大臣会見

斉藤大臣会見要旨

2023年6月2日(金) 9:47 ~ 10:15
国土交通省会見室
斉藤鉄夫 大臣

主な質疑事項

冒頭発言

(大臣から)「物流革新に向けた政策パッケージ」の策定について

(大臣)

本日の閣議案件で、特に私の方から報告するものはありせん。
このほか、私から1点報告があります。
本日の閣議後に、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が開催され、「物流革新に向けた政策パッケージ」が取りまとめられました。
この政策パッケージには、いわゆる「2024年問題」などの課題に対応するため、一つ目に商慣行の見直し、二つ目に物流の効率化、三番目に荷主・消費者の行動変容の三つの柱に基づいて、抜本的・総合的な対策が盛り込まれています。
また、本日の会議において、総理から、次期通常国会での法制化を含め、規制的措置などについての枠組みを確実に整備すること、それに先立って、可能な取組みから速やかに進めることなどの指示がありました。
これを受け、荷主企業や物流事業者の皆さまが、年内を目途に、物流の適正化・生産性向上のための「自主行動計画」を作成・公表いただけるよう、早急に取り組むべき事項をまとめた「ガイドライン」を、関係省庁、経済産業省、農林水産省と連携して策定しました。
国土交通省としては、この政策パッケージを実効性のあるものとするため、引き続き、関係省庁・産業界と緊密に連携し、スピード感をもって取り組んでまいりたいと決意しています。
詳細は後ほど事務方から説明させます。
私からは以上です。

質疑応答

「物流革新に向けた政策パッケージ」の策定について

(記者)

冒頭の物流の政策パッケージについてですが、改めて物流2024年問題の解決に向けた大臣の御決意をお聞かせください。

(大臣)

我が国の物流は、国民生活や経済を支える重要な社会インフラですが、現在、様々な課題に直面しており、いわゆる「2024年問題」への対応は喫緊の課題となっています。
具体的には、来年度から、トラックドライバーに対する時間外労働の上限規制が適用され、何も対策を講じなければ、14%の輸送力の不足が生じるという見通しが示されているところです。
このような状況を踏まえ、本年3月に関係閣僚会議が設置されました。
そして、本日の会議において、「政策パッケージ」が取りまとめられたところです。
この政策パッケージには、抜本的・総合的な対策が盛り込まれており、可能な取組みから速やかに実施し、次期通常国会での法制化を含め、規制的措置などについての枠組みを確実に整備することとされました。
国土交通省としては、物流の停滞が生じないよう、経済産業省や農林水産省と連携しながら、スピード感をもって、しっかりと取り組んでまいります。
また、先ほど申し上げましたが、まず関係する産業の方が自主行動計画を作っていただいて、取り組めるところから直ちに取り組んでいただくことが重要だと思います。
そのためにいわゆる我々としてのガイドライン、自主行動計画を作るためのガイドラインを既に他省庁と連携して作ったところです。これをしっかり行っていきたいと思っています。
また、個人的には荷主の理解、発荷主と着荷主がいますが、特に一番力を持っている着荷主の理解が本当に必要だと思いますし、ある意味では最も究極の着荷主である消費者の理解が最もポイントになるのではないかと思います。
この点も含めて、しっかり今回政策パッケージでかなり広い分野に渡っていますが、この実行に向けて頑張っていきたいと思います。

リニア中央新幹線の整備について

(記者)

5月31日に、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会から国土交通省の方に要望がありました。
早期着工を求める要望ですけれども、その要望全体についてと、期成同盟会の事務局から静岡県内に東海道新幹線の空港新駅を整備する構想が示されましたけれども、この2点についての受け止めをお聞かせいただきたいのと、それから、リニア開業後に静岡県内での新幹線の停車本数をシミュレーションするという調査ですけれども、こちらの現在の進捗状況も併せてお聞かせください。

(大臣)

第1点目の、先月31日にリニア建設促進期成同盟会、知事さんたちの期成同盟会ですが、この同盟会から国土交通省に対し、静岡工区の課題解決などを求める要望が行われました。
古川(ふるかわ)大臣政務官が要望書を受け取ったところです。
国土交通省では、未着工である静岡工区について、有識者会議において大井川(おおいがわ)の水資源への影響に関する中間報告をとりまとめました。そして、これはまだ中間報告です。
まだ、この有識者会議、いろいろな御議論をいただいているものと思っています。それに加えて環境保全に関する有識者会議をこれまで計9回開催しています。
引き続き、関係自治体をはじめとする地域の御理解が得られるよう、この水資源の問題、そして環境保全に関しての問題、地域の御理解が得られるよう、この有識者会議の御議論も踏まえながら、我々としてもしっかりと、問題解決に向けた取組みを進めてまいりたいと思っています。
それから、リニア開業後の東海道新幹線に関する調査が今どの程度進んでいるかとの御質問ですが、今リニア開業後に生じる東海道新幹線の輸送力の余裕を活用した利便性向上・地域にもたらす効果等について、本年夏頃に向けて、分析を進めているところです。
私も当初、紙と鉛筆で頭を捻れば出てくるのではないかと軽く考えていましたが、状況を聞いていますと、色々なその時々の経済の状況、これからの社会のあり方等々、コンピューターを使って詳細な分析を行っているようです。
私も結果が楽しみなのですが、この夏を目途に作業を進めているところです。
それから新駅についても、御質問がありました。
東海道新幹線の新駅構想については、一昨日のその期成同盟会において、山梨県知事から提示された、「リニア中央新幹線建設を契機とした総合的な高速交通の将来像に関する研究会」、これはこの期成同盟会における研究会ですが、この研究会での検討案に盛り込まれていると承知しています。
国土交通省としては、まずは、この研究会における議論を見守っていきたいと考えています。

知床遊覧船事故における海上保安庁の初動対応について

(問)

知床遊覧船のKAZU1)(カズワン)の沈没事故について、2点伺います。
事故の家族会が4月20日に公表した共同声明の中で事故当初の対応について、海上保安庁も警察も現場に到着するのが遅れたことと、自衛隊への災害派遣要請が通報から6時間以上経過した後だったことを指摘した上で、事故直後の初動の対応は正しかったのか今一度検証してほしいというようなことをおっしゃっています。
その上で2点質問します。
国土交通省は事故対応の検証を行う考えがこの後ありますでしょうか。
もしないようでしたら理由も教えてください。2点目、また事故対応について、第一管区海上保安本部長が、現場に詳しくない国土交通省のキャリア組だったことの影響があったのかそのお考えをお聞かせください。

(大臣)

海上保安庁では、知床遊覧船事故を受け、直ちに初動対応等の点検を行いました。
初動対応については、ヘリコプターからの吊り上げ救助などを行う要員を同乗させる必要があったことに加え、悪天候が重なり、巡視船艇・航空機の到着に約3時間を要しました。
また、通報を受けた段階で現場の状況にかかる具体的な情報が不足していたため、自衛隊への災害派遣要請にも時間を要する結果となりました。
これらの課題に対し、まずは、本年4月に釧路航空基地に機動救難士を新たに配置するとともに、今年度中に釧路航空基地へのヘリコプターの増強や、オホーツク海域に面する部署へ大型巡視船を配備するということを決定し、救助・救急体制の強化を図ることとしています。
また、自衛隊への災害派遣要請については、防衛省・自衛隊と調整を行い、災害派遣要請を迅速に行えるよう、手続きを見直しました。
海上保安庁においては、これらの取組みなどにより、海難救助に万全を期してまいりたいと思っています。
なお、第一管区海上保安本部においては、事案発生直後から、対策本部を設置し、本庁とも連携の上、組織的に状況を踏まえて対応を行っていたものと認識しています。

(記者)

検証はされる予定はないということでしょうか。

(大臣)

先ほども申し上げたように、点検をし、そして課題を明らかにし、その課題に対して先ほど申し上げたような対応を行ったものです。

 

海上保安庁長官の人事について

(記者)

知床の事故からは少し離れるのですけれども、関連して海上保安庁長官の人事についてのお考えを教えてください。
長官のポストは2013年に初めて国土交通省のキャリアではない現場出身の生え抜きの方が就かれましたが、これは安倍あべ政権下で尖閣諸島の情勢が緊迫化する中での対応だったと思います。
それから4代に渡って現場出身の長官が続きましたが、去年の6月には9年ぶりにキャリアの方が就任しています。
尖閣諸島を巡る情勢が落ち着いたとは言えない中で、長官ポストを現場出身者からキャリア組に戻した理由をお聞かせください。

(大臣)

個別の人事についてのコメントは差し控えたいと思います。
人事は、その時々の政策課題やいろいろ国土交通省としてどう対応しなければいけないかなど、総合的に勘案して適材適所で行っています。

太田川水系におけるダム建設の方針について

記者)

ダムの建設について2点伺いたいのですが、5月31日に国土交通省の太田(おおた)(がわ)河川事務所が、広島県安芸(あき)太田町(おおたちょう)の太田川本流に治水ダム建設案を公表しました。
ダム建設を検討する狙いを聞かせてください。
一方で、ダム建設を巡っては地元の生態系だったり環境への影響を懸念する声が出ていますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
もう1点、近年全国的に豪雨災害が相次いでいると思うのですけれど、今後治水ダムの建設というのを積極的に進める考えがあるのでしょうか。
国の方針を教えてください。

(大臣)

まず第1点目です。
広島県安芸太田町に治水ダム建設の件です。
我が国においては、近年の気候変動に伴う降雨量の増大などを踏まえ、治水対策を強力に推進する必要があります。
広島県を流れる太田川においても、特に下流部の広島市に人口・資産が集中しており、治水対策が急がれますが、その沿川には市街地が立地しているため、大規模な河川の拡幅などによる対策を実施することは、非常に困難な状況です。
こうした状況を踏まえ、一昨日、5月31日に中国地方整備局において学識懇談会を開催し、既設ダムの有効活用と太田川本川の上流における新規ダムの整備に向けた調査・検討を行う旨をお示ししたところです。
新規ダムの整備に伴う生態系や環境への影響については、ダムの位置や規模などの検討に併せて、詳細な調査を実施することとしています。
治水対策を実施するにあたっては、地元の御理解・御協力が重要であり、本件については、現地の太田川河川事務所が中心となって、丁寧に手続きを進めてまいりたいと考えています。
御存じのように、太田川、多くの流域から水を集めて、広島市の三角州のトップに来るときは1本で入ってきます。
1本が広がって三角州、8本の川になって海に注いでいると、いわば三角州にできた町です。
ある意味では人口がほとんど最下流部に集中している、そして今1本になっているところも、かなり今市街化されています。
そういうところで、近年の降雨の増大に向けてしっかりと対応していかないといけない、これは全国そうなのですが、そのためには三つ方法があって、一つ目は拡幅、河道掘削などの方法。
もう一つは今あるダムと、その河道掘削、拡幅などを行う。
三つ目が今あるダムの活用プラス新規ダムを建設する。
この三つがあるわけですが、学識経験者の懇談会で三つのうち、広島の場合は、いろいろな方面から見て、三つ目の方法が最も適当であるという結論を出していただいたところで、これからいろいろ検討していきたいということです。
そして、2点目の国土交通省は全国で積極的にダムを建設する方向に舵を切ったのかという御質問ですが、国土交通省では、気候変動対応の影響による水災害の激甚化・頻発化を受け、河川整備などの事前防災対策を加速させることに加え、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う「流域治水」を推進することとしています。
太田川についても、流域治水の取組みの中で、近年の降雨量の増大などに対して、必要な治水対策をどのように確保するのか、あらゆる治水手段との比較を行いながら、これまで慎重に検討を行ってまいりました。
その結果として、今般、学識懇談会において、既設ダムの有効活用と太田川本川上流における新規ダムの整備が他の案と比較して有効であることをお示しし、学識経験者からも有利であることを御確認いただいたものです。
今後とも、流域治水の考え方に基づき、河川や治水の状況を踏まえ、あらゆる治水手段を検討し、適切な治水対策を実施してまいります。
初めからダムありきではありません。
あらゆる治水の手段を比較検討し、最も合理的なものを選んでいく、そして地域の皆さまの理解を得ていく、この考え方で治水対策、流域治水という考え方に基づいてやっていきたいと思います。

リニア中央新幹線の整備について

(記者)

先ほどのリニアの関係なのですけれど、弊社の取材で川勝(かわかつ)知事が昨年末近くに、非公式ながら品川-名古屋間の先行開業を一旦取りやめて、大阪までの全線一括開業を目指すこととか、静岡を回避、松本を通るルートへの変更とかを国などの関係者に提案していたという話が出てきたのですけれど、こうした考えを、もし現在も川勝知事がお持ちであれば、国が認めた現行計画にも影響を及ぼしかねないと思うのですけれど、そこら辺は大臣どのように受け止められますでしょうか。
また、全線一括開業案そのものについてはどのように思いますでしょうか。

(大臣)

私は現行の案、つまりまず名古屋まで開業する、そしてその後に新大阪まで開業するという現行の案、そして、そのルートも現行の案が最も適当だと私自身思っていまして、そしてそれはある意味でいろいろなコンセンサスになっていると思います。
その形で地域の皆さまの御理解と、関係者の御理解、静岡県も含めた御理解を得られるようしっかりと取り組んでいきたいと思います。
そのために学識経験者等の検討会、水に関して、また環境に関して、いろいろ今御努力いただいていますので、国土交通省としては、現行の案で地元の皆さまの理解が得られるように、しっかりJR東海等、指導していきたいと思いますし、我々も行政の立場で出来ることをやっていきたいと思います。

「物流革新に向けた政策パッケージ」の策定について

(記者)

物流2024やっと動き出したかというとても良い気分ですが、大臣もおっしゃっているように実効性というところが非常に大切だと思っていて、私の覚え違いでなければ、大臣は例えば荷主さん、コンビニであったり、通販業者であったり、飲料メーカー等々、それから消費者そのもの、それから一番聞いてほしいのは中小零細事業者とその運転手さんです。
ここに是非、有識者の方あるいは役所はヒアリングはされているようなのですが、局面を捉えて是非、大臣も生の声を聞いていただきたいと思っています。
そういう物流に関わるステークホルダーから生の声を聞くというお考えはありますでしょうか。

(大臣)

大変重たい御提案だと思います。
現場で働いているトラックドライバーの皆さまの声、当然国土交通省としてもお聞きしているわけですが、ある意味で団体を通じて、例えばトラック協会の団体を通じてお聞きしている、もちろんそのトラック協会も中小の方もたくさん入っています。
そういう意味で中小の声もきちんとトラック協会の中で代表されて、我々はそれを参考にさせていただいていると思っていますが、現実にはその団体に参加されていない、本当に私も地元を歩きますと、1台ダンプを買って、家の前にダンプを置いて、このダンプで稼ぐと言って、一人でやっていらっしゃる運送業者、協会には入っていらっしゃらない、そういう方がたくさんいらっしゃいます。
ですからそういう方の声もきちんと聞かなければいけないと思っていまして、私国土交通省の中でもそういう方の声を聞くシステムと言いましょうか、機会を設けようということで今進めていきたいと思っています。
私自身そういう声を聞きながら、一応大きな方向性を今日出しましたが、これから詰めないといけない内容が、方向性だけは示されているがまだ最終的な結論に至っていないところが結構あります。
そういう中でしっかりそういう声を聞きながら、その声をまた力にして最終的なものを、実効性のあるものにしていきたいと思っています。
 

(記者)

先ほどの政策パッケージの話なのですが、大臣このお話の中で、特に着荷主の理解が必要であると、その中でも消費者の理解が必要だとおっしゃいましたが、具体的に消費者の理解どのようなものを求められているのか、分かれば教えてください。

(大臣)

いろいろあります。
例えば今回このパッケージの中にも入っていますが、賞味期限の問題、その賞味期限はどういうことを意味するのかも、よく消費者の方に理解していただくようにしようとか、例えば宅配については、出来るだけ再配達にならないように、今もう再配達率が10%を超えているそうです。ここがなくなるだけで、随分改善されます。
そのために消費者の立場で御理解いただき対応いただけること、例えばマンションであれば宅配ボックスの設置を増やすとか、一戸建てであれば置き配、そういうことについて安全性を確かめながらですが進めていく、こういうことが一例です。
その他にもたくさんありますが、そういう消費者の理解、それから着荷主の企業の方、よく聞きますと、着いても平気で2時間3時間待たされるそうです。
待っとれと言われて。
そういうことも長時間労働に繋がっていく。
今回のパッケージの中ではそういう時間を、例えば何割減らしていこうという目標、具体的な数字の目標もあります。
荷主の理解を得るということが今回の問題の解決に大きな要素となっていることが言いたかったことです。

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