第15回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第15回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
  令和2年11月11日(水) 13:00~15:00
 
2.場所
  国土交通省2号館低層棟 共用会議室3A, 3B(Web開催)


3.出席者(五十音順、敬称略)
  委員:石田東生、春日伸予、金山洋一、木下剛、小池俊雄、小林潔司、柴崎亮介、高木健、谷口綾子、中川聡子、藤田壮、二村真理子、堀宗朗、松尾亜紀子、屋井鉄雄
  ゲストスピーカー:小野寺征志、北條英

4.議事
1.今回のテーマについての議論
<テーマ>
「物流、国際ゲートウェイ」
2.その他
   今後のスケジュールについて
 

 
5.議事概要
データ連携をしっかりしないといけない。コモディティ化をもっと取り入れて、柔軟にウェブ状にしないといけない。この点が日本の弱いところであり、過去家電メーカーは出来なかった。半導体などの要素技術については、パッケージ化で失敗している。自動車もそうなるのではないかと心配している。そのときに向けて、何を考えておくべきか。物流・ロジスティクスにおいて、役所が果たすべき役割はなにか。
 
日本は家電に限らず、あらゆる分野において、標準化・規格化が苦手な領域である。サプライウェブプラットホームは、海外に作られているのが実態である。物流のDXに関しては、色々なものがつながっていく際に、物流の1つ1つの機能自体が機械化、ロボット化、自動化していくことが同時並行で進むと理解している。今まで人間がやっていたことが自動運転になり、出荷作業がロボットに変わり、自動運転やロボット化が進めば、必然的にデジタル化・規格化が進む。
今まで手作業で行う必要があった作業が、サイズを合わせることでロボットでの出荷が可能となり、トラックの現在位置情報が自動運転になった場合全てネットワーク化される。それにより、足下での省人化・機械化・自動化が必然的に進む。これらが日本が得意なところであり、進めていけばよいのではないか。
日本は工場をロボットにしたのが早かったため、規制緩和・サポートする仕組みがあれば、物流をロボットにすることは本来早くやれるはずである。機械化を行うことで、作業がデジタル化され、システムにつながり、先頭集団を走れる可能性がある。
実施したいことは標準化ではあるが、パレットやトラックの大きさに関する標準化ついて過去30年失敗し続けている。現場で機械化・デジタル化・システム化を行うことで、結果として標準化が実現するのではないか。
最初のサイクルを早く回せれば負けない可能性があり、世界をリードできる可能性があると考える。
 
・現在、ビジネスモデルが変化しつつある。日本のSIベンダーや物流業界は今まで、カスタマイズをする事で儲けるビジネスモデルであったが、カスタマイズをしすぎて自縛的になっている。客に合わせたサービスをA社とB社で変えるといった煩雑なことを行っているため、作り込み過ぎた物流を直していかなければならないということが共通認識としてある。
例として、荷主が自分の所で物流システムを作っていたが、最近プラットフォーマーを使うという話が大手の荷主の中からも出てきており、非常にいい話である。A社のシステムとB社のシステムを取り合わせて、新しいA’,B’を作る、A-B間の潮流にするのではなく、初めからプラットフォーマーが作り出したXを標準として使うものである。GAFA、BATなどが例であり、移行していくのではないか。
提供側のロジックについて、スタートアップ企業の若い経営者は、社会的課題を解決するためにビジネスを行っており、標準を作り、活用してもらうことを考えている。カスタマイズで疲れた荷主のニーズと最初から標準を使っている若いベンチャーがマッチングすることで、日本の物流は変わる兆しが見えてくるのではないか。コロナが追い風になったと思う。
 
・アジアの都市が非常に活発になっており、それらをつなぐところに、便利さだけでなく、イノベーションの機会があることを伺った。
日本もアジアも非常に災害、特に洪水災害が多い地域であり、クリーンイノベーションとともに災害レジリエンスイノベーションなどの共通の課題を持っている所の間の運輸、ゲートウェイなどの戦略はあるのか。
物流の課題として、災害が激化しており、2016年の北海道地震においても流通に大きなダメージが生じて大きな問題となった。災害に強い流通システムという観点で何があるか。
 
・ゼロカーボン2050にむけて物流はどうなるのか。
脱炭素社会の研究では、航空機のカーボンフットプリントの大きさが議論になる。付加価値の高いサービスのため、それほど規制はされないという議論もあるが、一方でノルウェーや北欧の炭素税の付加の仕方を見ると航空業界も例外ではないと言われている。ナローボディー機等の技術革新についても聞いたが、物流の特徴がゼロカーボン、マイナスカーボンの制約の元で変化していくのか、人流やサプライチェーンについてもコンパクト化、地産地消化していくのか。
 
・道路の効率化の話はよく出てくるが、鉄道貨物についてもう少し政策に取り組めないかと考えている。
1300本の牽引力のある高速貨物列車は10tトラックで65台分になり、65人の運転手が必要になる。色々なプレイヤーがいる中で、民間鉄道貨物の経営状態も良いとは言えない状態にある中で、デジタル化や物理的(旅客鉄道株式会社の一部のダイヤを使う)な線路容量などの課題が存在する。総合的に見てCO2削減、サプライチェーンについてどう取り組むのか検討してほしい。
国際物流、船舶などの自動運転が開発されており、乗務員の安全規制の観点や宿泊設備が不要、運航の効率性・安全性が確保されるなどがある。国際物流の自動運転化について、深掘りする余地はあるのか。
 
・海洋開発の分野はB to Bの世界であり、ロジスティクスのスタイルとしては古いが、一方でダウンタウンタイムが発生すると相当な損失があり、ロジスティクスが非常に重要だと言われている。サプライチェーンではなく、サプライウェブを業界に応用できればと思う。
従来のやり方では、ある程度の品質保証、規格は進めていたが、これまでの調達先との信頼性や、急ぐ場合はグレードが落ちても品質が悪いとわかっているものを使うようなフレキシブルな対応を行ってきた。DXが進むと規格化が細かく進むのか、あるいは素晴らしいアイディアが生まれ、従来型のブランドの信頼感が新しいアイディアに置き換わり、付け加えられていくのかといった将来的なビジョンはあるのか。
 
・総合物流施策大綱について、2050年を考えたときに物流そのものを減らしていくという考えもあった。国民や利用者に説明しながら協力的にやっていかないといけないが、大綱の議論の場はそこを議論する場になっているのか。
施策大綱は施策のため手段を考えるのはよくわかるが、物流のボリュームをどうしたらよいか、効率性も重要であるがそれ以外のところが議論のスコープに入っているかが疑問である。
 
・激甚災害が多発する国においては、イノベーションと言っても大きなリスクを抱えている。一方でリスクが高い国と共同し、その先進国という意味で防災・強靭化にかかわるイノベーションを行っていく。高齢化社会イノベーション、ライフサイエンス、グリーンイノベーションなどの共通課題を持っている国々と一緒に推進していくという観点を強く持つことにかかわっていくと感じている。
ゼロカーボンについては、2050年レベルであると電動化、代替燃料の開発などで下がったりするが、欧州との違いとして日本は飛行機がないとどこにも行けないため、やめるわけにはいかない。いかにその間をつないでいくかが重要である。
細かなこと、大きなことでも挑戦していかなければいけない。前回、航空管制技術を格段に進歩させなければいけないことを話したが、東京の西側の交通が多いため西側空域(横田空域)を民間としても有効に活用していくことを実現すれば、地球温暖化、エミッションを下げることにつながる。やれることを何でもやっていくことが航空の世界では必要である。
 
・総合物流施策大綱の検討の場が物流そのもののあり方について、プラットフォームに関する議論も含めて実施していると理解している。2050年のカーボンニュートラルを意識して物流を減らそうという大きな議論が必ずしも出てきてはいないが、消費者にも行動変化を促す必要がある、といった論点は今回も出てきている。例えば、EC物流の再配達は、物流の非効率を招いており、消費者にも理解を浸透させると共に多様な受取方法を開発するといった議論は出ている。
今回指摘いただいた議論も含めて、物流そのものを国民にどう訴えかけていくか、物流広報のあり方についても総合物流施策大綱の中に取り入れ、しっかり取り組んでいきたい。
 
・今現在、日本全国で様々な災害が起こっており、その都度、サプライチェーンや物流の寸断が起こっている。物流事業者(輸送事業者サイド)はそのようなトラブルが起こったときには、きちんと代替的な手段を弾力的に提供できるような主体でないと、信頼を得られないことになる。
今後は万が一の時のトラブル対応が出来る企業である、ということが一つの強みになるのではないか。災害が起きることは止められないため、弾力的な対応に尽きるのではないか。
 
・ヨーロッパ流のグリーンタクソノミー(green taxonomy)という、再生可能エネルギーで走っている欧州流の戦略論を、直ちに日本やアジアに適用することは難しいと思う。
2050年に向けてロードマップを描いていく以外に手は無いと思うが、目的関数を何にするのかが非常に大きな議題になってくるのではないか。コスト最小化であれば、単純に原子力となる。色々な状況・現状を踏まえ、どういう目的関数を得ながらカーボンニュートラルに持って行くのかという基本的な戦略を問われており、その際に利用可能な技術というのも影響を及ぼすのではないか。
日本はなかなかプラットフォーマーがいない。ウェブの方に移行する場合でも、ウェブ型のサプライチェーンを実現するためには、色々な代替的な取引相手というグループを形成し、エコシステムを形成しておかないといけないが、日本ではプラットフォームが育っていない。それと併せて作っていくことが本当のDXにつながる。
東南アジアやアメリカなどは、オペレーターがいないため、プラットフォーマー主体で物事を進めていける、といったメリットが存在する。DXが進めば、一つの標準が世界を支配するか、あるいは非常にローカリゼーションが進むかはケースバイケースである。両方の方向にDXは影響を持つようになっていく。日本がこれからアジア向けのロジスティクスを発展させていこうと思うと、アジアのローカリゼーションを支援する戦略論を強化していく必要がある。
 
・ウェブ化された世界でも当然きちんと物が作れるか、それに裏打ちされるブランドの価値があるのかとういうのは、引き続き価値であり続けると理解している。
ウェブ化した世界は、例えば今メーカーはブランド価値のある、高い信頼性のあるメーカーであっても、トラックの手配、物流管理、出荷作業を、メーカーも流通業者も皆やっているが、本来は本業ではない。本来は誰かがやれば良いが、届けないことには価値を感じてもらえないため、そのような作業を行っている状況にある。
自動運行制や自動運転トラック等が進んで行くことを考えるポイントには色々な視点があるが、いかに時間軸で考えるかが大事である。
自動運転や自動運行制はいつか進むが、明日から出来るわけではない。トラックは10年20年かかり、船は航海できるようになるには、色々な国際法をクリアする必要があるので、時間がかかると思う。最初は、船に人は乗っていないが全てにウェブカメラを付けて日本で運行管理を行う、トラックは高速道路だけしか運行できないという状況が続くことを想定した方が良い。いかに段階的に進めていくか、その際には、10年先になったら無駄になるような投資をしない方がよい。目先の3年で投資し、10年後にいらなくなると大いに無駄になるため、国の視点で管理することが非常に重要である。
3年先、5年先も重要だが、10年先、20年先を見据えて段階的に進めていくこと、無駄な投資をしないことが大事である。
鉄道はもっと使えるはずだか、日本の鉄道貨物が使われない最大の理由は、海上コンテナと鉄道コンテナの規格が違うことである。今から海上コンテナと鉄道コンテナの大きさを合わせることは無理な話である。投資負担は出来ない、利用するのかといった話になる。鉄道の運賃を極端に下げたとしても、積み替える手間が高ければ誰も使わないことが最大のボトルネックである。
国際規格を作れば、鉄道と海上の規格の違いといった問題は一気に解決出来る。実は、海上コンテナ以降物流のイノベーションがない状態である。例えばトヨタの規格を世界中で使おう、ということになれば日本発の規格となる。
今から色々な規格の種類のあるパレットやコンテナを1個にすることは無理なため、新しいベースカーゴを日本基準ではなく世界標準として国交省が売り出せば良いのではないか。
 
・DXのインパクトについては、現在情報の非対称性で価値、品質で商売をしている人達がいなくなるのではないか。IoT的な世界で誰でもどこでもありとあらゆる情報に近い形で得られるようになると、情報の非対称性が無くなるのではないか。
コモディティ化はするが、協調領域が広がることで競争領域がより先鋭化してくる。情報を保有しているか否かではなく、保有している情報をどのようにサービスしていくかといった、アルゴリズムの競争になる。より難しい問題をより簡素なアルゴリズムで解くことが数学的にエレガントで良い世界となる。
以前、ドライバーの滞留について調査したところ、重回帰分析した際に切片がつき、全ての変数が0であっても、もらわなければならないものが生じるため、センター毎に切片が違うことがわかった。さまざまな情報が取れるようになり、センターの善し悪しに関してコンサルテーション(consultation)になる。DXによるインパクトは、競争領域がよりエレガントとなり、知恵を使うことになってくることだと楽観的に考えている。
 
・教科書的にサプライチェーンマネジメントの良い点として、各段階のプレイヤーが連携し、より良い商品開発をする、在庫の効率化を行う、といった事などが挙げられるが、連携による新たなイノベーションや商品開発などがサプライウェブになると弱くなるのではないか。今後はパーツを組み立てることがメーカーの役割になることになるのか。
 
・今のサプライチェーンは作り手や調達元、流通業者、販売業者がおり、販売業者からの現場の情報が作り手に渡り、作る物が決まる。
プレイヤーが手を携えることによって成立する。関係性が固定的であることで成立することが大前提であるため、取引関係がフレキシブルになるほど、関係性は担保しにくくなる。コロナ禍において、色々な会社とつきあわないとリスクヘッジが出来ないということは必然的に進めば進むほど、元々サプライチェーンが目指していた前提条件が崩れる。
サプライウェブの世界では、元々固定的であるが故に色々な情報が媒介し、良い物が作れる、ユーザーとしても良い物を得られる、といった関係性が閉ざされるのではなく、その部分もプラットホームビジネス化する。
色々な使い方を情報として吸い上げるプラットフォームは様々な所で出てきている。ITが進化することで、特定の企業がつながらなくても情報が得られる状態になったことで、より広く繋がるようになった。ロジスティックスに限った話ではなく、プラットフォームのビジネスがこれから増えていくと考えられる。
作り手をつなぐ、使い手をつなぐ、それぞれのプラットフォームが出来上がることがサプライウェブの全体像である。
 
以上

ページの先頭に戻る