最終更新日:2010年4月12日
からり直売所出荷運営協議会名誉会長
主な経歴
1946年
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愛媛県内子町生まれ |
1994年
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産直トレーニング施設「内の子市場」第1号会員 |
1997年
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内子フレッシュパーク「からり」取締役に就任 |
1998年
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「からり特産物直売所」運営協議会会長に就任 |
2003年
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タイ王国「産業村ワークショップ」で女性起業について講演 |
カリスマ名称
「農産物直売の実践による都市住民との『食』と『農』の交流カリスマ」
選定理由
生産者自身が楽しみながら、消費者に農村の楽しみを提供する都市と農村との交流拠点「からり」の取締役として、農村女性による農産物直売による都市住民との交流の草分け的存在である。生産者の顔が見える安全・安心・新鮮な農産物を追求し、リース教室ツアーなど年間をとおした「食」と「農」の農業体験活動を実践するとともに、農業ベンチャーを対象とした研修等の講師としても積極的に活動し、農村女性起業家のモデルとして多方面で活躍している。
具体的な取り組みの内容
内子町は、松山市から南西42kmに位置し、人口約1万1,000人、総面積の70%以上は急傾斜の山林で、標高100~400mの中腹を中心に集落と耕地が開かれ、葉タバコやかき、ぶどうなどの落葉果樹を中心とした農業が行われている典型的な中山間地域の町である。
また、江戸時代から明治時代の面影を残す「木蝋と白壁の町並」が国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、木造の歌舞伎劇場「内子座」など歴史的環境に恵まれた町で、ノーベル賞作家の大江健三郎の生誕の地でもある。
特産物直売所への布石
昭和50年頃から国道沿で、農家による観光農業がはじまり、あわせて町並みの保存により内子町は注目を浴び県内外からの観光客が大勢訪れはじめた。 内子町は、観光客が増加する中で、農家の高齢化等で衰退している農業に活気を取り戻そうと昭和60年から、農家・役場・農協等で構成する「知的農村塾」を開催し、「知的な農村生活の過ごし方」、「特産物づくりへの心得」等のテーマで、講演会や研修等を行った。
野田さんは、「知的農村塾」で女性主導の町づくりの事例を紹介されたのをきっかけとして、農村では女性や高齢者の役割が大きいことを再認識し、今までとは違う農業があるのではと考え始めた。
「内の子市場」への参加
平成6年内子町の支援により、農家の手づくりで待望の特産物直売所の実験施設「内の子市場」が完成し、74人のメンバーで「直売所」がスタートした。この第1号会員が野田さんである。
専業農家の野田さんは、夫から「空いている畑で、何でも良いから小遣い稼ぎをやってみい。」と言われ、自分の力で農産物を作って売り始めたのがきっかけで、農業には自分の知らなかった楽しさと夢があることを実感した。今までの自分の考えどおりにならない「使いの農業」(自分の意志ではなく人に使われてする農業)と違った農業が「直売所」にあるのではないか。「直売所」で、自分のつくった農作物等を直接、消費者へ売ることを第2の人生にしようと考えての参加であった。
品物には品名、名前、価格、電話番号をつけた。当初は、価格設定、慣れない接客等不安を多く抱えてであったが、形は悪くてもその日の朝に採れた新鮮で安全な野菜やスーパーでは売っていない手づくりの「かずら籠」、「ドライフラワー」など、消費者に好評で、野田さんの商品のファンができ、東京から「かずら籠」の注文がくるなど売上げは順調に伸びていった。
農家の女性による直売所「内の子市場」から第3セクター「からり」へ
~内子フレッシュパーク「からり」と「からり特産物直売所」の誕生
内子フレッシュパーク「からり」は、「農産物直売所」、「レストラン」、「農産加工場」、「情報センター」、「農業情報連絡施設」、農村公園「ふれあい広場」が一体となった複合機能施設として整備され、その中核的な施設として、平成8年5月「からり特産物直売所」がオープンした。「からり」とは、内子町の特産物である果樹(果楽里)、花(花楽里)、ハーブ(香楽里)を楽しむ里、「カラリ」と晴れ晴れした気分、すがすがしい時間、爽やかな出会いを楽しむという願いを込めて、命名されたものである。

子フレッシュパークからりの全景
「からり」は、内子町と農協、町民373人(うち、農家158人)が出資して設立した「第3セクター」で、野田さんは、取締役として会社経営に携わる一方、「からり特産物直売所」運営協議会会長に就任した。
野田さんの会長就任は、「内の子市場」の第1号会員としての経験と実績、「自分が作ったものが自分の目の前でお客に納得して買ってもらう顔の見える農業がまさに本当の農業であり、これを是非、成功させたい。」という思いと熱意が周囲の人から評価されていたためである。
「食」と「農」の体験交流活動
野田さんは、「からり」で出会ったお客から「かずら」を自分で編んでみたいと言われたのをきっかけに、これまで「からり」で知り合った人たちに「リース教室ツアー」(山に入って自分でかずらや草木を採り、地元の食材を利用したお弁当を食べて、「かずら籠」や「リース」を作る。)を募集した。
20名も集まればと思っていたが、応募者が多すぎて40名でうち切らないといけないほどだった。
「からり」では、都会の消費者を対象に農業体験スタディーツアー、年2回の定期的なイベントや毎月サービスデーを開催している。バザーや試食会、ゲーム、フリーマーケット方式の直接販売や「初夏の田植え」、「手打ちうどんづくり」、「草木染」など消費者と農家が共に楽しむ内容の体験教室を年10回開催しており、延べ300人の参加を得ている。

多くの客で賑わう農産物直売所
また、小・中学生へは情操教育の場として、農家が生徒を受入れ、農業体験学習を進めている。高校生や大学生には、職場体験や農業・農村体験をさせ農業・農村への認識を深めてもらう等の活動を実践している。野田さんは、農業体験の中心人物の1人として活動しており、今後、「からり」ならではの農業体験スタディーツアーに取り組めるよう花の苗づくりに頑張っており、春夏秋冬、1年をとおしての花摘みツアー等を計画中である。
女性起業家としての活動
野田さんは、「直売所」経営、成功のノウハウを国内での講演はもとより、海外(タイ王国(国際協力銀行主催))で講演するなど、その活躍ぶりはTV・雑誌・講演活動等を通じて全国に紹介されている。
活動の成果
野田さんを始め、農家の母ちゃん達が中心となった「からり農産物直売所」は、今では、全国的に有名となり、「木蝋と白壁の町並み」と相まって、入り込み客数は年間約50万人、視察数も毎年約200団体に達し、利用者の90%は町外者で、高速道路の延伸で最近では、県外からの利用者が増加している。農産物直売所には350人が出荷者として登録しており、品数も年々増加し、430種類にも上っている。
発足当初(平成6年7月)は出荷者100人、年間販売額4,200万円であったが、平成14年度の販売額は、3億9,000万円で、内子町の農業総生産額(28億5,000万円)の13.6%を占めている。 「からり農産物直売所」への出荷者の年間平均売上げは110万円を上回り、1千万円を超す農家も出現している。
現在、「からり農産物直売所」の会員は、女性が63%、65歳以上が40%を占めており、従来の単作経営から、少量多品目栽培へ転換する農家や、有機農業を指向する農家も増え、既存の流通では商品とならないような規格外品、産直ならではの新鮮な農林産物や完熟フルーツ等が販売され消費者の好評を得るのみならず、農村の女性や高齢者が多数参加することで地域経済の活性化にも大きく貢献している。