第16回計画部会 議事要旨

第16回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和5年2月3日(金)15:00~16:56
 
2 場所
 合同庁舎2号館12階国際会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、海老原委員、小田切委員、風神委員、木場委員、久木元委員、桑原委員、坂田委員、地下委員、首藤委員、末松委員、瀬田委員、滝澤委員、田澤委員、中出委員、西山委員、広井委員、福和委員、村上委員、諸富委員
 
4 議事
 (1)新たな国土形成計画に向けた主要論点整理について
 (2)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
 議事について事務局より説明を行い、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員からの発言や事務局からの回答は以下のとおり。
 
○従来の国土計画が願望を言うにとどめる傾向がなきにしもあらずだったが、この危機の時代を考えると、KPIのようなものを設ける意味ではないが、どこまでのことをいつまでに達成するという目標をできる限り明瞭にしたい。
○エネルギーの計画や強靱化計画などは非常に重要だが、計画間の整合性が非常に問われる時期になってきた。この危機の時代は国土計画だけで処理できる話ではないので、更に上位の計画ですべての方向、目的、制約条件あるいは能力の整合性を図る必要がある。
○基本的には地方分権はいい方向に向かってきたと思うが、一方で国民の安全に関わるようなことについては、地方それぞれのやり方に任せていると問題が多い。地方分権を否定するわけではなく、その工夫をいかしつつ、しかし安全についてはより統合的な方向にもっていく、といったことを是非もう少し言って欲しい。
○資料1の4ページにある国土形成計画の基本構成(案)では、国土の刷新に向けた4つの重点テーマのうち左側に地域生活圏が整理されており、右側に3つのテーマが整理されている。一方、9ページではそれぞれのテーマが同列に相互連携する関係として整理されている。今回の計画では地域生活圏が大きく打ち出されるという中で、地域生活圏をどこまで中心に据えるのか。4つのテーマのハブとして位置づけるのであれば、キーコンセプトを打ち出す際の重要な論点となり、方針に関わるため、各テーマの関連性については整理していただきたい。
○国土構造の基本構想のキーコンセプトに関して、現行計画でも重層的な圏域構想という観点は書かれているが、次期計画では中枢中核都市、三大都市圏が一体化した新たな交流圏域及び地域生活圏といった重層的な圏域構想がある点が特徴である。その辺りを議論されると、全体の構成がまとまると思う。
○全体としてエネルギーや食料など危機的状況にある課題が多々あるが、若い世代、これからの世代が希望を持てるようなポジティブな国土の未来像を示していくことが基本的な視点として重要。地域力や地域価値といった言葉も示されたが、魅力あるまち・地域をつくっていくことが基本。地方都市の空洞化・シャッター通りをどう改善、あるいはウォーカブルなまちにしていくのか、若者にとって魅力あるまちにしていくのかという点は優先度の高い課題。
○コンセプトに関しては、以前の計画部会で私は多極集中を主張し、他の委員も多極集住といったことをおっしゃられていた。人口減少時代において多極分散だと低密度になりすぎるため、集中しつつ多極化し、それぞれの極はある程度集約的な空間構造になっている多極集中が一つの考えになると思う。
○グリーン国土や自然資本、生態系、生物多様性といった、従来それほど強調されていなかった新たな時代のテーマを重視していいと思う。
○多角的、豊富な観点が資料に盛り込まれている中で、女性活躍が細部のようにも見えなくもないが、持続可能性や人口減少という観点から見ると重要な切り口。女性活躍が挙げられていること自体は大変よいと思う。これまで女性活躍が取って付けたような印象が否めなかったが、今回の資料では、全体の中での女性活躍の位置付けや、女性という存在をどう編み込んでいくかが見えてきた。一般の方が見て、特にテレワーク、デジタル人材としての女性のイメージで女性活躍を考えているというのが具体化してきた。一方で、女性活躍が女性だけをターゲットにしたもののように見える傾向があるため、そこが改善されると、より幅広い皆さんに関心を持っていただけると思う。女性の多様な暮らし方、働き方の選択肢を広げるだけでなく、男性による家事・育児への参加の拡大というのは、男性の多様な暮らし方、働き方にもつながると思う。女性のみならず、男性も暮らし方、働き方の選択肢を広げるということや、関連してくる人は女性だけではなく、いろいろな人を含むことを明確に記してはどうか。
○男女の性別役割分業意識は地方では固定的であり、東京や大都市では固定的でないというような資料が掲載されているが、全国的に意識変化が必要であるということは言うまでもないが、価値観の地域差と新たな国土形成計画における政策との関係性がよくわからない。新たな計画に関係する政策によって、男女の性別役割分業も含めて人々の価値観を変えていくのだろうか。価値観まで踏み込むのかということが曖昧のままに、なんとなく掲載されている印象がある。もし、人々の価値観も含めて、国土形成計画の中で変えていくのだとしたら、どのように実現するのかが非常に疑問。国の計画における価値観の取扱いには幾重にも慎重であるべき。進んだ都会と遅れた田舎というステレオタイプに国がお墨付きを与えてしまうということにもなりかねない。このグラフを掲載しないほうがいいと思っているが、掲載するのであれば、計画や政策の中での目的や位置付けを明確にした上で取扱いを考えていただきたい。
○ダイバーシティ&インクルージョンについて、事務局で整理していただきたい。
○テレワークという働き方は、今まで働けなかった方が場所や時間にとらわれず働けるようになり、これからの国土づくりや地域づくりにおいて大きな影響を与えると思う。一方で、テレワークはデジタル化が進まなければ普及しない。
○デジタルとリアルが融合するとの記載があるが、デジタルとリアルは対語ではなく、リアルの対になるのはオンラインやバーチャルだと思う。デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成とあるが、地域生活圏の形成に限らずこれからのまちづくりはデジタルとリアルの両方がないと成り立たず、この点はより具体的に記載いただきたい。第3回計画部会で、デジタルとリアルの融合について、一つのイメージをご説明させていただいたが、そちらも参考にしていただきたい。
○今後のキーコンセプトの議論にあたり、「新しい時代への地域と国土づくりへの挑戦」や「デジタル化によるオンラインとリアルの融合」という言葉を検討いただければと思う。
○完成した国土形成計画を国民が読んだ時に、自分たちが何をすればよいのかというイメージが、今のままでは湧きにくいと思う。資料の冒頭ではデジタルの融合と言っているのに、コンパクト+ネットワークの議論にデジタルという単語は入っていないが、どのコンセプトにもデジタルの要素は入るからあえて書いていないということか。地域生活圏の形成については、集落生活圏との関係性が整理されるとよい。全体的な構成として、広域での連携の話がまずあって小さい単位へという流れになっているが、この会議ではボトムアップでやっていこうという議論をしてきたので、記述の順番は逆のほうがいいのではと感じた。
○全体を構造化してはどうかと思う。全体として一番上にくるのがミッションとかパーパス、その次にくるのがアプローチ、その次がそれらを具体的に実現するためのメジャーズやドライバーで、それを実現するためのマネジメントがあると思う。現在の資料の中には、これらが基本的にすべて盛り込まれているが、関係がやや明確ではないので、そういう議論が必要ではないかと思う。ミッションとパーパスについては、4つの価値統合型国土と思った。四つの価値は平たい言葉で言うと、地域生活圏はWell-beingの向上、産業転換は経済的な価値創出、グリーン国土はグリーン、サステナブルやリジェネラティブといった新しい社会的価値を生み出す、国土利用・管理は安全安心といったようなものだと思う。そういった四つの価値をドリブンとした国土構造の改革を行うと書かれているものと理解した。ただ、4つの価値の間のオーバーラップが非常に重要で、オーバーラップがあるがゆえに投資の価値が高まったり、人材層の厚みが増したり、実現不可能なものが実現可能になるといったところがあると思う。デジタルはこの4つのアプローチ全部にとって非常に重要な手段であって、本来どれにも出ていいものだと思うが、生活圏のところはイメージをより明確化にするため、ここだけに出てくるというのはあり得ると思った。4つの価値軸の統合型国土と言った時に、統合するための我々の大きな目玉としての手段がリニア新幹線だろうと思う。リニア新幹線は4つの価値軸の統合において大きな力を発揮するものだと考える。
○地方の視点と国の視点の両方の大切さが指摘されており、意味があるものになっていると思う。それを実現するに当たって、コンパクト+ネットワークの問題と、それぞれの立場でのマネジメント力強化という点を強調していただいているのも良いと思う。
○今までは国と県と市という既存の仕組みの中で動いていたが、県を越えた広域ブロックの問題、市町村を越えた地域生活圏のような市町村連携の問題、集落を越えた連携の問題等に取り組むことが重要である。多層・多重と資料に記載があるが、例えば防災のような問題は地域生活圏では難しく、少なくとも広域ブロックくらいで担う問題である。一方で、集落連携で担っていく役割もあるはずで、それぞれの階層においてどんな役割を担うのかということを、もう少し明示した方が良いのではないか。それが分かってきたら、コーディネートする人はどういう人で、それを実際に実現していくための仕組みをどうやって作っていくべきかということまで書くと、従来の国、県、市にとどまっていた役割が、新たな組織体制に向かっていく。さらに、それぞれの階層で官民連携をする必要があるが、民間の力や主体性を引き出すための具体的な達成方策が記述されていないので、そこを記述できるようこれから我々も含めて努力が必要だと思う。そこまでできると、エリアごとに現状の地域課題や未来を考えていくことができるので、それぞれが当事者意識を持つような環境づくりをしていくことが必要である。
○内閣府で南海トラフ地震の被害予測の見直しの作業が始まっており、来年には基本計画の見直しに入る。南海トラフ地震は、日本の半分が被災する地震であるため、災害が起きた後の日本のありようを災害が起こる前に考えておかなくてはならない。起きた後に考えても遅い。国土計画の中に、南海トラフ地震だけではなく、極めて重大な災害が起きた後の国土の在り方を考えるという言葉を入れておくとよい。
○実際に取組を進めていく上では、普通の市民の方がいかにこういった取組に参加していただけるか、ということが最終的に非常に重要。相互に助け合うみたいなことがないと、結局はビジネスベースできれいに成り立つところだけが実現していくということだと、特に初期の段階はなかなか進まない。まだ5%、10%の人しか賛同していないような段階を、30%、40%に進めていく方が非常に重要。キーワードを検討する際にも、皆さん一人ひとりの参画が極めて重要というようなことを訴えていけるといい。
○人材育成について、東京などからデジタル人材や地域経営人材を連れていくといったようなことが書かれていて、これも重要だが、やはり普通の人が参画をして、それぞれ世界を変えていくという観点からすると、ローカルの小学校とかで地域を愛する人材を育てていく、そこに地域の方も参画をするようなことも非常に重要だと思うので、少しポイントアップして書いてもらえるとありがたい。
○「コンパクト+ネットワーク」とあるが、この言葉を受け取る自治体は都市レベルでの市街地集約を思い浮かべる。国土計画としてはもう少し広いスケールで、都市圏に対して地方圏の維持・形成などを訴えるものであるという点も踏まえてコンセプトを検討いただきたい。地方の多様な広域圏の維持・形成にデジタルとリアルの融合という言葉が入ってくるのかと思う。
○資料1の4ページに「中枢中核都市」という用語があるが、これは内閣官房が指定した82都市を指す固有名詞である。この用語を国土形成計画の全国計画に書くとすると、中枢中核都市を核とする広域圏の形成を各自治体の計画や広域地方計画で目指すということになり、国の強いメッセージを出すということになるので留意されたい。具体的な考えを提示することは基本的には良いことだと思う。10万人規模の地域生活圏や、広域地方計画の策定単位である1千万~数千万人規模の地方ブロックといった、いくつかの圏域が計画に書かれており、それぞれの圏域が担う役割についても国である程度考えるのか、全て地方が考えるのか、ここまでは国で決めて、あとは広域地方計画等で地方に決めていただくという観点もあると良いと思う。
○国全体のスタートアップ育成5カ年計画もあり、民間とのコラボは今後重要になっていくので、国土形成計画においても、スタートアップをいかに活用していくかという点を強調したらどうか。国交省の方向性が日本全体としての方向性と整合性があるということを示すためにも必要であると考える。例えば、公共プロジェクトに対するスタートアップの比率を上げるという点等、国が積極的にアクションを起こすという点を盛り込むと良いと思う。
○我々が議論してきたことを、軸線をはっきりさせて私なりにこういうやり方もあるのではないかと言うことを参考までに申し上げるが、まず、スタートラインは危機感ということだと思う。その危機感をこの計画の中で受けようとすると我々は何か変わらなければいけないということに尽きると思う。今のままで良いのであれば危機ではない。危機を強調して未来に向けた計画で受けようとすると、変わるということを一番言っているはずで、刷新などがそれに近いのかもしれない。4ページで3つ変わると言っており、国土というものが変わるということ、国土基盤、インフラが今までとガラッと変わるということ、国土や国土基盤の上に乗っかって行われる人々の社会活動がガラッと変わるっていうこと、およそこの3つを言っている。その一つの大きなきっかけがデジタル技術の活用ということを言っていると思う。本当はもっと強くて、変わり続けるということだと思う。変わり続けようとすると、変わり続けるための体制を考えなくてはいけない。とりまとめの中でマネジメントのような言葉を多用されているのは、変わり続けるということを表現しようとすると、難しい言葉を使えばマネジメントとかガバナンスということを言わなければいけない。その中の一つとして、ローカルマネジメント法人があるのはそういう位置づけだと思う。変わり続けようとすると、変わり続けるのを担うのは誰かと言うと人材の話になり、それが狭くなればマネジメント人材であるし、広く取れば変化ができるような人材を育てるということになると思う。それを形に示さないのかというと、変化することなので形で示すのは難しいところがあると思っている。
○伝統的に国土計画で議論されてきた集中か分散かは、それだけで表現するのはもう限界に来ていると思っており、敢えてそれを言おうとすると、物事を多層的、レイヤーで捉えざるを得ない。機能は共有されているが、その上に乗っかる個性は別につく機能のように作られ、その作られ方もどんどん変わっていくという風に表現しなければいけない。例えば極がいくつかあって、それが繋がっているというような古典的な表現だと伝わらないと思う。同様に地域力を丁寧に言うと、地域が変化し続ける能力を持つということを言いたいはずで、守ろうとしているのではないのだと思う。もちろん強靱化は英語で言うとレジリエンスで、そういう意味があると思うが、日本で「強」という文字が入ると、すごく頑丈なあまり変わらないものを作って頑張るみたいに聞こえるので、そういうことも配慮いただいてキーワードを考えていただいたらありがたいと思う。
○資料1の目次にある項目1~11についてだが、これらの主体は誰なのか。国が主体のように読み取れるが、計画の主役はあくまで生活する国民でなければ、国民に実感を持って受け止められないだろう。危機感を持って、国民が自身の生活を変えることで現状を打破していくには、電気代高騰やエネルギー不足等の身近な題材を用いて、文章から従来の施策とは違うことを見せなければならない。「国が頑張ってね」と言われる内容では、他人事のように捉えられてしまう。本計画は全国民に関係するのだという点を、資料に落とし込んでほしい。「国・自治体・企業・個人が努力してこの危機を乗り越えなければならない」と実感させてくれるようなフレーズ・見方を考えていきたい。エネルギー・食料関係の内容についてだが、この先10年程度で実現可能な施策を記載してほしい。日本のエネルギー自給率は約10%程度、食糧自給率は約40%程度だが、ここ数十年はそれでも何とかなってしまっていた。しかし、現在はエネルギー不足が目に見える危機となって迫っている。この危機を一体どういう風に乗り切るかという知恵を、この計画で様々な分野において盛り込みつつ、そして国民が本計画を応援しようと思えるような表現にしたい。
○各県庁所在地を回って感じるのは、多極集中は事実上始まっているということである。県庁所在地はだいたいマンションがどんどん建っていて、おそらく人口が都市部に集中し、周辺地域は人口の減少が加速している。そうすると生活圏の再構築を、デジタルを使ってやらざるを得ない地域が増えているだろうし、それを受け入れる都市部でも新たなコミュニティを再構築する必要が出てくるのだろう。
○地域の経済界の方や取引先と話していると、やはり一つの都市だけでは無理で、広域化がないと東京一極集中の流れが止められないという認識は地元の経済界も強く持っていると思う。ただそれを誰が実現するのかは非常に難しく、公務員も減る中で、その主体が市なのか県なのか経済界なのか曖昧なので、ここで指摘されている地域を支える人材みたいなものを新たな目線で、女性も含めて考え直さなければいけないと言うところでも共感する。
○産業の構造転換が国土計画として位置づけているのも非常に重要な点だと理解している。
○これから広域地方計画に降ろしていく時に、おそらく従来の広域地方計画の線引きも実際滲み出していて、オーバーラップしていくというのが非常に重要ではないかと思う。22ページの日本地図が重なり合っているように図示しているのも、そういうイメージを持っていると思うので、広域地方計画を作るときも、従来の地域の中で完結するのではなく、関係性を持ってオーバーラップするようにということと、三大都市圏のような複眼的な国土という概念がうまく広域地方計画に落ちるようにしていただければと思う。
○目指す国土の姿での、世界に誇る美しい自然と多彩な文化を育むという表現については、従来あまり議論されてなかった、国土の美しさをさらに磨き上げていくという部分が入ったことは大変重要だと思う。
○横串的なテーマとしてデジタルと地域人材が入ったことが大変新しいと思う。従来の国土計画にはない視点で、今回、とりわけデジタルと地域人材を横串的な位置付け中に入っていると理解した。
○コンセプトについては、現行計画の対流促進型国土形成という言葉の意味付けをもう一度議論してみたい。例えば、第四次全国総合開発計画の多極分散型国土は、国土自体を多極にするという国土が客体である。ところが、対流促進型は、国土が主体となって地域や人の対流を作り上げていくという意味であり、大きな変化があると思っている。つまり、あくまでも国土全体が地域を主体としながら、変わっていくような仕組みを作っていく。国土が大きな培養器として、地域力が刷新し続けられるような、地域力維持刷新型国土形成のようなイメージが望ましいと思っている。この言葉にこだわるわけではないが、国土が一つの主役となって、地域が変わることを支えていくというイメージは、今までの国土計画、とりわけ現行計画までのものとは違う大変重要な位置付けが意識できるのではないかと思う。
○地域生活圏について、概ね10万人ということだが、総務省の定住自立圏は5万人以上で、平均すれば同じような数になる。総務省の検討と実践のポイントはマネジメントである。例えば、定住自立圏ができる前に広域連合などを作って、十分マネジメント体制が構築されているところが定住自立圏でも大きな前進が見られるという、ある種の相関関係があることを把握している。そういう意味では、地域生活圏のマネジメントの仕組み、それを差し当たり日本版ローカルマネジメント法人としているわけだが、ここの具体化がさらに必要だと思う。それが無ければ、完全に絵に描いた餅になる。そのポイントを改めて重視していただきたい。
○概ね10万人であることだけで地域生活圏でのマネジメントができるとは思わない。地域コミュニティが下層となって、地域生活圏が二層、上層となるという一種の重層構造のイメージを持っている。現在、各地で様々な地域運営組織RMOの取組があって、中にはかなり特徴的なものが都市、農村でそれぞれ出来上がってきている。そういったものが一つのベースとなって、地域生活圏が生まれるのではないか。そして地域管理構想も、ローカルマネジメント法人等が下層の部分と連携するイメージではないか。とりわけ農村部のイメージは、集中・集住であるとは思わない。地域運営組織のなかでは、むしろ低密度を前提として、デジタル等を導入しながら、コミュニティの力で地域交通や買い物なども含めて新しく作り上げていくという、まさに刷新しているような事例もいくつも出てきている。この部分はいわば地域コミュニティの在り方として改めて議論していただきたい。
○食料問題については、昨年12月の食料安全保障強化政策大綱だけが位置付いているが、食料安全保障は、農地、労働力、資材や技術、そしてフードシステム全般に渡るものである。大綱では、資材価格の高騰に関する対応が中心に書き込まれているが、重要なことはそれだけではない。食料安全保障にかかわる国土計画的なバージョンアップというような、新たな国土形成計画の基本構成に入るような形での位置付けが改めて必要である。農水省の政策を紹介すれば足りるということではないと思う。
○コンパクト+ネットワークに関連して、京都大学の森知也先生の研究を拝見した。研究結果によると、都市数が2300年には431から152まで減少し、東京の人口シェアはさらに拡大する上、通信技術等の進歩は大都市へ一極化するということが言われていた。意思決定の主体は市町村単位ではなく、研究のなかでは「柔軟な地方政府」という言い方をされていたが、もっと大きなレベルでマネジメントするべきだとのこと。これは幅をもって解釈する必要はあるが、国土形成計画と連関させると、市町村界にとらわれない地域間の連携や、主体の連携といったコンセプトが今後重要になってくるのではないかと感じた。
○キーコンセプトの検討に当たり、事務局の方で作成した考え方やキーワード、過去の計画の一覧表を拝見したが、漢字とカタカナの単語が数少ない助詞でつながっているものが多く、ひらがなの用語が少ないと感じた。例えば、国土強靱化などでよく使われている「強靱」という単語はものすごく硬そうなイメージになるが、本当は「しなやかな」という言葉が一番適切な表現だと思う。活力であれば、「いきいきとした」「のびやか」「のびのびとした」など、ひらがなをもう少し上手に使って堅苦しくない表現ができると良い。変化し続けなければいけないという点にも共感していて、変わり続けるなど、分かりやすい表現を少し考えても良いのではないか。
○南海トラフ地震や首都直下地震などの可能性に真正面から向き合わなくても、これまではなんとかやってこられたが、それは、自分の専門とする防災安全の分野からも、もう違うと感じている。その意味で、リスクから目を背けないことや、課題に真正面から向き合うことを自分事にするということを何か考え方に入れてもよいのではないか。概念で終わらせないで、各自が自分事として、こうありたいというものを実現するという考え方をうまく入れていただきたい。
○今回コロナも経験する中で地域も限界に達してきていると思っている。地域力や地域価値、地域資源を活用していくことは分かるが、地域だけが頑張るのはそろそろ限界がある。地域の実情としてかなり疲弊している。もう少し違うワードも一緒に入れてもらえるといい。
○これからは外国人にも選ばれるまちづくり、国づくりをしていかなければいけない。女性活躍に続いて、外国人人材の活用や、外国人に選ばれる国はどういうものか、といったようなところも少し書き込む必要がある。
○これまでの議論を踏まえ、事務局にて主要課題について漏れなく論点整理をしていただいた。現行計画においては、対流促進型国土やコンパクト+ネットワークなど、様々な課題に対してどのような国土であるべきか、その方向性を国民の皆様に分かりやすくキーコンセプトで打ち出していた。今、歴史的な大転換点に来ており、その切迫感を背景に端的なキーワードを使いながら計画の意図を伝えるのが大事。
○どの分野も「地方の責任で」ときれいごとを並べているところがある。地方は悲鳴をあげているというのはどこかに書きたい。
○外国人の捉え方がこの5年くらいで変わってきた。外国人について別扱い的に物言いするのではなく、国籍や民族によらずとか、多民族の日本にもう少し舵を切ってもいいのではないか。
○集中と分散の言葉の定義をきちんとしておかないと非常に紛らわしくなると思う。デジタルも含めて大きくは分散という方向がこれからの時代の構造の基本になると思っている。AIを活用したシミュレーションによると、実は分散しつつ、一定の集中の要因、要素を盛り込んだような姿が一番パフォーマンスも良いという結果が出た。要するに、分散といっても全くの均質になっていくということではなく、分散の中に、ある種の拠点的なものがあるというのが多極集中というイメージである。具体的にはドイツのイメージで、日本の場合は20万人、10万人以下の都市はほとんどシャッター通り・空洞化しているわけだが、ドイツは数万、場合によっては1万人以下の町村と言われるような地域でも割と中心部に人々の集まるコミュニティの拠点あり、それが中心性も持って、コミュニティのアイデンティティや賑わいの土台にもなっている。国土交通省も小さな拠点に取り組んでおり、私のイメージは住まいまで集中するというイメージではなく、むしろ機能、コミュニティの拠点的なものが、小さな規模のものまで含めてあるというものであり、それを集中という言葉で表そうとしている。色々と議論もあるかと思うが、どのような国土の空間イメージを考えていくかというのが、ひとつの論点になるかと思う。
○公共交通をどうしていくのかについて、もう少し議論が必要だったと感じた。2030年に向けて人口が減少していく中で、これまでのように都市部の収益で地方の経営をまかなうということが難しくなってきている。地元の交通の問題は地元でどうにかするという発想では立ち居かなくなっていくと思う。滋賀県では、交通税を導入するかどうかを検討しているが、2030年に向けて公共交通における公的責任のあり方について本格的に議論する必要があると思う。
 
《チャットによるコメント》
○今回の「女性活躍」という切り口が、女性・男性を含めた幅広い層の幸福や多様性を向上させると、夢があると思う。地方にはインクルージョンの視点でも多くの可能性があると思うので、都会出身の若者にもそれを知ってほしい。
○女性活躍について、単に女性の処遇の問題という具合に矮小化することなく、もっと大きく深く捉え、もっと根本的な社会転換にもっていく物言いが重要。
○もちろん女性の処遇問題も大事だが、大きく深く捉えていくことで、社会全体の転換、全ての当事者・生活者に関わることにつながると信じている。地方だからこそダイバーシティとインクルージョンを先進的に達成していく、という視点がもっと前面に出てきてもいいと思う。
○女性にフォーカスが当たっているが、働き方の視点からすれば、地方でテレワークができれば、女性はもちろん、障がいのある方も、治療中の方も、親の介護中の方も、そして災害時にも寄与し、社会全体が大きく変わると思う。
○この計画が単に官庁や企業への指針ではなく、国民一人一人へ向けたものでもあることは重要なポイント。その際、国民の「理解と協力」までは従来も他の計画でも言っているので、これに加えて、さらに「行動変容」「責任ある積極的行動」を求めるといった姿勢が必要ではないか。
○「危機感」という言葉はやや使い方が難しい言葉だと思うが、新しい仕組みの主役は「提供者側」ではなくて、全国民(住民)であるのかなと思う。なにか新たな義務や責務を課す、ということではなく、地域(総体としての国)を愛する人たちが知恵とエネルギーを出し合って改善に向けた「うねり」を生み出すことが非常に重要。
○D&Iという言葉があったが、国土計画においては、Equityの"E"も重要かと考える。日本の良好なデジタルインフラ(通信網)を利用することで、デジタル、メタバースを広く活用し、「公平な土台」を早期に実現できるものと考える。例えば、東京大学では、「メタバース工学部」を昨年秋に開講したが、最初のセメスターで全国から2,000人のジュニアの参加があった。
○「何を変えるべきなのか」できるだけ明瞭に示したい。単に変わったのは用語の「名称」だけというわけにもいかない。
○地域生活圏の推進にあたって共の視点、連携というキーワードが出てくる。とても重要で、地方の限られた経営資源では、これまで以上に事業連携の視点を取り入れ、連続性や出口を意識したサービス・活動の設計が求められる。その際、地方ならではのニーズに刺さるサービス・活動の設計でないと、いくら予算を増やしても、住民の満足度が向上しないだろうとも考えている。地域生活圏という理念がどう広がり、実行性の面で、国・地方の関係、地方同士の関係など統治構造の議論は、今後避けては通れない議論と感じた。
○本計画はわかりやすい発信だけでなく、国民の気持ちやニーズの受信も含めた「PR」が必要で、受信の仕組みをどうつくっていくのかも重要な視点。
○「ひらがな」(つまり和語)の利用は良い。こなれの悪いカタカナ語やアブリビエーションをミニマムにしたい。
○「みんなが自分ごとに」というキーワード、防災や環境という面でもそうあり、インクルージョンという言葉にも通じて、とてもいいと思う。
 
【事務局からの回答】
○計画のキーコンセプトを考えるにあたって、4つの重点テーマの関連性を明らかにすべしとの御意見をいただいたが、4つのテーマ相互に関連性があり、統合的に取り組んでいくことが重要と考えている。一方で、新しい発想での地域生活圏を軸として打ち出しているので、これが中心となるものと考えている。その他、キーコンセプトを考える上で、変わり続けるといった動的な観点、国土が主体である点、国民が主役となって自分事として捉えてもらうなど、様々な点を御指摘いただいた。また、それらをどう表現するかだけでなくどう国民に伝えるかということや、国と地方の関係性を考慮しつつ地方の厳しい現実を踏まえることなど、いただいた御意見を咀嚼して、計画案の作成を進めていきたい。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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