報道・広報

「危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約(HNS条約)の改正のための国際会議」の結果について

平成22年5月6日

1.会議の概要
 4月26日から30日までの間、ロンドンのIMO(国際海事機関)本部において、標記の会議が開催され、79ヵ国から代表が参加し、日本からは森重俊也国土交通省大臣官房審議官他が出席した。
 
 同会議においては、1996年に採択された「危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約」(以下「HNS条約」という。)を改正する議定書について審議が行われ、4月30日に全会一致により「1996年の危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約の2010年の議定書」が採択された。

2.HNS条約の経緯
 地球環境問題に対する世界的な関心の高まりの中、ガス、化学物質等の有害危険物質の海上輸送に係る損害に関して、被害者救済の充実、環境保護の観点から、損害の賠償を充実するための制度を構築するべく、「危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害賠償及び補償に関する国際条約(HNS条約)」が、1996年に採択された。その後、条約の締結が進まないことから、条約締結の障害を取り除き条約発効を促進するための改正議定書案が2007年から検討され、今回の外交会議において審議・採択されることとなった。

3.HNS条約の概要
 HNS条約においては、海上輸送中の有害危険物質により発生した損害の賠償について、被害者救済の充実の観点から、[1]船主の責任について厳格責任を課す一方、一定の限度額を設定するとともに、これを強制保険で担保する。[2]船主責任を超える部分については、有害危険物質の荷主が拠出する国際基金が補償を行うこととされている。

4.今回採択された議定書における主な改正点等
[1] 梱包HNS貨物の取扱い
コンテナ輸送等で運ばれる梱包HNS貨物の取扱いについて、当該物質の受取量等の情報収集及び報告が困難であるとの認識から、HNS基金への拠出貨物の対象から外すこととする一方、船主の付保が義務付けられる責任限度額が梱包貨物輸送については引き上げられることとなった。
(ばら積み輸送に係る船主責任限度額が総トン数に応じ1,000万SDR(約14億円)から1億SDR(約140億円)であるのに対し、梱包貨物輸送に係る船主責任限度額トン数に応じ1,150万SDR(約16.1億円)から1億1,500万SDR(約161億円))

[2] LNG会計への拠出者
LNG会計に係る拠出者について、HNS条約では、荷揚げ直前に貨物に対して権原を有する者(荷揚げ直前の権原者)としていたが、改正議定書案では、他の拠出貨物と同様に「受取人」を原則としつつも、「受取人」と荷揚げ直前の権原者の間に合意が存在する場合は、「権原者」を拠出者とすることができることになった。また、荷揚げ直前の権原者が拠出金の支払いを怠った場合には「受取人」が支払うこととなった。

[3] 拠出貨物量の未報告問題
条約に加盟していながら、拠出貨物量報告をしない国の被害(人的被害を除く)については、補償を行わない制度が設けられた。

[4] その他
発効要件については、HNS条約では商船船腹量200万総トン以上の4カ国を含む12カ国が同条約を締結すること及び締約国からの拠出貨物量が合計で4000万トン以上となることとしていたが、改正議定書においても同様の発効要件となった。

お問い合わせ先

国土交通省海事局総務課危機管理室 
TEL:(03)5253-8111 (内線43268)

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