報道・広報

国際海事機関(IMO)海洋環境保護委員会(MEPC)温室効果ガス(GHG)対策中間会合の審議結果について

平成20年6月30日

概要
・ CO2排出設計指標(デザイン・インデックス)について、我が国提案による波や風のある実海域を考慮した指標策定に全会一致で合意。基準値の設定等指標の強制化の手法についても議論が進展。
・ CO2排出運航指標(オペレーショナル・インデックス)については、強制化せずに自主的な活用を促すものとし、同指標算出のための現行の暫定ガイドラインに関する技術的な改善点についてはMEPC58において審議予定。
・ 市場メカニズムを活用した経済的手法によるCO2排出削減対策については、途上国の反対により、本格的議論に入れず、進展なし。
 
 気候変動枠組条約京都議定書は、その対象を附属書Iに掲げる先進国に限定しており、国際海運については、第2条第2項において、国際航空とともに専門の国際機関(国際海事機関(IMO)及び国際民間航空機関(ICAO))を通じた作業によって、GHG排出量の抑制を追及することとされている。
 現在、IMOにおいては、国際海運からのGHG削減に向け、技術的な手法(船舶のエネルギー効率の改善、代替エネルギーの活用等)、運航上の手法(減速航行、最適航路選択等)、経済的な手法(燃料油課金、排出量取引等)についての検討が進められており、本年4月に開催された第57回海洋環境保護委員会(MEPC57)において、我が国からも新造船の燃費効率を評価する指標(実燃費指標)を策定することを提案した。
 MEPC57での審議の結果、国際海運からのGHG排出削減に向けたIMOでの検討を促進するため、GHG中間会合を開催し、その結果を本年10月に開催予定のMEPC58に報告することとなった。
 これを受け、6月23日から27日まで、ノルウェー王国オスロ市国際会議センターにおいて、GHG中間会合が、我が国を含む34の国及び地域並びに16の機関からの参加により開催された。 
 我が国からは、国土交通省の染矢技術審議官他、(独)海上技術安全研究所、その他関係海事機関・団体からなる16名の代表団が出席し、我が国意見の反映に努めた。今次会合の主な結果は以下のとおり。
 

1.総論

 今次会合では、今年10月に開催されるMEPC58での承認を視野に入れて、新造船用の強制CO2排出設計指標の策定、MEPC58での最終化を視野に現行のCO2排出運航指標の算定ガイドラインの見直し、MEPC58において最も有効な施策を選択することを視野に入れてGHG削減メカニズム(国際的な燃料油課金、排出量取引(ETS)、クリーン開発メカニズム、ベストプラクティス等)の検討を行うこととなっており、CO2排出設計指標の策定については算出式に全会一致で合意するなど大きく進展した。
 しかしながら、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、サウジアラビアは、従前の会合と同様、気候変動枠組み条約で定められている「共通だが差異のある責任及び各国の能力(Common but differentiated responsibilities and respective capabilities)」の原則を強調し、いかなる強制的手法もその採択の前に、途上国への経済的影響を詳細に分析するべきと主張した。
 なお、今次会合の開催に先立ち、ホスト国であるノルウェーの貿易産業大臣及び環境・国際開発大臣からのスピーチがなされるとともに、IMOの事務局長からもスピーチがなされ、今次会合の議長はMEPCの議長(キプロス)が務めた。
 

2.各論

(1) CO2排出設計指標(デザイン・インデックス)

 我が国は、国際海運からのGHG削減策としては、技術革新を促進し、燃費効率のよい船舶の普及を進めることが実質的な排出削減につながるとの考えから、MEPC57において、波や風のある実海域を考慮したCO2排出設計指標(実燃費指標)の策定を提案した。

 今次会合において、我が国提案の実海域の考慮の必要性が理解され、同じく指標の算出式を提案していたデンマーク提案と合わせた形で実海域の要素をいれた算出式に全会一致で合意した。

 また、基準値の設定等指標の強制化の方法論については、指標の適用船舶、設計段階における指標算出の義務付け、既存船舶のデータを基にしたベースライン(基準年及び基準値)の決定方法などを定めた規則を策定することに合意し、規則草案を取りまとめた。トライアル期間が必要との意見をふまえ、算出式はガイドラインとして先行運用し、その後に、規則化すべき条約、規制値、規制実施時期などを含め、規則案を決定していく方針となった。なお、中国その他は規則案についての立場を留保した。

 

(参考)

● CO2排出設計指標: 船舶の設計・建造段階で、船舶の仕様に基づいて、トン・マイルあたりのCO2排出量を事前評価して、各船に付与するもの。各船には一つの指標しかない。

 

(2) CO2排出運航指標(オペレーショナル・インデックス)

 運航指標については、今次会合において、その目的の検討及びベースラインの算定方法の開発について、検討することとされていた。

我が国からは、運航指標は航海毎に変動するうえ、運航パターンの異なる船同士を比較できないため、規制のツールとして使用するのではなく、事業者等によるCO2排出削減のための施策(例:減速航行)の効果をモニターする目的に使用すべきとの提案文書を今次会合に提出していた。この我が国提案に対して、多くの国が支持し、運航指標の報告については強制化せず、自主的な活用を促すことが合意された。

 なお、CO2排出運航指標を算出するための現行の暫定ガイドラインの技術的な改善については、これまでMEPCで各国等から表明されたコメントをもとに今後検討することとなった。

 また、船舶の燃費効率が改善していることを広く示す必要性を踏まえて、効率ベース(トン・マイルあたり)の平均値としてのベースラインを算出することが有益であるとされ、その算出方法については今後検討を行っていくこととした。

 

(参考)

● CO2排出運航指標: 船舶の運航中に消費した燃料消費量からトン・マイルあたりのCO2排出量を計算して得られるもの。各船についても、運航中に変動する。

 

(3) 経済的手法

 国際海運に対する燃料油課金や排出量取引(ETS)等市場メカニズムを活用した経済的な手法によるGHG排出削減対策については、今次会合に先立って、デンマークから国際航海に従事する一定サイズ以上の全ての船舶の使用する燃料油に対して一定額を課金し、それをGHG対策に活用する制度の提案、欧州委員会(EC)、ノルウェー、フランス、ドイツ等から国際海運セクターに特化したETSの必要性及び制度の枠組みに関する提案が提出されていた。

 これに対して、サウジアラビア、中国、ブラジル、南アフリカ、バハマ、インド等の途上国が課金システム等をIMOで議論することが不適切であり、IMOでの議論は他の機関における議論にも悪影響を及ぼすとして反対したため、本格的議論に入れず、議長は、課金及びETSともに今次会合では進展なしと結論づけて、議論を打ち切った。

 

(4) ベストプラクティス

  自主的なCO2排出削減方法については、事務局が準備したベストプラクティス(最良実行方法)に関する決議案に基づき減速航行、メンテナンスの最適化などを盛り込んだ草案を作成した。当該草案は、MEPC58において引き続き検討される予定である。

 

お問い合わせ先

国土交通省海事局GHG対策PT国際基準調整官 大坪
TEL:(03)5253-8111 (内線43902) 直通 (03)5253-8636 FAX:(03)5253-1644
国土交通省海事局GHG対策PT専門官 鈴木
TEL:(03)5253-8111 (内線44192)

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