第14回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第14回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
  令和2年10月30日(金) 10:00~12:00
 
2.場所
  国土交通省3号館10階 共用会議室(Web開催)


3.出席者(五十音順、敬称略)
  委員:石田東生、伊藤香織、鵜澤潔、金山洋一、木下剛、小池俊雄、小林潔司、高木健、谷口綾子、中川聡子、藤田壮、藤野陽三、二村真理子、堀宗朗、松尾亜紀子、屋井鉄雄、山田正

4.議事
1.今回のテーマについての議論
<テーマ>
「スマートシティ、スマートローカル、公園住環境、 グリーンインフラ」
2.その他
   今後のスケジュールについて
 

 
5.議事概要
・議論してきた問題の1つに、地球環境問題が挙げられる。10月26日に菅総理が国会で、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言された。国土交通行政が関連する分野によるCO2排出量は50%を超えており、非常に重大な問題であると思う。ある意味追い風ではあるが、強烈な追い風が吹いているときが一番感染の危険性が高いようである。議論する上で、質、深さ、幅が重要。官の中での連携・関係性を考えつつ、御題に取り組むことが必要。
 
・プライドは地域にとって非常に大事であり、シビックプライドの一方でコンプレックスもあるのではないか。
 
・農地の価値を見いだすこと、価値を地域で共有し、地域を介する合意形成が必要なのではないか。
 
・色々な地域でシビックプライドの話をすると、プライドとコンプレックスが両方出てくる。コンプレックスが解決すべき問題である場合もあれば、個性である場合もある。どこの地域でも「東京を目指す」、というマインドでのコンプレックスであれば、それを逆に個性としてやっていく場合もある。それが一体何なのかということについて、コミュニケーションを通してもう一度自分達で問い直していくというプロセスが良い方向(プライドを持つ方向)につながっていく。
 
・農地の見えない価値の見える化の方法については、農地の場合は日常的に食を通じて安全安心な農作物が手軽に入るという側面を日常的に強調しつつ、農地・農業が身近にあることを人々に認識してもらう。これがいざというときにはそれを是が非でも守る、という意識につながっていく。こういう面が一方であり、他方では農地・農業を維持主体している農家の意識改革も必要。農地・農業が地域の社会を守っているという意識をもつことが大事。両者が歩み寄りの中から、普段は意識できないような価値が地域として共有され、合意形成につながる。
 
・シビックプライドが新しい公共サービスを生み出す鍵ではないか。近年ヨーロッパでは気候変動・Climate Action(SDGsの目標13)で、能書きから行動に移すというステージに入っており、日本より10年20年進んでいると思う。
 
・MaaSやCASE、グリーンスローモビリティなどを自治体に持ち込むが、事業者と自治体、市民との間の連携が難しい。
 
・物理的な存在(シティビューティフル、モニュメント、ランドマークなど)だけでなく、物として具現化されていないもの(Climate Actionなど)についてもシビックプライドの現れと考えられる。
19世紀英国のヴィクトリア朝のシビックプライドの説明に際して、建築として具現化されていたことを強調したため物的な存在の話となったが、背景には文化の価値を認め振興していくことにプライドの根幹があり、当時はその表れが建築であった。現代に置き換えると、様々な市民活動がプライドの表れであると思われる。
 
・公共空間の重層的な活用に関して(シビックソサイエティの連携など)、欧米は日本と比べ、地域社会による環境自治の意識がしっかりしているように思う。日本ではPFIのP(プライベート)はもとより、官民連携の「民」もほぼ事業者(企業)で、なかなか地域住民、地域社会が見えてこない。英米はそうではなく、まずは地域社会が公共空間にコミットする傾向が見られる。地域のNPOなどの社会的企業が住民やボランティアを巻き込みながらやっていくこともある。日本でこうした動きを盛り上げていくにはどうしたら良いかなかなか難しいところである。海外の事例では、作る段階で、出来るだけ早い段階で地域の方と協議しながら(ワークショップをしながら)作っていることが多い。愛着を持ってもらうことが大事なのではないか。
 
・ツールや仕組みだけでなく、シビックプライドに当たる魂を国土交通政策的に情勢する仕組みが必要なため、「リアルなきサイバーは…」といった内容を資料に記載した。
スマートモビリティやMaaSの支援事業を国交省が行っており、成果が出てきている。上手くいっているところは、魂が入っている。システムとして横展開となってしまうので、そこをどう技術的に制度化するのかを考えていくべきである。
その中の1つとして、逆説的ではあるが、データ連携にとらわれすぎないで、リアルな連携、シビックプライドの大事な所を共有する、という原点中の原点(基本中の基本)に立ち戻るべき。
 
・コンプレックスについて、インドネシアや南米の貧民街にてカラフルなまちづくりをして再生を図った事例がある。何が一番効果的であったかを聞くと、コンプレックスをプライドに変えた、ということであり、大きな成果だったことを思い出した。強いリーダーシップがあったから実現したと考えられる。
地域全体としてのプライドを作るには、プラットホームやリーダーシップといった、組織的なメカニズムが必要。
 
・水に対する日本人と欧米との間では考え方が違う。日本では河川から直接引いてきた水を浄化して、水道水として使う。一方、欧米では川の水を水道水として使うことはほとんどあり得ない、一度浄化し、公園などの水源に撒き、伏流させ、地下に浸透させ、地下水として湧いてきた水を使っている。水や河川と人間との関わりにおいて大きな違いがあるのではないか。自然・歴史や文化という大きな枠組みが必要。
 
・地域全体としてのシビックプライドを育てる活動のきっかけはいろいろある(行政、何らかのテーマを持てるNPO、個人)。いかに周りを巻き込んでいくかが大事である。最終的には組織なりパートナーシップになれれば良い。
発し手がいて受け手としての市民がいるが、受け手の市民がいつまでも受け手でいるのではなく、受け手の中から次の発し手になって広げていけるような仕組みが必要。必ずしも最初から仕組みを作って皆で行っていくよりは、色々な所から始まっていかに広げて主体になれる人を引き上げていけるかが重要。
 
・日本と欧米では水に対する距離感や間合いが違う。日本は水が豊富だが、水に対する恐怖も常にあるのではないか。その一方で、ヨーロッパは治水に対する意識は日本と比べて弱く、そのことが空間デザインにも反映されているように思う。
 
・Agile型という言葉はあったが、日本は短期計画とマスタープランが得意であり、その組合せでやってきている。一方で、アメリカやEUは長期計画の考え方が得意である。長期計画の考え方は、今年から20年先まで永遠と続いていく事業型である整備されている。長期計画の視点は日本でも本来重要であるが、色々な時期に批判されたりして間違った時期にストップされたりもしている。
改めて長い将来のビジョンを持ちながらやっていけば、決して静的ではないのではないか。グリーンインフラの世界観とは違うが、静止画であったことは問題である。
 
・道路等の公共空間に緑を増やそうと検討しているが、自転車の走行空間を作る・無電柱化を進めるために街路樹を伐採する、地下埋設物などが複雑に絡み合っているため新たな空間を作りにくい等の理由があり、現実的に厳しい状況である。街路樹が健全に育成するような環境を近くに作りにくい。
アメリカでは、ハリケーンなどの強風により、樹木が倒れて電線がきれ、変えるべきであるとなった際、樹木、緑の環境は大切という理由から、樹木を切るのではなく、電線が切れないように電線を地下に埋める。
行政なりがメッセージを出しているのではないか。日本ではメッセージが出せていないときに、一部の住民等からの要望で樹木を伐採することも見受けられるため、元々の原因は健全な樹木が育っていないからではないか。健全な樹木が育つような整備をどのように進めるかが重要である。
 
・スマートモビリティやMaaSにおいて、補助金頼りだとビジネスとして持続しないため、自活しようという意識をもちしっかり実践している人が徐々に増えている。そのような人をさらにどう広げ、環境を整えていけるかがスマートシティを継続的に進めていくたに大事である。貸切契約の問題や業務用車両の融通など、色々課題があり、目配りが必要。問題を1つ1つチェックして解決していくことが必要。
 
・ヨーロッパの都市計画では時間軸が存在していたが、日本に導入された際に時間軸が見落とされ、静止画的のように計画が作成されたことが問題である。本当の意味でのグリーンインフラの議論ではなく、戦後の日本において行政によるインフラのあり方が時間軸を忘れてしまったことが問題である。グリーンインフラで補完・スケルトンインフィルで伸びていくという問題提起である。
 
・街路樹や道路へのグリーンインフラについて、英国でも特に市街地の道路はせまいが、徒歩や自転車のようなサステナブルな交通手段の優先順位を高める、といった方向性があるのではないか。具体的には、車線を減らし、歩行者空間にするなど、グリーンスペースを増やす事例が増えている。道路を拡幅するのではなく、自動車の優先順位を下げる。歩行者のためのスペースを増やすことがヨーロッパで増えてきているのではないか。公園に河川を引き込んだ事例については、元々その公園はサッカーピッチなどがあったところで、当時その公園を利用していた市民団体との議論を経て洪水調整機能を受け入れた。基本的なことだが、十分に議論を尽くすことが重要。
 
・東京都では、時間50ミリの雨で河川計画を作ってきたが、昨今の状況に鑑み、その基準を時間75ミリにあげた。ハード対策は、グリーンインフラも含めた計画になっているが、東京でのグリーンインフラの導入例はかなり小規模レベルである。昨今は時間100ミリを超えるゲリラ豪雨もあるので、グリーンインフラが進められるべきだと思う。
・グレーインフラとグリーンインフラの組合せの話は目からウロコである。市民の理解が得られるくらい成熟を待つのか、上から目線で強権的に市民に投げかけていくか。下から積み上げるかについて、悩ましいところである。
 
・自治体、事業者、NPO、市民などが関わる事案は多くなってきており、公共交通も同様である。シビックプライドの観点で、官や民、事業者等に従事する人のフレーミングの相違がわかれば、合意形成に資する知見に繋がると思う。
 
・3D都市モデル、動画的計画、データガバナンスについては、データだけでなく、アプリケーションも重要な要素である。BIMが良い例であるが、海外では非常に強力なソフトウェアベンダーが複数存在しており、市場拡大を狙っている。3D都市モデル等を進めるに当たっては、その目的を叶えるデータ処理の優良なアプリケーションを整備すべきである。非常に悪いストーリーは、データは自前でも、データを処理する技術が海外製である。設計・計画の技術などが一部空洞化する恐れがある。
・データを利用することや、リアルとサイバーを結びつけることは重要である。利用や結びつけの、アプリケーションも大きな要素であり、国土計画・交通計画に関わるデータの整備と併せてアプリケーションの開発にも一定のビジョン、ポリシーを持つべきである。海外アプリを無批判に導入することで、肝心な部分がブラックボックス化することを懸念する。
繰り返しであるが、データの整備に併せて、アプリケーションの整備と開発を広い視野でかつ高いレベルで検討することが重要である。
 
・自治体や事業者におけるシビックプライドの概念の解釈については、セクターや個々に違いがある。プライド(自負心)が大事なのは、動機・ひらめき・報いがもたらされることである。それぞれの立場で自負心があれば自分だったらこうしようというアイディアが生まれ、それにより街が良くなったことが恩恵になることである。それぞれの得意なところで創造性を発揮していくことが大事であり、対話して都市像を共有していくことも大事である。
最初から役割分担するよりは、共有した上でそれぞれのセクターで得意なこと・やりたいことをやっていけるのが理想。一方、公共交通のようなプロジェクトを行うには役割分担は必要。都市像を共有しつつ各セクターの特性を活かしていくことは大事である。
 
以上

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