計画部会

第10回計画部会・議事要旨

1.日時
平成27年6月5日(金)10:00~11:30

2.場所
経済産業省別館3階312号室

3.出席委員
奥野信宏部会長、家田仁委員、岡部明子委員、小田切徳美委員、垣内恵美子委員、寺島実郎委員、藤原忠彦委員、橋本哲実委員、増田寛也委員、望月久美子委員

4.議事
(1)新たな国土形成計画(全国計画)最終報告(案)について
(2)第五次国土利用計画(全国計画)最終報告(案)について

主な発言内容(委員発言順)
(1)開会挨拶
○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題    
最終報告案について事務局から説明。続いて、日本創成会議資料について増田委員より説明の後、東京圏における高齢化の状況について事務局より補足。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。

<国土の基本構想>
・今回の国土形成計画は、人口減少に入って初の計画なので、もう少し人口減少に伴う発想の反転みたいなものが希望のメッセージとして出てきてほしいという期待が世の中にはあると思う。
・前回、発言があった「ローカルこそグローバルである」といった発想、あるいは、「人口減少こそイノベーションである」とそのように読めるような部分もあっても良いのではないか。読みたい人には読めるように、奥行きを感じさせるような文章にはできないか。
・「ローカルに輝き、グローバルに羽ばたく」では、そのまま読むと、やはり地方はぼちぼち生きていけばよく、集約化して競争力を出したところでイノベーションが起こってくれればよいというように読めてしまう。
・「人口減少の地域は、小さな拠点で手厚く支援するので、安心して暮らしていけますよ」という程度のメッセージではなくて、「人口減少こそイノベーションを起こす」というメッセージが組み込めないか。
・現実問題として、これから競争力のあるイノベーションは介護ビジネスや高齢者サービス、あるいは観光分野だったりするので、どちらかというと人口減少が起きている地域に元気な質の高い高齢者が集まり住むような人口減少地域が現れて、そこでイノベーションが起こるということが、実際あり得るのではないか。
・働き方についても、P79にある「地域消費型産業の付加価値生産性の向上」はベースとしては重要だが、もう少し、働き方のイノベーションに対する想像力があってもよい。具体には、例えば、夫婦で地方に移住して担い手になってくれる人というのは、片方が学校の先生や公務員のような公的サービスに従事しており、そのパートナーが地方で活躍してイノベーションになっていくという場合が多い。そういう夫婦が移住しやすくなるような仕掛けはないものかと思う。
・スーパーメガリージョンの考え方について、海外の企業の方に伺う機会があって、非常に独創的なコンセプトだとすごく興味があるとの反応が見られた。昔の太平洋ベルト地帯という、日本が大転換した発想で工業化が進められたように、成熟都市社会の中でのひとつのあり方を独創的観点で示しているとの反応が海外からあったが、ここを具体的にどうしていくかについては、引き続き議論を深めていければと思う。
・国土全体の発展のためには、新たな国土形成計画のキーワードである「ヒト・モノ・カネ・情報」の対流をおこして、農村と都市が相互に貢献して、共生する社会を実現することがきわめて重要。
・第1部第1章の9頁に記載している目標の中で、特に[1]「安全で、豊かさを実感することのできる国」が重要なメッセージであると考えており、第2部の第1~9章の施策を個人に発信することによって、その方々が将来どういう社会をつくっていくか、それぞれ考えさせる契機になると思う。

<分野別施策の基本的方向>
・今、観光というと、インバウンドの取り込みが観光立国の柱みたいになっているが、観光を軸にしたサービス産業の高度化が図られないと、日本経済の安定的な発展は望めない。
・観光を基軸に据えて、年収300万~500万円で子供を育てられる産業基盤にしていかなくてはならない。ところが、観光を産業として産業連関の中でどう花開かせるかという分析・議論がない。
・観光については、インバウンドを1341万人から3000万人増やそうという話ばかりで、どうやって観光産業を産業という名にふさわしいものにしていくのかという、もう一つ踏み込んだ議論が必要。MICEの議論やIRの議論が一部入っているが、これからこれがものすごく国交省的にも課題になっていくだろうということを、問題意識として持っておくべき。
・田園回帰の高まりを受けて、町村側の体制整備が必要で、そのためには集落の維持や地方創生が極めて重要。
・今回の計画において、集落の機能維持を前提に、「小さな拠点」の形成が盛り込まれているが、実態は地域によって様々であるので、地域住民のニーズを踏まえながら、集落の維持に取り組み、計画に沿って実現していかなければいけない。そのためにも地域の実情に応じた多様性に富んだ取組やきめ細かな支援をお願いしたい。

<計画全般>
・対流促進型について、だいぶ書いていただいているが、アジアをにらんだ構想力が日本に問われている。別の文脈だが、中国やロシアがユーラシア大陸をにらんだような、ネガティブな文脈を含めた、例えば、AIIBのような構想をしてきている中で、日本の国土計画がインナールッキングだけではまずい。
・アジア連携の視点が組み込まれてきてはいるが、例えば、エネルギー自給について、アジアとのエネルギー連携だとか、アジアとの電力グリッド構想だとか、国内的にはLNGのパイプライン構想だとか、そういう形でアジアのダイナミズムを取り込むといった視点が対流促進型と並行して問題意識としてなくてはならない。
・前回も発言したが、中国のGDPが2010年に日本を追い越して、わずか4年で2倍になり、2017年には3倍になる。日本人への心理的プレッシャーは意識していないが、ここがあらゆる政策論の裏側に横たわっている。今後、アジアのダイナミズムにどう向き合っていくか、より正面から向き合った議論が必要になってくる。この問題意識は持たなくてはいけない。
・資料2の159頁第2節(1)、資料3の23頁(7)に、市町村による地籍調査について記載しているが、どちらも現状に関する記載が足りない。地籍調査は国土の約75%が対象になっているが、毎年市町村が実施し、国費負担は130億円程度しか使われていない。やるべき対象の半分程度しか達成されておらず、特に大都市圏の市街地での達成率は4分の1に過ぎないともいわれている。地籍を把握することは基盤中の基盤であり、調査が遅れている現状をこの計画で訴えていくべき。少なくとも現状の認識を一言、二言書き込んだ方が良い。
・これまでの計画部会での議論を踏まえ、国民目線でなるべく分かりやすく記載されたものに仕上がっている。
・計画は実行していかなければならず、現場の声を聞いて、どう支援できるのかという観点も重要。PDCAをしっかりしておくべきで、計画をチェックする体制を整備しておく必要がある。
・計画をいかに実現するかということが重要。かつて国土計画は予算政策や国土政策とのリンク、拘束力が強かったという意見を聞いたことがあるが、政策的な担保が仮に失われているとすれば、PDCAというサイクルや新しい工夫の中でどうやって実現を担保するかといった点についても引き続き議論していただければと思う。また、長期的な視点は必要だが、環境変化にいかに対応するかという視点も必要。
・広域地方計画について、ブロックの視点は非常に重要。産業の面で見ると、小さい地域圏であれば、特定の産業を集積させるということだが、ブロック単位となると、むしろ異業種を集積させたり、融合化させたり、都市機能との連携という違う視点も必要になってくるという難しさがある。ブロックベースの計画ではほとんどうまくいっていないという評価もある。どうしても、県の対立などがあり、色々な試みがあったが、かつてはあまりうまくいっていなかった。意味を持たせるには、観光など具体的なものに絞って、優先度をつけてやっていくというやり方もあるので、ブロック計画に意味を持たせる方法論も引き続き議論いただければと思う。
・今回の計画のキーワードを3つあげるとすると、「対流促進型国土」、「コンパクト+ネットワーク」、「個性」。計画中、キーワードを数えると「対流」は211回、「コンパクト」は71回、「個性」は89回であった。まさに個性あふれる地域、あるいは個性を磨くということが強調されており、これほど「個性」を強調した政策文書は他にない。今回の計画はこれが一つの特徴。
・起承転結がはっきりしてきた。第2部第9章部分で、共助社会という言葉で一括し、個性を磨く主体が明確になった。
・以上を踏まえると、今回の計画は、ボトムアップで地域を磨いていく、そして磨いた地域で国土を形成していく、といったボトムアップ型の内発的発展論を適用したといえる。まさに原点回帰で国土形成の方向性がはっきりしている。
・そう考えると、スーパーメガリージョンあるいはリニア中央新幹線については、各対象地域で内部化することが必要。外部に寄り添ってしまうような外発的な発展では駄目で、対象地域においてはそれを実践するような主体性が求められる。
・もう一つは人材育成。内発的発展というのは厳しい道であり、それを担うような人材育成、教育が必要。国土形成計画においても、本来は人材育成についても一つの章があっても良かったが、第2部第9章において横串でまとめて記載されているのでそれをさらに発展していく必要がある。
・高度成長期、自然に対して大きな負荷をかけてきたが、人口減少下では、より美しい国土を形成していく契機だと形成計画ではポジティブに捉えており、高く評価している。規模拡大の圧力からコンパクトへと発想を転換し、その中で国民一人一人が主体的に共助社会をつくっていくということが第9章に明確に記載されている部分も評価したい。

<東京圏の高齢化>
・首都圏問題について、付け加えたい論点がある。高齢者問題は必ずしも医療・介護の問題だけではないということ。70代でも8割は健常者。田舎の高齢者と都会の高齢者とがどうやってその地域で元気に生活してもらえるかということが重要。つまり、参画のプラットフォームをどう作るかということが非常に重要になってくる。
・もちろん医療・介護の問題も重要だが、一都三県だけではなくて、広域首都圏ブロック、地域連携でこういった問題を解決できること、例えば食について、どうやって首都圏の食糧自給率を高めるために広域首都圏で連携して、そのプラットフォームに参画させて元気な老人を作っていくか、さらに、広域首都圏で連携して、防災についてどういう仕組みを具体的にしていくか、例えば、ドクターヘリコプターの連携利用など、そういう広域連携の視点が、今後、首都圏を議論する時に重要になってくる。
・参考資料2の2頁について、埼玉県の2025年、2030年のメッシュだが、隣り合う都や県と80歳以上2,000人以上の分布が全く違っている。居住の姿は県境で異なることはないと思うが、データ上問題ないか。
・後期高齢者が今後急増する中、精神的にも肉体的にも健康を維持していくため
色々な取組に着手する必要がある。本計画でも長期の目標と長期の行方を記載することが重要であり、ウェルネスも強調するべき。日本のいくつかの市町 村ではスマートウェルネスこそが重要として、介護の必要がない高齢者を増やしていくことが重要であるという運動をしている。
・東京圏の問題については、福祉施設が足りないと言われる一方で、資産のリサイクル的な視点として、非常に膨大な空き家や遊休公有地が出てきている。不動産のミスマッチが生じており、上手くつなぐ仕組みが現時点ではないと認識している。
・産業政策的な視点から言えば、2020年オリ・パラを見据え、健康スポーツ産業を今後民間の産業化していくという視点が必要。独自調査で、スポーツ産業の市場規模が減っているという逆行するような現象が日本で起きている。新しいタイプの産業を興していく中で、多様な高齢者のニーズに応えていくという視点をどう取り込めるかということも必要。そういった戦略は、自治体単位では難しいので、広域連携等により、有効な戦略を作れるような枠組みを首都圏でも作っていく必要がある。
・少子高齢化が深刻に受け取られ過ぎている。これからの高齢者は担い手であり、参加し、干渉し、お金も出している。参考資料2について言えば、80代
前半だと介護が必要でない方が7割ということになる。彼らは、多くの富を蓄積しており、介護の必要もなく元気である、さらに教育水準も高いため、国土形成計画においても共助社会の担い手として位置づけることが重要。

以上

 

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