大臣会見

赤羽大臣会見要旨

2020年10月6日(火) 10:35 ~ 10:54
国土交通省会見室
赤羽一嘉 大臣

閣議・閣僚懇

 本日の閣議案件につきましては報告ございませんが、このほかに私の方から1点、令和2年7月豪雨災害を踏まえ、高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会の設置について御報告をさせていただきます。
本年7月に発生しました豪雨災害では、熊本県球磨村(くまむら)の特別養護老人ホーム「千寿(せんじゅ)(えん)」が浸水し、14名の方々の尊い命が失われました。
改めてこの場をお借りいたしまして、心よりお悔やみ申し上げます。
高齢者福祉施設の避難確保につきましては、平成29年5月の水防法等の改正によりまして、市町村の地域防災計画に位置づけた高齢者福祉施設等を対象に、その施設管理者に対して避難確保計画の作成と訓練の実施を義務化したところです。
こうした法制度の下でしたが、今回のような痛ましい被害が発生したことから、避難の実効性を高める方策を検討いたしまして、同様の被害の再発防止を図ることを目的に、有識者による検討会を設置し、第1回目の検討会を明日10月7日に開催いたします。
この度の千寿園の被害は、避難確保計画の内容が、土砂災害に備えるものではあったものの河川の氾濫に対応できていなかったこと、エレベーター等がなく2階への避難に大変時間がかかったこと、また、避難誘導するための要員を参集することができなかったことなどが原因であったものと思われております。
今後は、(みず)防災(ぼうさい)という観点と福祉の両方の観点に関して検討を進める必要があるため、国土交通省だけではなく、国土交通省と厚生労働省が共同で事務局を務め、両省が十分に連携しながら、(みず)災害(さいがい)リスクの周知と福祉施設等の改善、両方の観点から、年度内に改善方策案を取りまとめていただけるよう進めていきたいと考えております。
この件の詳細につきましては事務方にお問い合わせいただきたいと思います。
私からは以上です。

質疑応答

(問)「Go To トラベル」についてお伺いします。
東京発着旅行が追加されて、3日4日と初めての土日を迎えました。
人出が増えている観光地も多数あるようなのですが、どのような影響が出ているか、国土交通省が把握している状況がありましたら教えてください。
(答)Go To トラベル事業につきましては、10月1日木曜日より、東京を発着する旅行についても支援の対象に含めるとともに、地域共通クーポンの利用も開始させていただいたところです。
まだ、統計が取れて分析されているわけではありませんが、先週来、私自身も、首都圏からの旅行者が多く訪れる富山県並びに福島県を訪問し、現地で、観光関係事業者の皆さんと意見交換をさせていただきました。
皆さま方からは、9月の4連休を含め10月以降、宿泊の予約状況も大変好調であるといった御発言や、観光施設への入場者数も増えた、また、地域共通クーポンが始まったことでお土産も随分売れるようになったなど、本事業に対して大変前向きな評価を多くいただいたところです。
現実に、観光地の富山、福島の人出も大変多く、観光需要の回復と地域消費の活性化の効果が徐々にではありますが出てきているものと私も実感いたしました。
特に、地域共通クーポンは、旅行先の地域での消費を喚起する目的で導入したものです。
一部報道では、戻ってきてからは使えない、期日に制限があるといったお声があるような報道も見ましたが、これは、今申し上げた旅先で消費をしていただくことを目的としたものですので、使える場所は、旅行先の都道府県もしくは隣接する都道府県内において、加えて、旅行期間中に限って御利用いただけることとしたものです。
実際には、これから分析いたしますが、現在のところ、地域消費が促されているといった声も多く聞こえておりますので、こうしたことは、正しく本事業が狙いとしているところだと思っております。
他方、意見交換をさせていただく中で、まだまだ団体旅行の予約は本格化していないことや、高齢者の皆さんの動きがまだ少ない、大変元気な高齢者もいるので是非旅行していただきたいことや、移動の手段がマイカー中心で公共交通機関の利用が少ないので、是非公共交通機関、鉄道等のパッケージなども作っていかなければいけないといったようなお声も聞かれたところです。
いずれにいたしましても、繰り返しになりますが、引き続き、事業者・旅行者の皆さまの双方に対しまして、「新しい旅のエチケット」や、それぞれの団体が作ったガイドラインを遵守することによって、感染拡大防止を徹底することを呼び掛けつつ、様々な課題1つ1つに丁寧に対処することで、本格的な旅行需要の回復、さらには、新たなウィズ・コロナ時代における安心・安全な旅行スタイルの確立、そして、幅広い観光関係事業者の経営の安定化と雇用の維持、地域経済の活性化。
こういったことに向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 
(問)ユニバーサルデザインタクシーの件でお伺いします。
東京都や札幌で、コロナの感染症対策などを理由に、車いす利用者の乗車・配車を拒否したという事案があったことについて、大臣の御所感と今後の再発防止策についてお考えがあればお願いいたします。
(答)ユニバーサルデザインタクシーにつきましては、改めて申し上げるまでもなく、車いすを利用されている方や高齢者など、誰もが利用しやすい車両として導入されたものです。
そうした方々に対して不当な乗車拒否が生じることのないよう、適切な運用を徹底していかなければならないと強く考えております。
このため、国土交通省では、タクシー事業者による乗車拒否の事実が確認される等の場合には、改善を指導するとともに、悪質な事案に対しては監督処分を行うなど、厳正に対処しているところです。
今、お話がありましたが、平成31年3月、東京都において、車いす利用者に対するユニバーサルデザインタクシーの乗車拒否の事案として、初めて行政処分を行いました。
そのほか、令和2年8月、北海道において、車いす利用者に対し、感染防止シートの脱着に時間を要する点を強調し、利用が困難と捉えられかねない説明をされた事案があり、このことが確認されたため、この度、行政指導を行ったものです。
新型コロナウイルス感染症の感染対策等を理由に、本件のような事案が他にも生じていないか改めて調査を行っておりますが、ユニバーサルデザインタクシーの不適切な運用が確認された場合には引き続き厳正に対処するという方針は、いささかも変わるものではありません。
いずれにいたしましても、ユニバーサルデザインタクシーを適切に運用するためには、運転者が、車いす利用者の方々の乗車に必要な作業に熟練していただく、短時間でスムースに作業を行っていただくことが重要であると考えております。
国土交通省としましては、ユニバーサルデザインタクシーの車両購入費の補助を行っておりますが、この補助をするにあたりまして、ドライバーの方々の実車を用いた研修の実施を条件としているところです。
今回確認された事案を踏まえまして、研修内容を加味して、その実施を徹底してまいりたいと考えております。
また、これに加えまして、車両を開発したトヨタ自動車においても、スロープの設置にかかる運転者の工程を削減する改良を講じており、過日、私自身も実際の車両を用いて車いすの乗車を体験し、運転者の作業負担が軽減されていることも確認させていただいたところです。
今後とも、タクシーが車いす利用の方を含め多様なニーズに対応し、公共交通機関としての役割をしっかり果たすことができるよう、国土交通省としても取り組んでまいりたいと考えております。
 
(問)貸切バス業界について1問お願いします。新型コロナウイルスで観光需要が落ち込み、貸切バス業界の売上げが減って、経営難から廃業する事業者も相次ぐなど、厳しい状況にあります。
7月にGo To トラベルが始まり、10月からは東京発着も加わりましたが、コロナ感染への懸念から団体旅行、バス旅行を控える傾向が続いていて、貸切バスの事業者にGo Toの効果が届かず、回復の兆しがなかなか見えない状況に置かれていると見受けられます。
貸切バス事業者さんの現状とそれに対する大臣の御認識、貸切バス事業者に対する具体的な支援策を国土交通省でお考えでしたらお聞かせください。
(答)新型コロナウイルス禍の下、貸切バス事業者の皆さん大変厳しい状況が続いております。
これまで政府を挙げて、資金繰りの支援や雇用の確保を行い、また、2次補正予算では、貸切バス事業者等の感染防止対策に対する具体的な支援措置も講じているところです。
それに加えて、7月22日からのGo To トラベル事業の実施により観光需要の喚起をしておりますが、今御指摘のように、貸切バスの利用が多い団体旅行の動き出しが大変遅いこともあって、今後そうした状況を考慮しながら予算を適切に執行していくことを検討しております。
一方、貸切バスの利用を促進するためには、優れた換気性能や車内の感染防止対策を利用者の皆様に御理解いただくことが大変重要だと考えております。
このため、9月25日に、独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所において、貸切バスの換気性能の実車による公開実験を行わせていただきました。
この結果、貸切バスは窓を閉めた状態でも新幹線と同様の約5分間で、車の室内全体が換気されることが確認されたところです。
今後、この実験結果をしっかりと活用しながら、関係団体と連携して、貸切バスの換気に関する安全性のPRを国土交通省としても積極的に行ってまいりたいと考えております。
特に、修学旅行等の学校行事において貸切バスを安心して利用していただくため、国土交通省として、引き続き、文部科学省と連携しながら、学校関係者に対してバスの安全性の周知等をしっかり図ってまいりたいと考えております。
いずれにしましても、引き続き、貸切バス事業者の経営状況を十分に把握するとともに関係団体や関係省庁と連携を図りながら、事業継続に向けた支援、また、団体バス旅行を含む幅広い観光需要の喚起をしっかりと図ってまいりたいと考えております。
大変厳しい状況だと認識しておりますので、しっかりとフォローして親身に相談させていただきたいと考えております。
 
(問)昨日、エアアジア・ジャパンが事業の廃止を発表しました。
会社は新型コロナの影響によると言われています。大臣の受け止めをお願いします。
また、今回のエアアジア・ジャパンだけではなく、航空業界ではLCCから大手まで非常に厳しい状況に置かれています。
改めて航空業界に対する国土交通省の対応をお願いします。
(答)エアアジア・ジャパンは、昨日、航空運送事業を廃止することを決定し、国土交通省に対して、本年12月5日をもって全路線を廃止する旨の届出がありました。
同社は、3年前に運航を開始したばかりで、まだ事業規模そのものが小さく赤字基調でした。
親会社の資金支援等を受けながら経営を続けてきた状況でしたが、今回、新型コロナウイルス禍の影響により需要減があり、大幅減便の状況が続くなど、大変厳しい経営状況にあったと承知しております。
政府では、同社を含め航空各社に対し、これまでもお話したとおりですが、着陸料等の支払い猶予等により資金繰りを支援してきたほか、雇用調整助成金などの支援策も講じてきたところですが、この度のエアアジア・ジャパンの件につきましては、親会社とも検討を重ね、今般の判断に至ったものと受け止めているところです。
国土交通省といたしましては、エアアジア・ジャパンに対して、予約者に対する払戻し手続や必要な周知、案内など、利用者、関係者への対応に万全を期すよう、必要な指導を行ってまいりたいと考えております。
また、2つ目の御質問にありました、航空業界全体が依然として大変厳しい経営環境にあるということは承知しております。
現在、Go To トラベル事業を通じながら国内観光需要を回復させるとともに、水際対策を徹底しつつ、段階的に出入国規制を緩和することなどにより、航空会社の経営環境の好転を図っているところですが、航空各社としっかり連携を取りながら、意見をしっかり聞かせていただきながら、適時適切な必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
 
(問)JR九州の()(さつ)線についてお尋ねします。
7月豪雨で被災しました肥薩線は、一部区間が不通となっており、復旧費は多額となることが予想されています。
JR九州の青柳(あおやぎ)社長は、復旧に際しては、改正鉄道軌道整備法の適用による国の補助を求めていく考えを示されております。
まだ、治水の方向性など地元協議が続いている状況ではありますけれども、現時点で改正鉄道軌道整備法の適用など、国としての支援をお考えでしょうか。
(答)JR()(さつ)八代(やつしろ)吉松(よしまつ)間については、本年7月豪雨により、約450箇所が被災して、現在も運転を見合わさざるを得ない状況が続いています。
このうち、八代~人吉間では約52kmのうち、約24kmの区間が被災し、2つの橋りょうが流失する等の極めて甚大な被害を受けております。
JR九州の青柳社長の御発言自体は正確に承知しておりませんが、JR肥薩線の復旧につきましては、今後検討される球磨(くま)(がわ)の治水対策に応じて、JR九州において、具体的な復旧方法や、復旧に要する費用等が検討されるものと承知しております。
国土交通省としては、河川事業、道路事業などの関連事業とも連携しつつ、鉄道軌道整備法等の支援スキームの活用も想定しながら、どのような支援が可能か、JR九州並びに地元自治体の皆さん等とも検討してまいりたいと考えております。
昨今の災害の激甚化により、鉄道施設の被災規模も大変大きくなっております。
鉄道事業者の経営が厳しくなる中で、鉄道施設の復旧に関して、官民での施設保有の役割分担や、利用促進などの経営の持続性の向上も大変重要な課題となっており、国土交通省としても、関係自治体や鉄道事業者としっかりと議論しつつ、早期の鉄道復旧を可能とする支援のあり方についても、しっかり検討してまいりたいと考えております。
いずれにしても、大変大きな被害ですので、現時点で具体的な結論があるわけではありませんけれども、しっかり様々なスキームを想定しながら、JR九州と地元の地方自治体と連携を取って、地元住民の「生活の足」、「観光の足」の路線はしっかりと支援していきたいと考えております。

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