報道・広報

国際油濁補償基金(IOPCF)2010年10月会合の結果概要について

平成22年10月28日

国際油濁補償基金2010年10月会合(92年基金第15回総会(92年基金15回総会は、定足数に満たなかったため、第7回運営評議会として開催)、追加基金第6回総会、71年基金第25回運営評議会及び92年基金第49回理事会)が下記のとおり開催され、国土交通省海事局福本次長ほかが出席したところ、結果概要について、お知らせ致します。


                            記


1.日程:平成22年10月18日(月)~ 10月22日(金)
2.場所:国際海事機関(IMO)本部 ロンドン
3.主要議題の結果概要
1)理事国の選挙
 92年基金理事国の任期は1年となっており、毎年通常総会時に選挙が行われ理事国が選出される。今次会合では、規定に基づき、最大拠出国とされる11か国の中から7か国(日本、シンガポール、ドイツ、オランダ、マレーシア、韓国、イタリア)、その他の加盟国の中から8か国(カメルーン、バハマ、メキシコ、モロッコ、トルコ、ノルウェー、ナイジェリア及びギリシャ)の計15カ国が選出された。

2)議長等の選出
 92年基金総会、追加基金総会及び71年基金運営評議会の議長及び副議長の選出が行われ、日本からは、92年基金総会の第一副議長に藤田友敬東京大学教授及び追加基金総会の第二副議長に芳鐘功油濁保障対策官が選出された。

3)事務局長代行の暫定的任命
 92年基金、追加基金及び71年基金共通の事務局で事務局長を務めるオスタフェン氏が入院し、その職務を遂行できなくなったことから、請求部のマウラ部長を、同事務局長の復帰又は2011年3月末に予定されている次回会合のいずれか早い時点まで、暫定的に事務局長代行に任命することが決定された。

4)通常予算及び大規模請求基金に関する予算の承認
 92年基金、追加基金及び71年基金それぞれについて、事務局提案の予算が承認された。 また、92年基金の一般基金に関して3.8百万ポンド(約5億円)を徴収し、92年基金の大規模請求基金について、Prestigeの事故に関して5百万ポンド(約6億5千万円)を繰り延べ徴収し、Volgoneft 139の事故に関して4千万ポンド(約52億円)を繰り延べ徴収し、Hebei Spiritの事故に関しては5千万ポンド(約65億円)を徴収したうえで2千万ポンド(約26億円)を繰り延べ徴収することが決定された。

5)「船舶」の定義に関する検討
 船舶を改造して作られた油の浮体貯蔵施設(FSU)の事故に係る賠償請求事案において、ギリシャの最高裁判所が、国際油濁補償基金のこれまでの解釈と異なり、同施設が92年責任条約(92CLC)上の船舶にあたると判断したことを受け、FSUに対する92CLC及び92年基金条約(92FC)の適用可能性について基金事務局が外部のコンサルタントを利用して調査を行ってきた。今次会合では、その中間報告が行われ、我が国は、調査の継続には反対しないが、調査は条約適用対象の変更の是非に踏み込むべきではなく、調査内容は客観的事実に限定されるべきであると主張した。議論の結果、本件については、引き続き調査を行い、次回会合において、法的分析を含め、92CLC及び92FCがFSU等に適用された場合の影響等が報告されることとなった。
また、デンマーク提出の文書により検討を求められていた、洋上で油の積み換えを行う際の母船に対するCLC及びFCの適用可能性については、母船は両条約上の船舶に該当すると考えられるとの結論に至ったが、他方で、この母船が締約国領海内において油を受け取った場合には、当該油はFC上の拠出油に当たらないとするデンマークの見解に対して,拠出油に当たる可能性があるとの意見が少なくなく、見解の一致を見るに至らず,この問題も上述のコンサルタントによる調査の対象に加えられることとなった。

6)事故に関する対応
(1) Hebei Spirit(92年基金)
 2007年12月に韓国沖合において発生したHebei Spiritの事故に関連する汚染損害について、請求処理の進捗状況が説明された。また、法律上要求された許可を得ないで操業している者の逸失利益に対する補償は原則として行わないとの基金の方針について、韓国は、その提出文書において,無免許の牡蠣養殖業者に関して同方針の柔軟な適用を求めていたが、同国が今次会合ではこの問題を議論せず次回会合以降に議論したい旨要請したため、この問題は次回以降に議論されることになった。また、各請求者に対する補償金の支払い水準については、請求の提出状況及び査定の進捗状況を考慮して、35パーセントに据え置くことが承認された。

(2) Plate Princess(71年基金)
 1997年5月にベネズエラで発生したPlate Princessの事故に関する同国内での2件の訴訟について、事務局から以下の説明があった。すなわち事務局としては,これら訴訟に係る請求は除斥期間経過後になされたものであり,事故と損害の因果関係も疑わしく,さらに請求の中には虚偽の書類に基づくものが含まれていると考えているが、一つの訴訟では、最高裁が今次会合の一週間前に基金による除斥期間経過の抗弁等を認容せず、船長、船主及び71年基金等に賠償の支払いを命じたこと、もう一つの訴訟では第一審裁判所が2009年2月に船長及び船主に賠償の支払いを命じる判決を下したこと、後者の判決については71年基金に通知がなされていないこと等の報告が行われた。ベネズエラの代表は、事務局の説明文書及び口頭の説明に対して同国の裁判所への敬意の欠如等について不満の意を表明しつつ事件の詳細を説明する準備がある旨主張したが、議論の結果、ベネズエラ政府の文書の提出を待ち、次回会合以降に基金のとるべき対応を検討することとなった。なお、上述の2件の訴訟において提出されている請求がすべて認められることになれば、71年基金は拠出金を徴収してPlate Princess大規模請求基金を設置する必要があるとの説明があった。

7)その他
(1) 2010年HNS議定書
 2010年4月にHNS条約改正議定書が採択された際の決議を受けて、国際油濁補償基金事務局がHNS基金設立に必要な準備作業を行っていくことになった。

(2) 国際油濁補償基金加盟国
 2010年9月現在、92年基金の加盟国数は104か国であり、ベナンが既に加入書を寄託していることから、2011年2月には加盟国数が105か国となること、及び2010年9月現在、追加基金の加盟国数が27か国であることが報告された。

(3) 国際油濁補償基金総会等の決定に関するデータベース
 国際油濁補償基金総会等の決定に関するデータベースの開発がまもなく終了し、ウェブサイト上で来年1月頃を目途に公開されることになるとの報告があった。

お問い合わせ先

国土交通省海事局総務課危機管理室 芳鐘、永井
TEL:03-5253-8111 (内線43-268) 直通 03-5253-8616

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