第13回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第13回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
  令和2年9月10日(木) 15:00~17:00
 
2.場所
  国土交通省3号館8階特別会議室(WEB開催)


3.出席者(五十音順、敬称略)
  委員:石田東生、伊藤香織、鵜澤潔、春日伸予、金山洋一、木下剛、小池俊雄、小林潔司、柴崎亮介、高木健、谷口綾子、谷口守、中川聡子、藤野陽三、堀宗朗、山田正 

4.議事
1.今回のテーマについての議論
<課題テーマ>
「モビリティ」
2.その他
   今後のスケジュールについて
 
5.議事概要
・8月末に開催された社整審・交政審交通体系分科会計画部会の事務局資料にて、東京23区の20代はコロナを経験して地方移住の関心が高まった人が約35%と示されていた。地方移住への関心が変わらないと答えた人は50%程度であることから、差がかなり縮まった印象を受けた。
・3大都市圏の20~30代においても同様な傾向であった。特に東京23区の20代は傾向が顕著であった。意識の変革が出てきたのではないか。
・意識の変革により、少子高齢化(特に少子化)に対してモビリティが重要である。分散・多極国土に向かうという意識が芽生えており、社会基盤の整備としてモビリティの内点からどういう形が必要なのか。
 
・社会の最優先事項は、経済的な生産の前に出産という考え方がある。出生率、子育て環境、産休等の取得しやすさ、就学機会の増、それらにも関係する経済へのプラスの影響など、全てに関係しうる「モビリティ」を戦略的に位置づける必要がある。
・多極分散型国土に向け、地域のモビリティが重要となるが、コロナを大きなきっかけにしないといけない。コロナを忘れる前に早めに打ち出す必要がある。
・一般的に、鉄道会社はお金持ちだと思われがちで、地方部でも鉄道会社に要望すればなんとかなると思われることがある。誤解をどのように解きほぐしながら、政策提言していくのか。現在は良いタイミングだと思う。
・運行頻度や運賃など、事業者の経営判断に委ねるには限界がある場合がある。公共がコミットするコミュニティバスに萌芽が見られる。道路運送法などの法体系を見直すきっかけが必要だと思う。
 
・地方部の交通システム・社会基盤等の環境を整えることが必要である。安全だから地方分散しただけでなく、地方分散したことで発達した。
 
・日本航空の機内誌に社長が札幌から超長距離通勤をしたいと考えており、超長距離通勤を考える世の中になったという記事があった。
・居住地を変えるには勇気がいるが、テレワークを駆使できる人は超長距離通勤・低頻度通勤を取り入れることで、モビリティ資源、混雑緩和、またエッセンシャルワーカーのためにより快適なサービスを提供できるのではないか。
 
・モビリティに色々な形態が出てきている。従来の電車や飛行機は行政がしっかりと安全の担保をしてきた。様々なモビリティが出てきており、普及させるためには自己責任が問われてきているのではないか。
・保険はどうなっているのか?保険は命を商品化したというネガティブな意見もある。様々なモビリティの形態を社会に受け入れてもらうには、保険をポジティブに捉えて、社会に訴えていくべきではないか。保険の概念はどのように扱われているのか。
 
・紹介したNHKの番組では保険がネガティブではなく、示談屋がネガティブなものとして報道されていた。保険は安心につながるため重要だと思う。
 
・保険の問題はとても重要だと思う。バスやタクシー等の事故時の処理・保険に関して、自家用有償は段違いである。新しいモビリティを導入する際は、事故を想定しなければいけない。その時には被害者・加害者をプロテクトするための社会全体のシステムとして保険が非常に大事だと思う。
・車の制御技術が進み、車の速度制御が容易にできるようになっている(電動キックボードはGPS制御が可能)。生活道路において、カーナビゲーションと連動した速度制御の実施が可能であると思うが実施されていない。国交省の自動車局が定めることになっている自賠責の活用を、インセンティブとして活用する議論をしても良いのではないか。
 
・保険に入っていない人が事故を起こした時、被害者の補償が問題である。
・新しいモビリティを導入する際に、「国が最終的に責任を持つ」ことが重要ではないか。
 
・石田座長のデータ連携、春日委員のアフターコロナの検証が重要という意見があった。検証や分析についてのデータベースは科学的なものでなければならない。
・MaaSを考える際には、MaaSだけで終わるのでなく「Beyond MaaS」、「Society5.0」へと繋がるため、データをどう集めて、解析するかがポイントである。学術会議にて、データアーカイブを官、民、産の誰が管理するかの議論がある。国の組織として本腰を入れないと世界と戦えないのではないか。海外ではデータに関する力の入れようが圧倒的に日本と異なる。日本ではどのように考え、どのような方向性で進めようとしているのか。
 
・様々な組織がデータをやみくもに集めるのではなくて、各目的に対して各省ごとに集めているが、連携できていないのが現状である。全省庁のデータを流通させ、一つにまとめることが政府全体の方針である。
・各省ともデータを集めることが重要であると気付いており、目的ごとに集めているのが現状である。国交省は、地図情報、工事情報などといった情報を国土交通データプラットフォームに収集している。現在は、データを公表し、集めるだけでなく使い方の募集中である。政府からは、外国に負けないように他省庁と連携する様に言われている。
 
・前回も発言したが、有益なデータは多いが、形式が異なったり、データカタログ(データの在処)が整理されていないなど、使えない。目的を持って様々な省庁が集めているのは良いがデジタルは全ての省に関わるスキルの話であるため、国を挙げて専門家組織を作り、計画的に進めるよう本気で考えないといけない。海外に負けている。
 
・東大の先生が作っているデータカタログ(日本発の「コネクタ」)は、世界標準になるレベルのものかもしれない。
・国交省はGUIベースとして先駆的な取り組み(フォーマットの統一なしにデータを素結合し、大量のデータを集め、自動変換させ、シミュレーションと入力プログラムにする研究)をしているが、理解が得られないため中川先生の情報系の力を借りて広めていきたい。統一的に、最新技術を使った研究開発すべきだということの後押しをしてほしい。
 
・データソフトカップリングの話に感銘を受けた。進化の早い世界である。今後の懇談会にて話題提供をお願いしたい。
 
・日本型のモビリティのありようを考えるのも1つの正攻法ではないか。
自動運転を導入しようとしたが、2車線の対面通行道路では今の段階では無理となり、導入ができなかった。導入可能な場所は限られてくる。マーケットのスケール、規模感、課題を整理し、現実的に議論していく必要がある。
・MaaSは大都市の日常生活ではいらない。MaaSがどの場面で必要か。交通の範囲だけで縛ることなく、プラットフォームに色々な機能をいかにアドオンできるか、広がりの可能性を考えた上で日本型MaaSのありようを考えていくべき。
・モビリティについて、昔は派生需要だと考えていた。交通の多様性により、日常や生産のありようを含めて人・モビリティの活動が変わった。派生分野に縛られない様な側面を強調し日本型のモビリティとしていくべきである。
・モビリティを進める上での一番の問題は、事業者として誰が実施するかである。日本はコーディネートするプラットフォーマーが育っていない。現状、既存の生産者・オペレーターが強くプラットフォーマーはコーディネーションに苦慮している。どのようにプラットフォーマーを育てるか、育つかといった視点が重要である。
・災害が多く、複雑なシステムの中で住んでいるため、どのように復旧していくべきか、新しいモビリティのシステムがレジリエントかといった論点も必要である。
 
・自動運転関係で「CASE」という言葉がある。Sの意味はシェアリングとサービスという意味で2つある。Sに安全、リカバリーという意味をふまえて、「Secured」という意味も込めてもう1つ加えても良いのではないか。
 
・ローカルへの移住希望が増えている傾向は数年前から生じている。国土政策局(国土審議会)で議論しており、交流人口から関係人口の概念を出している。どのローカルが人口を勝ち取っているか、国土政策局で調査中である。ローカルでは若者はネットで生活しているため困らない、色々な交通事業者(郵便、新聞、運送業者)の需要が少なく、バラで動いていることが問題であり、どのように統合するかが議題にあがっていた。
・速度規制は客観的に決められていない。オーストラリアでは上下線で制限速度が異なる場合があった。日本に「ゾーン30」を導入したところ、徐行すべき区間での矛盾が生じた。道路の構造にあわせた速度規制がされておらず見直すべきではないか。
・事故(犠牲者)が起きないと議論が次のステップに進まない。洞爺丸事故で青函トンネルが進んだ。潮丸の事故で瀬戸大橋が出来た。リニアが出来ないのは、今の新幹線が安全だからかもしれない。普通の交通でも事故は起きるので、自動運転でも事故が起きるのは仕方がないという許容感が出てこないと自動運転を普及させるのは難しいのではないか。人柱の研究が必要かもしれない。
 
・データの関係が気になる。交通に関して、根っこは「public transportation」につきる。欧州では交通は日本の直轄のようなもの。日本と欧州とで構造自体に違いがありハンデがあるため、差を意識すべきである。欧州でうまくいっているケースは公的セクターベースであり背景が異なる。
・福和委員の「鉄道が止まっている」という意見について、最近の鉄道は運休が多くなっている。インフラが脆弱であることや、世の中からたたかれることなどが背景にある。
・自動運転の無人貨物船の成否は保険次第だと思う。今後の懇談会で話が聞ければ良い。
・自動運転、スモールビークルはシーズから来ているため、社会がどう受け止めるかが急務である。政策的に準備しないとコンパクトシティ化が上手くいかなくなるおそれもあるのではないか。
・日本の公共交通サービスがpublic transportationにどうしてならないかについては、価値観が東京中心になりがちであることが挙げられる。欧州のように「商業領域」と「非商業領域」に区分けし議論していく必要がある。なお、日本と欧州の「商業領域」の意味は全く異なる。欧州では、鉄道インフラは政府が整備しているので、運行についての観点となる。
・欧州では、公共交通の無料エリアを設置しても廃止する事例がある。自動車ユーザーのみならず、自転車や徒歩の人も公共交通機関を使うようになったためであり、日本と異なる政策の考え方を持っている。
 
・石田座長の車両の件において、最終的にシステムを実現するにはハードウェアや車の構造に関して課題があり、車両に対してマッチした法規制を整備しなければならない。
・ハードウェアとして車両に対して、従来と違う観点で仕様・機能に関して何が求められるのか。
 
・ソフトに関しては、MaaSはよりシンプルなものが求められる。
 
・自動運転にて、事故時に乗っている人を守るのか、事故の相手の損傷を防ぐ車両であるべきかという、車両安全の考えが過去にあった。今は過剰に防御する車両であればよいという考えは違うのではないか。
・自動運転にて走る物体として考えたときに求められるハードウェアの仕様について、パラダイムシフトが起こるのか。
 
・コロナ渦の問題の一つとして、安全、衛生的、快適に移動できる徒歩や自転車などインフラの重要性を強く感じた。MaaS、自動運転を取り入れた際に、末端はアナログであり歩かないといけないため、安全、快適かが重要である。輸送されている中間では、歩いている人・自転車に乗っている人との共存が重要である。
・国交省のウォーカブルシティとMaaSがどう繋がるのか。
 
・マイクロモビリティ、MaaSにおいて乗り換える、交通手段を変える局面がある。宅配ロボットや隊列走行にはハブが必要であるため、都市、街路のリデザインをどうしていくが重要である。「道路の長期ビジョン」に記載しており、どう実現していくかが今後の大きな課題である。
 
・マイクロモビリティに関して安全性に対する疑念がぬぐえない。石田座長は安全に関してどのように考えているのか。
 
・安全は非常に重要である。速度の遅いところにも着目している。ぶつかるかもしれないが重大な事故にはなりにくい領域である。欧州を中心にマイクロモビリティのカテゴリAを考えるようになっており、総重量と最高速度で実施している。
・経済産業省の「多様なモビリティ普及推進会議」にて、マイクロモビリティの例として電動アシスト自転車、電動キックボード、電動車いす(シニアカー)などが紹介された。
日本国内では時速25キロまで電動アシストできる規則がある。
電動アシスト自転車は相当性能が良く、3人乗せることが可能である(総重量100kg超)。電動自転車は定着しているため、どこを走行しても問題ない。
一方電動キックボード(GPS機能を用いた速度制御が可能)は、日本では定着していないため、ようやく公道実験が始まった。速度と車両総重量が同じカテゴリーなのに別々の議論を行っていた。これは経産省内での所管課が違っていたからである。
・安全性に関して統一的に考える努力をすべき。その上で安全性能の担保や保険制度、規則等を考えるべきである。
 
・自損事故を起こさなくても、普通車との衝突が心配である。安全に関する制度の議論を進めるべきである。
 
・最初は東京のマンションで暮らしていたが、東京にコミュニティがないので千葉の村に引っ越した(都心まで車で70Km)。その後、房総半島にマンションを持ってみたところ、(都心まで特急で1時間)良いコミュニティであったが通勤が大変であった。車で通勤した場合、アルコールを飲んだら車で帰れないため、自動運転があったら便利だと思う。年齢と共にライフスタイルは変化する。
・拠点居住地を持たないと、交通問題、通勤手当の問題、車庫証明の問題、選挙権の問題、住民税の支払先の問題などが生じる。若者に新しいライフスタイルは増えているが、そのような問題が多拠点居住の邪魔をしている。
・山梨県の北杜市や長野県の富士見町、原村など移住が増加しており、コロナ渦においてさらに加速している。リニア新幹線が開通すると、品川と甲府は20分となるため、長野から東京への通勤が可能となる。
・国交省では、流域治水、スマートシティ、スーパーシティ、コンパクトシティなど様々なことを実施しているが単目的である。頼もしい・良い・面白いコミュニティをどうつくるかの観点に人は魅力を感じる。
・総合的に楽しいまち・コミュニティをどう作るか。治水が安全なだけでは人は住まないため、住んで楽しいまち作りを目指すべき。
 
・何のためにやっているかを考える必要がある(楽しい・幸せ・将来に希望がもてるなどのコミュニティにフックをかけることを忘れてしまうことがある)。
・手段が目的化することも多々あるため気を付けていきたい。
 
以上

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