大臣会見

前田大臣会見要旨

2011年12月27日(火) 11:12 ~ 11:34
国土交通省会見室
前田武志 大臣

閣議・閣僚懇

閣議案件についてですが、今資料を配付しておりますが、本日の閣議で1月1日付けの国土交通省人事につきまして、海事局長に森雅人大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官を命ずるなど、幹部職員の人事異動について、御承認をいただきました。
本日の安全保障会議で、北朝鮮関係の対応について総理指示が出されたことを受け、私より関係部局に対して配付している資料のとおり、内閣官房及び省内における情報連絡体制の再確認、情報収集体制の強化、緊急時の即応体制の確保など、年末年始、休暇中も含め、万全の備えを徹底することとして、指示をいたしました。
閣議及び安保会議以外で2点ご報告がございます。
1つは「津波防災地域づくりに関する法律」の基本指針についてであります。
12月7日に成立した「津波防災地域づくりに関する法律」が本日から施行されることになりました。
また、この法律に基づき、国土交通大臣が定める基本指針についても、先ほど社会資本整備審議会から御意見をいただき、決定いたしました。
3月11日の大震災があった本年中に、なんとか津波防災の新たな枠組みを作ることができたと思います。
今後は、全国において津波防災地域づくりを推進していくわけでございます。
「災害には上限がない」「なんとしても人命を守る」という基本的な哲学をベースにして、地方公共団体との連携を密にしながら、ハード・ソフトの施策を総動員して進めてまいります。
また津波避難ビルの実態調査の結果もまとまりました。
詳細は後ほど配付いたします資料でお確かめ下さい。
もう一つは、「学校ゼロエネルギー化推進方策検討委員会」の設置についてでございます。
東日本大震災に伴って、電力の供給制約が長期化するおそれがあり、省エネ、また温暖化対策のCO2の削減の推進が一層必要となり、不可欠になっております。
学校は、地域の身近な公共施設であり、また、生徒への環境教育の観点からも、ゼロエネルギー化を積極的に行う意義があると考えられます。
このため、国土交通省と文部科学省が共同で、学校のゼロエネルギー化の推進方策を検討する外部有識者会議を設置することといたしました。
第1回委員会は、来年1月25日の予定です。
この委員会の成果も踏まえて、東日本大震災の被災地の学校復興プロジェクトを推進してまいります。
詳細については後ほど資料をお配りいたしますのでお確かめ下さい。

質疑応答

(問)今年最後の大臣会見になりますが、今年1年を振り返って、大臣の感想と来年に向けての抱負をお願いします。
(答)私は今年の前半は、参議院で予算委員長を仰せつかっておりまして、ねじれの参議院ということで、国会の主舞台となり、色々とあったわけでございますが、3・11を契機に国会、特に、予算委員会における議論が大きく変わって参りました。
与野党を越えて、野党の先生方も、日本の復旧・復興のために、あるいは原発事故の対処ということから、あえて協力して行っていかなければならないという気構えになって取り組んでいただいたと思います。
もう一つ、国民の意識が大きく変わったわけです。
学校のゼロエネルギー化というような政策について申し上げましたが、国民の意識の中に、それまではあまり省エネ、断熱、CO2削減というような意識がなかったのだろうと思います。
もちろん意識の高い人も大勢いるわけですが、やはり電気もふんだんに使いますし、ストーブ等軽油もふんだんに使えるという、そういう生活をしてきたわけですから。
それが今回の3.11を契機にガラリと変わりました。
それはもう皆様方がお気づきのとおりでございます。
そういったことも背景にあって、国会の議論も大いに変わってまいりました。
そして後半は9月2日に国交大臣を仰せつかったわけでありますが、まずはやはり「東北の復興無くして、日本の復興無し」、「福島の原発事故の収束無くして、日本の再生無し」ということで、こちらに取り組むとともに、たまたま大臣に赴任した日に12号台風が近づいてまいりまして、早速紀伊半島を襲撃した台風、豪雨災害の対応を迫られたわけであります。
その後15号台風もありました。春先には新燃岳の噴火もあったわけです。
今年は言ってみれば、未曾有の災害が連続して続いた。
しかも、地震、津波、豪雨、火山爆発と日本列島で想定されるほとんどの自然の猛威というものが発生して、そしてその災害対応に政府を挙げて迫られたわけであります。
そういった意味では、災害に明けて災害に暮れた1年であったように思います。
国土交通省関係について言えば、陸海空、あらゆる所にわたるわけです。
持っている現場力であったり、統合力であったり、即応力であったり、こういうものを結集して、本当によくやってくれたと思います。
非常に士気も高く、地方整備局等現場も含めて、今も職員の皆さん方は寝る暇無しに対応をしてくれております。
福島の原発事故の除染の問題等にいたしましても、縁の下の力持ちをやっております。
そういった意味では、私はこの1年間、特に、3.11以降、国土交通省の職員は、みんなが使命感を持って業務にあり、互いに連帯感みたいなものが深まりったのではないかと思います。
これだけ大きな幅広い省でございますから、どうしても縦割りになりがちです。
局あって省無しと言われますが、もともと五つの省庁が一つになったみたいなものでございますから。
しかし、今回は本当にみんなで互いに協力し合って、この難局を乗り越えていこうということになったかなと、こう思います。
最後に、八ッ場ダムの問題もありました。
これについては、苦渋の決断ではあったのですが、私自身は、実は国交相の良心においてこの決定をしたと、こういうふうに自負をしているのです。
今日も中央防災会議が官邸でありました。
この中央防災会議において、過去の災害の歴史を継承する小委員会がありまして、その小委員会の検討報告が出されました。
記録にあるもの、25の災害です。地震であり、津波であり、火山爆発であり、そういったものが25、検討されて出たわけです。
その中に、カスリーン台風、天明の浅間の大爆発、福井の大地震、この三つの災害についても検討の結果が出ているわけですが、私が最終的な判断をしたときに、実は、この三つも背景にあったのです。
それは何かと言うと、福井の大地震というものは、昭和二十何年か、まだ戦後、それほど経たない時期であったわけですが、この大地震で九頭竜川の堤防が無残にもあちこちで壊れたのです。
福井の大地震があった直後に大豪雨がありまして、それで福井の災害というものは、そういう複合災害になってしまったわけです。
だからその複合災害というものも念頭に入れる必要があるんです。
これはタスクフォースの賢人の方々が指摘していたことであります。
それからカスリーン台風、これは八ッ場の計画等を含めて利根川の計画の一つの大きな実績洪水になっているわけですが、実はこれについてもいろいろ調べたら、多分、埼玉県の加須市辺りで破堤したはずなのですが、その対岸の群馬県側で、水防活動を行っていた大人達に混じって、まだ幼かったある人の話を聞きました。
それによると、群馬県側の堤防が大洪水で振動してきたというのです。
これはどうなるのかと、本当に皆が一所懸命土嚢を積んだりしているときに、対岸の埼玉県側が決壊して、洪水が埼玉県、東京都の方に流れ、それで水がちょっと引いて群馬県側は助かりました。
その時に、その群馬県側の方々は堤防の上で小躍りして万歳を行ったというのです。
本当に洪水に弱い状況の中で、その地域の方々というのは大変なのです。
特に日本の洪水というのは、日本の川は滝であると言われるくらいで、タイのように1週間、10日かかってゆっくりと出てくるようなものではありません。
あっという間に急激に水嵩を増して、撃力持って流れていきますから。
そういった意味では、利根川の特性を良く知っている流域の方々から見ると、利根川だけは何とか安全度を上げて欲しいと、みんなが思っているのです。
そういった一つの例です。
それからもう一つは、天明の地震というものも検証の中に入っておりました。
これは1783年、天明3年か4年です。
浅間が大爆発して、山麓をえぐって、大火砕流、大泥流が発生しました。
何とそれが、吾妻川が利根川に合流する地点です。
多分、前橋の辺りだと思います。
その辺りまで10メートルの段波が襲ったのです。
それがずっと下流の江戸湾まで到達して、その後、江戸末期から明治、大正と随分と河床が上がって洪水が何度も繰り返されました。
八ッ場ダムは約700平方キロの集水面積を持っておりまして、洪水カットについて非常に効果的なダムです。
しかも天明の大爆発は何百年に一度はあり得ると見られておりまして、最大で1億トン位の泥流が発生するだろうと。
それを八ッ場ダムでは止め得る可能性があることを、タスクフォースの先生方の御意見を聞いて、そうした感触もつかんだわけです。
勿論、検証のスキーム等を経て、瑕疵のない検証を行ってきてくれたわけですが、それとは別に、災害の歴史、そういった教訓をどうくみ取るかということも背景にあったということも触れさせていただきたいと思います。
そして苦渋の決断をしたわけです。
いよいよ年が改まれば、私共国交省が掲げている「持続可能で活力ある国づくり、地域づくり」の方向に向けて、国交省の新しい地平を拓いていきたいと思っているところです。

(問)幹部人事に関連して、観光庁長官の任期満了がせまっていると思いますが、対応はどのようにお考えですか。
(答)よく頑張ってくれております。
溝畑観光庁長官のは、任期付職員法という法律に基づいて、任期を限って、そして目的を明確にして採用しているわけであります。
その任期が平成24年1月3日に切れるわけです。
随分と頑張っていただいておりますし、観光立国推進基本計画の見直しも23年度中に行わなければなりませんし、東北観光博の開催も何とか年度内に開いて、東北に多少とも希望を持っていただけるようにしたいと思っておりまして、そういったミッションを是非行っていただきたいということで、この法律に基づいて、任期を3月31日まで延ばすことにいたしました。

(問)それ以降は、また人事を考えるということでしょうか。
(答)それはその時に考えるということです。
ミッション自体が年度内に行っていただかなくてはならないものなので、それに合わせて任期を設定したということです。

(問)整備新幹線の件ですが、3線を同時着工する意味についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)整備新幹線については、北海道、北陸、そして九州ということで、それぞれ5つの条件について随分と詰めて来られて、財政的な対応ということについては、どうやらクリアできました。
日本海側の多重性ということや、日本海側の新幹線の役割というものも持っているわけですから、条件が整えば、なるべく3線同時着工ということの方が地元にとっても非常に意気が上がることになるだろうと思った訳です。
もちろん、それぞれ長さの違いであったり、いろいろな課題がありますので、工期そのものはそれぞれ違ってきますが、あくまでも着工は同時にしていただきたいと思います。

(問)民主党内で増税の論議が進んでますけれども、その中でまた八ッ場ダムの問題がやり玉に挙がってますけれども、これについて大臣の御所見をお伺いします。
(答)八ッ場ダムというのは、たまたま無駄な公共事業の例示に挙がってしまったわけです。
無駄な公共事業といいますが、その時に挙がっていたのは川辺川ダム、八ッ場ダム等の無駄な公共事業を廃止して、確か1.3兆円の財源を生み出すということになっていたと思います。
すでに、2.1兆円の公共事業費を削減しております。
そういうから、公共事業縮減という方向については、むしろ拍車を掛けて行ってきました。
八ッ場ダムについては、先ほど敢えてご紹介したように、やはりこの流域の持つ洪水に脆弱な特性がありますが、あまり皆さん方がご存じないのだろうと思います。
治水というのは、段々と安全度が上がってきて、水に浸かることもなくなってきて、これが当たり前で洪水など起こらないだろうと思いがちなのですが、3.11の反省というのはそこにあります。
とんでもない大洪水が起こりうるわけです。
そういう中で、流域の安全にかなり大きな効果があり、しかも7年くらいで効果があり機能を発揮する施設であるものですから、それでこれを決断させていただいたということです。
万が一の仮定として、これを行わなかった場合には、1都5県は今まで負担していますから、当然裁判沙汰になるでしょうし、これは全部返さないといけません。
そして、八ッ場ダムに代わるような効果のある施設を造ろうとすると、これはまた相当の額が掛かるということで、財政的な面で言っても非常に効果的であると考えられます。

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