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不動産鑑定士インタビュー

Interview01 アパレル会社から不動産鑑定会社へ転職
証券化評価・公的評価に携わる
不動産鑑定会社 勤務
佐村さむら 有佳ゆかさん

不動産鑑定士になろうと思ったきっかけは何ですか?

父親が不動産鑑定士であり、幼いころから不動産鑑定士という職業を身近に感じていました。不動産鑑定士になろうと決意したきっかけは、大学卒業後にアパレル企業で勤務した経験があり、店舗の賃料が売上げに連動しているなど、経済事象が不動産の価値に影響を及ぼしていることを実感し、父親の職業であった不動産鑑定士に興味を持つようになったためです。

試験はどのように乗り越えましたか?

試験勉強は予備校に通う傍ら、有志で勉強会を開催するなど熱心に取り組みましたが、やはり試験は難しく、何度もチャレンジすることになってしまいました。合格した時は本当にうれしかったです。試験に合格するまで少し時間がかかってしまいましたが、予備校時代は同世代の友人もできて、今となっては良い思い出となっています。

現在はどのようなお仕事をされていますか?

現在は、不動産の証券化※1、公共用地取得のための鑑定評価、賃料評価※2等、幅広い案件に携わっています。業務の中心は、証券化案件と公共案件です。 証券化案件はアセットマネージャー※3が主な依頼者となります。公共案件は、県庁や市役所から依頼される案件です。 千葉では、証券化以外の案件で、民間企業からの依頼はほとんどありません。証券化案件のアセットタイプとしては、商業施設、物流倉庫が大半で、その他、オフィス、レジデンスなどがあります。

不動産鑑定士になってよかったと思うことはありますか?

自分が鑑定評価を行った物件について、不動産投資法人※4のHPで物件取得のプレスリリースが公表されたときは、自分の仕事が目に見える形となり、とてもやりがいを感じます。

また、依頼者より自己の鑑定評価額をもって賃料の交渉が成立したことの連絡をもらえることもあり、そういうときは自分の仕事が役に立ったという実感が得られます。
不動産鑑定士の仕事は私たちの生活にとても身近な仕事で、自分の考えを評価に反映させることのできる面白さがあります。

依頼者は必ずしも不動産に詳しい方ばかりではありませんので、そういった依頼者にも丁寧に、分かりやすく、説明できる力が求められていると感じます。

将来の展望について教えてください。

建物の評価に興味があり、今後は、鑑定評価のみならず、既存建物の有効活用や、テナントリーシング※5の提案など、アドバイザリー業務※6も行ってみたいです。

鑑定評価では、これまで更地至上主義的な考え方が強く、経済合理性の観点から最有効使用※7を「取壊し」と判定してしまうケースが多かったかと思います。市場がそう見ているのであればそれで良いのですが、これからは既存ストックを活かす社会になっていくと思いますので、古い建物に対する見方は変わってくると思います。

市場の見方が変わってきた時に備えて、リノベーション※8によって既存建物を活かした鑑定評価の手法や、既存建物の有効活用についてアドバイスができるような知識を身に着けておきたいです。

※掲載内容は2020年2月に取材した内容です。

用語解説

※1不動産の証券化
不動産から生ずる収益(家賃収入など)を裏付けとした有価証券を発行し、投資家から資金を調達する仕組みのことです。従来は不動産に抵当権を設定し、金融機関から資金調達することが主流でしたが、不動産の証券化により低コストで資金調達ができるというメリットがあります。
※2賃料評価
不動産鑑定士は、不動産の価格を評価するだけでなく、不動産の賃料(家賃・地代)の評価も行っています。
※3アセットマネージャー
不動産証券化に携わるプレーヤーのうち、証券化された不動産等の運用・運営・管理をする人のことです。
※4不動産投資法人
不動産投資法人とはJリート(不動産投資信託)のことで、多くの投資家から資金を集め、その資金を主に不動産への投資によって運用し、その結果得られた収益を投資家に分配するという仕組みの投資法人で、証券取引所に上場しています。
※5テナントリーシング
空き店舗や商業施設に新しいテナントを探し、誘致のための交渉を行い、出店契約を結ぶまでの一連のプロセスを指します。
※6アドバイザリー業務
顧客のかかえる課題やニーズに対して、専門知識を用いて、助言・解決していく業務です。
※7最有効使用
ある不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用方法をいいます。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づきます。不動産の価格は、この最有効使用を前提として把握される価格を標準として把握されるため、不動産鑑定評価等不動産の価格を求める場合には、最有効使用の判定が重要です。
※8 リノベーション
既存の建物について、古い部分の補修や内外装の変更程度にとどまるリフォームに対し、増築・改築や建物の用途変更など、資産価値を高めるための大規模な改造のことです。空き家や空き店舗が課題となる中、既存建物を壊さずに生かす手法として注目されています。

不動産鑑定士インタビュー
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