国土審議会土地政策分科会ワーキンググループ(第1回)

議事概要

第1回国土審議会土地政策分科会特別部会ワーキンググループ 議事概要
 
 日時:平成29年10月6日(金)10:00~12:00
 場所:中央合同庁舎3号館4階特別会議室 
 
<所有者不明土地を円滑に利用するための制度の方向性について>

◯所在不明者について、対抗要件をきちんと備えるような努力をせず、自分の所有権等を主張してこなかったのであれば、権利保護の度合いを緩めても良いのではないか。

◯明示的な反対者がごく一部の共有持ち分しか持っていない場合への対応として、民法で、共有持ち分の過半数の同意があれば一定の利用権を設定できるという原則があるが、合理的な探索を行った上で確知できない人については、過半数などを計算する基礎から除外していくようなことも必要ではないか。

◯現行の収用制度の簡素化や新たな制度の方向性の検討と、所有者探索の義務をどの程度とするかということは、深く関連してくるため、一体的に検討する必要。

◯ある時点での価値で補償するということが原則ということは理解するが、所有者の立場から見ると、利用後に価値がどう変化するかも考慮が必要ではないか。

◯新たな制度の対象となる公共的事業について、収用事業に加えてどのような事業まで対象とするかが重要。提示された公共的事業のイメージの資料でも、仮設のような本当に一時的な利用から、収益が上がるような事業までかなり性格が異なるものがある。中身を精査しながら、対象事業について議論をしていくことが必要。

◯収用制度の対象とならない公共的事業について、都道府県が市町村長の意見を聞きながら裁定することとなっているが、市町村長の意見だけで良いのか、あるいは第三者機関への意見聴取手続きを設ける必要があるのか、収用制度の手続きと照らし合わせながら検討が必要。

◯今回の公共的事業に関する制度は本邦初の制度であるため、いろいろな点を慎重に検討する必要がある。例えば、設定しようとしている「利用権」について、第三者から妨害を受けたときに、利用権の主体が民事事件を扱う裁判所にどのような権利保護を要求できるかなど、設定後の利用権の効果について考えておく必要。

◯土地も含め、憲法上の財産権は本来、強い権利ではないが、民法や土地収用法では、所有権を保護すべき強い権利という認識、時代背景の中で成立した。しかし、所有者不明土地問題は、これまでの法解釈や法制度が前提としている事実関係とは随分違った状況で起きている。

◯財産権の制限や収用には相応の理由が必要であるが、権利の社会的な拘束性と制限の程度の均衡が重要である。その意味で、権利を奪う収用については公共性が厳しく求められるが、私権との調整が行いやすい場面で簡素化した公共事業に関する措置を検討し、権利制限の程度が弱い場合については公共的事業に関する措置を検討するという切り分け自体は合理的。
 
 
<所有者探索の円滑化の方向性について>

◯簡素化の方向性はよいが、国民の観点からは、どれだけ汗をかいたか重要なポイント。公簿による調査を充実させることで、できる限り聞き取り調査をしなくて済むようにするという方向性が重要。

◯まず、どういった情報が探索に資するかリストを整理して、そのあとで個人情報の目的外使用の関係などから、実際に使えるものはどれか議論していけば良い。

◯聞き取り調査の範囲については、親族など公簿調査で容易に把握できる範囲が現実的ではないか。

◯所有者は分かっているが、海外など遠方にいて非常にコストがかかるという場合も、簡便にできるよう、併せて検討いただきたい。

◯聞き取り調査は、地縁が機能していた昭和の時代には意味があったのかもしれないが、現代では手がかかる割に成果があがらないことが多い。公共機関の持っている情報をしっかり収集し、所有者探索の方法を現代化・合理化する必要。

◯探索による利益が、探索に掛かるコストを上回っている際には、探索範囲を広げていくことが合理的だが、探索コストが上がっている現状では、探索範囲を一定に限っていくような仕組みを作っていくことが必要。

◯行政機関が保有する個人情報の提供については、公務員法上の守秘義務や個人情報保護法制の目的外利用提供禁止原則との関係が問題となるが、法令に基づく事務に必要な場合については、目的外利用提供禁止原則の例外事由にあたる。法律の中に本件の情報提供の根拠規定を置き、情報の利用を可能とする方向を検討してほしい。

◯聞き取り調査は個人情報を第三者に伝えることになり、かえって個人情報保護の面から見ると問題がある。

◯ある事業を行うにあたって必要な情報を取得する必要があるが、国や地方公共団体によるそれと、他にも営利的な事業を営む民間事業者によるそれとでは、まったく違った枠組みを検討すべき。国や地方公共団体とは異なるコントロールが必要。
 

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