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委員長記者会見要旨(令和6年6月25日

令和6年6月25日(火)14:00~14:18
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況 

 はじめに、毎月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空・鉄道モード合わせて6件ございます。

 航空モードは、5件ございまして、5月31日に学校法人ヒラタ学園が運航する小型飛行機が神戸空港に着陸する際に胴体下面が滑走路に接触し、機体が損傷した事故が1件目でございます。2件目は、6月4日米国のポーラーエアカーゴが運航する貨物機が成田国際空港を離陸した直後にエンジンに不具合が発生したため引き返し、同空港の着陸後の点検でエンジンケースの損傷が確認された重大インシデント、3件目が6月5日に鹿児島県の与論空港におきまして、小型飛行機が着陸した際に滑走路を逸脱し機体が損傷した事故、4件目が6月9日に新日本航空が運航する小型飛行機が鹿児島空港に向けて進入中、進入経路から逸れて山中の樹木に接触して機体が損傷した事故、5件目が6月10日に匠航空が運航するヘリコプターが飛行中にエンジンの出力が低下したため緊急事態を宣言し、兵庫県相生市内の学校のグラウンドに着陸した重大インシデントでございます。

 鉄道モードでは6月20日、秋田県の山本郡八峰町内のJR東日本の五能線、沢目駅と東八森駅の間の第3種踏切道において、同踏切道内に進入してきた自動車と列車が衝突し、自動車の運転者が死亡した踏切障害事故の1件でございます。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧いただければと思います。

2.安全啓発資料の公表について  

 神戸事務所における安全啓発資料の公表についてご報告いたします。お手元の資料2をご覧いただきたいと思います。

 神戸事務所の管轄区域でございます琵琶湖では、その水域により特徴的な事故が発生しておりまして、例えば、大都市からアクセスしやすい湖の南側では水上レジャーなどが活発なことによって衝突事故が多かったり、また、湖の西側付近では、比良山地から吹いてまいります北西風の影響を受けまして、転覆事故が発生する状況がございます。

 神戸事務所では、このような状況を踏まえまして、水上オートバイやミニボートの事故、またはバナナボートなどの浮体をえい航するマリンアクティビティなどの事故が起こらないよう、事故防止上の注意点や発航前点検の必要性などを紹介する安全啓発資料をまとめ、本日公表いたしました。

 資料2の3ページをご覧いただきたいのですが、先ほど申し上げました水上オートバイなどがえい航する浮体から落水して、死傷者が発生するということが多いということを述べております。

 この参考にも記載しておりますように、当委員会のホームページで、こういった事故の防止の参考になる動画を掲載しておりまして、この機会に改めて紹介させていただきたいと思います。

 水上オートバイがえい航する浮体が横転する動画をご覧いただきたいと思います。
 (以下の動画を再生)
 https://www.mlit.go.jp/jtsb/video/ship/2019072302.mp4

 この動画をご覧いただいても分かるとおり、水上オートバイが時速35キロで急旋回した場合、引かれている浮体は時速60キロと2倍近くになり、遠心力が働いて旋回方向の外側に大きく振れ出し、横転しています。浮体を引いている方は、浮体に乗っている方を楽しませるためにやっておられますが、これは非常に危険でございます。

 これは琵琶湖の例ではございますが、他の地方の湖や海でもよくある状況になっております。

 このような事故を防ぐには、資料2の9ページにございますけれども、操縦者が浮体の速度や動きに注意し、余裕のある操船を心がけることが重要でございます。

 これから夏場に向けまして、プレジャーボートを用いた水上レジャーを楽しまれる方々がおられますけれども、ぜひ本資料をご覧いただき、また、条例を遵守するなど、ルールを守って事故の未然防止に役立てていただきたいと思います。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

3.質疑応答

(JAL機/海保機衝突事故関連)

問: 羽田空港での衝突事故からもうすぐ半年となります。調査の進捗状況であるとか、見通しなどについてお伺いいたします。併せて、昨日、対策検討委員会で再発防止策の中間とりまとめが発表されましたが、それに対する委員長の所感をお願いいたします。
答: 調査の進捗状況に関しましては、情報収集やその整理、それを通しての分析は鋭意進めてございますけれども、今の段階ではその内容につきまして、調査の内容に関わる話になりますので、お答えは差し控えます。
   一方、昨日、航空局が設置されました対策検討委員会の第7回が開催されまして、中間とりまとめを行ったところでございますが、これに対する我々の理解は、羽田空港で発生した衝突事故を踏まえて、滑走路上における航空機などの衝突防止のためのさらなる安全・安心対策を、ハード、ソフトの両面から検討するためのものと理解しております。
   管制サービスを提供する航空局が有識者及び関係団体の意見を聞いて、海外事例も調査するなど、自ら安全対策を検討することは有意義であると思います。
   一方で、当委員会は、独立して原因究明の調査や再発防止策の検討を行っているところでございまして、航空局が検討する今後の安全対策について、直接的に個別に評価して意見を述べる段階にはございません。
問: 今の質問に関連して、ボイスレコーダー及びフライトレコーダーを回収して解析していらっしゃると思うのですが、これを経過報告などの前に結果を公表するというお考えはないのでしょうか。
答: それまでに出すということはないと思います。もし情報としてお出しすることが再発防止に今すぐ必要であると考えた場合はあるかもしれませんけれども、経過報告の段階でボイスレコーダーやフライトレコーダーの事実情報に関してお出しするか、今のところわからないというお答えでございます。
問: 経過報告で一緒にボイスレコーダーやフライトレコーダーの解析を出す可能性が高いということでしょうか。
答: そこまでも言い切れません。どこまで事実情報としてお出しできて、どこまで分析できているかというものもございますので、今日の段階ではお答えはできません。
問: 経過報告なりの目処も年度内とかあるのでしょうか。
答: 制度上は1年以内に最終報告が出せない場合は、経過報告を出さなければならないということになっています。本件羽田の事故についての報告が1年以内に出るとか出ないとかということは、現時点では分からないということでございます。

(知床半島沖 旅客船沈没事故関連)

問: 2年前のKAZUⅠの事故に関連してお伺いしたいのですが、この事故を契機に知床に携帯電話の基地局を作るという動きがございまして、これに対して、着工直前に自然保護団体が、世界自然遺産の価値を損なうおそれがあるということで反対の声が上がっています。一方で、地元羅臼町側の方では、これまでも大きな海難事故が相次いでいるということから、引き続き強く基地局の設置を求めている状況です。これについては、事故を防ぐという観点から仕事をされてこられた委員長のお立場から、基地局が必要なのかどうか見解をお願いいたします。
答: 直接的にお答えしにくいと思いますけれども、安全を守るという観点からいうと、連絡手段が必要であるということで、携帯電話のほかにも無線などがある訳ですので、我々としては安全・安心上は、連絡手段が整っている必要があるというふうに思います。
問: 羅臼町は豊かな海である訳ですけれども、一人で小さな船で操業している方も多いので、なかなか無線が積めなかったり、衛星電話もなかなか繋がらないことが結構あるというような声が聞こえていますが、そうした場合に連絡手段の確保、これは安全上必須だと思うのですが、そうした選択肢が乏しい中で、どのようにしたらよいのかお考えはいかがでしょうか。
答: お答えしにくいお話ではありますけれども、やはり地域全体で考えていただく、観光の方と自然を守る方、漁業関係者の方も含めて一緒に考えていただく必要があると、我々としては思います。

資料

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