国土政策

計画推進部会(第5回)議事要旨

1.日時
令和2年12月16日(水)16:00~18:00

2.場所
中央合同庁舎第2号館低層棟3A・3B会議室
(※上記会議室を拠点としたオンライン会議)

3.出席委員
奥野委員(部会長)、飯尾委員、家田委員、大西委員、岡部委員、小田切委員、垣内委員、坂田委員、坂村委員、田村委員、津谷委員、中出委員、藤沢委員、宮本委員

4.議事
(1)各専門委員会の審議状況に係る報告について
(2)その他

主な発言内容(委員発言順)
(1)新任委員の紹介
(2)部会長互選結果の報告
 奥野委員が部会長に選出された。
(3)議題
「国土の長期展望専門委員会」、「国土管理専門委員会」における検討状況を報告の後、それぞれ意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。

<国土の長期展望専門委員会について>
○全体に横軸を通すような論点として注目されるのは、ネットワークインフラであり、他のインフラに比べて全国で大きな段差のないものになっている。全国どこでも比較的近い条件でアクセス出来るようになり、多くの課題解決にも役立っており、移住を促進する上でも重要。
○地域には、SDGsやサステナビリティという観点で見ると、世界的な期待に応えられる要素が非常に多いため、それを捉えることが地域の長期展望にとって重要である。
○なぜ、東京一極集中が問題かということも当たり前だと思わずに考える必要がある。また地方の核への集約も含め、全体としてのイメージを作った上で、地方の魅力について議論しないとうまくいかない。結果としての人口だけを見るのではなく、原因についてもよく理解して政策をつくるべき。
○東京一極集中の問題については、歴史的に見ても都市に人が集まることでイノベーションが起こっているので、どうしたら安心して集中することが許容できるのかという観点が必要。
○中間とりまとめの第3章は非常に重要だと思う。これまでの国土形成計画の検討時に正常時・非常時のデュアルモードという議論があったと思うが、今こそ非常事態におけるモード切替の考えは重要ではないか。
○テレワーク等で東京に行く必要がなくなれば、完全分散も考えられるが、そのためにはDX化と完全デジタル化が必要。また、デジタルツインも重要であり、非常事態の際に状況を把握し、バーチャル空間で様々なシミュレーションを行うことが可能な環境について、長期的に検討する必要がある。
○現行計画の「対流促進型国土」をどう捉えるかということを、今回の長期展望でもっと明示してもよいのではないか。「対流促進型国土」という考えは、コロナ禍やさらにその先の展望を考えた場合に重要になる。
○「共生」というワーディングに今一度光を当てるべき。コロナ禍で地域の分断は顕著に表れており、今必要なのはそこをつなぎ合わせる「共生」なので、そこにもう一歩踏み込むべきではないか。
○水やCO2吸収源となる森林などは、いわば国際的な戦略物資とも捉えられる。これらが日本の国土の中で形成されているという意味では、森林などを国内戦略地域として位置づけ、管理していく必要があるのではないか。
○防災面から見た国土計画についてはバランスをとることも必要。分散ばかりでも、集中ばかりでもいけない。「コンパクト+ネットワーク」の考え方は、新型コロナウイルス感染症の拡大や防災について、拠点化と戦略的交流の観点で理にかなっている。
○東日本大震災のような国土が危機に脅かされる状況が押し迫っている中、そのための準備が国土計画において不十分ではないか。国土形成計画や土地利用計画の中に「事前復興」の概念をある程度入れておく必要がある。
○2050年の長期を考えるとデジタル空間にも触れておくべきではないか。日本国が管理するデジタル空間も国土と捉えられるだろうし、モノを動かしていく宇宙航路についても民間企業は動いている。長期を展望するのであれば、「国土」という概念を再定義することが重要。
○コロナの感染拡大が、社会のパラダイムシフトを一気に引き起こしたことを実感している。ポストコロナの見極め、そして感染拡大が地域にどう影響があったのか注視すべき。状況が地域によっても異なるので、地域経済への影響のアセスメントについて部会でも検討すべきではないか。
○コロナの経験は大きいが、いいところだけを読み取ってはいけない。足りなかったところを正確に読み取らないといけない。特に顕著にあらわれたのは情報インフラが世界と比較して日本は弱いということ。コロナを長期展望のところだけで検討するのではなく、もう少し多面的に色々な先生方に入ってもらって議論した方がよいのではないか。
○今、日本の社会は大きく転換するチャンスを迎えている。大転換のニーズがある時に、国民がリアリティを持って受け止めてもらえるようにするために、国土計画のスタイルをどう変えていくかということもこの部会で議論するべきではないか。
○今後の国土形成に向け、人口減少をどう受けていくのかについて、例えば危機に感じるべきところ、逆手に取れる部分など、もう少し記載すべきではないか。地方で言えば、中核的な都市が地域を担っていくという今の体制を維持し、地域間の相互連携を図れるようにしないといけない。
○2050年に、人と国土がどのような関係になっているのかということを整理して示すことが必要。また、国土計画を何のために世に問うのかも考えるべき。コロナ後に相当な数になると思われる外国人の流入を国土計画に位置づけ、多民族国家になっていくことのリスクと効果をきちんと描くことが必要ではないか。それに関連して、日本経済・社会はどう変わっていくのかも併せて描くべき。
○低炭素社会が国土全体にどういう影響を及ぼしていくのかも描くべき。
○食料問題も新しい位置づけ必要。徐々に農業の生産性が上がっているところもあるので、そういった新しい農業のあり方について、国土計画に位置づけることも必要。
○人口減少を地域別に見ていく必要がある。例えば北海道と九州ではだいぶ様相が違う。また、中核になる都市が周りをリードしていけるところとそうでないところも出てくると思うので、そういう姿をもう少し丁寧に描く必要がある。
○中間とりまとめ第4章(1)の「ゆとりのある暮らし」について、物理的な面について記載している部分が多いように思う。かつては自己実現というかたい言葉で言われていたが、人生100年時代をむかえ、一定程度のインフラは日本にあるので、それを利用した自己実現、精神的なものも含めた、「真の豊かさ」を社会として目指すということを書き加えた方が良い。また、最後の記載部分について、「安全な「食」、ゆとりある「住」、魅力ある「コミュニティ」」という文言だけなので、ここのところのイメージを明確にしてもらいたい。
○新しい価値を作っていくこと、つまり将来の伝統・文化をつくっていくことが必要。国内外からの誘客につながり、地域と持続的に交流してもらうためには、そこに住んでいる人が様々な活動をして成果となって現れた本物でないと多様な人を引きつけることはできないので、新しい文化の創造についての記載もお願いしたい。
○コロナによって、リアルな場で人と接するなど、元来3密で活動が行われてきた文化も、一気にバーチャルな活動が行われるようになった。このことからバーチャルなコミュニティが非常に重要になってきており、そのための環境を整えることも重要だと思う。
○突発性のリスクに備える計画を突き詰めると国全体に悲壮感が漂うことにもなりかねない。何が起こるのかは分からないが、それを謙虚に受け止め、計画の限界をそれなりに示すことも必要ではないか。
○一極集中の是正について、コロナ禍で初めてその兆しが出たのは、生活において選択肢の多い人の行動がデータに出たのだと思われる。一方、大都会にいることによって複数の非正規の仕事を組み合わせて生き抜いている人達が、地方に移動して尊厳を保ち自力で生きていけるのも簡単ではない。そうした分断を固定化する大きなリスクに対して最も犠牲になっている人達への洞察力がもう少し欲しいと感じた。 


<国土管理専門委員会について>
○自然環境の観点からはどのように利用すべきか検討するためにモニタリングが非常に重要になる。その際にどのくらいのインターバルで行うのか、またメンテナンスのやり方、オブザベーションはどうしていくのかという方法論が重要になるので、その点を議論した方がよい。
○担い手不足という点については、広域での人材の共用の仕組みのようなものについても議論すべきではないか。
○管理手法については、やる気があったらできるというものと、やる気はあまりないが最低限ここまではというようなタイプをつくらないと中々広がらないのではないか。
○管理構想をつくるとどのようなメリットがあるのかについて、もう少し具体的に示すべきではないか。例えば立地適正化や中心市街地活性化などがどれほどの効果を上げたのか、ということについての定量的なレビューと、その反省に基づく次の制度設計がないといけないのでないか。
○大災害などの大きなインパクトがあった時に備えて、適切な復興計画を作っておくべき。東日本大震災ではいくつかの例外的な市町村を除いてコンパクト性が低下した。それが実状なので、あらかじめつくっておかないとまた同じことを繰り返すこととなる。
○国土管理のベースとなるインフラ情報を充実させることが重要。特に地籍調査については次の10年くらいで全部達成するくらいの目標を立てないといけないと思う。それをしないと国土管理の第一歩が出来ていないということになると思う。また地下の情報を官民で情報共有することで、地下空間をより適切に使えるようになると思うので、国土形成計画でも、地下空間の情報を共有化することを謳って頂きたい。
○コロナ禍で状況が変わろうとしているので、計画していることを一挙に実行する時がきていると思う。利用を図ろうとする時には情報が非常に重要なので、国民にどう伝えるのかということを検討すべき。
○東京から地方に来る際に、地域コミュニティとの会話は重要だと思う。最近だとSNSを使うなど地域に住んでいる人との会話を促進する試みがされているが、システムだけではなく、コーディネートする人がいないと上手くいかないので、国はそういうことを利用促進するためのルールなどをつくるべき。
○国土利用を考えた時に、単に持続・継続するだけではなく、リジェネラティブということを考える必要がある。
○地下空間の共有について言うと、これからはCAD(コンピューター支援設計)、CAM(コンピューター支援製造)の次に、ビムがいろんなところで導入されているので、BIMデータの共有の仕組みを誘導していくようなこともした方がいいと思う。
○コミュティベースの計画を国土利用計画の中に位置づけるという部分は是非実現して頂きたい。
○地域管理構想は多くは農村部でつくる計画になると思うが、農村部には人・農地プランや直接支払など既存の計画が多数あるので、それをどうつなぎあわせていくのか。実現化するための制度的な仕組みが重要になると思う。
○都市の中にも、例えば人があまり多く入っていないビルを家守が管理するなど、様々な場所で地域の土地利用や、建物・施設を管理する必要が出てきている。これは計画をつくって全国一律に行うものでは必ずしもない。できるだけ事例を紹介して、うまく取り入れることを図っていくことが重要なので、事例を豊富に取り入れるまとめ方が必要だと思う。
○情報共有についてはネットワークを構築する必要があると思うが、そのためには、デジタルインフラの整備に加え、コーディネートをする人材が必要である。しかしこれは地域間格差があるので、例えば新設されたデジタル庁と国交省が連携して、都道府県・市町村におろしていくことや、下からのボトムアップも図られるようなネットワークを構築することも一案だと思う。

以上

※ 速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)


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