髙橋長官会見要旨

最終更新日:2024年5月17日

                               日 時:2024年5月15日(水)16:15~16:42
                                       場 所:国土交通省会見室

冒頭発言

本日は冒頭に三つ、ご報告申し上げます。 

(2024年4月の訪日外国人旅行者数について)
まず、本年4月の訪日外国人旅行者数等についてご報告します。
本年4月の訪日外国人旅行者数は、304万2,900人となり、2ヶ月連続で単月300万人を超え、4月として過去最高となりました。
コロナ前の2019年4月と比べた回復率は、単月で104%となり、7ヶ月連続で単月ではコロナ前の水準を回復しました。
また、1月から4月の4ヶ月間の累計では1,160万1,200人と1,000万人を超えました
本年4月の出国日本人数は、88万8,800人となりました。コロナ前の2019年4月と比べた回復率は、単月で53%となりました。
 
(旅行・観光消費動向調査の結果(2024年1-3月期速報)について)
旅行・観光消費動向調査の2024年1-3月期の速報についてご報告します。
本調査は日本人の国内旅行を対象としております。 
2024年1-3月期の日本人国内延べ旅行者数は1億1,140万人、2019年同期比で92.2%となりました。
また、日本人国内旅行の1人1回当たり旅行支出は、42,706円、2019年同期比で22.5%増と、2022年第1四半期以降連続で、コロナ前を上回る数値となっております。
(これらを掛け合わせた)2024年1-3月期の日本人の国内旅行消費額は、4兆7,574億円と、第1四半期としては過去最高の水準となり、2019年同期比で13%増となりました。

(パリ及びロサンゼルスで行われた観光イベントへの参加報告について)
3点目、5月の上旬に私が参加した海外での観光イベントについてご報告します。
現地時間5月2日の午後、パリ日本文化会館において、観光庁とJNTO共催で日仏観光イベントを実施し、OECD閣僚理事会にご出席のためパリを訪問されていた岸田総理大臣にもご出席いただきました。
フランスの観光・食関連事業者、メディア等約120名が参加し、日本の文化・地方・食に関するプレゼンテーションを行ったほか、能登半島地震被害からの復興支援の観点から、関係省庁にご協力いただき、北陸地域の食材を使用した日本食や日本酒等も提供しました。
また、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」も登壇し、会場を大いに盛り上げました。
続いて、アメリカに移動し、現地時間5月5日午後に、ロサンゼルスで開催された全米最大の国際旅行博「IPW2024」の機会に、米国商務省旅行・観光担当次官補代理で事務方トップのアレックス・ラズリー氏をはじめとした米国側の観光関係者と観光庁、JNTO、JATA、旅行会社等の日本側の観光関係者が集い、日米観光交流年における日米相互の観光往来の更なる拡大に向けて協議を行いました。
意見交換終了後には、ジャパン・ハウス・ロサンゼルスにて会議参加者による記念レセプションを開催し、同じく復興支援の観点から福井県レップによる観光プロモーションも実施いたしました。
両イベントともに、訪日インバウンドの重点市場であるフランス、アメリカの観光関係者を対象とした実り多く貴重な機会となったと考えています。

質疑応答

(問)インバウンドについて、先月から少し減ったものの300万人を維持しています。この勢いや訪日の現状を、どのように受け止めていらっしゃるのか、お聞かせください。
(答)
本年4月のインバウンド旅客数は304万2900人となり、2カ月連続で単月、1月あたり300万人を超え、4月として過去最高となりました。
コロナ前の2019年4月と比べた回復率は単月で104%、7カ月連続で単月ではコロナ前の水準を回復しており 堅調に回復しているものと考えています。
コロナ前からの堅調な回復を、さらに力強い成長軌道に乗せていく年、そういう過程にあると認識しています。
また、本年1月から4月の4カ月間の累計では1160万1200人と1000万人を超えていますが、昨年1000万人を超えたのは6月でしたので、本年は昨年より2カ月早く1000万人を超えたということになります。
本年4月の訪日者数について、国・地域別に見ますと23市場のうち、フランス、イタリア、中東地域3市場では単月として過去最高を更新しましたほか、インドネシアやアメリカをはじめ14市場が4月として過去最高を記録しました。
3月に引き続き、桜のシーズンによる訪日需要の高まりや、フランスやイタリアは学校のお休みなどがある多客期に当たるほか、東南アジアや中東を中心としたイスラム教の国・地域では断食明けの休暇があったことなどにより、多くの訪日につながったものと考えています。
中国について見ますと、4月の中国からの訪日者数は約53万人、2019年同月からの回復率は単月で約74%と、3月の約65%の回復率から見ますと10ポイント程度上昇しました。
4月には3日間の連続した中国の休日・清明節があり、中国大手の旅行会社が発表した清明節の休暇の人気旅行先において日本は1位になるなど、3月からの伸びが一定程度期待できる環境にあったのではないかと評価しています。
観光庁としては、回復率が高い個人の旅行客やリピーターを中心にしっかり伸ばしていくことが特に重要であると思っています。
極めて概算ではありますが、中国からの個人旅行客に限定して2019年同月からの回復率を出しますと、約91パーセント、9割を超える数字となっており、中国からの個人旅行客についてはかなり回復が進んできているものと捉えています。
なお、全市場について個別の地域の事例を申し上げますと、例えば福島県会津若松市では、たくさんのインバウンドのお客様が歴史的な建造物や古民家カフェなどに立ち寄りながら街歩きを楽しむような風景が見られたほか、刀鍛冶体験や武士体験といった日本の文化に根差した高付加価値旅行、アクティビティというものが大人気になっています。
東日本大震災からの観光復興が、そういう面でも進んできているのではないかと感じています。
また、先ほど桜のシーズンと申し上げましたが、4月は北日本の各地域でも桜が満開となり、例えば東北地方では青森県の弘前城、秋田県の角館武家屋敷、岩手県の北上市展勝地で、お城や武家屋敷など日本らしい風景の中に咲く満開の桜を目当てに、多くのインバウンドの方々で大変賑わったということになります。
桜前線は上昇していきますので、時期的な広がり、地域的な広がりというのも、大変重要なことだと思っています。
引き続きオーバーツーリズムの未然防止を含め、受入れ体制の整備に努めるとともに、 高付加価値なインバウンドの観光地づくりや、全国各地での特別な体験の創出と世界への発信を進め、限りないポテンシャルを秘めている地方部の魅力が花開くこれからに向け、地方部への誘客を力強く進めていきたいと思っています。 
 
(問)ゴールデンウィークということもあり、各地でオーバーツーリズムの話題が再燃していましたが、観光庁ではオーバーツーリズムのモデル地域事業を行っていると思います。モデル地域事業における未然防止の取組について、成果など、すでに何か感じていらっしゃることがありましたらお聞かせください。
(答)
先月末から今月上旬にかけて、新型コロナウイルス感染症が5類に移行して初のゴールデンウィークを迎えたということで、国内の観光地も多くの観光客で賑わったと承知しています。
一方、一部の地域では、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や旅行者の満足度の低下といった課題も生じているところです。
こうした課題に対処すべく、オーバーツーリズム対策の先駆モデル地域として3月に採択した地域の中には、早速、具体的な取組を始めている地域があります。
例えば、鎌倉、藤沢エリアでは、関東運輸局において、5月3日、4日の10時~16時の間、公共交通が特に混雑する鎌倉駅から長谷エリア間において、地元商店街などを徒歩で巡りながら観光スポットへ向かっていただく実証実験を実施したほか、地元自治体においても、鎌倉駅前での多言語ガイドによる観光情報の案内や、江の島や鎌倉高校前駅などの混雑スポットにおける誘導員の配置や増員を行うといった取組が行われました。
成果については、江ノ島電鉄の担当者の方によれば、江ノ島電鉄鎌倉駅において、昨年のゴールデンウィーク期間中は乗車までに1時間以上要するような状況も発生していたところ、今年は最も混雑した時間帯、詳しく申し上げますと、5月3日、4日の14時~16時においても30分程度、つまり電車1本待てば乗車できる状態だったということです。
また、京都市では、昨年秋の紅葉シーズンに引き続き、ゴールデンウィーク期間中の土日・祝日の7日間において、混雑するバスから地下鉄への乗り換え促進のための無料振替券の配布や、バス・地下鉄の臨時増便、利用客の多い地下鉄駅やバス停における交通・観光情報の多言語案内の実施といった取組が行われました。
今年のゴールデンウィークは、休日が前半3日、後半4日に分かれたことによって、長期休暇が取りにくい環境であったということが一般的に指摘されております。
様々な要因があると認識しておりますが、京都市によれば、例えば、日頃から観光客で混雑する京都駅前の東山方面バスのりばでは、駅から観光地への移動が多く見られる午前中においても、待ち時間は最大10分から15分程度に収まっていたと伺っています。
こうした取組については、日並びや天候など、様々な要因に左右されるという点にも留意しつつ、人流データなども分析して、関係者間で地域の実情に応じた取組をさらに検討、実施していくことが重要であると思っています。
また、ゴールデンウィークの取組ではありませんが、富士山でも今後進められる取組があります。
山梨県が今月13日に発表していますが、吉田口の登山道において、登山者数の上限を1日4,000人とする通行規制が、7月からの登山シーズン中に実施されます。
今後、事前予約システムが導入されるとともに、安全対策などに充てる費用として、これまでの任意協力金1人1,000円に加え、通行料1人2,000円の徴収が始まります。
また、静岡県側では登山者数の制限は行われないということですが、入山管理に向けた社会実験として、オンライン上での登山計画などの事前登録、あるいは登山口での山小屋の宿泊予約の確認が行われることになります。
さまざまな取組が始まってきていますが、観光客の受入れと住民の生活の質の確保を両立していかなければなりませんので、引き続き地域の意欲的な取組をしっかり支援してまいります。 

(問)日本を出国する人数は、 訪日外国人の伸びと比べ、まだ十分ではないと感じています。この円安状況が続いている中、訪日客数は増えているものの出国の伸び悩みに繋がっているのではないかと考えられますが、円安についての受け止めと、観光庁としてどう取り組んでいくのかお伺いします。
(答)
大変重要な課題であると思っています。
繰り返しになりますが、本年4月の出国の日本人数は88万8800人、コロナ前の2019年4月と比べた回復率は53.3パーセントでした。
2019年のゴールデンウィークは特に日並びがよく10連休であり、例年に比べて海外旅行者数が多い年であり、さらに前年の2018年4月の実績と比較すると、回復率は65.5パーセントとなります。
日本の海外旅行者数、アウトバウンドの回復率は、インバウンドのそれと比べると、戻りはまだ遅いと思っています。
ただ、着実に回復傾向にはありますので、これを早くしっかり回復の基調に乗せていくことが、大変重要な課題であると思っています。
アウトバウンドは、日本人の国際感覚の向上、あるいは非常に重要な観光の意義である国際間の相互理解増進に資するものであり、安定的な国際関係の構築、平和につながる国際環境の構築という観点からも、極めて大事なことです。
インバウンド、アウトバウンド、両輪で推進することが国際交流の基本であり、極めて重要であると考えます。
また、航空ネットワークの維持強化の観点からも、バランスよくインとアウトが伸びていくことが大事です。
インバウンドに比べアウトバウンドの回復はやはり少し遅れており、円安や海外の物価高など、日本人が海外旅行をするには必ずしも有利ではない局面がまだ続いていますが、その中においても、本格的なアウトバウンドの回復に向けた取組をしっかり進めてまいります。
私どもとしては、国内の関係業界や各国地域の政府観光局などと連携し、各国への旅行の魅力発信を行いたいと思っています。
また、若い方々を中心として海外旅行に関心を持ってもらうためのアプローチが極めて重要ですので、 関係業界にもぜひ取組をお願いしたいと考えています。
先ほどご紹介しましたが、本年は日米観光交流年であり、私は渡米し、全米最大の国際観光旅行博(IPW)において米国の官民観光関係者のトップの方々と意見交換をし、相互交流の重要性について一致したところです。
自治体の姉妹都市間交流、あるいは野球を切り口にして、しっかり交流を進めていきたいと思っています。
またインドについても、日印観光交流年を今年度も延長することが決まっており、今後さらに双方向交流を強化していきたいと思います。
若者の国際交流の促進は極めて重要であることから、海外教育旅行を進めてまいりたく、昨年度は様々な国を行き先として、現地での同年代の方々との交流やSDGsの課題に関する探求活動等を含む、付加価値の高い海外教育旅行プログラムの開発を支援してきました。
今年度も引き続きこうした取組を進めるとともに、その普及啓発を通じて、海外教育旅行の裾野拡大にも取り組んでまいりたいと思います。
こうした取組を着実に実行し、関係業界の声もよく伺いながら、より効果的なアウトバウンドの取組をしっかり進めてまいります。 

(問)観光庁で推進している全国各地でのアドベンチャーツーリズムですが、現在の課題とその対策について、長官のお考えを教えていただきたいです。
(答)
アドベンチャーツーリズムは、欧米で発達した、大自然の中でのラフティング、カヌー、あるいはトレッキング、サイクリング等を楽しむ体験型の観光アクティビティです。
大自然の中でスポーツをするということが基本ですけれども、地域の文化にも触れていくということで、私どもとしても、日本において極めて有望なポテンシャルのある分野、観光アクティビティだと思っています。
世界的に見ても、極めて成長著しい大きなマーケット、あるいは観光分野であり、 先ほど申し上げましたように、日本の地方の極めて大きなポテンシャルを特に伸ばしていきたい観光分野だと思っています。
昨年の9月には、世界最大の商談・イベントである「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」が、北海道の札幌市で開催されたところです。
この「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」は、北海道各地の自然、文化の魅力を深く楽しめるのは基本ですが、北海道以外でも、みちのく潮風トレイル(三陸海岸)、あるいは屋久島や沖縄におけるアドベンチャートラベルの取組などについても、広くご紹介されました。
合計53本のツアーが開催されたところ、これらのツアー、いわゆる日本のアドベンチャートラベルのポテンシャルのショーケースとして位置付けられると思いますが、それらを経験した海外の有力バイヤーの方々などに我が国の魅力を体感いただき、 極めて日本はポテンシャルが高い、アドベンチャーツーリズムの有望な旅行先であると実感いただき評価されたものと認識しています。
他方、我が国でアドベンチャーツーリズムを進める上で、質の高いガイド、これは、自然の中で当然アクティビティをしっかり進めていくことはもとより、先ほど申し上げましたように、地域の文化にも触れるということは極めて大事な要素です。
その地域の文化や歴史背景、基礎知識を必ずしも持っていないインバウンドの方々に分かりやすく説明していく役割の方々、質の高いガイドの確保は、大事なことの一つだと思っています。
我が国におけるアドベンチャーツーリズムの進化、本質的な魅力をしっかり伝えていくことができるガイドの方の確保・育成、それからやはり長期滞在になりますので、宿泊環境の整備も含めてですが、魅力ある観光資源、コンテンツ、滞在プログラムの磨き上げも、まだ一層やっていかなければならない課題だと思っています。
私どもの事業で実施している伴走支援(コーチング)においては、ガイドの育成や、アドベンチャーツーリズムの本質的な魅力がしっかり伝わるようなコンテンツへの磨き上げを、専門家の方々とともに実施しています。
アドベンチャーツーリズムは旅行消費額も非常に高く、地域経済に大変重要な効果をもたらしますので、磨き上げも含め全力で支援してまいりたいと思います。 
                                     
                                                以上

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