航空

全日空559便機長の心身機能喪失事案

平成12年11月14日公表
(1)概 要

 全日本空輸株式会社(以下「ANA」という。)所属エアバス・インダストリー式A320-200型は、平成12年9月11日、同社の定期559便として、名古屋空港から佐賀空港へ飛行し、17時02分、佐賀空港に着陸したが、佐賀空港進入中に機長が意識不明となった。
なお、同機には、機長、副操縦士ほか客室乗務員4人、乗客10人の計16人が搭乗していたが、他の乗務員、乗客には負傷等はなく、航空機にも損傷等はなかった。
(機長は平成12年9月19日、小脳出血のため死亡した。)

(注)本事案は、航空法施行規則第166条の4第13号に規定された航空機乗組員が負傷又は疾病により運航中に正常に業務を行うことができなかった事態であり、重大インシデントに該当する。


(2)航空局の調査結果(原因等)

機長は平成4年12月から約1年間高血圧のため乗務を休止したが、その後は降圧薬を内服し社内健康管理の受け乗務を行っており、平成12年6月発行の有効な航空身体検査証明を有していた。

航空身体検査証明発行後、社内健康管理で測定された血圧値が基準値を超えていたが、乗務前の限られた時間での測定であり安静時の血圧が測定されていないこと、機長は医師等の前で血圧が一時的に上昇する傾向を有していたことから、一過性の血圧上昇とされ、乗務を継続していた。ただし、一過性の血圧上昇であることの確認は行われていなかった。

機長が意識不明となったのは、診療報告書、CT画像から、小脳内に出血した血液が脳室内へ穿破し、中枢機能喪失を来したことによるものと考えられる。しかしながら、小脳出血が始まった時点、小脳出血の原因等について明らかにすることはできなかった。


(3)航空局の対応等

全日空では、重大インシデント発生後、航空機乗組員で降圧薬を内服している者全員に対し、高血圧による臓器障害の有無を確認するための追加検査を実施した。

機長の社内健康管理における高い血圧値が一過性のものであった可能性はあるが、その確認が十分に行われておらず、また、安静時の血圧を測定する環境で血圧測定が行われていないことから、航空局は全日空に対し、航空機乗組員の健康管理体制の改善について指示を発出した。(11月14日)

航空局は基準値を上回る血圧値が測定された場合、一過性の超過であるかどうかの判断及び基準値内におさまっていることの確認の方法について指針を定め、全日空を含む特定本邦航空運送事業者及び国内定期航空運送事業者に通知した。(11月14日)



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