を得た上で、住宅宿泊管理業務の一部を第三者に再委託することができることを事前に説明する必要があります。また、再委託先は、住宅宿泊管理業者の業務実施体制に大きく影響するものであることから、再委託予定者を事前に明らかにする必要があり、再委託先を変更する度に書面又は電磁的方法により委託者に知らせる必要があります。再委託先を一方的に変更する可能性がある場合には、その旨をあわせて事前に説明する必要があります。
(5)「責任及び免責に関する事項」について
- 責任及び免責については、責任の所在の明確化を図る観点から、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者の責任の所在について事前に説明しておく必要があります。損害賠償請求に至った場合にはトラブルに発展することが予見されることから、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が事前に協議を行った上で賠償責任保険に加入する等の措置をとっていただくことを推奨します。
- また、再委託事業者が住宅宿泊管理業者から委託された住宅宿泊管理業務を行う上での過失等によって生じた住宅宿泊事業者又は届出住宅の宿泊者の損害については、住宅宿泊管理業者が責任を負うことが一般的であると考えられますが、最終的には住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約を踏まえて取り決めを行ってください。
(6)「契約期間に関する事項」について
- 契約の始期、終期及び期間を説明する必要があります。
(7)「契約の更新及び解除に関する事項」について
- 住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者間における契約の更新の方法について事前に説明する必要があります。
- 住宅宿泊事業者又は住宅宿泊管理業者が、契約に定める義務に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができる旨を事前に説明する必要があります。
4.住宅宿泊管理業務の再委託の禁止について
住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはいけません。
(1)「住宅宿泊管理業務の再委託の禁止」の趣旨について
- この規定は、住宅宿泊事業者から委託を受けた住宅宿泊管理業務の全てを再委託することを禁ずるものであり、管理受託契約に住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、再委託を行うことができます。
(2)再委託における責任ついて
- 再委託先は住宅宿泊管理業者である必要はありませんが、住宅宿泊事業者と管理受託契約を交わした住宅宿泊管理業者が再委託先の住宅宿泊管理業務の実施について責任を負うこととなります。このため、法第25条各号(第11号を除く。)の登録拒否要件に該当しない事業者に再委託することが望ましく、また、再委託期間中は、住宅宿泊管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要です。なお、契約によらずに住宅宿泊管理業務を自らの名義で他者に行わせる場合には、名義貸しに該当する場合があるため、再委託は契約を締結して行うことが必要となります。
(3)再委託の対象範囲について
- 再委託は住宅宿泊管理業務の一部については認められるものの、全てについて他者に再委託することや、住宅宿泊管理業務を複数の者に分割して再委託して自らは住宅宿泊管理業務を一切行わないことはこの規定に違反します。
5.住宅宿泊管理業務の実施について
住宅宿泊事業者から住宅宿泊管理業者へ住宅宿泊管理業務の委託がなされた場合、法第5条から第10条の規定(※)はその委託を受けた住宅宿泊管理業者に準用され、届出住宅の維持保全に関する業務も含めて住宅宿泊管理業者の責任の下で住宅宿泊管理業務を行うこととなります。
以下は、住宅宿泊管理業者が法第11条第1項に基づく委託を受けて、住宅宿泊管理業務を行うに当たっての注意点になります。
- 宿泊者の衛生の確保
- 宿泊者の安全の確保
- 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
- 宿泊者名簿の備付け等
- 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
- 苦情等への対応
(1)住宅宿泊事業の適切な実施のための届出住宅の維持保全について
- 委託義務の対象となる届出住宅の維持保全に係る業務については、管理受託契約において対象範囲を明確に定める必要があります。届出住宅の維持保全が適切に行われない場合には、業務改善命令等監督処分の対象となる場合があります。
(2)宿泊者の衛生確保について
- 各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限を確実に履行するために、住宅宿泊事業者が制限を超える宿泊者との契約を締結した場合の宿泊拒否の権限等について、予め住宅宿泊管理業者と委託者との間で取り決めておいてください。
(3)宿泊者の安全の確保について
- 必要な器具の設置及び維持保全に要する費用の負担については、委託を受けた住宅宿泊管理業者の責任において行うこととなるため、予め住宅宿泊管理業者と委託者との間で取り決めて置いてください。委託者の用意した器具等を住宅宿泊管理業者が利用する場合には、動作等について予め住宅宿泊管理業者が確認する必要があります。
(4)宿泊者名簿の作成・備付けについて
【A 宿泊者の本人確認方法について】
- 住宅宿泊管理業者が住宅宿泊管理業務の委託を受けて行う場合には、正確な記載を確保するための措置の実施について、住宅宿泊管理業者の責任の下に行う必要があります。
- 本人確認の方法は、委託者との間で、管理受託契約により明確に取り決めておく必要があります
【B 宿泊者名簿の提出先】
- 住宅宿泊管理業者に対して宿泊者名簿の提出を求めることができるのは、国土交通大臣及び住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の所在地を管轄する都道府県知事等となります。
(5)周辺地域の生活環境への悪影響の防止に必要な事項の説明について
- 届出住宅固有の配慮事項や注意事項について、住宅宿泊管理業者は委託者に予め内容を確認しておくことが必要となります。
(6)苦情等への対応について
- 苦情及び問合せが、緊急の対応を要する場合には、関係機関への通報の他、委託者に対しても報告することが適切となります。
- 苦情への対応については、必要に応じてすみやかに現地へ赴くこととし、苦情があってから現地に赴くまでの時間は、30 分以内を目安とします。ただし、交通手段の状況等により現地に赴くまでに時間を要することが想定される場合は、60 分以内を目安とします。
6.従業者証明書の携帯について
住宅宿泊管理業者は、従業者(再委託契約に基づき住宅宿泊管理業務の一部の再委託を受ける者を含みます。)に国土交通省令で定める様式の従業者証明書を携帯させなければいけません。様式には、従業者の氏名や勤務する営業所又は事務所の所在地、住宅宿泊管理業者の登録番号等を記載します。
7.帳簿の備付け等について
住宅宿泊管理業者は、登録を受けた営業所又は事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、管理受託契約を締結した届出住宅ごとにその管理受託契約の締結日や受託した住宅宿泊管理業務の内容等を記載したものを、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存する必要があります。
- 管理受託契約を締結した年月日
- 管理受託契約を締結した住宅宿泊事業者の名称
- 契約の対象となる届出住宅
- 受託した住宅宿泊管理業務の内容
- 報酬の額
- 管理受託契約における特約その他参考となる事項
(1)「契約の対象となる届出住宅」について
- 「契約の対象となる届出住宅」については、届出住宅の所在地及び物件の名称、部屋番号、委託の対象となる部分及び維持保全の対象となる附属設備になります。
(2)「受託した住宅宿泊管理業務の内容」について
- 「受託した住宅宿泊管理業務の内容」については、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約における委託業務の全てについて報告する必要があります。
(3)「報酬の額」について
- 住宅宿泊管理業務に対する報酬だけでなく、住宅宿泊管理業務に要する費用等(住宅宿泊管理業者が当該業務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、当該業務の実施のために要した届出住宅に設置・配置する備品その他届出住宅を住宅宿泊事業の用に供するために必要な物品等の購入に要した費用)についても住宅宿泊管理業者が費用を支払い、その費用を住宅宿泊事業者から支払いを受ける場合は、その費用も含むものとします。
(4)「管理受託契約における特約その他参考となる事項」について
- 住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約において、国土交通省で定める標準管理受託契約書に定めのない事項など、参考となる事項については、住宅宿泊管理業者の判断により記載します。
8.標識の掲示について
適切な登録を受けた業者であることを外形的に明らかにする必要があるため、登録を受けた営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げる必要があります。
9.住宅宿泊事業者への定期報告について
管理受託契約を締結した住宅宿泊事業者に対し、管理受託契約に係る住宅宿泊管理業務の実施状況等について、以下の事項を記載した住宅宿泊管理業務報告書を作成し、住宅宿泊事業者の事業年度終了後及び管理受託契約の期間の満了後に報告を行う必要があります。
- 報告の対象となる期間
- 住宅宿泊管理業務の実施状況
- 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の維持保全の状況
- 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況
(1)「住宅宿泊管理業務の実施状況」について
- 「住宅宿泊管理業務」については、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約における委託業務の全てについて報告する必要があります。苦情への対応状況は、住宅宿泊管理業務の実施状況に含まれます。
(2)「住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の維持保全の状況」について
- 住宅宿泊事業において届出住宅に設ける必要があるとされている台所、浴室、便所、洗面設備の状態について報告を行うとともに、水道や電気などのライフラインの状態についても報告を行う必要があります。また、ドアやサッシなどの届出住宅の設備の状態についても報告を行ってください。
(3)「住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況」について
- 苦情の発生した日時、苦情を申し出た者の属性、苦情内容等について、把握可能な限り記録し、報告する必要があります。単純な問合せについて、記録及び報告の義務はありませんが、苦情を伴う問合せについては、記録し、対処状況も含めて報告する必要があります。