第8回 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 議 事 要 旨 日時:令和3年9月2日(木)13:00〜16:00 場所:中央合同庁舎第3号館1階共用会議室(※ウェブ会議) 【開会挨拶(江口技術審議官)】 ・昨年の検討会設置以来、活発なご議論を頂き感謝申し上げる。昨年度までの議論の内容を7月に中間報告としてまとめることができ、重ねて感謝申し上げる。 ・中間報告では、引き続き検討が必要な事項として、新技術の実証実験の継続や関係者への情報共有、ホーム長軸方向の安全な歩行経路を示す適切な方法、実際のホームや車両を用いた歩行訓練の実施に向けた具体的な仕組みづくり、転落原因究明のための具体的な調査実施体制等が挙げられ、今回以降の検討会で引き続き議論して参りたい。 ・また本日は、7月に京急久里浜駅で発生した視覚障害者の人身傷害事故について皆様から再発防止に向けたアドバイス等も頂きたい。 ・さらに、本検討会でのご意見等を多くの鉄道事業者にも参考にして頂くよう、今回から委員以外の鉄道事業者も傍聴可としており、本日は委員も含め約20の鉄道事業者に参加して頂いている。本日も活発なご議論をよろしくお願いしたい。 【議事(1)中間報告(7/2)を踏まえた今後の検討の進め方について】 (国土交通省) ・資料に基づき説明。 (障害者団体) ・「ホーム長軸方向の安全な歩行経路を示す適切な方法」の実証実験等の実施が来年度以降となっているが、昨年度から多く議論しており、もっと早めることは出来ないか。 (国土交通省) ・しっかり議論をしたうえで、前倒せるようであれば前倒したいと考えている。 (学識経験者) ・駅員による声掛け等、人的支援を行った上で長軸方向の移動をしてもらうといったことが現在の国交省の基本方針だと思うが、今後の検討項目の中に人的支援の内容が含まれていないのはどういった意図か。 (国土交通省) ・中間報告のなかで「声かけ・サポート」運動や接遇ガイドラインの実行などを行うと示したうえで、「車両内のモニター表示や駅のポスターなど効果的な啓発方法」を検討したいと考えている。 (学識経験者) ・それだけでは難しく、最も効果的と思われる、駅員による支援をいかに行うかという点が重要だと考えている。 (国土交通省) ・ご指摘の点は確かに重要で、鉄道事業者としても声かけ運動を行っている中でも、この後の京急からの説明にもあると思うが、駅員が他の業務をしていて気づかないこともあり、それらをサポートする新技術の技術開発を通じて、駅員の方がすぐに支援できる仕組みづくりを行っていきたい。 (学識経験者) ・新技術を実効性のあるものにしていくには時間が掛かると思うので、人的支援のありあり方を再度検討し、効率的な支援を実施できる体制を作ることや、視覚障害者の方に啓発活動を行うことで、移動に自信のない方が人的支援を依頼しやすいようにすることが大事だと考えている。視覚障害者の声として「支援を頼むと長時間待たされる」等の声が上がっているが、個人の声として上がっているという範囲にとどまっていると思う。これが原因で援助の依頼を行わないというエビデンスが収集出来ていないのが現状ではないか。これは新技術へも活用できる基礎データとなると思うので、どうすれば人的支援を効果的に受けることができるか、また、人的支援につながっていない理由は何なのかという分析が必要ではないか。 (国土交通省) ・中間報告をまとめるうえで我々が想定する検討項目にはなかったので、どのように進めていくか考えたい。 (学識経験者) ・人的支援については、無人駅が増えているという状況も考える必要があると思う。また、一般の旅客による支援も即効性があると思うので、「車両内のモニター表示や駅のポスターなど効果的な啓発方法」も、もう少し進捗を早めて頂きたい。 (学識経験者) ・この後に説明があると思うが、先日の京急での事故においても、駅員や乗務員が視覚障害者の歩行特性を知っていたのかといった問題がある。声かけサポート運動も大事だが、駅員や乗務員が視覚障害者の行動特性を理解していなければ、制度が空転してしまいかねない。制度をうまく機能させるために、視覚障害者の行動特性を学ぶ機会を設けるといったことも大切ではないか。 【議事(2)京浜急行電鉄 京急久里浜駅構内 人身障害事故について】 (京浜急行電鉄) ・資料に基づき説明。 (障害者団体) ・事故当時、駅員は何名勤務していたのか。もし、駅員が視覚障害者が改札を通過したことに気付いていたら、人的支援の対応ができる体制だったのか。 ・以前の検討会で白杖使用者の乗車方法として、手で車体を確かめて乗車する方法が説明されていたが、今回の事故はこのような方法を取っていたために手を挟まれたのではないかと思う。私自身は白杖でこれから踏み出す先に車体があるかを確認している。白杖の方が手よりも遠くまで前方を確認できることと、仮に白杖がドアに挟まれた場合でも、白杖の物損だけで済むのではないか。 (京浜急行電鉄) ・駅長を含め7名が勤務していた。うち、2名は休憩中、1名は信号取扱者、2名が内務者、1名が改札で勤務していた。当時改札係員は他の旅客の対応をしており、当該旅客に気づくことができなかった。もし、改札の者が視覚障害者の通過を確認した場合、内務者が駆けつけることになっており、視覚障害者の改札通過が確認できていれば人的支援を行える体制だった。 (障害者団体) ・今後の対策として、視覚障害者の歩行方法について教育を行うとあるが、これは他の鉄道事業者でもぜひ実施して欲しい。また、駅での歩行訓練の際にも、鉄道事業者は場所の提供だけでなく、実際に視覚障害者がどのように乗車するのかを確認する機会として頂ければと思う。 ・負傷された方がホームに到着した際、列車はどの位置にいたのか。負傷された方は列車が入線してくる前からホームにいたのか。 (京浜急行電鉄) ・改札口から事故が起こるまでは1分強であった。また、本人から、普段は先頭の8号車に乗車するところ、今回はエスカレーターを上がってすぐの7号車に乗車しようとしたと伺っている。 (障害者団体) ・改札から乗車まで1分強ということで、急いでいたのではないかとの印象がある。この1分強という時間がこの負傷された方にとって適切だったのかという点は検討に値するのではないか。 ・この方の視覚障害の程度は分かっているか。 (京浜急行電鉄) ・ご家族に伺ったところ、1級とのことである。また、本人から、「全く見えないわけではないが、乗車には段差や隙間が怖いので、ゆっくり乗車している」と伺っている。 (学識経験者) ・ドアにはものが挟まったことを検出するセンサーがあると思うが、今回そのまま発車出来たのはなぜか。また、ガイドライン等で検知センサーの厚さの基準は定まっているのか。 ・京急久里浜駅は以前の勤務先である国立特別支援教育総合研究所の最寄り駅であり、視覚障害のある上司と利用することが多かった。また、全国から研究所に研修に来られていた研修生の中にも視覚障害のある先生が多く利用していたが、当時から、視覚障害のある人達に対して、駅員がよく声かけをしてくださっていた記憶がある。そのような人的対応の良かった駅で事故が起きたことを残念に思う。 ・視覚障害者の行動特性を社内教育するということは評価できる。ぜひ、接遇ガイドライン等にこのような事例を書いて頂き、他社で同じような事故が起こらないようにして頂きたい。 (京浜急行電鉄) ・ドアが閉まる際のセンサーは隙間が10mm以下であると閉まっていると判断される。また、閉まっている状態から15mm開くと、異常があるとしてセンサーが検知することになっている。当該の車両は事故の翌日に検査したが、センサーに特に異常は見つからなかった。そのため、指先が挟まったのではないかと推測される。 (国土交通省) ・ガイドラインなど検知感度の統一的な基準はないが、一般的には10mm程度の挟み込みを検知できるものが多いと承知している。 (学識経験者) ・今後の対策として、乗務員室より側面監視を行うとあるが、ITVの視認性を確保したうえで行うことが重要であると考える。 ・これは京急に限った話ではないが、ドアが閉まっているかは間隔が何センチ以下といった情報を以て判断していると思うが、これを圧力の情報に変えるなど、別の方法を用いるような技術開発は進んでいるか。 (京浜急行電鉄) ・ITVの視認性については、画像を高画質にすることでタイムラグが生じやすくなるといった問題もあるが、モニターを大きくする、また高画質化することで視認性を高めるといったことは順次行っていきたい。 (国土交通省) ・現状のものと異なるセンサーについての技術開発については、手元に情報を持ち合わせていない。 (支援団体) ・カメラの解像度向上や、挟み込みのセンサーの精度向上はお願いしたい。 ・また、この検討会の中で新技術として改札口のカメラで白杖を検知する技術も紹介されているが、その際の人的支援を行える駅員の体制については引き続き検討が必要かと思う。 ・乗車の際の確認方法については、ホーム端と列車に隙間がある場合があることや、車両の連結部で隙間があるといったこともあるので、白杖でホーム端を確認しながら、列車の扉を確実に把握するということで、手による確認を推奨している。また、手や白杖による確認事項も多いので、ゆっくり乗車することになるという点は鉄道事業者にも理解して頂きたい。 【議事(3)視覚障害者の転落事故調査の進め方について】 (国土交通省) ・資料に基づき説明。 (障害者団体) ・原因調査は今後も恒久的に必要ということを考えると、本検討会やその下のWGの活用は難しいのではないか。また、公的機関が行うという点で、運輸安全委員会または鉄道局が行う案が良いのではないか。 ・運輸安全委員会では事故のみ扱うとのことだが、転落して怪我をした場合も含むなど事故の定義を見直してはどうか。または、転落のみの場合でも事故と同様に扱う等に基準を見直してはどうか。 ・転落後、自力でホームから這い上がった場合に、報告・事故の検証ができる仕組みは必要であると思う。 (障害者団体) ・原因調査は、公的機関が調査することが必要だと思うので、運輸安全委員会が対応するのが適切ではないか。また、その際に自殺として扱われることの無いよう、視覚障害者の歩行特性をわかっている専門家が複数入ることが望ましい。 ・警察等、その他の公的機関との連携も必要だと考えている。また、検討会を活用する場合、開催までに時間的ロスが大きくなるので、少人数の体制が良いと考える。 ・転落の申し出は、本人が精神的にショックを受けていることもあるため、そのケアも含めた窓口の体制になることが望ましいのではないか。 (学識経験者) ・重大事故については運輸安全委員会で調査するのが良いのではないか。その際、視覚障害者の見え方を理解している複数の委員が入ることが望ましい。また、この検討会が続いている場合は、報告を上げてもらうのも良いのではないか。運輸安全委員会が調査することができない重大事故以外はWGチームで調査・分析を行うことが重要ではないか。 ・情報収集は基本的に素案に賛成。申し出については障害者団体と国交省と複数の窓口を設け、申し出やすくすることが望ましい。 (学識経験者) ・第三者機関であること、情報を強制力を持って集められること、個人情報に配慮しつつ公表すること。この3つが重要であると考えるため、運輸安全委員会で調査を行うのが良いのではないか。また、列車との接触がなくても、転落したことで負傷する。このような事例も集められるとなお良い。 ・情報収集については、重大事故以外でも鉄道事業者から情報を得ることが重要。 (学識経験者) ・重大事故の場合は運輸安全委員会、そうでない場合は別組織による検証という二重構造は避けて、一元的に調査することが望ましい。そのため、まずはWGの活用が良いのではないか。また、その際は複数の専門家が入った方が良い。ただし、将来への継続性を考え、WGで調査を行いながら、数年内に今後の方向性を定めて、恒久的に調査できる体制を構築すべきと考える。 ・また、具体的にどのような調査項目とするのかについても検討の必要がある。 (支援団体) ・継続的であることから重大事故は運輸安全委員会が行うことが望ましいのではないか。それ以外の事故は、数年の間に検討会またはWGが細かな事故まで原因の調査を行い、対策を行うための報告書を出すということで収束すればよいのではないか。 (障害者団体) ・運輸安全委員会が良いと思うが、調査体制は一元化する方が望ましいのでないか。 ・情報提供を行うことができる窓口が設置されることは望ましい。 (支援団体) ・重大事故は運輸安全員会が望ましいと思うが、報告まで時間が掛かると聞いており、その点はできるだけ早く対応できるようにして頂きたい。それ以外の事故についても、WGが良いと思うが、期間を区切ることなく恒久的に原因調査できる体制が望ましい。 (国土交通省) ・皆様から意見を伺い、事故調査は公的機関が行い、継続的に調査できることが望ましいということが多くのご意見かと思う。今後、運輸安全委員会との意見交換を進めていきたいと思うが、運輸安全委員会は独立した組織であり、最終的にどのような体制で調査を行っていくかについては運輸安全委員会の判断になる点はご承知おき頂きたい。また、運輸安全委員会は基本的に重大事故の再発防止のために調査をする組織という前提があるため、どこまでを重大事故とするのかという点も今後の議論になる。 ・重大事故ではない事故については、WGチームの活用というご意見が多かったため、こちらも今後検討していきたい。 ・情報収集については、基本的には資料に記載の方法に概ね賛同頂いたものと思っている。具体的な実施方法についてはこれから細部を検討し、次回以降の検討会で進捗を報告したい。 (鉄道事業者) ・資料の中に、当事者の連絡先も報告すると書いてあるが、個人情報の取り扱いについては、課題として検討が必要かと思う。 【議事(4)ホーム上における白杖検知システムの実証実験について】 (国土交通省) ・資料に基づき説明。 (学識経験者) ・様々な歩行方法があると思うが、十分なサンプル映像を取得できるのか。 (国土交通省) ・常時稼働させる他にも、様々な条件で模擬的に利用してもらい、映像のサンプルを増やすことも検討したい。 (障害者団体) ・列車の在線状況も検知を行うとのことだが、入線途中の精度を高める必要があると感じた。 ・STEP2について、どのエリアを検知対象とするのか。 (国土交通省) ・検知エリアを狭くすると転落までの時間が短すぎて効果がなく、検知エリアを広くすると警告が鳴りすぎて支障がでると考えている。どこまでを検知対象にすることが適切なのかということも含めて、実験の中で検討していきたい。 (支援団体) ・盲導犬はホーム端に沿って歩くことを基本としており、常に検知エリアにいることになると思うので、このシステムは盲導犬ユーザー向けではないと認識している。盲導犬ユーザーが危ないのは、単純にホーム端を歩いていることではなく、線路側に視覚障害者、内側に盲導犬がいる状態である。 (国土交通省) ・視覚障害者と盲導犬の配置、つまり左右の違いまでAIで検知できるのかも含めて、今後検討してみたい。 (学識経験者) ・実験を見に来る人、体験してみよういう人も駅に来るかもしれないので、STEP2の実験を行うにあたっては、実験のエリアがホーム全体ではないということは周知する必要がある。 (学識経験者) ・新技術はいくつも検討会の中で紹介されていたが、今回このシステムを選定して実験を行う理由を教えて頂きたい。 ・白杖をカメラで検知できるかどうかは基礎研究で重要だと思うが、その際、一台のカメラでどこまで検知できるかということを技術的に検証して頂きたい。 ・STEP2を行うにあたっては、スピーカーからのアナウンスを基に視覚障害者が適切な行動ができるのか、アナウンスを行うことで事故を誘発することがないかという点については、別途検討が必要である。 (国土交通省) ・これまでこの検討会において幾つかの新技術についてヒアリングしたところであり、改札口で白杖や盲導犬を検知して駅員に通知するシステムについては、幾つかの駅で実証実験が行われていること、その技術を応用してホーム上で視覚障害者を検知するこのシステムは、未だ実証実験の行われていない新しいものであることから、この実証実験を行うことになったが、本システムのみを推奨するといったことではなく、有効なものは今後もこの検討会でとりあげていきたい。 ・適切なアナウンスの方法についても、ひとつのテーマとして検討していきたい。 (学識経験者) ・改札口でのカメラによる白杖検知は実証を行っているとのことだが、人によって白杖の持ち方・使い方には差があるため、この度の京急での事故の場合、改札口にカメラが付いていれば白杖を検知出来ていたかという検証もお願いしたい。 【議事(5)ホームや車両を活用した歩行訓練について】 (国土交通省) ・資料に基づき説明。 (障害者団体) ・訓練自体は必要なことだと思うが、電車に乗る瞬間だけを訓練しているように感じる。トータル的に訓練することが必要ではないか。 ・全国の歩行訓練士の数が少ない現状をどうするか、視覚障害者と歩行訓練士とのつなぎをどうするかを考えるべき。鉄道事業者と歩行訓練士のタイアップも必要。 ・電車に乗る際は駅の構造を把握する(メンタルマップをつくること)ための訓練も必要。また、視覚障害者が歩行訓練に参加しやすくなるための仕組みを検討することも必要。 (国土交通省) ・歩行訓練士の数が少ないという点は中間報告でも書いており、国会で取り上げられたこともある。厚労省とも連携し取り組んでいきたい。 ・鉄道事業者とのタイアップも重要かと思う。 (支援団体) ・このような取り組みが始まったということについて、感謝している。 ・対象人数は5人くらいまでが限度かと思っている。 ・歩行訓練士の数が少ないという点については、養成面より歩行訓練がいかに実施できる体制になるかという点が重要。養成した人数は千人程度だが、実働人数は180人程度。実働できる形に整えていくことが重要。 ・「新たな歩行訓練(案)」のような歩行訓練で、一連の流れが全て指導できるとは考えていない。歩行訓練の周知、重要性の伝達等により、現行の歩行訓練を受講するきっかけとすることが目的かと考えている。現行の歩行訓練で利用駅のルート等を綿密に訓練することが理想的かと思う。 (国土交通省) ・現行の歩行訓練と上手にタイアップできると良いと考えている。 (学識経験者) ・向かい側のホームの電車を誤認して転落するケースについては、歩行訓練をしっかり受講して正しい乗車手順を身につけることが重要。 ・基本プログラムのイメージは、モビリティの訓練が主となっているが、転落の直前はどこにいてどちらを向いているかを把握するオリエンテーションがずれているのではないかと思うので、その訓練を入れると良いと思う。 ・長軸方向に歩行するとあるが、どこを歩くべきなのか。ホーム縁端部か、ホーム中央をゆっくりと歩行するのか、ここをしっかりと設定しておく必要があるのではないか。 (支援団体) ・オリエンテーションの訓練は組み込みづらいが、訓練の最初に転落事故の要因や経緯を説明することで、できるだけ長軸方向を歩行しないことを周知できれば良い。 ・長軸方向の歩行の訓練は、スライド法の重要性を伝えてその技術を訓練することを想定している。仕方なく長軸方向を歩行して、ホーム端に近づいた際にも杖が落ちることで止まる事ができることを訓練してもらうイメージ。 ・今後、歩行訓練のあり方をブラッシュアップして検討していければよいと思っている。 (障害者団体) ・障害者団体からの周知も大切だが、団体に所属等しない方にも周知していくことが必要。例えば、眼科医会との連携や、福祉の相談窓口などで歩行訓練を知って頂くことについて、国、自治体で取組んで頂きたい。 (支援団体) ・犬を盲導犬にするための訓練はホーム上で行っている。また、犬と人の訓練についても、ホーム上で訓練をして初めて盲導犬ユーザーを認定する方式をとっている。 ・ただし、ホーム上での訓練は長時間に渡ってすることができず、技術の習得に繋がらないこともあるので、「新たな歩行訓練(案)」のような訓練機会があれば受講したい盲導犬ユーザーもいると思う。 ・白杖歩行の訓練は、実際には自立支援訓練よりも、地域生活支援事業で中途失明者緊急生活訓練として、自治体の任意事業でやっているのが多いので、回数・予算が限られていてなかなか進んでいないのが現状だと思う。訓練にあたってはしっかりした予算措置がないと歩行訓練士も大変なのではないか。 【議事(6)長軸方向の安全な歩行経路を示す方法に関する検討の進め方について】  当初予定していた時間を超過していたため、大倉委員、宇野委員からの資料説明のみ行い、意見交換は次回以降とした。説明の要旨は次の通りである。 (日本弱視者ネットワーク 宇野氏) ・長軸方向の歩行経路を検討する際、推測ではなく、エビデンスに基づいた検証が必要である。中間報告によると、長軸方向移動時の転落が63.5%、短軸方向が36.5%。長軸方向の転落は触覚的な手掛かりのない中央エリアを歩き、斜めに歩いてしまったケースとホーム端の警告ブロック沿いを歩き、人や柱を避けるために転落したケースに二分される。短軸方向の事故の中にも降車後に反対側のホームから転落したケースもある。これらのエビデンスから考えると、ホーム中央に誘導ブロックがあれば、ホーム中央を斜めに歩いてしまうこともなくなるし、ホーム端の警告ブロック沿いを歩かなくてもよくなる。また、降車後の反対側のホームからの転落のリスクも軽減できるため、合計すると56件中41件の事故が防げた可能性がある。 ・一方、内方線内側領域活用案では、これらの事故原因の解決にはなっておらず、むしろこれまでの内方線の定義を180度変えてしまうため、晴眼者がホームの中央を視覚障害者がホームの端の警告ブロック沿いを歩く構図を固定化してしまう。 ・実現性という視点では、内方線内側領域活用案は、ホーム中央誘導ブロック案より低コストだが、どちらの案もホームドアや駅係員の増員よりも遥かに低コストといえる。 ・ホーム幅を考えると、ホーム中央誘導ブロックは30cmですむが、内方線内側領域は塗装幅×2が必要になるため、狭いところでは一般客の歩く場所がなくなってしまう恐れがある。また、警告ブロック上やわきにある柱は移設不可能であり、点字ブロックでもない塗装領域をあけるという慣習が根付かなければ、視覚障害者は警告ブロックの上や線路側を歩くというヒヤリハットを改めることはできない。 ・これからは「売店を迂回することにより方向定位を失うのでは?」とか、「線状ブロックと点状ブロックを誤認するのでは?」というような疑問については、最終的にそれらが本当に多くの視覚障害者に当てはまるのか、机上の議論ではなく、速やかに実証実験を行い、更にその結果に基づき、議論を進めていく必要がある。 ―以上―