報道・広報

2010年HNS条約の発効促進に向けたコレスポンデンスグループの活動期間の延長により、条約発効の機運高まる
~国際海事機関第103回法律委員会の結果概要~

平成28年6月17日

 国際海事機関(IMO)は、第103 回法律委員会(LEG103)を平成28年6月8日から10日まで英国ロンドンにて開催しました。
 今次会合では、「2010年の危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約」(2010年HNS条約)の発効促進のための決議案を作成するためにコレスポンデンスグループ※1の活動期間を1年間延長することが了承されました。
 次回会合は、平成29年4月に3日間の会期で開催予定です。
 主な審議内容・結果は以下のとおりです。
※1 コレスポンデンスグループ:会合と会合の間にメール等を利用して検討を行うグループ  

 今次会合には79の国及び地域が参加し、我が国からは国土交通省、(公財)日本海事センター、(一社)日本船主協会、学識経験者等からなる代表団が出席し、我が国意見の反映に努めた。

1. 2010年の危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約(※2)(2010年HNS条約)の発効促進

 カナダより、2014年の第101回法律委員会において立ち上げが了承された2010年HNS条約の発効促進に関するコレスポンデンスグループの活動について報告が行われるとともに、2010年HNS条約に対する理解を深めるための資料である「HNS事故のシナリオ」の作成並びに次回会合で審議を予定している2010年HNS条約発効促進のための決議案の検討を行うため、その活動期間を1年間延長する旨提案があり、了承された。

※2 船舶による海上輸送中の危険物質及び有害物質(Hazardous and Noxious Substances:各種の化学物質、石油、LNG、LPG等)により発生した損害について、船舶所有者の厳格責任及び責任制限、船舶所有者の保険加入の義務化、HNS貨物の受取人等が拠出する国際基金(HNS基金)による補償を定めた条約。

2. 外国での船舶の裁判上の売買の承認に関する国際条約案(※3)

 中国、韓国及び万国海法会(CMI:Comité Maritime International)は、2014年6月の第41回CMI総会(於ハンブルク)で承認された「外国での船舶の裁判上の売買の承認に関する国際条約案」を紹介し、法律委員会において、この条約を基にして、外国での船舶の裁判上の売買及びその承認についての新たな条約の立案を今後の作業計画への追加を提案した。これに対して、加盟国からは、提案を支持するコメントが寄せられる一方で、条約制定の差し迫った必要性及び本件を法律委員会にて議論することの妥当性を示すことが要請されるとともに、他の関係する国際機関(例:国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL))との連携を求める意見が述べられた。
 以上のコメントを受けて、今次会合では、中国、韓国、CMI及び加盟国に対して、本件を法律委員会で取り上げるためには、次回以降の会合において、上記要請に応じた情報を提供することを求めるとともに、他の国連機関とも適宜提携していくことを求めた。

※3 船舶の裁判上の売買に係る手続きを統一化し、船舶の買受人が困難なく所有権を取得しその効果を第三国において認めることを目的とする条約案。

3. CLC及びHNS条約証書の発給権限の委譲

 フランスは、1992年CLC(Civil Liability Convention)条約※4及び2010年HNS条約の解釈に関し、証書の発給権限を認定機関に委譲するための具体的手続きを定めた決議案の採択を提案した。 我が国は、1992年CLC条約及び2010年HNS条約には、決議案は法的な拘束力のないものであり、決議案の的確な実行は、各加盟国の裁量に委ねられることとなる旨を強調し、決議案が採択された場合には、各加盟国は認定機関の確認義務等を適切に実行していくことを期待する旨及び発行権限を委譲したとしても加盟国は自身が証書を発行したのと同様に責任を負う必要がある旨発言した。
 また、各国からのコメントを受けて、フランスの調整により、会期間に決議案を更に検討するためのコレスポンデンスグループを立ち上げることとなった。

※4 タンカーによる油汚染事件に関し、船舶所有者に厳格責任を課すとともに、その責任額を一定限度に制限し得ること及び保険加入の義務化を定めた条約。

4. 法律委員会が作成した条約及びその他の文書の現状の再調査

 事務局より法律委員会が作成した各条約等の加盟国数、発効状況について報告が行われた。その後、我が国より「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年の議定書※5」に関し、海運はグローバルな産業であり、より多くの国が同議定書を締結することにより世界共通の海事債権に係る責任制限制度が導入されることが重要である点を指摘し、非締約国に対し同議定書締結についての検討を促してほしい旨発言した。

※5 海難事故等に係る船舶所有者の責任を船舶のトン数に応じた一定限度に制限し得ることを定めたもの。

添付資料

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お問い合わせ先

国土交通省海事局総務課国際企画調整室 平川、宮西 (2.関係)
TEL:03-5253-8111 (内線44-401、44-403) 直通 03-5253-8656 FAX:03-5253-1642
国土交通省海事局安全政策課  紺野、花房 (2.以外関係)
TEL:03-5253-8111 (内線43-266、43-268) 直通 03-5253-8616 FAX:03-5253-1642

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