2.11.2 コレクティブ・バウンス
「ヘリコプター操縦教本」(ヘリコプター操縦教本編集委員会編集、社団法人日本航空機操縦士協会発行、1999年8月20日発行)の、「第1章 総論、第5節 ヘリコプターの飛行、地上における重要事項」には、コレクティブ・バウンスについて、以下のとおり記述されている。(抜粋。注:「1/Rev振動」とは、「ローター1回転に1回の振動」のことである。)
コレクティブ・バウンスは、操縦士の操作により誘導される、コレクティブ・
ピッチ・コントロール系のPIO(Pilot Induced Oscillation)で、機体が突然上
下方向に振動する現象です。この振動の大きさは、通常の飛行で経験す
る1/Rev振動の振幅に比べて数百倍以上の、極めて激しい振動です。
コレクティブ・バウンスが発生するメカニズムの例を紹介します。降下中
に、急なコレクティブ・ピッチ上げ操作をすると、機体は急に上昇し、操縦士
は自分自身の慣性のため、コレクティブ・ピッチ・レバーを押し下げてしまい
ます。この結果、機体は急に降下するため操縦士の体は浮き上がりぎみと
なり、再びコレクティブ・ピッチ・レバーを引き上げてしまいます。この繰り返
しによる機体の上下動のことをコレクティブ・バウンスといい、振動は発散
し、最悪の場合は操縦困難に陥ります。
コレクティブ・バウンスの最初のきっかけは、コレクティブ・ピッチ・レバー
の操作に限定されるわけではありません。気流の変化、吊り荷の接地、サ
イクリック・スティック操作が引き金となってコレクティブ・バウンスが発生す
る場合もあります。いずれにしても比較的大きなレートの繰り返し操舵や機
体運動に誘発されて起こり易いと言えます。この状態から離脱するために
は、コレクティブ・ピッチ・レバーを握る力を弛めるか離す、あるいは「上げ」
か「下げ」かのどちらかに明確に使用することです。
コレクティブ・バウンスは、コレクティブ・ピッチ・レバーのフリクションが小
さい時に起こりやすいため、飛行前点検時の確実なフリクションの確認や
調整によってフリクションを増加させておくことで、発生を未然に防止するこ
とができます。また、コレクティブ・バウンス防止に限らずシートベルト、ショ
ルダーハーネスの着用は、操縦に支障のない範囲でしっかりと締めるべき
です。
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