報道・広報

漁船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約の包括的見直し作業開始
~IMO 第4回人的因子訓練当直小委員会の結果概要~

平成29年2月9日

平成29年1月30日から2月3日にかけて,英国ロンドン国際海事機関(IMO)本部にて,第4回人的因子訓練当直小委員会(※1)が開催されました。主な審議結果は以下のとおりです。
1. STCW-F条約(※2)の包括的改正に着手し、我が国主導のコレスポンデンス・グループにて継続審議となりました。
2. STCW条約(※3)で所持が要求される証明書等の明確化を図るガイドラインが策定されました。
3. 疲労に関するガイドラインの見直しが審議され、次回会合において引き続き検討することとなりました。
(※1)人的因子訓練当直小委員会(HTW)は、海上の安全全般に影響のある事項を審議し、関連する国際条約の採択、各国への通報等を実施する海上安全委員会(MSC)のもとにある、船員の訓練・資格証明・当直の基準及びガイドライン等について議論する小委員会です。
(※2)STCW-F条約は、漁船員の訓練及び資格証明並びに当直に関する国際基準を設定し、締約国において国内法令等によって担保されることによって、海上における人命の安全、海洋環境の保護等が促進されることを目的として、1995年に作成された国際条約です。(発効は2012年。我が国は未批准。)
(※3)STCW条約は、船員の訓練及び資格証明並びに当直に関する国際基準を設定し、締約国において国内法令等によって担保されることによって、海上における人命の安全、海洋環境の保護等が促進されることを目的として、1978年に作成された国際条約です。(発効は1984年。船舶職員及び小型船舶操縦者法等において、我が国は国内法化している。)


1.STCW-F条約の包括的な改正作業
(1)背景  

  STCW-F条約は、1995年に策定されたものの依然として締約国が少ない状況(20カ国)であり、策定以来、一度も改正が行われていません。漁業の現状や関連条約との関係を踏まえて見直しを行う必要性を受けて、2015年に開催された第95回海上安全委員会(MSC95)において、我が国は、アイスランド、カナダ、ノルウエー及びニュージーランドとともに包括的見直しを提案しました。
 前回会合では、見直しに係る原則と範囲を合意し、これに基づき、加盟国からの提案がなされました。我が国もこれに基づき、改正にかかる草案を提出しました。我が国の草案策定において、国土交通省所管の独立行政法人海技教育機構の協力を得て、同機構のSTCW条約及び国内の船員教育制度に係る専門的知見を生かし、我が国の提案文書を作成しました。
(2)審議結果    
 今次会合では、国土交通省、独立行政法人海技教育機構、水産庁及び国立研究開発法人水産研究・教育機構が連携して、我が国より、水産系教育機関の訓練の例として水産大学校における漁業練習船についてプレゼンテーションを行い、我が国の漁船員安全確保の取組を紹介しました。その後、海技資格の取得及び更新の要件に関する規定の見直し、長さとトン数の読替規定の導入等について、具体的な改正案を説明しました。また、ニュージーランド、アイスランド、中国等からも提出された見直しに関する提案も踏まえつつ、我が国改正案をベースドキュメントとして具体的な議論が行われました。
 結果、時間的制約等により、今次会合で十分に審議することができなかった事項につき、我が国をコーディネーターとするコレスポンデンス・グループを構成し、次回会合までの間に関係国間の意見調整等を図り、次回会合に報告することとなりました。なお、コレスポンデンス・グループに付託されない検討事項のうち、長さとトン数の読替規定については,次回会合までに長さ24mの読替えのための適切な数値として、日本等の提案とは異なる数値を必要と考える国からの提出が求められました。

2.STCW条約で所持が要求される証明書等に関するガイドラインの策定
(1)背景
 
 米国等から、PSC(※4)時に、STCW条約で義務付けられていない訓練修了証等の書類の提示を要求されるケースが生じていることが問題として報告され、また、バハマからマニラ改正STCW条約の履行に関する資格証明書の有効性等の問題点が指摘されたことから、同条約の要件に係る関係機関向けのガイドラインの策定を行うこととなりました。
(2)審議結果    
 今次会合では、既存のガイドライン等を統合し、STCW条約で所持が要求される証明書等を明確にする、またその他STCW条約の要件に関する関係機関への助言を含む、暫定回章が策定されました。次回海上安全委員会に報告され、承認される予定です。
(※4)PSC(ポートステートコントロール)は、STCW条約第10条において規定されているところにより、船舶が、条約締約国の港にある間、当該締約国から正当に権限を与えられた監督官の行う条約への適合性に関する監督に服することを言います。

3.疲労に関するガイドラインの見直し
(1)背景
     
 1999年に策定された「疲労の軽減及び管理に関するガイドライン」(MSC/Circ.1014)について、2014年に開催された第94回海上安全委員会(MSC94)において、技術的進展等を踏まえ、疲労に関する原因及び影響、会社の取組み、船員への影響、対策及び訓練、船舶設計並びに主管庁及びPSC当局の取組みなどについて見直しを行うこととなったものです。
  前回会合において、オーストラリアをコーディネーターとするコレスポンデンス・グループが設置され、検討が進められてきました。
(2)審議結果  
 今次会合では、このコレスポンデンス・グループから提出された報告書等に基づき議論が行われました。  
 結果、用語の定義、海上労働条約関連条文の参照などについて、時間的な制約から最終化に至らず、次回会合において継続審議することが決定し、2018年を見直し期限とすることを委員会に要請することとなりました。

以上

お問い合わせ先

国土交通省海事局海技・振興課 長瀬、石田
TEL:(03)5253-8111 (内線45-302、45-336) 直通 (03)5253-8649 FAX:(03)5253-1646
国土交通省海事局総務課外国船舶業務調整室 森
TEL:(03)5253-8111 (内線43-175) 直通 (03)3593-0686 FAX:(03)5253-1644
国土交通省海事局船員政策課 米川、羽生
TEL:(03)5253-8111 (内線45-103、45-134) 直通 (03)5253-8651 FAX:(03)5253-1643

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