第9回計画部会 議事要旨

第9回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和4年4月26日(火)16:00~18:00
 
2 場所
 合同庁舎2号館国際会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、畝本委員、海老原委員、小田切委員、風神委員、加藤委員、木場委員、桑原委員、坂田委員、地下委員、首藤委員、末松委員、瀬田委員、高村委員、冨山委員、中出委員、広井委員、福和委員、藤沢委員、村上委員、諸富委員
 
4 議事
 (1)人口減少下の土地の利用・管理(国土利用関係)
 (2)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
 事務局より議事について説明を行った後、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員から出た意見や事務局の回答は以下のとおり。
 
○円安が進行中だが、それ以前から23区や都内、ニセコ等の土地や建物マンションは外国資本がかなり入ってきている。それでも、ニューヨークやシンガポール、ロンドンに比べると割安ということもあり、引き続き日本人が購入できない価格になってきている。今後、円高に振れる要素が日本経済の中であまりない中で、自衛隊や基地周辺以外は外国の方でも自由に土地が買えるが、そういう日本の土地の購入問題にどう対峙していくか。規制をしていくのか考えていく必要があるのではないか。
○フランスでは、外国資本を呼び込むために固定資産税を減免して別荘を建ててもらい、逆にそれをフランス国家版民泊として閑散期に預けてもらって、フランス国民に貸している。外国資本による土地購入を少し考えたほうが良いのかもしれない。一つの観点として、外部環境の変化があるのではないか。
○気候変動リスクについて企業は財務諸表に織り込むことになっている。カーボンニュートラルを目指した戦略やリスク量、生物多様性を包含した自然環境全般についても、来年度以降、気候変動リスクと同様に企業としてはそれに対する開示が義務付けられるようになる。そうすれば、OECMに対する協力や貢献に対するインセンティブが、企業、金融機関に次第に出てくると思う。
○生物多様性を結びつくOECMは、官民の役割分担を決める意味でも、従来の管理構想をうまく組み込む中で、国土計画がリーダーシップをとれれば良い方向になるのではないかと思う。
○人口減少社会においては、空き地や空き家、所有者不明土地等の公的な管理、コモンズというような視点がデジタル技術とともに非常に重要になると思う。
○地方都市の中心市街地の空洞化によるシャッター通りと耕作放棄地の課題は共通性があり、子世代へのバトンタッチが日本では非常になされにくい。子世代が継がない土地に対するコーディネート機能や橋渡しするような機能の充実を官民で考えることが非常に重要になると思う。
○SDGsの観点から生物多様性、生態系の保全という視点が国土形成のテーマにおいて非常に重要になると考える。
○人口減少下の国土利用で難しいのは、一種の撤退戦をやらなければいけない中では、市場経済がなかなか機能しないという点である。
○従来、外部性・公共性は官で、市場経済は民で、と比較的2分法でずっとやってきた。しかし、もはや官だけでこの時代の国土利用を全部担うのは無理である。制度設計の問題として、民の動機付けを行い、民の営利的動機付けに基づいた行為・行動が結果的に公共性や外部性をカバーする、という官民が上手に役割分担して、それぞれを動機づける仕組みを国土利用全般に相当上手に取り入れていかなければいけない。
○国土の安全性を優先するという意味でも、デジタル空間の利用というのは非常に重要であり喫緊の課題だと考えている。
○デジタル空間へのデータ整備は、実際の災害の時に、データを使って避難経路を手当てすることなどに利用でき、シュミレーションした際のデジタル空間での映像が、住民参加で国土づくりをするという意味でも、一つのナラティブなものになっていくと思う。
○デジタル活用については、土地の有効利用という観点で、土地の実際の利用状況などが把握できるようになっておけば、実際の資本はどこにあり、そこで生まれてきた富がどこに流れているか、そういったものも把握できるので、土地建物の利用状況のデータ化というのも非常に重要かと思う。
○インターネットがライフラインとも言える状況にあるので、インターネットおよびセンサー、こういったものをきちんとインフラとして断絶しないような国土の公共利用の基準作りも非常に重要ではないかと思う。
○資料2-1の6~8ページにある議論いただきたい事項に挙げられている5つの項目はいずれも重要だが、並べ方は逆にしたほうが良い。1番大切なのは、どんなことがあっても国土を守ることであり、そのために何をしなければいけないかを考えることである。最初に手法であるデジタルの話が来るのは座りが悪い。
○資料2-1の8ページ(4)に挙げられている災害リスクを踏まえた国土利用について、中長期的な土地利用の見直しに取り組むと書かれているが、首都直下地震や南海トラフ地震のような極めて切迫性が高いものについては中長期というのは具合が悪い。リスクの切迫度に応じて早期に対応するといった主張をすべきである。
○移転に関する制度として集団移転制度があるが、人命を守る制度が主である。今後は、産業を維持するための集団移転制度にまで拡張することが重要ではないか。今後、インフラ整備へのESG投資を盛んにしていかなくては、産業を守るインフラが早期に整備されないことが懸念される。特に、日本の経済安全保障上重要なインフラ投資について、民間投資を促す必要がある。
○地域の持続性を維持するためには、住と職を確保する必要がある。住まいにはライフラインとインフラが必要となるが、すべての地域でこれらを維持していくことは困難である。田舎でも自立して居住ができるような、ライフラインから解放された住まい方の開発が必要となる。職に関しては、DXをうまく活用することが重要となる。それも踏まえて、5つの論点の順番は逆にしたほうが良い。
○GX、カーボンニュートラルについて、民の動機付けが最大インパクトだと思う。具体的にはカーボンニュートラルに対する貢献度を測定可能にし、企業が地域に投資した時、もしくは地域から何らかの商品サービスを調達した時に、その貢献度を織り込めるようにすることが重要であり、測定可能化することによって投資を呼び込める効果があると思う。
○デジタルの国土管理や防災への適用については、一つは人の代替で、人口減少する中で、人が行う能力というのは、それしかできない役割に包括させる必要がある。もう一つは人間をセンサーとして活用するようなDXであり、人間の地理的な行動範囲を細かく把握することで、管理状態の診断みたいなものにも使えるのではないかと思う。
○大都市圏は現在もまちづくりに関しては膨圧があるので、再開発の時に一定の規制など行政庁からの関与があることによって、現在も知的対流拠点ができている。そのような知的集約ディストリクトをどうやってうまく作るかが大都市の戦略ではないかと考える。
○本計画部会での地域生活圏に関する議題の際に、10万人規模にしてスモールコミュニティを繋いでいくという話があったが、今回、DXを今後活用していくという時に、つながりの視点があまり書かれていないと感じた。どのように土地を利用管理しDXをどう利用していくかというところで、管理構想をより具体化することも必要。管理構想が半数しか策定されていない理由として、市町村レベルで方針を立てる際に国土計画とまだ乖離があるので、市町村が策定する際の指針などを明確に打ち出すことも必要だと思う。
○地域の利害を超えた調整や、その各地域が最適解を出した際に国家全体の最適解にならないような際の調整も重要。また、自然環境的な持続面と経済活動での持続面についても両方は繋がっていて、国際競争に生き残っていく面でも非常に重要だと思う。ただ、それを実現する際に、管轄省庁などが既存の枠組みで分かれている中で、連携がとれるような工夫が必要。
○資料3-1の13ページに記載のある安全・安心の実現という部分で意見を申し上げたい。2019年度まで開催されていた厚生労働省の救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会にて、災害拠点病院のBCPが令和元年度時点で3割程度未策定であるということ、一般病院に至っては7~8割程度未策定であるということが取り上げられたことがある。また、立地等の問題から、大きな豪雨災害が発生した際に浸水してしまうといった例も見受けられる懸念がある。さらに、今後の高齢化社会の受け皿となる介護施設についても、熊本地震を境にBCP策定が義務づけられたが、2、3割程度の策定率にとどまっており、その中で立地が悪い施設については災害からの機能回復が難しいと思われる。
○資料3-1の13ページに記載のある低リスク地域への移転促進は、非常に重要な課題である。データを利用するという面でDXの活用は有効かと思うが、施設に入られている方々がすぐには移動できないといったリアルな部分が重要かと思う。人々の生命を守るという意味で、このような特殊な機関についても低リスク地域への移転は重要である。
○課題横断的な解決手法として中山間地域をはじめとして全国津々浦々で地域管理構想を策定するということが重要と考えるが、モデル事業レベルで終わらせるのではなく、大胆に進める必要がある。
○技術的な課題について一点目は、計画が乱立し、計画のための計画とならないよう他省庁で進められている地域住民によるビジョニングと連携する仕組みづくりが必要であると思う。二点目は、企業も含めた多様なステークホルダーが策定段階に参画できるよう仕組みづくりや共有化が重要だと思う。三点目は、地域住民がワークショップを担えるよう、新しい手法の導入によるファシリテーション人材の育成を国土計画レベルで位置づけるべきだと思う。
○「デジタル」という表現について、デジタル空間という言葉がデジタルだけを指しているのか、デジタルとリアルが融合した世界を指しているのか、少し混同して使われているように感じたので見直してほしい。
○デジタルはあくまで手段。デジタル化が進んだことで会議がオンラインになったり、どこで働いてもいいみたいな制度が導入されたりしているが、それはデジタル化が進んだというよりかは、多様な価値観や多様な生き方、あるいはいろいろなコミュニティに所属しているという、背景の変化があるのではないか。我々自身の変化のようなものも背景にあった上で、デジタルがそれを可能にし、デジタルの進展によって新しい価値観が生まれていくことが、これからの差を生みだしていくのではないか。
○地方とのあり方を考えた際に、大学、病院などのフィジカルに存在が必要である場所を中心としたコミュニティの再形成や見直しが行われていると思うが、そういった生活圏といった観点も織り込むと良いのではないか。また、今のコミュニティや生活圏というような単位で国土管理構想をつくるのが良いのではないか。
○行政単位で国土管理構想を作っていくことになるようだが、これをいかに生活圏単位で統合していくのか。いわゆる構成単位というか、市町村や都道府県という単位で、いかに生活圏レベルで統合し、より価値の高いもの、質の高いものにしているかと言うところを促進できるような取り組みを推進していくべきではないか。
○今回の国土計画は非常に大きな変化の中で、しかも足下では人口減少や地域の諸課題がある中でどう対応するかという意味で非常に重要なタイミングでの国土計画だという共通の認識があり、こうした問題に対処するのに中長期的な視野を持った国土計画がいまだかつてなく重要になっている。
○将来に向けて国土の利用の新たな方向性として5つ示されている。いずれも柱としては非常に重要なダイレクションを示していると思うが、後半の3から5というのがいわゆる国土計画が全体としてどういう国土の実現を目指すのかというものであるのに対して、1と2というのはそれを実際に行うために、あるいは今の社会環境を、国土計画をめぐる状況の変化も踏まえたもので、重要になる柱と少し性格が違うものが並べられているようにも思う。場合によっては順番を変えて、その流れを整理することが、特に国土計画の構成をわかりやすくするためには有用ではないか。
○資料2-1の7ページと13ページに、地域社会全体の持続性を重視した国土利用が書かれていると思うが、「新たな政策目標を単純に追求するのでなく」という、この「単純に」は悩まれて記載したと思うが、少しポジティブな書き方をしてもらったほうが良いのではないか。ここで挙げている気候変動や、生物多様性の分野の政策研究が示しているものは、いかにこうした気候変動や生物多様性といった課題・目標を地域の課題とうまく組み合わせて統合的に問題の解決を図る、それを可能にする施策を打つということが、近年の重要な研究の知見だと思っている。したがって、政策目標の実現に向けて、こうした地域課題の対処を図ることも組み合わせた施策を打ち出していく、といったことを基礎となる国土計画で示せると良いのではないか。
○気候変動対策や再生可能エネルギー導入一つをとっても、やはり企業の競争力あるいはその企業が活動を展開する産業立地としての国土あるいは地域の競争力に結びつくような社会環境が生まれている。その意味でも目標間の競合ではなく、統合的な問題の解決を図るということを明確にいれたほうが良い。これは国のクリーンエネルギー戦略とも符合するものだと思うので、お願いしたい点である。
○課題横断的な解決手法としての管理構想の推進について、気候変動対策やエネルギー一つをとっても、ご存じのとおり温暖化対策推進法の下での地域の計画があり、農山漁村再エネ法の下での計画があり、知るだけでも非常に多くの計画があるが、これらの計画がうまく統合的に作られる、計画相互の連携が必要だと思っている。
○計画相互の連携は、人的のリソースの点でも、地域が負担なくこうした良い計画を作って取組を進めていただくためにも必要だと思っている。特に、こうした中長期な地域のあり方を考えるうえで、地域住民が参加し、適切に中長期の見通しをもって計画をつくっていくことが必要。そこには省庁間の様々な計画の連携が必要だと思うし、それを実際に具体的に進めていくための支援が不可避。特に地域と話をして思うのが、計画を作る人的なリソースと適正に作っていく情報や手法など知識の不足という点と、それを支えるリソース(資金)の不足という点である。こうした社会的合意形成をうまく進めていくための支援も省庁間で連携して進めていくべきだ。これは国土計画をボトムアップに支える地域の計画を作っていくうえで必要な要素ではないかと思う。
○前回も同様の事を言ったが、予算規模が大きい国交省の、特にDX化の予算の中に、いかにスタートアップを巻き込んでいくかをもっと具体的に議論していくべきだと思う。調達を前提とした研究開発の予算にスタートアップのための特別な枠を新設するという、内閣府が整備している制度があるが、それをあまり使っていない。国交省の予算はかなり大きいが、創業10年未満の中小企業いわゆるスタートアップに使われているのは0.7%ということでかなり少ない。目標値が3%なので改善の余地があると思う。枠組みの使い勝手が悪いなど理由を洗い出して議論するのが重要。特にDXの文脈で、新しいサービスモデル、新技術を駆使したビジネスを国交省の所管する様々な産業で促進するためにも、スタートアップの役割が大きいと考える。
○資料2-1の16ページの[1]について、災害リスクが高い地域の居住人口を中長期的に減らしていこうということが書かれている。基本的な方向性そのものには賛成するが、この時にリスクというものは発生確率×被害だという定義に照らすと、リスクが高い地域の人口を減らすというのは、リスクの定義のうち、いざというときの被害を減らすという考え方ではない。一方で居住人口が減ることで、人々の手が入りにくくなることでリスクのもう一方の要素である、発生確率が高まるという心配がある。災害リスクの高い地域に、荒れ果ててしまっては良くないのではないかと考えておく必要がある。
○資料2-1の16ページの[2]には、市町村の計画的な防災・減災対策への助言等と記載がある。この中ではいろいろな防災・減災対策は主に市町村が計画的に進めることが期待されると書かれているが、防災・減災対策の関連で様々な市町村と付き合っていく中で実感していることは、市町村レベルでは、ハード・ソフト両面の防災・減災対策を主体的に主導権を持って進めていくのは非常にむずかしいということである。そもそも職員の数も多くなく、専門的なノウハウも決して潤沢ではない中で、それが本当に現実的にできるのか強く疑問を感じる。この[2]の中で、都道府県や国が関与するとか積極的な助言をすると書かれているが、都道府県や国には、もっとそれ以上の役割を果たしていかないと現実的に進まないのではないかと大変懸念している。
○資料2-1の17ページの(5)には、危機への備えを最優先とする国土利用という記述がある。これ自体は決して強く反対しないが最優先という表現に、懸念を抱く。防災・減災や安全をやっているとバランスというものがとても大事だと感じる場面によく出会うことがあり、最優先という表現とは相反する位置づけだと感じている。危機への備えを最優先とすると、本当に利便性や経済発展などとのバランスを見なくなるのではないか非常に気になる。この最優先という表現についてもう少し深く考える必要があるのではないか。
○国土形成計画も緊迫感が弱い面があるが、それ以上に緊迫感に欠けてきたのが国土利用計画である。我々に要求されているのは、利用という用語以上にマネジメントは、利用と管理をセットに従い年である。利用については、「今、国土管理について徹底的にしない限り、日本の将来はない」くらいの強い物言いをしていただきたい。きちんと管理して初めて国土形成も、あるいは国土利用もできるというころを再確認したい。
○自治体で管理ができる技術者は全然いないし、盛土が崩れて熱海の土砂崩れの被害を大きくしている、ということが起きているのが実態。
○総合的管理という意味で、他の委員もおっしゃったが、大事なことはバランス感覚。防災はもちろん重要だが、他のこともセットで考えなきゃいけないということでは。ソーラーパネル等再生可能エネルギーの整備をする際には、同時に防災上の管理は充分にされているのか等、バランスのとれたマネジメントができる体制にすべき。
○デジタルやデータも重要だが、人的資源のバランスが全く取れていない。地方分権、あるいは地方への権限移譲が金科玉条のごとく形式的に進められている中で、地方の人事人材、特に技術者は全く希薄になっている。
○防災のマップ、水害のマップ、土砂崩れのマップ、開発行為が今どこで申請されているか、森林の区域指定を重ね合わせて、共通の管理のデータにすべきではないか。
○前回の地下委員の発表では、脱炭素化時代における産業構造のあり方や再生エネルギーが国土計画に及ぼすことについて非常に重要な問題提起がされたと思う。素材産業を中心とする日本の製造業を維持しつつ、脱炭素化していくためにはどうしたら良いか。化石燃料が再生エネルギー等に激変していくと、産業立地をどうするか、エネルギーをどこから輸入するか日本国内のどこで生産するかという地理的配置状況が随分変わってくる可能性もある。洋上風力は北東北や北海道の日本海側などに立地しているが、東北の日本海側がエネルギーの供給拠点になる可能性を考えると、グリーン水素などをどのように輸送していくのかということも含め、全総の現代版として工業立地の議論をもう一度やるべき。
○人口減少が進むと中心市街地の未利用空間が広がっていくが、どう空間再編していくのか。所有者不明土地、空き家対策、所有権の譲渡をしていく動きが都市に波及せざるを得ないと思う。解決策というと難しいが、審議会の場で問題提起はしていくべき。推進する主体はなにか。ランドバンクのような主体を活用していく議論もやっていくべきじゃないかと思う。
○資料2-1の16ページにある「市町村の計画的な防災・減災対策への助言等を積極的に行う」という記載について、国が積極的に働きかけることは本当に重要である。資料内にも国土利用計画における市町村計画が全市町村の半分弱程度でしか作成されていないとの記述があったが、いくら国が議論を重ねても、実際に国民と接する市町村にそのエッセンスが伝わっていないのは非常に残念なことである。これは本計画に限定した話ではない。「積極的に市町村に働きかける」という記述も、より明確に道筋を立てて記載するべきである。
○ローカルSDGs等に関して資料で触れられていたが、国民の立場からすると「自分たちの町はどうあるべきか」という議題は実感のある問いではない。例えば「脱炭素先行地域」のようなわかりやすい先進的地域でない限りは、自分の住んでいる地域の特色を住民が客観的に掴める機会を設ける必要がある。その手段が教育なのか広報なのかまだはわからないが、関心を持ってもらうことが重要である。
○本会議の第1回でも申し上げたが、国の施策がどういったバックグラウンド・現状把握に基づいているのかを国民にきめ細かく丁寧に明示することが、国民の関心と意識を高めるために重要である。住民自身が地域の誇るべき点や課題について整理した上で、自治体が計画を立てて国からの助言を受け、実施する計画が住民に響くようにしなくてはならない。資料にも記載があるが、気候変動による防災災害リスク範囲の急変の変化など、状況は日々変化している。自治体には臨機応変に対応して計画を立てていただきたい。繰り返しになるが、受け手である住民の立場も踏まえたに則った計画になることを期待している。
○人口減少に関連するこういった問題は「対処すべきである」というべき論が多い一方、問題を解決しようというモチベーションは全体として高くないように感じている。耕作放棄地、鳥獣被害、限界団地・集落、コンパクトシティの問題に関しても、これらの問題を本気で解決しようとしている主体は多くなく、結果として問題は解決せず、現実的には悪化している。
○管理構想の専門委員会で議論に参加していたが、問題に対して主体がはっきりしておらず、補助金を活用したモデル事業にとどまってしまい、そのあとが続かない。地域のモチベーションを高めるためにはモデル事業も大事であるが、問題の実態を全体としてしっかり調べ、知ってもらうことが大事である。国民に実態を知ってもらうために、面積などのデータで耕作放棄地が大量にあることを伝えても響かないので。その問題の深刻さを心に伝えることが必要であると感じた。それによって、モチベーションを持った主体が出てきたり、問題の解決のためにお金をかける必要があるといった国民の合意につながるのではないか。
○今日の議論の中心となっている管理構想については、専門の方でも理解しにくい部分がある。資料2-2の4ページにあるように、管理構想というのは市町村よりも細かい地域単位で、自分と関わりのある土地をそれぞれ色分けし、次世代までどうしていきたいかを考えてビジョンを作り、それに基づき動いてもらうというもの。長野県の旧中条村で実施したところ、住民が熱心であればこういった計画ができることがわかった。自分の土地のことであるため、コミュニティがしっかりしていれば、コミュニティ単位で考えるという気風があるが、コミュニティが希薄だとどうにもならない。
○人的資源が課題である。担い手である住民自体が少なくなっている上、専門性を持った行政の担い手が質・量ともに不足している。そういった地域へは、アドバイザーやコンサルタント等の活用を提案している。
○一つ認識していただきたいのは、土地は公的管理したほうが良いということは事実であるが、地価がゼロとなっても誰も使いたがらない土地が世の中に一杯あるという現状である。地方都市の中山間地域、大都市の遠方の住宅団地、地方都市で団塊の世代よりさらに前の人たちが暮らしていた郊外住宅地等には誰も住みたがらず、どんなことをしても使ってもらえないということが起きつつある。平地の農地は集約すれば、大規模農地として活用も可能だが、中山間地域や住宅系の土地などはどんなに手をかけても使ってもらえなくなる。しかし、人がいなくなると圧倒的に危機管理能力が落ちてしまう。
○国土管理専門委員会での議論では、国土の国民的経営というのが一つの論点で、みんなでどうやって国土を管理するか考えた際に、人が住まなくてもいい地域はないとすると、どうやって国土管理を担うのか、少ない人で担うにはある程度の選択と集中は必要となる。ここでリアルの問題として担い手が課題となる。担い手は、住民と行政、応援団であり、その際に交流人口や関係人口を増やすことも大事だが、それでも足りないものは足りない。人の数が足りないことを真剣に考えないといけない。
○市町村の国土利用計画が半数しか作られていないことについては、国土利用計画を作っても仕方がないと考えている市町村が多いと想定される。しかし、市町村の国土利用計画のような構想となる計画をしっかりと作り、その構想の基でしっかりとした管理や維持につながるような管理構想を作ることにより将来的な土地の管理について考えていくことが重要である。DXはツールではあるため、DXを前提とした国土利用はありえるが、DXが一番前に出てくることはないと思う。
○国土の維持という観点でDXを活用する事例として、この度、農地の情報通信を面的に整備するための計画の策定と試験的な導入に向かっているところ。遠隔による溜池の管理や補助の自動給水栓の導入、ハウス内のセンサーの自動給水など、スマート農業に向けた取り組みを加速させていこうとしている。将来的に少ない耕作者の中でも田畑を維持していけるように、今から少しずつだが、準備している。
○一方で、人が居住する地域とこのままだと無居住になっていく地域では、行政のお金のかけ方、優先順位のつけ方、政治的な合意形成が非常に難しいと思っている。まさに、日本の縮図ではないかと日々感じている。全国の自治体の公共施設の統廃合の議論が起こっているかと思うが、そこに政治が絡むと非常に難しいと感じている。
○世代によって問題意識の差があり、若い世代の方が切実である。その世代間の差を埋めていくのが難しいと実感しているところ 。国の方の助言が多くあったとしても、当事者間の考え方を変えていくというか、時代に適合させていく困難は全国どこもあるかと思う。
○これから担い手となっていく、全国津々浦々にいる若い世代の方々が少なくなっていく中で、維持していく人の一人の負担が大きくなっていくわけだが、社会の進みも早くなっている。若い人もどんどん忙しくなっていく中で、果たして自分事に捉えて共同性を再構築出来ていくのか。そこもかなり努力が必要だと思っている。
○管理の具体としては、インフラのメンテンスが同じ構造である。市町村が管理している橋梁は約50万橋だが、市町村が管理するのは実際には困難。共通で運用し、いくつかの市町村で技術者を育成、まとめて管理をするとうまくいくのでは。国土の管理を産業化するべき業種もある。個々の自治体でなく、まとめた自治体で行うべき。組織化するのも実現への一つのステップ。
○DXは変質しているが、もう一歩踏み込むとメタバースやWEB3.0や仮想通貨がある。これはDXとは違う概念で、国土計画や国土利用にも影響を与えるのではないかと思っている。生活圏という定義が今回の国土利用の中でもありつつ、例えば一部はメタバース上で実現可能かもしれない。ECだとしても、デジタルに検索してクリックするのではなく、ご近所や店員さんと会話しながら、コミュニティ機能を有するメタバース商店街では、リアルの中心市街地は衰退していても、メタバース商店街は流行っているとかも考えられる。デジタル空間、DXという言及はあるが、このニュアンスについてはまだ弱いのではないか。ここの変化、進化は急激に訪れていくと思う。
○テクノロジーや人口動態が大きく変わってきていること、所有者不明土地の問題や、土地を持つこと自体が非常に負担になることなど、これまでの前提条件が変わってきている中で今後を見通した検討を行うことは非常に難しさもあるが、国土形成計画及び国土利用計画においてこれまでの計画の中身から大きく変える大胆さが必要である。それと連動した形で、国土利用計画の都道府県計画、市町村計画、さらに土地利用基本計画が節目になっていくのではと感じた。
 
(チャットによるコメント)
○災害対策の話をするとどうしても備えの方に少し偏ってしまうのが悩ましいところである。危機への備えは必要であるが、多分に無駄となる可能性も(幸いにも)ある。過剰になってはいけないと思う。一方、最初にお話しされた被害程度が大きい地域からの人々の流出が発生確率を上げるか、というご懸念も大切な観点かと思う。ただ、人口減少の一つの対策として、部分的に自然の状態に帰す、ということも、ひとつの考え方かと思う。管理という面では難しいが、管理できていない自然は現存していると思う。
○「広域生活圏」のまとまり概念をサービスへのデマンドのみならず、国土管理・インフラ管理の効果的実施の共通単位として運用してはいかがか。メリットが多いのでは。
○ビジネスとしての持続性をつくらなければ人がいなくなるなかで国土管理に資源(人、もの)は持続的に投入できないと思う。そうでないと人口減少に見合わない思い切り巨大な政府にならざるを得ない。これまた財政的に持続性はない。おそらくDXは経済的成立可能性を高める、生産性を高める上で重要で、マーケットデザイン、制度設計を上手にやればそこにスタートアップが入ってくる可能性も出てくる。
 
(事務局からの回答)
○次回以降、これまでの議論を踏まえ、中間とりまとめに向けた提示をさせていただきたい。いただいたご意見の中には、中間とりまとめまでにこなせないものや、国土形成計画の閣議決定後も引き続き議論すべきような難しいテーマもある。閣議決定で終わりではないかもしれないと思っているので。またご相談させていただきたい。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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