第8回計画部会 議事要旨

第8回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和4年4月4日(月)15:00~16:56
 
2 場所
 合同庁舎2号館国際会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、畝本委員、海老原委員、風神委員、加藤委員、木場委員、久木元委員、坂田委員、地下委員、首藤委員、末松委員、瀬田委員、滝澤委員、田澤委員、冨山委員、中出委員、西山委員、広井委員、福和委員、藤沢委員、村上委員
 
4 議事
 (1)産業の国際競争力強化
 (2)大都市リノベーション
 (3)スーパー・メガリージョンの形成
 (4)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
 初めに地下委員より「産業の課題と展望について脱炭素化やデジタル化の視点」の観点から提言があり、続いて事務局より議事について説明を行った後、各委員から意見などの発言があった。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
○スタートアップについて、東京は今、世界第9位の都市。これはリスクマネーなどが増え、企業も増えてきた証かと思うが、残念ながら日本では今、圧倒的に東京のみ。都市ごとにイノベーションのエコシステムを強化できるようになるといい。中国だと北京はメディア企業、杭州はEC系、深圳ではIoTスタートアップが多い。日本だと例えば名古屋であれば、トヨタのお膝元に技術が集積しているのでIoT、福岡であればアジアの玄関口としてアジアに向けて事業展開するスタートアップが集まるといったように、都市ごとにキャラクターをつけて育成ができるといい。
○全体の説明に、デジタル人材の必要性、デジタルシフトの必要性というのが挙げられていたが、数学が得意な理工系人材のみがデジタル人材ではないと思う。例えば、YouTuberで100万人フォロワーがいるような、デジタルを使ったコミュニケーションやマーケティングに優れている方も、デジタル人材なのではないか。デジタル人材の育成においては、幅広にかつ具体的に手入れをして育成していくという姿勢が大切だと思う。
○競争力向上のため、イノベーションを高めるには教育が重要である。アメリカでは自宅の前でレモネードスタンドをしてみるなど、子供の頃からビジネスの楽しさが学べる教育を行っている。日本の教育はそういった要素がまだ欠けている。
○中小企業の生産性を高めるにはテレワークが効果的である。女性や高齢者、地方人材を確保し、多様な働ける環境を作っていければ、国際競争力向上にもつながる。
○東京では企業が集中し過ぎた結果、人材不足になっている。逆に東京の企業がテレワークで地方の人材を活用し、東京でのビジネスを拡大できれば、地方創生の観点だけでなく、都市部での人材確保の幅を広げる効果も見込める。
○企業へのアンケートによれば、テレワークが進んだ今でも、社員には定期的に出勤してほしいという考えが根強い。そうなると都市部から一日で通える範囲が、社員が地方で住める範囲になる。スーパー・メガリージョンにより、その範囲が広がることを期待している。
○直近で起きた福島県沖の地震で、火力発電所が止まり、電力供給がギリギリだったというのが日本の実情。電力事業が今後急速に増えていくなかで、COの問題で化石燃料をやめ、原子力も避け、再生可能エネルギーを使っていくというのは、両者両立しているとは思えない。エネルギー需給のセキュリティを真剣に考えなければ、この問題に責任ある答えを出すことが出来ない。
○食料の自給も同様。今回のウクライナの戦争で痛感したと思うが、自給率が40%くらいでいいのかという問題もある。これまでの日本の産業政策が、どちらかというと第二次、第三次を重視するかのように国民から思われているところについて、今回変えないと、この昨今の大きな世界の変動のなかでの国土形成計画の答えにはならないのではないか。
○大企業と中小企業の生産性に差があるという話だが、これは平均値の話であり、中小企業のレゾンデートルは大きく、世界シェアを持っているようなことをやっている。日本の産業活力は、平均値ではなく、少数だが素晴らしいグループがいるかどうかで決まってくる。大企業もそうだが、とりわけ中小企業については、そういう議論をしておかなければミスリードになる気がする。
○中小企業の生産性が低いのはデジタル化が遅れているからだと決めつけているようにも見えるが、給料の高低によっても変わってくるため、もう少し冷静に考える余地がある。
○三大都市圏が大事であることは間違いないが、福岡と仙台と札幌について、三大都市圏に準ずる存在として育成し、活力を高めていく必要があると思う。人の移動を見ても、札幌、仙台、広島、福岡が、三大都市圏へ人口が集中することを防ぐ防波堤の機能を果たしてきた。アジアとの経済が重要になってくることを踏まえると、とりわけ福岡はもっとはるかに重いものとして位置付けなければならないのではないか。
○資料4の7~8ページにある大都市圏郊外の住宅団地の人口減少・高齢化の部分について、団塊の世代よりも少し上の世代が東京から30~50km離れたような土地で住宅取得していたが、人口減少・高齢化により立ちゆかなくなっている。昨年度まで、国土管理専門委員会でも議論していた内容なので参考にして議論を深めていただきたい。大都市圏であっても全て救うことはできないので、何らかの取捨選択は必要である。同じ国土交通省の中で都市局にも情報や政策があると思うので、連携して議論していただきたい。
○資料5の5ページに記載のある「(2)中間駅周辺から始まる新たな地方創生」については疑問がある。ほとんどのリニアの中間駅は、山梨駅を除いて山の中で、リニア新幹線が開通しても10本に1本中間駅に止まるか止まらないかではないかと思われる。逆にそれ以上のペースで中間駅に止まってしまうと、東京名古屋間あるいは東京大阪間の速達性が損なわれることになる。したがって、4ページの「(1)個性ある三大都市圏の一体化による巨大経済圏の創造」に対してリニア新幹線が資する部分が大きいと位置づけ、(2)と(3)を(1)と並列に記載するのではなく、もう少し尖った形で記載した方が良いかと思う。(2)に関しては中間駅があることで一応の役割は果たせるが、(1)の付随的な内容かと思う。(3)は総花的になってしまうかと思う。
○日本のように先進国でたくさんの複雑な大量生産をやっている国は珍しい。自動車にまつわる大量生産及び物流はCO2が多く排出される。大量生産をやめて、産業構造を知識集約型に転換し、CO2を吸収してくれる第一次産業を重視していく方向に行く必要がある。
○東京圏がこれだけ低成長で、一人当たりの生産人口の労働性が低いのは世界的に見ても異様である。本来は産業構造が高度化、知識化、情報化すれば、都市部は集積効果が出て、最も生産性が高くなるはずで、何かが根本的におかしい。東京都市圏は過剰集積によるデメリットが出ており、本気で見直さなくてはいけない。そのためには、多極化が必要と考えられる。今の3極ではなく、日本の人口規模からすれば10極くらいあってもいいのでは。
○日本で起業できたらと思う人は世界中に大勢いる。そういった人たちに魅力的な地域を作れるかを牽引していくのはスタートアップエコシステムであるが、今は東京にしかない。スタートアップエコシステムのゆりかごとして魅力的な場所を作っていくことが国土計画にビルドインにできたら素晴らしいと考える。
○産業の競争力という点については、大企業が拘束状態で厳しい状況にあると思う。この状況を変えるには、企業として小さくても良いから尖ったことをすることである。尖ったことをするためには、基礎学力と突破力、現場力の3つが必要であると思う。しかしながら、今の教育システムは基礎学力を大事にしておらず突破力を潰してしまっているなど、本来の国土形成計画の議論ではないかもしれないが、ここを変えなければ先はないと思っている。これが最もひどいところが東京であり、個性的な地域を大事にするということが重要である。
○東京圏と関西や中京圏を一緒にして議論することは危険であると思う。東京の問題と大都市の問題は言葉として分けるべきである。少なくとも大阪圏と名古屋圏は東京と全く異なり極めて個性的で、このような個性をいかに伸ばすかが重要であり、没個性の東京のようにならない工夫を考えていかなければならない。一方、大阪圏も名古屋圏もその多くが東京に吸い上げられているような状況で、それぞれの地域の中でものを考える力が徐々に不足してきているように感じている。3大都市を一緒に考えるのではなく、3大都市にシンクタンクがありそれぞれが個性豊かになるようにしていき、さらには多極分散で100万ないし200万人規模の都市を活性化するような戦略であるべきである。そのために、リタイアした経験豊富な人材を地域に戻すような枠組みを作っていただけたらと思う。
○大都市のコスト・効率至上主義によって、余りにもライフラインやインフラの相互依存度を高めすぎており、何か一つでも切れると全てが機能しなくなってしまう。この状況が続くのであれば、圧倒的に安全性を高めなければならならず、例えば建築物であれば「首都ケース」なるものを作り、首都にある建物は地方の建物の1.5倍強く作るくらいのことをしなければ非常に具合が悪くなると思われる。特に東京のあるべき姿を評価することで、地方に迷惑をかけないような東京をどうするかという議論が国土形成計画でできればと思う。
○国土計画の社会での位置付けが変わってきている。かつては社会で産業政策を考えるときに、ある種ストーリーが共有されている中で、具体的にはどこに何を配置しようかというのが国土計画だった。今はナラティブが共有されておらず、日本の現状と課題のようになり、望ましい姿ではない。ナラティブを作らないとどうまとめていいか、何を伝えたいかが分からなくなると思う。
○キーワードは二つあり、一つはイノベーションであり、想像する新しいものを作り出すということ。もう一つはサプライチェーンであり、何を日本は担うのかということ。
○ナラティブをまず整理をするとして、それをどう表現するかというのも大事だと思う。変化分、特にその一番進んでいる人達がどっちに行っているかということだけを説明しないといけない。
○イノベーションについては、金銭的な視点だけではなく、既存の経営者や投資家からの助言がほかの国より弱く、その点が必要。行政サイドから、ベンチャー企業、スタートアップが既存法律に阻まれて事業できないこともあり、法律を変えて、国全体の整合性を取っていくことが必要。
○地域経済の担い手である中小企業の低生産性については、都市部と地方部の労働生産性の差は、産業、企業規模、労働者の質などをコントロールすれば縮小する。また、雇用の受け皿としての起業であったり、自営業というのもあるので、中小企業の生産性を上げることだけをターゲットとするのではなく、雇用全体としての対策強化の視点が必要なのかと思う。
○同じ労働者であっても地方部から都市部へ移動することで生産性が上がることなどから、集積の効果が日本にないというわけではない。
○多様性については、地方にいても都市部の仕事が、都市にいても地方の仕事ができるようにして活かしていければ。また、マクロで労働者のやりたいことに偏りがあった場合にそれの解消が実現できればと思う。
○情報産業の成長について、資料をみると情報産業の成長率は東京では他県より高いが、労働生産性の伸びが低いと言うことは、人を多く投入していっているということと思われる。産業として多次元化しているので、なかなか技術が身につかないことが起きているとも聞き及ぶが、お金を投資するだけでなく、そういった職業訓練や既存の労働者が職業訓練にどう時間を確保するのかといった点も必要になってくる。
○リニアについては、他の委員の発言からも関西圏や中京圏が特徴的な経済圏であるという話もあり、各県の強みを生かせるように進めていく必要があると思う。そうでないと逆に東京集中が進み、各経済圏の特徴が生かせるようになっていかない。
○空間論と産業技術論、環境論、サステナビリティをどのようにデザインするかということが基本的なテーマだと考える。
○産業の競争力とその集中と分散の関係性を深掘りすることが重要であると考える。一極集中は、競争力にとってはマイナスである。AIを利用したシミュレーションでは、分散しつつ、その中に集中の要素を取り入れた多極集中モデルの方がパフォーマンスは優れている結果が得られた。工業化社会では、集中のメリットがあったものの、ポスト工業化、あるいはデジタルの時代になると、分散した方が非常に有効になってくる。健康医療、環境、農業など、ポストデジタルも視野に入れ、その分散の有効性を掘り下げていくことがテーマだと考える。
○首都圏が急速に高齢化して急激に介護需要が増加することで、全国から若い世代が首都圏に集まっていくことは望ましくないと考える。静岡県南伊豆町が東京都杉並区の高齢者を特別養護老人ホームに受け入れた事例のように、東京と地方がウィンウィンの関係となりうるよう、この国土形成計画の検討の中でも考えていくことが重要と考える。
○イノベーションやスタートアップについては、様々な省庁が共通して問題意識をもっているが、問題意識が共有されていてもアクションが取れないという問題がある。そこで例えば、国交省がやっているプロジェクトに一定のパーセンテージで入札プロセスにスタートアップを入れるというのはどうか。各省庁がやることになっていると理解しているが、できていないのが現状。今日の議論には違和感がないので、どうアプローチして実践していくか、具体的に定量的なKPI、かつ今日明日、今年来年といった期限で短期的にアプローチすべき。
○資料で「大都市のリノベーション」という表現が使われているが、リノベーションという言葉が資料内で題名にしか使われていない。この言葉は五全総の時代に使われ始め、当時は大都市の更新、ストックの有効利用及び地方創生による都市機能負担の分散といった意味で使われていたが、いささか意味が多すぎると感じる。今回使用するに当たって、主要な概念であるなら整理してから提示するべきではないか。
○地下委員の資料にも記載されていたが、古い時代の観念だった工業都市が再び注目されているのは興味深いことである。しかし、日本がこの点で世界にリードするには、巨大すぎて国土計画だけでは手に余る視点である。韓国や台湾では半導体産業が盛んだが、これは国家が全面的にバックアップし、補助金やインフラ整備、規制緩和を行った結果である。だが、国土的な議論が出来るのは国土計画の役割なので、内容を書くというよりはプラットフォームとなる仕組み作りを議論すべきではないか。例えば、「脱炭素と国土」について考えても、水素以外も洋上風力や地熱発電など、国家内の多主体が関わる取組がある。取組に様々な主体が検討できる枠組みを提案することも、国土計画が果たすべき役割である。
○ローカル的視点だった前回に比べ、本会議では広い視点での議題が多かった。こういった議題では、「それが私たちの生活にどう関わるのか」ということを国民に明確に伝わる書きぶりが重要となる。
○本会議の資料で1番印象的だったものは、資料4の18ページ記載の「東京の中間層における可処分所得について」であった。計算をすると、華やかなはずの東京が、都道府県で最下位となっている。豊かさとは一体何なのか、今一度定義を見つめ直すべきではないだろうか。第二次国土形成計画でも「誰もが豊かさを実感できる社会」という表現があったが、他の委員での指摘もあったように、東京と名古屋では街の風土が全く異なる。地域それぞれの豊かさを考えるのも良いかもしれない。
○地下委員のプレゼン資料にも記載されていたが、昨年4月にCO2排出量の削減目安が急激に引き上げられた。この引き上げは従来のペースを考えると達成が大変難しく大きな変化となるもので混乱を招いたが、このような時は書きぶりが重要になると思う。例えば一般家庭に「2013年にどれだけCO2を排出していたか」と質問しても、実感として伝わらない。国民の腑に落ちて行動しようと思わせる書きぶりが、今回のような広い視点での議題では求められる。
○競争力イコール稼ぐ力なのかもしれないが、投資家目線で見ると、稼ぐ力の前に、その場所は投資する効果のある場所なのか、投資価値のある場所なのかという視点で見ると思う。
○グローバルな視点で競争力というのであれば、今我々が議論していることが、グローバルなプレイヤーから見て投資価値があるかという視点で洗い直す必要があると思う。その上で投資価値のある国である、もしくは地域であると世界の人が見たならば、イノベーションを起こす人たちが集まり、その人たちが稼ぐ人になると思う。
○そういう稼ぐ力を持つ、もしくは新しいイノベーションを起こす人が自分の時間を投資する価値のある場所と考えてもらえるかが大事であり、日本はそういう場所であるということを発信しなくてはいけない。発信することによって日本人が頑張るのではなく、日本人の持っている課題と、強みを活かしてイノベーションを起こす人をいかに呼んでくるかが競争力につながっていくと思う。
○東京の低成長は大問題。東京を変えたいのであれば新陳代謝が必要だが、東京という大きな括りでは無理だと思う。それは、大阪も同じで、もう少し小さく区切って、やる気のある自治体の首長と連携をして、そこで実践したことが成果を上げた時に、芋づる式に他の自治体がついてくるというような政策の打ち方をしないといけない。
○スーパー・メガリージョンについて、中間駅周辺から始まる地方創生という部分があったが、私が住んでいる所はリニアが通るというようなところで、一部の関係者が沸いてはいるが、地域住民がどれだけ分かっているかという点については、少し疑問が残っている。最初の時よりもかなり時間が流れているということも含め、今の時代に合っているのかどうかということも考えていく必要性がある。
○スーパー・メガリージョンについて、東京、名古屋、大阪という大都市圏の特徴を活かして議論すべきだという話があったが、まさにそういうことだと思う。ただ、このスーパー・メガリージョンが本当に広域的拡大につながるのか、どうすればつながっていくのかということを考えてはいるものの、なかなか答えが見えてこない状況。
○どのような人たちがどういう目的でリニアを使うのかというのも、今の年代と、完全にリニアができた年代とでは、その意味合いも違ってくる。その間にAIやデジタル、オンライン会議などは進んでいくだろうし、スケジュール感をもう少し意識していかないと、具体的な取組を描いていくのは難しい。
○リニアを使って時間的に短い日帰りでできる出張が進めば、本当に東京一極集中の是正につながるのかという逆の疑問も出てくる。このあたりを時間軸とともに、技術的な部分やコロナ禍に定着した新しい生活様式も含め、もう少しわかりやすく、また様々な観点、課題から議論をするということを書くと、具体的なものが見えてくるのではないか。
○資料3の主要課題1,2について、諸外国に比してイノベーションの動きが弱いとか、中小企業との生産性とか低いに関連して、参考資料でも開業率について欧米諸国に比べて一貫して非常に低い水準で推移していることをあの指摘されているが、これは今に始まったことではなく、昔から水準自体は格差があった。その中でなぜ日本の経済成長が実現できていたのかを考えると、その要因の一つは、既存企業の製品開発力というのにあることが指摘されている。具体的には、プロダクト・スイッチングやプロダクト・アディングが企業の参入以上に経済成長に貢献していたと言う指摘がある。こうした点を踏まえると、開業支援も重要だが、廃業支援、事業転換支援も同時に求められるのではないかと感じた。
○現在はSociety 4.0から5.0への移行期である。地域の産業の競争力、成長力または稼ぐ力の観点からは、フィジカルとサイバーの二つの領域の融合を深めることが重要になってくる。
○現状はまだフィジカル側にかなり寄った状況にあり、サイバーまたはデジタル側の技術を地域でもっと活用できるようにする必要があると考える。工業化自体の価値、コストや性能、機能性、品質、納期といったものにGXによって増進される地域初の新しい社会的な価値を足し合わせて発信することが重要と考える。
○各地域で実現するためには、地域のエコシステムを見直す必要があり、ここが国土政策と関連すると考え、これを新学習地域と言う名前で整理した。国土形成計画にある知的対流拠点は、この新しい学習地域の要素の一つとなる。ただし、工業化時代に一般的であった計画的な知的対流ではなく、新しい形での知的対流である必要がある。
○スーパー・メガリージョンにおける、リニア新幹線はその列島の中央部を折りたたむような効果を持つと考える。地域をより密につなぐことで、地域の産業の経営資源に多様性をもたらすとともに、価値ある情報を運び、学習地域群を横に結びつけるものにする必要があると考える。
○我々は、大都市と地方はつながっており、地方でいいものを作っていくことで、大都市の生産性を高めていくようなことを考えているため、まずは地方からイノベーションを起こしていくような活動をしている。中小企業の生産性の話もあったが、会津では、地域の中でシステムを共同利用することによって生産性を高め、給料アップのような成果にもつながり始めている。
○イノベーションについては、都市OSを軸に取組を進めているところ、30を超える企業がそういった新しい取組に共感していただいて、会津にロケーションしていただいている。こういった尖った取組によって新たなイノベーションを起こすことができるのではないか。
○ネガティブな要素として地域の閉鎖性みたいなところが述べられていたが、私の部門では外資系企業の誘致も長くやっているが、外資系企業が日本に来て単独で何か活動をしたいというよりは、日本に根付いている企業とコラボレーションしていきたいと思っている企業がほとんど。このため、外国企業を受け入れて一緒にものをつくっていくというような取組が非常に重要。
○必ずしも大都市から順番にということではなく、投資先としてそういった取組を先進的にやっていく意欲的な地域を、規模にとらわれずに選んでいく視点があるとよい。
 
(チャットによるコメント)
○高齢者の活躍については、
 ・加齢=老化ではないという啓発
 ・健康寿命の男女差はあまりない。男性72歳、女性75歳。私見だが、仕事など、社会接点が原因なのではないかと思っている。社会に関わりを持ちながら、いきいきと健康に長生きすることが大事な時代に入った
 ・高齢者についてはアンラーニング(過去の成功体験からの脱却)も必要
 と考えている。
○資料4の高齢者に関して記載された7ページについて述べる。東京の救急医療現場では、独居高齢者の増加が顕著である。首都圏第二世代として東京に居を構えた方々の中には、独身の方や配偶者が他界された方、お子さんが親をサポートする力が無い方もいる。そういった方々は自立しているものの、もし介護や医療の提供が必要な状況になった場合に、それを自覚出来ず、あるいは周囲から認識されない状況にある。この方々を支える機能が、すでに東京には無いように思う。
○「すべてを救うことはできない」という意見もあり、確かに限界はあると思う。しかし、そうなる前に他世代とのつながりをつくれるコミュニティがあれば、高齢者の仕事が生産につながらないまでも、生産年齢を支える役割を、高齢者の方に担っていただくことができるのではないか。そのコミュニティのようなものは都市部ではなく、都市周辺に伸ばしていくイメージだろうか。
○もちろん、高齢になってからの急激な環境変化は好ましくない副反応をもたらす可能性はあるし、土地や財産の問題もある。難しいこととは思うが、人生会議(Advance Care Planning)の活用も含め、段階的かつ計画的に個人が対処できるようにしていければ。
○「多極集中」という言葉はキーワードだと思う。一極集中ダメ、だから多極分散となり、いきなり限界集落で頑張る若者の話になる地方創生パターンは持続性も広がりもない。
○地方の若者は稼げる仕事と豊かな生活を夢見て東京にやってきて、そのほとんどは稼げない仕事に就き、高い生活コストで可処分所得も時間もない人生になり、結婚も子育てもできなくなったのが、長年、出生率最低を独走する背景である。人口減少も実は「東京の大問題」の一つである。
○資料2の地域・部門別のCO2排出量から、大量生産とサプライチェーンの見直しが必要であると考える。
○介護サービス不足や出生率の問題も、過剰集積の負の側面を示していると考える。子育て支援については、待機児童数のみで子育て環境を語るような見方には限界がある。子育て世帯の通勤時間の長さや住居費、労働時間の長さなど、過剰集積による影響とも結びつけてとらえるべきだと考える。
○大都市圏の介護需要に引き付けられて地方圏からの労働力が流入することで、ますます一極集中が進むという点に対して、高齢者の地方移住に可能性があることは否定しないが、他方で、高齢者がなじんだ空間から移動することでのリロケーションショックも当事者や介護者にとっては重要だと考える。生産年齢人口の段階から地方でのやりがいあるイノベーティブな仕事があり、そこでの生活や関係性を作り出せることが大事だと考える。
○「スーパー・メガリージョン」や「エコシステム」など、一般的にはあまり耳にすることのないカタカナ用語が多すぎることが気になる。もう少しわかりやすく良い日本語に翻訳しないと、当初言われていた「中学生にもわかる国土形成計画」にならないのではないかと危惧している。
○新陳代謝を生み出すための廃業等の支援に賛成する。廃業等をネガティブなイメージで捉える文化をポジティブなイメージへと変える必要があるが、地域金融機関等がポジティブに、企業買収や廃業支援をできる素地を作ることは、重要と考える。
○多くの国で開業率と廃業率は正相関し、90年代からの破壊的イノベーションの時代に入りそれと成長率の正相関は強くなっている。開業率をあげるには廃業率も上げなくてはならず、産業と企業の新陳代謝力を高めないと、破壊的イノベーションの時代の成長は難しい。これはグローバル大企業の世界もローカルな中堅中小企業の世界も基本的に同じである。
○国土形成計画は、全国計画と広域地方計画とで構成されている。私の意見では、三大都市圏のみならず、札幌・仙台・広島・福岡などの準巨大都市圏群も、我が国全体の活力増進を推進する重要な存在として、広域地方計画に任せきるのではなく、全国計画でも明示的に取り扱っていくべきだろうと考えている。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)
 

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