計画部会

第2回計画部会・議事要旨

1.日時
平成26年10月24日(金)10:00~12:00
2.場所
中央合同庁舎3号館10階共用会議室A
3.出席委員
奥野信宏会長、大西隆委員、岡部明子委員、小田切徳美委員、柏木孝夫委員、坂村健委員、佐々木眞一委員、高橋泰委員、田村圭子委員、
寺島実郎委員、橋本哲実委員、藤沢久美委員、望月久美子委員、野城智也委員、鷲谷いづみ委員
4.議事
(1)国土形成改革見直しに当たっての基本的考え方
(2)個性ある地方の創生

主な発言内容
(1)開会挨拶
○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題
国土形成計画見直しに当たっての基本的考え方、個性ある地方の創生について事務局から説明。
その後、主として、個性ある地方の創生についての意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。

<地方の創生>
・地域間に差異がないと人が移動せず対流しない。ソフト施策も取り組む必要がある。外国人の取り込みも含め、魅力ある拠点とネットワークのモデルを作るべき。
・地方で出来ることを地方でやるのではなく、地方だから出来ることをやるという意識改革が必要。
・地方が自らのポテンシャルをポジティブに考え、自立的、持続可能で豊かな地域づくりをめざすことが重要。
・仕事という概念を広く捉える必要。年収60万円の仕事を5つ持つのも立派な生業(なりわい)。
 地方に居住した若者は本気になれば仕事は見つけられる。
・現在、エネルギー産業全体の経済規模が17兆円であり、1700ある自治体がこれをビジネスとして取り込めば地域内で資金が循環することとなり効果が大きい。
 地域の経済成長を伴いながら人が定着し子育てができるよう、自治体改革が必要。
・国土のグランドデザインにおける国土づくりの3つの理念はエネルギー分野にも該当するものである。
 「ダイバーシティ」はローカルエネルギー、「ネットワーク」はコンパクトシティ関連やスマートグリッド、
 「強靱化」は分散型エネルギーシステム。これらに対する積極的な投資が必要。
・地方への人口定着については、「教育」「医療」「福祉」の不足がネックとなっている。人材不足はICTのネットワークで解決できるが、
 そのための規制緩和が必要。ICTを有効利用した国づくりをもっと強く出すべき。
・ICTを活用したスマートアグリで地方が大きく変わる可能性があり、農地の集約化、大規模化が必要。
 そのための規制改革を国土政策と連携して進めていくべき。
・地域の特色に応じた産業配置をインフラ整備で誘導することができれば望ましい。
・東海環状道路の整備により、伊勢から高山、富山という流れが生まれる。観光とのパッケージでのインフラ整備という観点が重要。
・東海環状道路のような都市圏を取り巻く外環型道路が総合交通体系に与える影響や、
 LCCと空港の関係、北極海航路やパナマ運河が港湾に与える影響を認識すべき。
・交流人口を増加させるため、観光立国の実現が重要。サービス産業の高度化という観点で、
 観光立国で成功しているフランス、スイス、シンガポールなどの成功体験を吸収していく必要。
・地域の産業集積を活かしつつ、域外と連携して付加価値の高い産業に転換していくなど、日本らしい地域イノベーションモデルを構築することが重要。
・実効性のある地域産業戦略の策定が可能な新しい枠組みを検討することが必要。例えば、ブロック単位で公・民の関係者が主体となり、
 具体的な技術に落とし込んだ地域戦略を策定することが考えられる。その前提として、地域経済の実態や地域企業の立地構造を「見える化」することが必要。
・経営人材を確保するため、地方大学の役割の見直しや自治体におけるシニア人材の養成が課題。
・経営を持続していくためには、金融の役割が重要であり、ナレッジの提供、トータルコーディネート、ビジネスモデルの提供、
 リスク分担等により早い段階から政策の実現可能性を高めていく必要がある。事業体の垣根を越えた取組への支援が課題。
・地域の個性を磨くためには、地域の官民が連携することが重要。特区での取組を持続可能なものにすることが必要。
・大学を核とした自治体や企業の連携により、地域の個性を発揮していくことができる。
・ICTのインフラを整備し、誰もが安価に利用できる状態にすることが非常に重要。
・地域での様々な取組に障壁となるのは資金調達であり、金融の役割が重要。
 人材育成や事業開発など効果的な投資が可能となるような仕組みが必要で、資金調達に関する規制のあり方も検討すべき。
・土地の所有と利用を切り離すべき。特に田舎の土地では、所有権を手放すのは抵抗が大きいが、
 有効に利用してくれる人がいれば任せたいという人は多いのではないか。
・地方の個性を磨くためには、世界に対して何を売りにできるかという視点が重要。
 また、地域が生きていくためには、プレイヤーが重要であり、外部のプレイヤーを取り込むことも必要。

<人口問題・東京一極集中>
・今回は、人口問題について真正面から取り組むことが大事である。その際、適応策と緩和策を区別して論ずる必要がある。
 適応策については将来の人口を設定し、そこからバックキャストで発想すべき。
 緩和策については、出生率を2.07 として安定させるため、公的施設における育児施設の整備など、
 広い意味での国土政策としてやれることを積極的に打ち出していくことが重要。
・今後、東京の人口シェアは高まるが絶対数が減る。過密でなく快適な大都市として認識され、東京一極集中という言葉が死語になるのではないか。
・東京は地方から人を呼び込んでいるとともに、子供が生まれない、子供を育てられないという、世界から見ても珍しい都市。東京の課題は出生率を1.13 から上げること。
・チンパンジーは母親と強いきずなを持ち、母親にしがみついて育つが、ヒトは母親を含めた大人が共同して子育てする。
 このような習慣を社会的な制度でどう代替するか検討すべき。
・ヨーロッパでは出生率が回復している地域も多い。イギリスの出産・育児の総支出が対GDP比3.8%なのに対し、日本は1%。
 また、ストックホルムでは、17時までに帰宅する男性が60%なのに対して、日本はほぼ0%で20時以降の帰宅が過半数。出生率が高い地域の要因分析が必要。
・次期国土計画では、人口が半分になる社会を前提として考える必要。
・地方と都市には違った魅力がある。若い人は地方の暮らし、豊かな環境とおおらかな人間関係を求めている。
 対流を起こすため、地方には魅力的なライフスタイルが用意されていることを発信する必要がある。
 地方の「こぢんまりとしたまち」と「素敵な田舎」を行き来するようなライフスタイルを提示できれば対流が起こるのではないか。
・東京一極集中が抑制されないのは、所得・雇用とは別の格差が生まれているのではないか。幸福量の均衡といった政策目標も検討すべき。
・東京への人口流入はこの10数年ほぼ一定だが、東京から地方圏へ出ていく数が減少している。 
 一極集中ではなく「一極滞留」。地方に戻ろうとしても戻れなくなってしまっている。
・「田園回帰」というより、「ふるさと回帰」と「ふるさと創造」の2つを分けて考えるべき。心を寄せるふるさとづくりにも注目すべき。
・東日本大震災を経験した後の国土形成計画として、防災・減災の観点から首都機能の分散を検討すべき。
 官民の機能分散の進捗状況を把握し、今後の方向性を検討することが必要。
・少子化対策としては、生活目線で見た場合の豊かさを示すものさしを提示した方が価値転換が進むのではないか。

<コンパクト+ネットワーク>
・地方に行けば行くほど小さな範囲の中で生活している。「コンパクト+ネットワーク」で物理的な距離が広くなり、
 それに耐えられずに地域が壊れることもあり、交通を便利にするだけでは不十分。広くなったコミュニティに新たな愛着が生まれるような仕掛けが必要。
・ネットワークを考える上で、日常的な生活空間の範囲を考慮する必要。
・集約とは「たたむ」ことであり、積極的にシビアな内容にも踏み込む必要。地域分散をずっと言ってきて現実として出来ていない。
 現実をもっと謙虚に捉えて明示していくべき。
・医療の分野では、人口減少に備え、各地域で2025年を見据えた地域医療ビジョンを策定し、地域ごとの病床整理を進めるための協議を行うことを目的とした法整備が進んでいる。 
 医療施設は地域偏在があり、過剰なところは削る必要。GISで施設の「見える化」ができるようデータベースの整備を進め、各論の議論を深める必要。
・次期計画には、地域から全国レベルまで様々なネットワークの受け皿としての国土構造が求められている。
・小さな拠点は拠点とネットワークの考え方。拠点には「たたむ」という意味はなく、低密度居住という考え方を前提としている。
 より低密度居住を維持しつつ、なおかつ財政負担を低くすることを考えるべき。
・小さな拠点での活用が検討されているコミュニティバスやデマンドタクシーについては、運転手の人手不足も懸念されるため、
 電磁誘導による部分的な自動運転の導入も視野に入れるべき。低コストで住民サービスを維持することも可能。
・「コンパクト」の核は、国が設計する必要がある。
・まちの集約化と居住地域の集約化で注意すべき点は、持続可能な集落はしっかり残すべき。過疎集落のたたみ論が強調されると、残していける集落も意気消沈させる可能性がある。国土計画には、地域の文化を守り育てる役割がある。
・社会資本を捨てるという視点は重要。例えば、都市の郊外部にある下水道は自治体による管理が困難となり、検討が必要。
 他方で、山間部の橋や道路などは、河川管理や森林管理上必要であり、人の居住がないから捨てていいということにはならず、きめ細かい議論が必要。

<計画全般>
・基本的考え方に、格差是正、国土の均衡ある発展に言及が無いことの是非を改めて考える必要。
・今後の国土政策を考える際、コンピュータの理論的概念が参考になる。ヘテロジニアスマルチコア(構造が異なる複数のコアを集積したマイクロプロセッサー)のように、
分散していながら自治体同士を繋ぐ具体的なプロトコル(手順)を決める必要。現在の行政区域は効率性の観点で区分したものではないので、再構成が必要かもしれない。
・テロへの対応も国土政策として考えるべき。
・現行の国土形成計画策定時は、具体のプロジェクトは広域地方計画に期待されたが、今回の議論では、現時点で広域地方計画の形が見えてこない。
広域地方計画でどのような産業創生を示すかが問われている。
・農林水産省や経済産業省等との連携による国土計画の策定が必要。例えば田園回帰の動きを支える仕組みとして、
農産物の輸出入に関する目標を農林水産省と共有できれば、各地域が目指すべき方向性が見えてくる。
経産省との関係では、産業の広域的配置が国土計画上極めて重要。
・個性ある地方を創生するためには、自治体改革を行い自治体が権限や主体性を持って地域を活性化していく必要がある。
地方分権という視点を見失ってはならない。

ページの先頭に戻る