国土審議会

第20回国土審議会・議事要旨

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1.日時
  平成29年6月12日(月)17:00~19:00

2.場所
  中央合同庁舎2号館地下2階講堂

3.出席委員等
 奥野会長、古賀会長代理、愛知委員、北側委員、小川委員、河野委員、細田委員、荒金委員、石田委員、伊東委員、沖委員、沖原委員、垣内委員、川勝委員、木場委員、木村委員、佐々木委員、佐藤委員、髙村委員、田村委員、望月委員、山野目委員

4.委員からの主な御指摘等

(企画・モニタリング専門委員会)
・コンパクトシティについて、夕張市では土地が広すぎて住民が点在しており、本当にできるか疑問である。地方の地場産業が発達しておらず都心に行ってしまう。また、都心の方が物価高いといわれているが、地方のバスは乗る距離が長くなり運賃が高くなるなど、地方の方が物価高いこともある。国土形成計画どおりに地方が上手くいくためには工夫が必要である。
・総合計画の空間化は賛成である。ただ、他にも国では様々な計画が策定されているので、議論のプラットホームをどうするのか検討をいただきたい。
・国土のモニタリング2.0で500メートルメッシュの検討は非常に大事であるが、単位を小さくすることで得られるデータのパラメータの安定が難しくなる。また、人口増減率などのメカニズムの把握にも取り組んでもらいたい。
・国土のモニタリング2.0で、メッシュが小さくなることはバスルートの検討などでは重要である一方、振り込め詐欺などに悪用されることもあるので、どこまで細かくするのかは工夫が必要である。
・国土のモニタリング2.0について、メッシュを細かくする弊害はあるが、どんどん進めてもらいたい。高速道路等のインフラが地域産業の活性化にどうつながっているか分析していきたい。
・コンパクト+ネットワークを支えるIT、水素エネルギーなど科学技術の進化をモニタリングの項目に入れていただきたい。
・豊かな自然を評価付けしてもらって自然との共生をどうするか考えなければならない。
インフラに関するビッグデータはよく整理されつつあるが、自然環境に関するデータも考えて欲しい。それに基づく新たな価値をどう評価するのかが重要である。
・モニタリング2.0は大変魅力的であるが、図面という言葉は二次元のイメージとなるが三次元という発想が重要になる。もう少し考えると四次元も必要になる。我が国の土地情報政策で用いられている図面は世界測地系が整理される前のものが多く、こういった図面のリフレッシュも施策に反映させるべきである。

(稼げる国土専門委員会)
・「ローカル版「知的対流拠点」づくり」は多様な分析がされており、非常にわかりやすい。地域資源で新しい価値をつくることが盛り込まれている。一方、継続していくのかどうか定点観測してもらいたい。また、人をどう育てていくのかについてもモニタリングしてほしい。
・稼げる国土のため、内発的な発展というキーワードを国土計画に生かしていくことが重要である。内発的な発展はこれからのキーワードである。
・ローカル版「知的対流拠点」づくりにある飯田市りんごの事例のように、自分のところでは気づいていないものもある。

(住み続けられる国土専門委員会)
・住み続けられる国土について、農村部から中心都市に人が行きやすくなっている現状がある。広域な自治体の取組も進んでいるので注目していただきたい。また、三大都市圏で人口減少の進んでいるところもあることが気になる。
・住み続けられる国土について、「「住み続けられる国土」を実現する必要がある」のうち、「実現する必要がある」の表現は強いのではないか。地域により水道の給水コストが10倍異なり、また、教育、通信などでも同じようなことがいえる。言い切ってしまうことには違和感がある。SDGs(持続可能な開発目標)の会合が先日行われ、地方のSDGsの実現という話になった。持続可能な社会をつくるという意味では、途上国のみならず先進国でも課題がある。そうした中で、どうすれば国土がよくなるか大局的に考えてほしい。
・住み続けられる国土について、一つの職では生計がなりたたないのが現状である。デザイン、ソフトウェアなど産業が求めているものは伸びる一方、それ以外は右肩下がりになっている。観光についても、たくさんの仕事はあるものの給料が上がっておらず、どう生産性を上げていくかということを考えることが必要である。
・住み続けられる国土について、大胆な転換の表現に当てはまるのがエネルギーである。小規模分散型に変えるのが大規模転換であるが、小規模分散型はできやすいところとできにくいところがあり、広域地方計画にどう取り込むのかが課題である。

(国土管理専門委員会)
・土地利用構想図の見える化は地方にとって非常に見やすくなる一方、策定する市町村の利用の仕方が課題。市町村において、データの活用に長けたデータサイエンティストの人材育成が重要であるものの、まだ進んでいないため、様々な面からの支援が必要である。
・土地利用構想図について、将来的には3次元で分かりやすいものにしてもらいたい。コンパクトシティの関係で高度化の必要性がでてくるため。
・国土の自然環境の保全という点から開発圧力の減少をチャンスとしていかすという考えもあると思うが、里地里山の管理が縮小されることは、絶滅危惧種の増加の原因となっている。放棄される農地や、廃村が増えることが予想される中、国土全体でどう管理するかが課題になる。
・国土利用計画について、防災の観点も欠かすことができない。計画というコンセプトの裏付けとして、土地所有者の責務を考えなければならない。土地基本法という法律は土地が右肩上がり経済から価値を生むという観点からしか読めない法律のままであり、大修繕の時期に来ているのではないか。

(広域地方計画について)
・東京の一極集中が限界に来ている。新たな内需の産業が育っていない。東京以外への分散は国土政策の方向としては良く、広域連携プロジェクトを核にして、中部・関西などプロジェクトを分散するのはよい。スーパー・メガリージョンと相まって考えるのではないか。
・三大都市圏と地方という構図ではなく、例えば東京、中部、関西、地方のように、もう少し細分化する必要がある。
・広域プロジェクトというからには実現することが重要。主役を明確にして、具体的な事業が実施されて、その効果が確認されて初めてそのプロジェクトとして成立すると思う。対流の熱源になるプロジェクトか確認していくべきである。出来ることから始めて早くPDCAを回していくことが重要である。特にC(チェック)では、最終的に人を幸せにしているのかいないのかというところまで出来て初めて意味がある。

(所有者不明土地に関する対応について)
・所有者の所在の把握が難しい土地について、地方遊休地の対策として早期にガイドラインを策定していただき感謝申し上げる。

(専門委員会全般及び議論の進め方について)
・まち・ひと・しごとの会議と重複している印象がある。各省庁の会議がインテグレート(統合)された場がないと本当の意味で前に進めないと思う。省庁を越えた大きな議論をしてもらいたい。
・計画推進部会で定点観測することは非常にプラスであるが、ベンチマークの設定の仕方が重要となる。人口が増えることがベンチマークになりそうであるが、一方で人口が減ることによるメリットを勘案するなど、ベンチマークの設定に際しては工夫が必要である。
・戦略メッセージをクリアにしてはどうか。稼げる国土については、知的対流拠点として非常によいアイデアであるが少し中身が見えにくい。知恵、アイデアの対流による活動空間の活性化というサブタイトルをつけてはどうか。住み続けられる国土については、高齢化への対応が述べられていると思うが、メッセージがクリアになりきっていない。企画・モニタリングについては、国土のモニタリング2.0が戦略になる。国土管理については、グランドデザインの可視化、土地利用の実現ではないか。広域地方計画については、計画がまとまっていて非常によいものとなっているが、13のうちリニア中央新幹線による交通が10、ICTが2、文化が1と見えるため、スーパー・メガリージョンだけではなく、広域交通による地域間対流ということをメッセージとして出してみてはどうか。
・防災面として、知的対流の中で防災拠点の観点も検討に入れていただきたい。「住み続けられる」の対立概念として「住み続けられない」というものが存在するかどうか、脆弱性の高い土地について今後どうするか一緒に議論できればと思う。モニタリング2.0ではリスクデータをレイヤーとして入れて欲しい。国土管理においてもリスクを勘案したグランドデザイン、土地利用を考えて欲しい。
・タイムスケジュールとしていつまでに何をというものがわかるとよい。

(国土政策全般について)
・人口減少・高齢化の進展はあるが、地域によって実情は多様である。東京圏は人口増加が続く一方、地方大都市は大阪などでも統計により人口減少がはっきりしている。東京は国際競争に生き残る都市づくりをしていかなければならないが、人口が集中し過ぎることで東京の魅力が失われている部分もあるのではないか。東京圏の人口集中を食い止めていくことが喫緊の課題であり、強い問題意識をもって議論していただきたい。
・震災復興の取組について、持続的な経済の発展という観点から見ると、外国人のインバウンドが前の水準に戻っていないという課題がある。若い人、子どもたちに来てもらい震災などの教訓を体験・勉強していただきたい。他の省とも連携して取り組んでもらいたい。
・過疎高齢化が進んでおり、国勢調査の結果を見ても都道府県で軒並み人口が減っている中、地方では沖縄だけが人口増の現状である。島根のような地方では、若い女性が都心に働きに出て、その後半分しか帰ってこない。
・例えば島根県では米子と松江で1つの経済圏として機能集積していくといわれているが、ICT産業、観光などで簡単に集積しないという問題がある。
・過疎が進行すると、民有林は跡が継がれずに、市などが面倒を見なければならないという現状がある。自然を守る砦のように地域を維持する人たちが必要であり、そうした地方への移住者に一定の条件を与えて、若者が来られるようにしていただきたい。地方と国土の全体を考える知恵を出していただきたい。国土という観点からそれを下支えする組織が必要である。
・ふるさと納税の返戻金が問題となっている。7割近くを返礼で負担している地域があり、そこでは地域農産物などが出されているものもあるが、3割程度が上限になると、産業として出てきた部分が売れなくなる。今ある政策で産業の浮き沈みが出るようならばソフトランディングが必要である。
・地球環境問題に国土としてどうするかが課題。二酸化炭素排出量のうち6割を超えるものは国土交通省、国土計画に関連するものかと思う。緩和策と適応策を持っているのは国土交通省と農林水産省だけであり、そうした視点で考えていただきたい。
・高齢化に伴うビジネスとして、体の機能補充をするものづくりやサービスは将来大きなマーケットになる。そういった意味で日本は最先端のマーケット持っている可能性がある。デメリットをメリットに変える発想をもっていただきたい。
・スーパー・メガリージョンの基礎になるのはリニア中央新幹線であるが、例えば工事が予定されている南アルプスから発する水系に依存している人が72万人いる中、問題が生じれば代替ルートも含め対策をきちんと考えなければならないのではないか。
・東京や大阪における国際競争力としては都市のブランド化が大事である。パリなどは戦略的に行っており、そういった戦略を取る必要がある。
・地方のサービス経済活動について、観光を除いては考えることができない。インド・中国など爆発的に観光客が増えている。規制緩和、法律、税制など今までより加速度的に対応を進めなくてはならない。
・「均衡ある国土の発展」では、画一的で横並びを取ったとらえ方になるので、今の時代に合わせて違う形でアピールする方がよいのではないか。特色ある形で地域それぞれが発展していくよう工夫する余地がある。
・生活を維持するのに人手が少なくなっており、コンパクトシティで居住地を集約するなど私権の制約という問題に向き合う時代にきているかもしれないが、これは省庁を跨がる議論であるから、そういった議論をする審議会であって欲しい。
・便利で楽しいから東京一極集中、稼げるから環境負荷垂れ流しなど、直感的にやると陥りやすい誤りをパラダイムチェンジさせていき、本当の意味の住み続けたい稼げる立派な国土なるような、インセンティブが働く施策を考えてほしい。
・集落までの人口把握をすることが重要である。市町村が認識されていないことは問題であり、小さな単位まで目を向ける必要がありデータの提供等国の支援が必要ではないか。また、国土の7割は森林であり、流域で考えるということも大事である。
・地域固有の文化が大事であるが、それだけでは意義が伝わらない。災害リスクの高い日本に住む我々にとって農山村に住む意義をもう少し強調するべきではないか。
・農山村では創造的人材、特にITに強い方が居住して農林業の副業で行っている。市町村はこれらの人材がどう活躍しているか実態を把握するべきである。
・観光の面で言うと2020年のオリンピック・パラリンピックで東京に来た人をどう地方に呼び込むか。インバウンドの流れもチャンスであり、これを逃さないことが重要である。例えば博多港ではクルーズ船を受け入れるための整備を行ってこれまで受け入れられなかったクルーズ船を受け入れられるようになったという話があり、そういう好機を逃さず手当していくことが大事ではないか。
・離島や豪雪地域も含め、様々な地域の資源を掘り起こし、人を呼び込むという視点を入れていただきたい。

※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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