第13回計画部会 議事要旨

第13回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和4年10月14日(金)10:00~11:53  
 
2 場所
 合同庁舎2号館国際会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、畝本委員、海老原委員、小田切委員、風神委員、木場委員、桑原委員、地下委員、末松委員、滝澤委員、高村委員、冨山委員、中出委員、西山委員、広井委員、福和委員、藤沢委員、村上委員、
 
4 議事
 (1)新たな国土形成計画(全国計画)の策定に向けて
 (2)国土をめぐる状況と目指す国土の姿について 

主な発言内容(委員発言順)
 事務局より議事について説明を行ったのち、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員から出た意見や事務局の回答は以下のとおり。
 
○我が国の競争力を抜本的に失うという危機感をもう少し出した方がいい。逆にチャンスとして人口が減少する地域でも自然資本の価値が高まるというようなことを強調した方がいい。
○デジタルとリアルの融合による国土づくりのコンセプトや、ローカルとグローバルで分けていることは大賛成だが、ビジネスの観点から言うとスーパー・メガリージョンのような経済都市で頑張るところと、国土の居住地域の半分の人口が2050年に半減するという状況を踏まて、ビジネスで勝負できないところは環境保全などで勝負するしかないというメリハリ感をもう少し出た方がよい。デジタルで地域生活圏のような生活ができる環境を整えなければいけないという若干の不都合なところも逆手にとって前向きに書く方法もある。
○国土審議会の議論の中で、スーパー・メガリージョンというと東京一極集中の概念が出すぎているという指摘もあるようなので、スーパー・メガリージョンの中での三大都市圏を含んだ複眼的な対応や、札仙広福のような経済都市もあるということも一つ補強する必要がある。
○現状の危機意識については、全体的には中間とりまとめよりも相当シャープになっている。「世界の中での日本の立ち位置の変化」という言葉について、その前段として世界の状況自体も変化している。具体的な中身の部分ではその点についても書かれているが、このタイトルでは日本の位置づけだけになっているのが少々気になる。
○グローバル経済の中で国際競争力をつけるのは極めて大事だが、ウクライナ情勢を含めた昨今の国際情勢に象徴されるように、グローバル経済に依存しているが故のリスクもある。グローバル経済には正と負の両面があるという認識を表現として入れたほうがいいのではないか。
○全体の構成について、現状認識や目標、重点テーマというところで終わっているが、その種の国土計画では国民はおそらく満足せず、国民が今抱えている不安感には答えきれないという印象。とはいえ、目標に対してこれをやるとこれだけ上手くいく、というほど甘くはないので、個々の政策を全て書けとは言わないが、日本の政策の基調をどういうふうに転換していく必要があるのか、といったメッセージのようなものについて、最後のコラムや章で入れてはどうか。
○週に何回か出社するハイブリット勤務なのか、完全リモート勤務なのかによって、コロナ禍を経た働き方の変化が地域や国土に与える影響は異なると思う。ハイブリット型のテレワークの場合、デジタル化さえすればいいというところで終わってしまうと過剰評価になってしまい、人口流出の解消にはつながらないと思う。交通の利便性などオフィスへの通いやすさも併せて考える必要があると思う。地方にいる人がどのようにテレワークしていくかということをもう少し煮詰めていく必要がある。
○デジタル田園都市国家構想の実現について、「デジタル」はかなり議論されていると思うが、「田園都市」は深掘りされていない印象がある。自然資本、ネイチャーポジティブ、グリーンインフラ、生態系と「田園都市」はつながってくる内容だと思うので、このあたりをうまく組み合わせて整理していくというのも一つだと思う。
○中心市街地・地方都市の空洞化、シャッター通りが重要度の高い課題だと思っている。そのために以前から多極集中と言っているが、国土の方向性を示すようなコンセプトを明確にしていくことが大切。併せて、地域公共交通、空き地・空き家を考えると、公共性も関連してくるが、そのあたりの整理が課題。
○産業構造の変化が空間構造にどう関わってくるかということが重要な視点。これからは産業構造も新たな分散型になっていくと思う。デジタルは、分散化を可能にすることにある。エネルギーも再エネルギー中心に分散化、高齢化が進んで医療や福祉も元々分散的、食料安全保障で農業も分散的、文化や観光も分散という、産業構造の変化の中での空間構造を整理して提示することが大事。
○リスクに関して世界的な情勢を見ていると、ウクライナの問題やドイツのパイプラインなどの地政学的なリスクの発生は充分あり得ると考えておかなくてはいけないと思っている。そういうものを書くのは国民不安を高めることにも繋がると思うので、どのようなインフラが毀損された場合に、どういう問題が起こるのかというシミュレーションと、それに対する備えを書いていくということが非常に重要ではないか。
○働き方の変化にも繋がるが、都市部、大企業というこれまでの歴史の中で持てる存在になった地域や企業が、いかに地域に責任を持って再配分をしていくかという考え方を促進することが重要。例えば大企業が徹底的にリモートワークを推進して地方で働けるようにする、その大企業が兼業・副業として地方においてリモートワークをしながら地域の企業や自治体との兼業を積極的に進めるなど持てるものという意味では国も同じ。国自体がデジタル基盤をしっかりと地方に示し、そのデジタル基盤をどのように使うかというガバナンス面のルールもしっかり示す。
○全体を通じてリスクの整理もしっかりしていると思うが、一方で強みの整理もする必要がある。防災・減災などのリスクの考え方、生物多様性のリスクの考え方は、実は日本から世界に対して一つのルールを提示するチャンスでもある。まだまだ日本は海外から物を輸入している大きなマーケットでもあるので、海外から見ればお客様である。日本がルールを提示して、海外がそのルールに沿って動くことは日本にとってもチャンスになる。そういった弱みと強みの整理の上で、世界に対するルールを提示していくというような観点も計画に入れていただければと思う。
○インフラのことがあまり記載されていない。この半年間、明治用水の水漏れ、電力のひっ迫、通信障害などが生じ、我々の基盤をなすもののもろさが明らかとなった。集中型のインフラを使いすぎていたがゆえに、相互にバックアップしあうことができず、老朽化で色々なものが支えられなくなってきている。社会や産業を支えるインフラが相互に依存し、ひとつのインフラが切れると全てが破局を迎えてしまうという構造は危うい。現状のインフラの相互依存関係を明らかにした上で、冗長性を高めていくことが安全・安心の観点で必要。
○民の力を活用した官民連携という記載の中で、「民」の中に個人の存在があまり感じられない。民というと企業をイメージしてしまう場合が多いが、あらゆる国民の力を集めていかないとこの難局を乗り越えられない。災害やコロナ禍を経て、個人の価値観も変えていくべき時期にある。また、集中化と分散化のバランス、官でやるべきことと民や個人でやるべきことのバランスなど、バランスについても考えたほうがよい。全体を広域的なブロックの中でうまく成し遂げていくという形で最終的にまとめていくと、広域地方計画の中でも議論できると思う。
○リスクとチャンス両方を掲げる必要があるのではないか。国際的なルール作りに参加していくということも入れたほうがいいと思う。地政学的なリスクが高まる中でのチャンスは、例えば九州と東南アジアのパイプを強化するために国交省として何ができるかという点や、デジタル、テクノロジーを取り入れた農業政策を考えること等が挙げられる。
○デジタル化の遅れや人材不足は非常に大きな課題。地方において観光は、特に人口減少下においては重要な産業になってくると思うが、その観光においても顕著に現れている。そういった課題を解決する仕組みとして官民共創の仕組みが非常に重要であり、地域マネジメントの仕組みをつくっていくことの重要性について表現できるといい。
○村の生活の仕方のイメージをクリアにした方がいいと思っている。例えば中山間部の農村においては、すごい山奥に住んで自分の家の前に田んぼと畑があるというようなイメージを農水省の人は結構持っている気がしている。それは実際の地方の状況を知らない議論であり、例えば盛岡から30分で周辺の中山間部へほとんど行けるため、わざわざ田んぼや畑の前に住む必要は無い。農村を守ることと、居住形態をより集住化するということは全く両立する話である。本気でその農村地域、自然を守ろうと思ったら逆にコンパクト・ネットワークにしないと守れない。そこに住んでいる人は80代90代になってしまい、とにかく中山間部に人が住んでいれば守れるというのは絶対嘘である。よりクリアにしたほうがいい現実というものを踏まえた上で、かつ現在のテクノロジーなどを踏まえた上でイメージの転換が必要。
○ローカルパブリックコモンズという概念を知っておいた方がいい。今やローカルな行政サービスだけでなく、物流も含めて、ローカル領域の行政的機能、経済機能が伝統的な競争原理、市場原理では成り立たない。ローカルパブリックコモンズと位置付けた上で、それをどう担っていくのがより効率的かという議論を組み立て直さないと厳しい。インフラの維持にしても、例えば電力会社が電線を管理し、通信会社が電信柱を管理し、道路は役所が管理をする。これは実はものすごく効率悪い。ローカルパブリックコモンズを誰がどのようにやっていくのか、官と民と個人の役割分担があるので、いろんな方法があると思う。そういった仕組みの議論も是非とも今後やっていけたらと思っている。
○産業再配置の議論について自分は反対ではないが、日本は資源の少ない国である。従って、例えば食料自給の問題も油が来なくなったら食料自給はできない。この議論は集団的安全保障と組み合わせた議論をしないといけない。日米、あるいは欧州、オーストラリアなどの枠組みの中で、経済的、産業的にも国土をどうデザインするかの議論が必要。
○資料1の9ページに「人口減少と超高齢化を前提に現実的かつ冷徹な政策の立案と実施を考える必要」との意見があるが、医療に携わっている身としては、高齢者の方で入院後の行き場がなくなることや施設で十分な介護が受けられないこと、また施設関係者の待遇の悪さなど目を向けなければいけない問題がある中で、現実にどの程度切り込んで検討するのかが気になる。
○新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ感染症法が改正され、施行は令和6年とまだ先だが、徐々に体制が整ってきている。しかし、高齢者や要介護度の高い方に対して人的資源をどう配分、配置するのかという要素は計画に盛り込んでいただきたい。エネルギーや食料だけでなく介護等に対応するマンパワーの不足という点も国民全体で目を向けていかなくてはいけない。
○リスクあるいは情勢が大きく変わっているということが強調されていること自体はすばらしいことだと思うが、それをどう受けるのかということを考える必要がある。今までの国土計画の時代と比べると何らかの意味で原理がすごく変わるということで、原理で前と何が違うのかをハッキリ書いた方が良い。今まではインフラにしても人にしても役割を分けていた。人の資格をなるべく細かくして、インフラも同じで一つの機能を特化することがいいことだとやってきたが、それではもう維持できなくなってきている。分けるのではなく兼ねるということ、これが原理だということは、人にしてもインフラにしてもそうなる時代だということをハッキリ言った方が良い。
○災害が起こると何が一番大事かというと、復旧力を議論した方がいい。特定のシナリオを考えてその対策を全部書くことは無理なので、何が起こっても復旧できる能力を議論すべきなのではないかと考える。多機能化を潜在的にしていることが必要であり、同じ人、同じインフラが普段は2,3種類のことをやっているがいざとなったら10種類できるというようなことが復旧力に繋がるのではないか。
○官と民の役割が特に地方経済圏では変わっていく。今までのように官は官、民は民と分けられなくなるので、まさにパブリックコモンズ的なことが原理として変わるということもハッキリ言った方がいい。
○デジタルの観点から言うと、今までのように単純に集権か分権かという議論はできない。ある種共通の基盤の上で多様性が生まれることになるので、集権か分権かということももう終わっているということを言わないと、何が違ってきているのかが伝わらないと思う。
○総理指示にもあるように、具体的対応策や官民連携は大変重要。いつ誰が何をするか、という点を具体的に整理していくことが今後のポイントになる。
○「地方の危機」という項目があるが、どれをとっても日々直面している課題であり、非常に危機感を感じている。そんななかでコロナを経験し、暮らし方や働き方におきた変化をチャンスと捉えて前向きに動き出しているところ。現状の課題や状況変化をチャンスと捉えることが重要。
○少し足りないと感じたのが医療の視点。コロナを経験し、医療現場の課題も明らかになり、また医療における国・県・市の役割もわかってきたところ、地域と医療の今後の結びつき方については必要な視点だと思う。
○人口減少・少子高齢化だからこそ、子どもが生まれるとか育つとか、次世代へつなげていく視点も入れるといいのではないか。
○日本は厳しい状況にあるので、リスクについて強調した方がよいのではないか。特に人口減少は経済規模や成長と密接に関係しているので、特に強調した方がよい。40年後、人口が30%減るとGDPが300兆円代まで大幅に下がり、人口減少によりインフラや医療などの維持が難しくなる。コンパクト化とデジタル化は必須だと思う。また、東京一極集中の是正によりGDPなど経済にどういい影響を及ぼすのかを具体的に示すと、地方移住の推進力になるのではないか。加えて、国民がイメージしやすいようにあるひとりの労働者を例にしたモデルケースで示すのもいいのでは。
○国土の課題について、リスクと構造的変化に分けて整理し、位置付けることに違和感はない。強いて言えば、リスクにおいて、人口減少と同時に労働力人口が減少して担い手が不足する点は、データの中で医療、物流についてはかなり強調されているが、もっと様々な分野も同時に検討してよいのではないか。とりわけ、国内供給力の減少で言えば、一次産業は、どこも人手不足であるのは明らかであり、食料の海外依存リスクにつながっている。そのような発想をすると、一次産業をしっかりと書き込むことも必要。多様な人材が農業に関わるということで、国民の農業参加、市民農園のようなものも含めて、それを入り口とするような、階段を上るイメージが発想できるのではないか。
○国土の姿についても大きな異存は無いが、強いて言えば、人材が切れ目なく供給されて、国土のなかで活躍するようなイメージが書き込めればよいのではないか。次回以降議論される重点テーマの横断的な役割であると思うが、人材の議論が少し不足しているように思う。賑やかな過疎という情緒的なことを、何度か申し上げているが、そんな現場に出会うことがある。人口が減少しているが、その地域の中でワイワイガヤガヤしている、これは決して情緒的なものではなく、農山村の中には実は商工会員が増えているところが出はじめており、決して点的な存在ではなくなってきている。関係人口も含めてしっかりと人材の議論をしてもよいと思う。
○多極集中あるいは集住という議論に対して、私はむしろ持続的低密度社会という議論をしている。決して二者択一ではないと思うが、そういった選択肢も含めて議論をするべきだと思う。日本の農村は世界的に見るとかなり集住している。国際的には農場制農業のため農場の中に人が住んでおり、それだけ実は分散しているが、日本の場合には集落という仕組みをとって、そこから農地に通作している。これは分散錯圃という世界的に見ても特異な存在の状況の中では、集落という、もともと集住しているということをどう評価するのかという議論が必要ではないかと思う。また、人口減少の適応策として、集落移転的な発想は1960年代から議論されており、集落移転の事業は過疎対策が経済企画庁のときから行われている。しかし、人口減少の適応策の主流となっていないことをどのように考えるのかが重要であり、最近では、集落を越えて連携して、小さな拠点をつくっていくという、集落ネットワーク圏という仕組みを評価することが必要であると思う。さらに、アジアモンスーン地域の条件を考えることが必要だと思う。アジアモンスーン地域は、ヨーロッパ社会と違って、高温多湿で非常に雑草が多い中で、しっかりと自然資本をコミュニティでマネジメントすることが必要であって、そのために居住と営農が同じ場所で今まで行われている。これにデジタル等が関与することによって、仮に気候を変えられれば、この要素も変わってくるが、決してそうではないと思うと、新しいデジタル技術などを通じて、低密度社会を追求すべきだというのが私の考え方である。この点は、しっかりと議論したいと思う。ただ、すべてが低密度居住地域であるということではなく、いろいろな状況下で低密度居住地域なのか集住なのか、グラデーションがあるというように理解している。
○それぞれの主体がいつ何をやるかということについては整理が必要。特に大企業が頑張れることがまだまだあるのではないかと思っている。例えば、賃金を上げるために大企業がどんな役割を果たせるのか、もっとできることがあるのではないかと思う。
○「新たな地方・田園回帰の動き、地方での暮らしの魅力」について、デジタルだけではなく、例えば林業やクラフトビールづくりといった職人的なことをやりたくて移住し、とても満足感を得て幸せに暮らしているといった事例についても評価をし、記載すべきではないか。手を使う仕事や人の世話をする仕事の価値についても、デジタルと同様に非常に価値が高いということも位置付けたほうがよい。
○北海道北見市では、デジタル化をうまく利用し、「書かない窓口」という取組をしている。市役所の窓口でタブレットを入力してもらおうとすると、高齢者の方には難しく、デジタル化が停滞してしまう。そこで、北見市では、本人確認等の最低限リアルでやるべきことをやればバックオフィスがデジタルを活用した入力を行い、住民票が出てくるようになっている。
○今回の資料は非常にわかりやすくまとめられており、事務局の尽力に感謝する。特に「国土の刷新が求められる時代の転換点にあるとの認識を強調」という点は非常に重要である。最終とりまとめに向けて、本計画の具体的なイメージを国民に伝えることが大切である。
○神奈川県川崎市では民間企業と協力し、人工衛星により市内の崖の変動観測を行っている。川崎市は崖崩れが頻発する地形であり、それらへの対策が必要であるが、自治体がマンパワーで広大な地域全てに対応するには限界がある。そこで人工衛星により俯瞰し、異常が発生している地域から対処することで、効率的に防災対策をすることができる。こういった事例は、デジタル活用施策が生活に及ぼす影響を明瞭に伝えられるため啓発に適しており、このような要素を本計画に盛り込むことで、より国民にとってわかりやすいものになると考える。
○11月には国土政策局主催の若い世代を集め国土形成計画への意見を聞くイベントが開催される。若者への広報が重要であるという点は、これまでの会議で何度も議題に出ており、若い世代の意見を吸い上げ今後の計画に反映していただければと思う。
○「地域の持続性、安全・安心を脅かすリスクの高まり」の中の「地方の危機(人口減少・流出と利便性低下の悪循環の進行)」の認識が甘い。ここでは人口減少の事実について書かれているが、その事実により何が問題になるのかといった点が示されていない。これまでの計画とは状況が全く異なっており、人口減少が議論の出発点にあるという認識を強めた方がよい。人口減少が大都市圏や地方都市圏に何をもたらし、どんな問題が起きるのかを整理しないと目指す国土の姿に反映しづらいのではないか。第二次国土形成計画で既に人口減少が始まっており、人口減少や高齢化、防災について示されているが、そこから7、8年も経つのに、同じように書いていてもしょうがない。市町村の現場では課題が山積しているという発言があったが、人口20万人の都市というのは全国の市町村から見れば、人材・財源もかなり持っている方であるのに、そのような都市でも課題が山積しているのであれば、さらに小規模な自治体であればより問題は深刻で切迫している。
○国土が直面するリスクに対して、巨大災害は大きいが、人口減少が担い手不足につながり、災害対応ができなくなるといったことも含めて書いていただきたい。
○「目指す国土の姿」の中の「デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり」も、人口が減少するからDXが必要となり、コンパクト+ネットワークによる持続可能な地域づくりが必要となる。低密な居住が必要という話もあったが、低密な居住を可能にするには何が必要なのかを考えなくてはならない。また、自然環境と人工環境はネガティブ・ポジティブの関係にあるため、コンパクト+ネットワークが実現すると自然資本の保全・拡大を通じた自然と共生する地域づくりも解決の方向に進んだり、新たな提案につながったりするのではないか。そのような観点でみると人口減少をチャンスと考えることもできる。いずれにせよ、第二次国土形成計画以上に様々な問題は深刻化しており、対応が求められていることを書き込まないと、ここ10年何をしていたのかということになりかねない。
○「我が国国土が直面するリスクと構造的な変化」と「目指す国土の姿」はこれまでの議論を踏まえてクリアに整理されている。本資料では、ポイントの部分が重要だと思っている。例えば、人口減少の加速化など、今、国土の刷新が求められているこのタイミングで国土計画を見直す重要性については、国土の長期展望の頃から議論されてきた。
○人口減少のトレンドの中で、長期的に国のあり方をどうしていくか。また、記載されている様々なリスクが改めて明確になってきているが、災害リスクを始めとするこれらリスクへの対応を喫緊にしていかなければならないということから、このタイミングで国土形成計画を作るのはいまだかつてなく重要である。併せて、「目指す国土の姿」の中にも盛り込まれているが、レジリエントな国土とともに、今大きく構造転換する世界の産業構造の転換の流れにどのように対応していくか、産業の次世代化、エネルギーの転換を支えるインフラをどうしていくか、そのインフラ構築にかかる時間という観点からも、計画期間のところにも長期を見据えつつと記載しているが、今ここで長期的視点を持った国土のグランドデザインを示すことが重要だという点を、具体的な記載の際にぜひ盛り込んでほしい。
○「我が国国土が直面するリスクと構造的な変化」にも記載されているが、今起きている構造転換、あるいはリスクというのは複合的なリスクである。言うなれば、それぞれのリスクが相互に連関している。その意味で、複合的な要因を踏まえて、リスクへの対処を考える、それに答える国土計画が必要であり、統合的なビジョンを提供する役割があると思う。複合的なリスク、相互に連関するリスクであるということは、逆に言うと同時に解決し得る可能性があるということだと思っている。これらそれぞれの相互の連関性を分かりやすく示していくことが重要である。そのことによって、複数のリスクに対して同時解決あるいは多元的な便益をもたらす、国土づくりの施策の重要性が明確になる。具体的な記載の際に検討いただきたい。
○人口減少については非常に大きなファクターである。一人当たりのGDPに変化がなければ人口が3割減少した場合にGDPが300兆円規模に落ちるなど、人口減少によって社会がどのように変化するのかということを分かりやすく整理したうえで、どのような国土を作っていかなければならないのか検討しなければならない。
○どのような最終のとりまとめに持っていくのかは別として、医療や介護について、政策を冷徹に議論していく必要がある。医療や介護においては、医療提供体制のみならず、様々な質の面でも、居住形態が重要である。居住形態や密度にはグラデーションがあり、そのことについては今後の部会で引き続き議論していきたいと思っている。
○分けるではなく兼ねるという発想は人口減少下において非常に重要である。兼ねるということは、例えば、所有ではなくシェアリングエコノミーのようにいかに利用しシェアするかということ、また、ある機能が3つほどの機能を発揮し、いざという時には10の機能を発揮できるようになることなどである。それがレジリエンスにもつながると思っている。
○来年の夏頃の最終とりまとめに向け、社会変化やテクノロジーの進歩など様々な変化に応じた議論ができるような資料の検討や場の設定等をお願いしたい。
 
(チャットによるコメント)
○農業が稼げるようになれば人が集まっていわゆる集落の規模が大きくなり、結果的に集住がさらに進むと思う。雑草問題も含めて集落密度が高くなることが大事で、コンパクト高密度集落とネットワークというモデルが成り立つと思う。その方がおそらく生産性も上がり、そこで働く人も稼げるようになるはずである。この後、日本の賃金は人手不足でいやおうなしに上がるので、今のモデルの農村が持続的に人を集めることはますます難しくなる。若者にとって、自分の子供を無理なく都会の大学まで出してやれる現金収入の得られない職場は結局、ムリ!となるので。私の親友は大企業を脱サラして、世田谷区の家で子供を育てながら、千葉県で農地を借りて通いで農業をやりながらしっかり稼ぎ、子供を立派に大学の医学部を出している。皆が中核都市に住む必要はまったくなく、広域のコンパクト&ネットワーク、狭域のコンパクト&ネットワークのレイヤー構造で、実質的な社会経済活動の密度をあげることが鍵かと思っている。
 
(事務局からの回答)
○本日、各委員からいただいたご意見などを踏まえ、6点ほど発言させていただきたい。
 1点目は、政策の基調や今までの計画とは異なる原理といったご意見をいただいたが、新しい計画としての従来の認識や仕組みと異なる着眼点をどう示していくのかが重要と考える。
 2点目は、リスクとチャンスに関するご意見を多数いただいたが、人口減少等のリスク、テレワーク拡充等のチャンスについてバラバラに議論するのではなく、関連づけて整理する必要がある。
 3点目は、地方自治、地方の医療・介護、地方のビジネスといった現場の生のご意見を多くいただき、計画に反映できるよう努めたい。
 4点目は、官と民、個人といった様々な主体の役割の変化や関係性について、また、人材についてどうプレーアップすべきか、いただいたご意見を踏まえ、整理していきたい。
 5点目は、国土の空間論について、一極集中是正や産業との関係、農業・農村のあり方といったご意見をいただいた。個別テーマの中での検討を含め、引き続きご意見を頂戴したい。
 6点目は、11月に「国土を若者が考える!グランド・デザイン・ダイアローグ2022」を開催するので、出来るだけ多くの方にご参加いただきく、委員各位におかれても関係するところにご紹介いただきたい。
○「インフラについて触れた内容が少ない」とのご指摘を受けて、反省している。インフラについては、近年、甚大化する災害はインフラだけでは防げず、一方でインフラのメンテナンスといった問題もある。また、デジタルインフラやグリーンインフラといった新しい分野も生まれている。今回の計画で「インフラ」という概念も再整理する必要があるのではないかと考えている。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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