第4回21世紀の国土・地域・社会と道路政策検討小委員会 議事概要



日時: 平成11年10月27日(金)18:00〜20:30
場所: 東條インペリアルパレス2階「千鳥の間」
議事: (1) 意見発表
    幸田シャーミン委員、杉山雅洋委員、屋井鉄雄委員
    (2) フリートーキング
出席者: 森地茂委員長、家田仁委員、石田東生委員、幸田シャーミン委員、残間里江子委員、白石真澄委員、杉山雅洋委員、玉川孝道委員、橋元雅司委員、屋井鉄雄委員、山内弘隆委員、山根孟委員
意見発表及びフリートーキングにおける発言の概要は以下のとおり
  [意見発表]
   21世紀の道路政策について、持続可能なモビリティーとインターモーダルな交通システムの確立ということでハード、ソフトを含めた総合的な取り組みが一層求められる。
   モビリティ、ライフライン、コミュニケーションという道路の役割に新しく価値として加わるものとして、まず「環境」がある。温暖化など環境保全対策の要請もあり、また人々の価値観もそれによって進化し、ライフスタイルの変化も一層進む。
 二番目に文化・歴史、個性などがあり、地方分権の流れの中でその傾向が強まる。
 三番目には、右肩上りでない経済状況で一定の失業者、高齢化というなかで、地域社会の助け合いということが大きく価値としてクローズアップされてきて、コミュニティという言葉が21世紀のキーワードの一つになる。
   これからは、多様でそれぞれの地域が活発であることが日本全体の活力になっていく。独自性、多様性、個性、文化・歴史を大事にしようとする芽は既にあり、その土地の文化や歴史や個性を上手にまちづくりや道路の面でハイライトしていく工夫が必要。
   提案として、道路や町の歴史のミニ案内のようなものをもっとつくるべき。
 ロンドンのNPOは、町そのものをフィールドとして、建物や道路などを通して地域の歴史や文化を子供たちに教えている。身近なところで、道路の環境対策、透水性舗装、バリアフリーなども全て子供たちに社会勉強のいい環境教育になる。
   市民や企業や自治体の動きを後押ししたり、動機づけするというのは国の立派な役割、責任であり、TDMのような交通プランづくりをやってみることが大事。
   車を無駄に使わない方策として、レンタカーをインターネットで予約すれば車両を宅配するような方法を支援できないか。
   よりよいコミュニティをつくるためにも、車専用・優先、人間優先などと優先順位をきちっとするなどメリハリのある道路の用途利用を行うことは可能。
 一つのアイデアとして、空いている有料道路の定期利用の割引料金を設定するなどし、一方で繁華街などではロードプライシングを導入するなど、メリハリをつけることも可能。
   インターモーダルのなかで自転車も交通連携の一部として位置づけるべき。
 サイクリングロードは観光にもなるし、人々の喜びにつながる。ドイツでは、電車に自転車を持ち込みできる車両がある場合もあり、これがインターモーダルのスタートになる。
   水素燃料の普及などテクノロジーが進んだ場合のガソリン税の取扱について考える必要がある。
  [意見発表]
   道路政策の目標としては、人々の脳裏にある平均的な姿が一つの目安となる。例えば高規格幹線道路の14,000kmがさらに拡大するのか、最終目標なのかということに対して一般の人がどのようなイメージをもっているのか、それが一つの政策目標になる。
   二番目として、20世紀の道路政策、道路整備は応分に評価されてきたかという点で、行政の評価と世間の評価は同じ方向を向いていない。
   我が国の道路政策の二本柱は、道路特定財源制度と有料道路制度で、これがなければ少なくとも今日の道路資本ストックは生み出されなかった。
 道路特定財源制度の必要性の客観的な分析を行うためには、道路資本ストックを可能な限り客観的に計測する必要がある。
 有料道路制度に関して、道路整備を料金で負担するのか、税金で負担するのかという議論が顕在化しており、議論を詰めておく必要がある。
   なぜ移動を行うかという視点について、本来目的に対する補助手段としての派生需要でなく、例えば周遊型の道路サービス需要の動向のような移動活動にも注目すべきである。
 派生需要ではサービスの質を議論しない傾向があるが、今後、たとえ派生需要であっても走りやすい道路といった、サービスの質を問う時代が来ると思われる。
   道路サービス供給の概念からいうと、道路交通の負の遺産である渋滞、事故、環境問題を清算するため、技術革新であるITSがかなり有効であると考える。
 今後一般化する情報通信サービスと道路の関係は代替とか補完がでなく融合と捉えるべき。人の場合フェイスツーフェイスの需要はなくならないし、情報通信が一般化すると物流量は増えると感じられる。情報通信化時代の道路サービスの供給という視点に立つべきで、道路だけで物事を考えていても現実に対応できない。
   高規格幹線道路の定義など、道路の専門家と一般の人々の間で情報格差が大きすぎる。
   有料道路の無料開放、プール制、換算起算日の考え方など有料道路制度が理解されず、疑問を持っている人が多い。21世紀初頭には無料開放を迎えるが、償還、償還以後の高速道路をどう考えるべきかなどについて、広く世に問うべき。
  [意見発表]
   一番目には、ディレンマへのチャレンジということで、どういう問題があるかを明確にしてアピールするべき。
 ひとつは、道路を作れば車が増えると言われる渋滞問題で、道路がまだ十分でないことを踏まえ、道路を作った上でインフラ整備と車の使い方を工夫することで対応していくべき。この点はもっとアピールの仕方がある。
 また、沿道環境について、道路をつくると良い町ができる反面、醜悪なバイパスの沿道もつくられた。道路へのアクセスや開発を道路側からマネジメントすることも必要。
 また、環境問題についても、計画の総合性、ネットワーク整備の重要性を認識した上での環境をよくするような道路整備、あるいは技術革新などをアピールできる。
   二番目には、「車から人へ」は重要な理念の転換。
 幹線道路では、より多くの人を移動させる空間整備への転換であり、公共交通も含めてその空間をより多くの人がうまく運ばれていく、移動できるという方向に進むべき。
 生活系の道路については、人に長く使われるほうが有効なのかなど、道路空間を有効に使うという意味についても議論がある。
 また、歩道に関しては、高齢者が増える中で、自転車と歩行者の交錯は深刻な問題で、重要な視点になる。
   三番目として、安全な道路整備という点で、事故多発点への対応が重要である一方、事故に至っていないがドライバーに過度の心的負担を強いる道路があるという潜在的な問題があり、どういう形で対応、整備に結びつけていくかが重要。
   四番目に、パブリックインボルブメントについて、一時の流行におとしめず推進すべき。目標設定や効果の計測は難しいが、短期に考えず、国民がついてこなくても推進すべき。
   五番目として、国民のニーズや満足度を把握して道路行政に反映させることで、CSがある。ひとつは、(道路利用者である)国民全ての満足をきちんと把握することが重要。また、有料道路や特定の道路などのレベルでは利用者の満足を把握し、効果的な施策に結びつける活動をすべき。これらを使い分けてアピールのねらいを鮮明にすべき。
   六番目には、地域の道路マスタープランの策定について、インターモーダルを総合的にどう考えるか議論はあるが、道路という範囲の中だけででもこれを打ち出すのことが重要。
 計画策定にあたり、決定した結果を公開するのではなく、計画決定前の上流のところから透明性を確保する姿が重要。
  また、マスタープランに対して事業の位置づけ、プログラム化をどうするか、補助採択との関係をどうするか、一連のプロセスを公開し、定期的に見直しも行い透明性をアピールすること可能。
その場合、需要予測や費用対効果、評価といった技術を伴うものについて、現状のレベルを市民に理解してもらった上で議論するべき。
  また、計画づくりやPIに要するコストについて国民的コンセンサス形成の努力を行うべき。
   七番目は、20世紀の地域別「道路物語」といった観点で、道路などの歴史をよく知っている人をまきこんでNPOの取り組みを行っているが、地域のセンターのようなものが教育のセンターにもなるといった、一層うまい仕組みを考えるべき。
  [フリートーキング]
   渋滞のディレンマの話で、これまで日本では需要が増えていたため、道路に投資した場合に公共交通との均衡との関係で全体のサービスレベルが下がることはなかったが、需要の増えない時代には、サービスレベルを厳しく問われる可能性がある。
 一方、幹線道路の整備が環境を改善するケースがあるように、需要が増えない、需要の増え方が少なくなるというキーワードをどう組込んでいくか考えるべき。
   これから求められるのは、明快な仕組みとかわかりやすいコンセプトであり、制度や仕組みそのものをわかりやすく変えていく努力を行うべき。ただ、(既存の仕組みは)限られた環境の中での最善の努力の結果であり、がらっとこわすのは困難。ソフトライディング的なことを考えたうえで新しいものをアピールしていくべき。
 今までのガソリン税は公平かつ効率的なよい税体系であったが、電気自動車や燃料電池車をカバーできないとすると極めて不公平な税制になる。また、低公害車の税金をさらに安くしようという議論は、道路使用の対価として税金を考えたときに、公平性という観点からどう考えればよいかという問題がある。プライシングという問題は混雑対策のみから考えるのではなく、広い意味で議論すべき。
   道路に対する国民の関心をどうしたら呼べるのか、一本一本苦労してつくっている道路の個別具体的なレベルで国民への説明、意味付け、そこにあるストーリーというようなもの、そこにある需要、そこから改善される課題など具体的に説明すべき。
   日本は統計大国であるが、量の調査ばかりで、暮らしの身近なところでどういうサービスが提供されているかという調査がないため、実感を持って国民にわかってもらえない。
   道路に対する基本の理解、それを理解しようという土壌みたいなものをつくっていく努力をやるべき。具体の道路についての理解を求めようとするチャネルがない。
   わかりやすさについて、表面的な親しみやすい言葉の作り方、キャッチなコピーとか絵といった面が強調されすぎている。求められるのは、プリンシプルの明快さとリーズナブルさである。その後をどう表現するかというのはタクティクスレベル。
   基本的な戦略はわかりやすさ、単純さが表に出ていかなければいけない。過去からの積み重ね、複雑さを全部ひっくり返して、一本化するのは難しいが、思いきる心構えは必要。
   今の料金制度は、利用者が払っている点で良い制度。環境面からいえば、汚染者負担の原則から21世紀も無料化すべきでないという議論があり得る。
   首都高とJHの差など、サプライサイドでは非常にわかりやすいが、需要サイドからはその差がわかりにくい。行政は需要者の立場から道路をどう理解すべきか考えるべき。
 シュライバーの書いた「道の文化史」の日本版のようなものがあれば、道路に対する理解は一段と進む。
   有料道路については、道路の無料開放原則から外し、道路の対価として料金をとるという論理の転換をすることも視野に入れるべき。プライシング、環境のコストも考えられる。費用負担には様々な複雑さがあり、その中の論理一貫性を一度考え直す必要がある。
   設計当時よりも市街地が拡大した現在、インターチェンジ間隔が妥当かというような問題を勉強している人がいない。料金だけでなく出入り制限した道路は一体どういう設計がいいのか勉強し直す必要がある。
   料金問題について、大都市地域では割り増し料金が許されるかなど様々な議論があるが、借金は返す必要があるし、借金を返し終わったときどうするか真剣に考える必要がある。
 また、スムーズに流すためにのプライシングなど政策料金的なものを積極的に導入するか考える時期に来ている。
 都市内高速と都市間高速のいずれもITS、ETCの導入によりゾーン別料金、対距離料金、車種別の体系の細分化などが可能になり、様相は変わらざるを得ない。
   地域にある歴史とか文化性を掘り起こし、住民を巻き込んで、この道路についてはこういうものにしていくというように、景観も含めてつくっていくべき。
 情報公開について、税金の使われ方や、メンテナンスにどれくらいのお金が使われていて、だから走行性のいい道路で、しかも近接性が確保されるとか、時間短縮性があるといったことが明らかになっていく必要がある。
   住民、あるいは地元の人たちのいいようにやることがいいものができるとは限らない。パブリックセクターの何らかの土地利用のコントロールなど広い意味でのインボルブメントが必要。
   住民というのは、供給者側でない第三者的なユーザーを入れるということで、専門家の意見であってもよいし、広域的な圏域の住民の方でもよい。
   国民は行政の仕組みを知りたいと思っていないが、税金や料金が上がることと道路ができるできないという二つに強い関心を持っていて、その二つに影響を与えるところをきっちり見せいていくことは大変重要。計画や政策の理念をはっきりさせることは前提であり、また、計画の立て方や事業の進め方の基本的なところについてはすっきりと明示してわかってもらえる範囲の努力をすることが重要。
   つくばの東大通りのように、景観も優れ、安全性も交通の流れも良好な道路を実現するためには、いろいろな技術のあり方、設計の考え方のあり方もきちんと整理する必要があり、努力も必要。
   日本のコミュニティは幹線道路を挟んであるため、そこを直す必要がある。コミュニティの中の道路とそうでない道路を皆に認知してもらい、その上できめの細かい計画をコミュニティ単位で実施するべき。一方中心市街地など重点投資してでもつくっていくべき。
   日本のコミュニティ道路は立派なものをつくりすぎている。お金をかけるところとそうでないところのメリハリをきちんとつけることが重要。
   コミュニティゾーンを設定する時に補助幹線クラスの道路が足りない。
   だれがみてもわかるような設計、形で自転車と歩行者を誘導し、ストレスを感じないでお互いに譲り合える道路の設計をするべき。
   文化的な道も大切だが、生活感覚の人たちからいうと、危険な道路、土地利用的にもよくない道路、渋滞、インターチェンジの遠い有料道路など、まだ道路整備は足りない。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]





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