航空

陸上自衛隊JGH1714機長報告に係る調査報告書の概要

平成12年11月14日公表
1 本事案は、平成12年5月12日に陸上自衛隊ヘリコプター機長から、有視界飛行方式で飛行中、左側後方から小型双発機が現れたため回避操作を行ったとして、機長報告が提出さ れたのを受け、調査を行ったものである。関連機は新中央航空所属、アイランダー機であることが判明した。両機とも有視界飛行方式で飛行しており、関係した管制機関はなし。


2 推定される接近状況は次のとおり

(1)平成12年5月12日午前9時20分、自衛隊機は立川飛行場を離陸し、荏田NDB局に向け有視界飛行方式(VFR)により1,500フィートで水平飛行していた。一方、調布飛行場を離陸したアイランダー機も、有視界飛行方式(VFR)により、1,500フィートで水平飛行していた。

(2)アイランダー機の機長は、自衛隊機を右前方約1NMに発見したが、自衛隊機が自機よりやや遅い速度で平行に飛行しかつ高度差もあり、安全間隔がとれると判断したため、その後の自衛隊機の動向を確認しなかったと口述している。(両機の水平距離約1.01NM(約1,870メートル)、両機の高度1,500フィート)

(3)自衛隊機はアイランダー機の右前方約60度の方向、アイランダー機は自衛隊機の左後方約100度の方向にあった。(両機の水平距離約0.30NM(約550メートル)、両機の高度1,500フィート)

(4)自衛隊機がアイランダー機を左横に発見し、咄嗟に操縦桿を右に傾ける回避操作を行ったが、その後直ぐに、自衛隊機は直接の危険がないと判断し回避操作を中止した。アイラ ンダー機は両機が接近したことに気付くことなく飛行を続けた。(両機の位置関係は、ほぼ真横、水平距離約0.17NM(約315メートル)、両機の高度1,500フィート)

(5)アイランダー機は自衛隊機の左前方約30度の方向であった。この時、両機は最接近したものと推定される。(両機の水平距離約0.08NM(約150メートル)、ほぼ同高度)その後、自衛隊機はアイランダー機の後方を通過し、アイランダー機を右前方約30度から約40度の方向に見る位置にあり、その後両機はさらに距離を広げていった。


3 原因及び危険度の判断

(1)原因

 双方の航空機は有視界飛行方式(VFR)で飛行しており、他の航空機その他の物件と接近しないよう、十分に外部監視を行うべきであった。本接近事案は、アイランダー機の機長が、自衛隊機の動向を十分に確認しなかったことが主たる原因と推定する。また、自衛隊機にあっては、より早い時期に関連機を発見するため、外部監視に努めるべきであった。

(2)危険度の判断

 自衛隊機はアイランダー機を発見し、咄嗟に操縦桿を右に傾ける回避操作を行ったものの、直ぐに直接の危険がないと判断し、回避操作を中止していることから、差し迫った衝突又は接触の危険性があったとは認められず、異常接近ではなかったと判断する。


4 再発防止策

 航空局は、航空運送事業者に対し、関係団体を通じ、外部監視等異常接近の防止策の再徹底について要請した。
 防衛庁においては、本事案の発生を受け、一層の外部監視に努めるよう必要な措置がとられたところであるが、航空局は同庁に対し、安全運航確保の再徹底を図るよう要請した。なお、調布飛行場運航担当者会議に陸上自衛隊立川基地運航者も参加し、飛行中の他機の情報入手の具体策について検討が行われているが、航空局もこれに積極的に参加し、その方策をできる限り早くとりまとめることが必要である。



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