国土審議会政策部会

第4回政策部会・議事要旨

1.日時 
平成23年6月2日(木) 8:00~10:00

2.場所
中央合同庁舎第3号館11階特別会議室

3.出席委員
奥野部会長、秋元委員、秋山委員、浅見委員、卯月委員、沖委員、垣内委員、川勝委員、木村委員、清原委員、小林委員、鈴木委員、関根委員、辻委員、永沢委員、西村委員、根本委員、林委員、原田委員、松下委員、望月委員、山﨑委員、和気委員
 

4.議事(概要)
(1)小泉政務官挨拶
(2)部会長互選
        委員の互選により、奥野委員が部会長に選出された。また、奥野部会長より、家田委員が部会長代理に指名された。
(3)災害に強い国土・地域づくりのための今後の国土政策のあり方について、事務局より説明の後、意見交換が行われた。
(4)政策部会に防災国土づくり委員会を資料5の設置要綱に基づいて設置することにつき諮られ、了承された。



委員から出た主な意見は以下の通り。

・災害時の早急な対応のためには、即応力を国土全体でつけておくことが重要。また、誘導策は強制力をもってやらざるを得ない部分もあるが、権利調整のためのプロセスをどう考えるかが重要。

・東北地整による初動時の状況把握及び復旧作業は迅速で、今回非常に大きな役割を果たした。災害は県境を越えて起こるため、県だけでは十分でなく、広域的に管轄をする主体をもつ必要があることが今回わかった。出先機関の廃止が言われるが、むしろ国の中枢を出先機関に解体していき、国のもつ国土経営のノウハウを地域のために活かすことが地域力をつけることにつながる。

・1~3ヶ月程度の短期とそれ以降の中期といった時間軸を念頭においた検討が必要。また、被災地、後方支援をしている地域、今後の大きな災害が懸念される地域といった、地域の条件ごとの検討が必要。

・ハード、ソフト両面から整備していくとき、ハードの社会基盤が整備されても、ソフトの社会的な対抗力を整えることは依然必要である。また、人口減少の中で市街地が縮減していくとき、どういう縮減をすれば安全が高まるか、縮減する際のルールが重要になる。

・リダンダントであることも重要だが、同時にそれぞれが個として自立していることも重要で、バランスを考えることが必要。被災地域は、大きな国土軸では南北であるが、かつての街道筋である東西軸が今回は機能を発揮した。国土全体を一つとしてみるだけでなく、もっと小さなスケールに分けてそれぞれが自立していくという発想も考えてもらいたい。

・関西広域連合に所属する各府県が東北の各県に1対1対応して支援したことが有効に機能した。こういう1対1対応が円滑にできるような仕組みづくりが重要。また、首都圏一極集中の弊害が言われるが、それぞれの地域が強くなり、そしてどこかの地域が被害に遭った場合にお互い助けあえるような形、道州制というのが有効ではないか。

・官庁施設の整備・強化の点では、旧耐震基準の建築物の被災がみられており、老朽化対策の概念を入れるべき。また、地方整備局の津波の想定は当たっていたが、政策に反映されていなかった。想定を政策にいかすことが重要。財源に限りがあるため、役割分担が重要であり、官民連携、自治体間連携というキーワードも入れて考えるべき。

・学校林やコミュニティー林などのような共有林を都市周辺に確保しておけば、災害時には仮設住宅を建て非常時の町をつくる場になり、また、日常時には国土保全管理や自然と共生しての役割や、コミュニティーの活動拠点に活用でき、永続性のある土地利用や土地管理につながる。

・すべての自然の猛威をとめることはできないので、対抗ということから逃げることへ考える必要があり、防災の適正水準についての社会的合意が重要である。その際、インフラ整備には限られた費用便益の指標しかないが、生活の質とか生産のレベルをうまく定義し直して、それにかかるコストと比較した、もう少し一般化した指標にすべき。

・安全な国という日本の評価、信頼が揺らいでいるのではないか。これまで大前提となっていた安全な国土ということに関して、国土全体のネットワークや構造についてきちんとやるから安全であるということを、なるべく早く、明確に外に情報発信すべき。

・現象としての大地震と被害としての大震災は分けて考えるべき。また、人の命を守ることと被害を受けた後で健康的文化的な生活を維持することも別であるが、生きている人の現に聞こえる要望だけでなく、亡くなった方の立場にも想像力を持たないといけない。レジリアント、リダンダンシーといったことを考える際、国交省所管のインフラだけでなく、総合的な社会基盤は何が必要かという図が必要。また、官民一体というとき、民として電気・ガス・水道・鉄道など社会基盤を本当に担っている主体もちゃんと想定しなければならない。

・ロボット技術という面で、新幹線の自動停止などは世界からも非常に評価される一方、原発災害の現場に活用されていないのは忸怩たる思い。基礎技術はあるが、現場で実用化する研究が進んでこなかったのが課題の一つ。基礎技術をもつところと災害対応にあたる自衛隊などで共同開発するようなことを今後の防災対策の中に取り入れていくべき。

・災害に強いしなやかな国土という表現はよいが、システムがしなやかということに留まらず、むしろハードウェアがしなやかにあるべき。学校や公園について、日常的に地域コミュニティーのスペースとして活用するよう設計しておくことが、災害時での避難所としての機能がより強化されるのではないか。

・海辺の町にとって喫緊の課題は、高齢者でも逃げられる逃げ道を作っておくこと。また、道路の寸断に備えた備蓄も重要。また、今回、県庁や市役所が災害対策本部になり得ることが明らかになった。そういう施設がやられてはいけないので、津波にも地震にも強いところに作っていくことが必要。

・防災に対する考え方の中に、災害弱者への配慮、ユニバーサルデザインを入れるべき。また、これからの国土基盤、国土形成においては、21世紀型の情報共有ということをもう少し入れるべき。1000年に一度の震災対応のためにハードウェアを整備することはあまり意味がなく、むしろそこはコミュニティーと情報共有でカバーすべき。

・早期に復旧すべきところと中期、長期でしっかりまちづくりを考えるところを分けて対応すべき。その上で、早期のもので特区など規制緩和をしながら対処すべきところと、中長期的まちづくりの観点からむしろ一定のラインとして規制を持ち続けるところを分けて考えることが重要。また、防災に強いまちづくりに、総額としてどのくらいの維持管理費をかければどの程度のことができるか、一度しっかり出し、国・地方を通じて確保していくことが重要。

・NPOの活動に関し、最初の段階で駆けつけたNPOも多く、リアルで有益な情報も多かったが、その情報をどう集約して有効に活用するかは課題。次の段階では、被災地側および支援側の両方に、ワンストップで情報を共有できる機能があると役に立つと感じた。最近は、例えば専門性を活かした新しい産業づくりにシフトしてきているが、行政がやることと民間の自主性に任せる部分の線引きをうまくやることが、まちづくりの再生に重要である。

・日本は地理的に自然災害とは共存せざるを得なく、また人口減で高齢化する中、どこまで何をするという優先順位づけは必要。そのまま復元するのでなく、よりよいものをつくっていくべき。また、災害の記憶を残して共有することは重要であり、ツイッターなどで流れた情報をアーカイブにするという視点も入れるべき。

・1000年の目でみれば、今回の大災害も想定外とはいえない。これから災害に強いということを考えるときは、起きないことが起きるという前提で考えるべき。また、災害からの復興を考えるとき、被災地だけでなく国民全体が、もとに戻る生活はないと実感したのではないか。それを踏まえて国土構造の再構築というのをみていく必要がある。

・美術館等は、地域に開かれた美術館ということで日頃から人間関係ができており、避難所として単なる安全の確保にとどまらずメンタルなケアができていた。町との関係で新しい役割を再確認した。また、繊維とか陶芸とか金工など、東北では文化であると同時に地場産業でもあるものが多い。地域産業の復興という中に、文化施設の役割として、地域の経済的な力をバックアップするものという位置づけが必要である。

・ハード、ソフトの基盤構築というとき、システムや構造物はいったん確立されると変更のコストは大きい。最初から循環性をもった形で構築していくことが重要。また、安全と安心を一緒に語ることは危険である。安全を確保する仕組みと、安心を人々がもつ仕組みと自ずと異なる。

・サプライチェーンに関して、あまり語られないが倉庫が相当壊れている。廃棄物になってしまったものも出ているが、大量に廃棄する処理の仕組みがなく困っている。また、白タクや食品衛生上の問題などで、緊急事態には臨機応変ということがもう少しあってよかったのではないか。

 


(速報のため、事後修正の可能性があります。)

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