第9回21世紀の国土・地域・社会と道路政策検討小委員会 議事概要



日時: 平成12年4月10日(火)15:00〜17:00
場所: 東條インペリアルパレス2階「千鳥の間」
議事: (1) 個別検討項目について
    (2) 総括討議
出席者: 森地茂委員長、家田仁委員、残間里江子委員、白石真澄委員、杉山雅洋委員、
玉川孝道委員、橋元雅司委員、森野美徳委員、屋井鉄雄委員、山根孟委員
意見発表及び総括討議における主な発言要旨は以下のとおり
  [個別検討項目:CS(顧客満足度)活用、施策の評価、PI(Public Involvement)等について]
   PIのプロセスにおいて、反対の人のいる中のステップに進むための条件をいかに設定するのか。
   議論の収束の条件は計画自体に備わっているべきものであり、PIで決めるということではなく、PIによって意見が出尽くしたところで計画(策定)者として決定するということ。PIでの意見の収束のルール化は困難。
   現場でPIを実施してはみたが、合意形成が進まず膠着状態に陥ってしまう懸念はないか。PIについてルール化できるものとできないものがある。
   PIにおいて、対象事項は何か。また、各プロセスに応じどのような人をどう集めるかといったことを考えておかねばいけないのではないか。TDMを行うときも同じテーマに悩まされる。
   その点はかなり議論して、マニュアルの方で具体的に例示をしている。ただし、フルスケールの実験はしておらず、既存の経験を入れ込んだもの。
   現在は試行錯誤の段階ではあるが、計画主体者がしっかりした計画の哲学を持つことが必要。
   有料道路はPI、CSの対象か。また、新道路整備五箇年計画の中間評価において目標と進捗の間に大きな乖離が出た場合、目標値を変えることはあるのか。
   有料道路は、個人的にはCSの対象とすべきと考える。PIについては、公共事業として対象になると理解。
   目標値の見直しについては検討中のところだが、例として事業の予想以上の進捗や技術革新に伴い上方修正するということはありえるし、目標達成が難しければ更に重点的に投資をする、あるいは優先度から少し目標を下げるということもありえるかも知れない。
   社会全体として必要であるが、事業箇所で環境等の面から反対があるような場合にPIが実施される。PIで局部と広域の調整を行うわけだが、どこを均衡点として事業に道筋をつけてゆくのか。
   PIについては、受け止める側がどう受け止めるかが重要な視点。当初“PI”という言葉が出てきたときに比べ、現在は市民の権利意識が高くなってきているなど状況は異なってきている。NPO、NGOにも事業として参画したいと意思表示している人も出ている中では、単純に話し合いの場を作るだけでははうまくいかないのではないか。実質的にキーパーソンとなるプランナーやコーディネーターの育成、参画が重要。
   住民の方に事業の必要性まで完全に理解してもらうことは難しいが、少なくとも地域にとって、「急に空から降ってきた」ということが無いようにすべき。「地域に決めてもらう」という意味での住民参加を志向しているのではなく、行政が責任をもって決定していく。その際、「PIをやると言っていたが、結局アンケートだけだった。PIとはそういうものなんだ」とならぬようしっかりとしたマニュアル整備が必要。またプランナー、コーディネーターの育成がもっとも重要であり、これらは有識者というのではなく、行政人が育てるものでもなく、地域が育てていくものである。
   地元との交渉が難航している道路の事例もあるが、PIを進めていくためには当事者だけではなく、沿道住民、圏域、利用者など関連するいろいろな人から意見を聞く必要があり、その際の仲介者も重要。収束のためのシステムについては検討が必要。
   PIの成功のためには、行政の窓口のコミュニケーションスキルを磨き、適材適所の配置が必要である。
   PIは決めるためのものではないが、計画には反映させなければならないものであり、担当者にとっては大変なこと。PIにおいて担当者が何をどこまですべきなのかを定義すべき。また、対象とすることのできる人、対象とするべき人などを明確にすべき。
   PIは目的ではなく、ツールあるいはプロセスであることを今一度認識すべき。その上で、最低限何をやっていくべきか、余力があったら付加的にどこまでやったらいいのか、という書き方でないと現場が息切れしてしまうのではないか。また、サクセスモデルをコラム的に書いてみると使いやすくなる。
   役所間の連携に期待したい。「つくるから使うへ」ということになると、使うことについては警察とも関連している。CSに関して警察と連携してはどうか。各立場の人々が連携して一緒に検討する機運をぜひ作って欲しい。
  [個別検討項目:国勢調査データ等を活用した地域構造の解析について]
   データを活用した解析の資料について、災害のデータは重要である。災害で通行止めとなった箇所、災害によっても通行止めとならなかった箇所などの関係について考察が必要である。また災害時における孤立地の発生状況、通行止めとなった際の代替機能を有する道路についても考察が必要である。
インターチェンジまでの到達時間については、高速道路利用距離によってニーズが異なるはず。長距離交通のためにはインターチェンジが30分圏でよいが、30〜40kmの短距離交通の場合はインターチェンジが近くにあって欲しいもの。ODの距離帯とインターチェンジへの到達時間、距離を整理すべき。ドイツやイギリスのインターチェンジ配置は密度が濃い。
   高速道路の整備により人口集中、産業の立地等が現れ、地域社会への影響が大きい。人口だけでなく、企業、工場の立地を詳細に分析して欲しい。
インターチェンジへの所要時間と人口増加を分析しているが,必ずしもインターチェンジに近いところだけが人口増加しているわけではない。諫早や鳥栖など選択的に地域を抽出して分析し、インターチェンジの設定の仕方と地域振興との関係、すなわち同じようにインターチェンジが整備されているのに地域振興の差がどうして出るのかが分かればありがたい。 西九州と東九州の発展の差が大きいことが一目瞭然であり、東西格差が問題である。
インターチェンジと地域社会を掘り下げたデータが欲しい。そのようなデータがあるとインターチェンジがつくりやすくなる。
   これから作る高速道路は横断系が多い。横断系の高速道路が出来たときの効果がいかに現れたかについてデータ化できないか。日本海側のルート整備により東名を通らずに坂田から大阪への所要時間が短縮された、といったような分析が必要である。
  [道路政策の基本的な考え方について]
   「個人の自由な選択から公共性の考慮へ」については、「公共性」の概念があいまいであり、自己弁護に使われてしまう可能性がある。ここで用いる「公共性」の内容、定義を議論しておくべきである。また、「道路の空間機能」をもう少し強調すべき。
   「環境との共存」について、さらに積極的に取り組むような言葉がないか。
   『「線」から「面・ネットワークへ」』のニュアンスが、「町づくり・文化・歴史とのかかわり」が入ったことによって変わってきた。元々は、骨格的な道路やネットワークをメインに据え、これに道路本体に対する具体な対策が加わわるイメージだったが、道路本体以外のニュアンスが深まって、本当にやるところのニュアンスがだんだん落ちているという印象。必要に応じて項目を増しても構わないのではないか。
   基本的方向のイメージと、これを具体化する各論とのつながりが解りにくい。これらを明確にすべき。
   路面電車や簡易な軌道は、「車中心の空間から云々」とか環境に資する交通手段として扱うのか、あるいはここの議論とは別問題なのか。
   使われている言葉が一般の人にはわかりにくい。言葉のバリアフリー化をすべき。
   道路政策の基本方針、基本的方向の言葉づかいが煮えておらず、解らない。「環境との共存」などもどうかと思う。実用的なところから理念まで混じっていて、平凡になってしまう。「線から面へ」というのも山ほどあるので、言葉を変えるべき。
   前回の五箇年計画では、進め方の改革、ITS等新しいことが入ってきて、「変わったな」という印象を与えた。次期五箇年計画でも新しさを出すためには、項目の中でブレイクダウンする必要がある。追加する項目があるのか、その中で重点をおくのは何かについてもう一度事務局で思考すると全体像が少しクリアになるのではないか。
   用語の使い方について、
・「クルマ中心の空間から安心快適空間へ」において、「子供」も入れるべき。
・「多様な機能のベストミックス空間へ」について、高齢化に資する都市空間、メリハリある都市空間という意味を加えたい。サービスエリア、道の駅といった地域の拠点となる施設を重点的に整備するとともに、より密度の高い利用を促すような施策が必要。
・「愛される道路」については、気分的な用語はあまりよくない。
   概念整理であればよいが、キャッチフレーズとして残すのであればもう少し考えるべき。
・「造る」という言葉は残っている方がいい。「つくる から 使う」ということだけが最初に出てくることには抵抗がある。
・「クルマ」から「ひと」というが、物流からの視点もあり、これでよいのか疑問。
・「自由な選択から公共性の考慮へ」については、個人に対応するのは「公共性」だけでなく「公益性」「広域性」もある。
・「環境との共存」については「再生」を連想させる言葉を使うべき。
・「愛される道路」については、PI、CS、参加型の管理を意図していることは分かるものの、一般には理解しにくいのではないか。
   姿勢の話ばかりで、具体的な議論がしにくい。「地域づくり」というよりは、「1時間圏くらいで一つの生活圏が構成できるようにしていく」、「道路構造令を変えていく」、「道路のナンバーリングを変える」など、具体的に何をやるのかが入るようにすべき。
   ・「線から面、ネットワークへ」における「みちづくりから地域、都市、国土づくり、再編の支援」が一番重要なところではないか。「生活圏」はもう古いかもしれず、1週間に一度福岡に出ていく層があるようなことも踏まえ、これが、ネットワークやインターチェンジによってどのように変わってくるのか、どうするとうまくいくのかといったことや、地域づくり、都市づくり、国土づくり、再編と道づくりをどう結び付けるか、といったことを分析、検討することが重要。
・歴史、文化というのは空間問題のほうで整理すべき。
・『「個人の自由な選択」から「公共性の考慮」へ』は、どううまく訴えていくのか言葉の選び方が難しい。それぞれのキャッチフレーズ間で誤解を招かないよう留意すべき。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]





国土交通省トップページ


道路局トップページ


意見募集