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萬谷 正幸(よろずや まさゆき)

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最終更新日:2016年5月19日

よろづや観光株式会社 代表取締役会長(石川県加賀市)
萬谷 正幸

主な経歴

1947年
石川県生まれ
1988年
よろづや観光(株)代表取締役社長(~2014年退任)
1992年
山代温泉観光協会副会長(~1997年退任)
1998年
山代温泉観光協会会長(~2004年退任)
2003年
山代温泉地域事業(株)代表取締役(~2012年退任)
2006年
加賀市観光協会会長(~2011年退任)
加賀商工会議所副会頭(~2013年退任)
2009年
山代温泉観光協会会長
2010年
石川県観光連盟副会長(~2015年退任)
2012年
日本旅館協会副会長
2013年
加賀市観光交流機構副会長
2014年
よろづや観光(株)取締役会長

カリスマ名称

「伝統・文化を重視した温泉街づくりのカリスマ」

選定理由

「団体遊興型観光で全国に名を馳せた」温泉観光地から、「個人・時間消費型観光」に対応した地域づくりを図るため、旅館施設の一部開放事業の推進、空き旅館・空き店舗対策事業を同氏自ら率先して着手した。また、加賀市や山代温泉商工振興会の実施した諸事業である「はづちを楽堂」・「女生水夢(おんなしょうずゆめ)ギャラリー」・「エコショップ」の設置・建設・運営、「九谷焼窯跡展示館」、「魯山人寓居跡(ろさんじんぐうきょあと)いろは草庵」、「九谷広場」、「桔梗丘広場」の建設等の促進に尽力し、温泉地内の早期再生に努めた。

空き店舗対策として開設した同氏自らが運営している「べんがらや」は、地域の活性化事業の範となっている。一方、加賀商工会議所における活動の中で、市内の活性化にも意識を持ち、観光産業の必要性・観光による市の再生ビジョンを持つことの大事さを理解してもらうべく、自身のネットワークを活用したセミナー・研修会・視察を意欲的に実施し、市民意識のボトムアップに努めた。また、2003年(平成15年) 12月には、「山代温泉新CIコンセプトブック」を作り、「より山代らしい、人にやさしい湯の里づくりをめざして」をテーマに、ハード・ソフト整備の課題や今後の方向性を示し、地域の再生・活性化・産業振興に尽力している。
萬谷 正幸

具体的な取り組みの内容

ターゲットを団体客から個人客へ

同氏は、バブル期の1991年(平成3年)に顧客の心変わりを敏感に感じ取り、当時男性団体客でにぎわっていた「山代グランドホテル」を女性や個人客を意識したつくりに改装した。名称も「瑠璃光」と改め、個室風の食事処や露天風呂付き客室、女性に喜ばれる館内サービスの提供をおこなった。間もなく温泉観光の主体が団体から個人に移り、瑠璃光でいち早く導入した露天風呂つきの客室は好評を博した。

また、1998年(平成10年)に、自らが経営するもう一つの拠点「よろづや」を改装し、名称を「葉渡莉(はとり)」と改めた。木のぬくもりや葉のやさしさをコンセプトとして、山代情緒・やすらぎ・地産池消・サービスの選択肢を盛り込んだ企画は評判が高く、女性の利用者が多い。

山代温泉開湯1300年祭キャンペーン「本祭」の実施

同氏は、「開湯1300年祭実行委員長」及び「長期ビジョン策定委員長」に就任し、1993年(平成5年)を1300年祭キャンペーンの宣言年として、21世紀の温泉観光地の有り方を模索するために様々なチャレンジ事業を手掛けた。1996年(平成8年)には、「山代温泉開湯1300年祭 本祭」を実施し、将来(21世紀)の山代温泉を方向付けるイベント・キャンペーンや総合的なビジョンの提案をし、栄えある山代温泉を目指すための推進役として多大な貢献をした。

個性あふれる温泉地を目指す、本来の温泉地の姿を取り戻す、広域観光の中核温泉を目指すという基本コンセプトで、具体的には、次のような各種の文化の発掘や山代独自の芸能イベントの開催、おもてなしセミナーの実施、観光スポットの諸整備、長期ビジョンの策定等を行った。
  1. おもてなし日本一宣言・各種研修会・サービスアンケートの実施
  2. やましろ旅情(市内周遊観光バス)の運行
  3. 一館一芸のおもてなし
  4. やましろ街事典の発行
  5. 山代大田楽(新)・菖蒲湯まつりにおける菖蒲奉納式(既存イベント魅力化)の実施
  6. 温泉地内の観光スポットの整備、街路灯・街路樹の整備、ポケットパーク整備等散策できるルートづくり
  7. 山代ブランド商品開発

 

 山代温泉や加賀市において現在も実施されている諸事業の「芽」が、この祭を機に生まれており、例えば後述する野村万之丞氏プロデュースの「山代大田楽」は、今では、石川県を代表する夏の風物詩としてすっかり定着している。また、観光スポットの整備として手掛けた「山代八景」や通りの整備は、現在の「山代温泉まちづくり交付金事業」や「山代温泉再生グランドデザイン戦略会議/まちづくり塾」等、山代温泉のハード整備の大きなプロジェクトの基礎となっている。このほか、1993年(平成5年)~1999年(平成11年)の間、冬を中心(一部夏運行)に季節運行した市内周遊バス「やましろ旅情」は、2000年(平成12年)8月より運行している加賀市内周遊バス「キャン・バス」の運行に大きな影響を与えている。

加賀市内周遊バス「キャン・バス」
加賀市内周遊バス「キャン・バス」

イベントとまちづくり~「山代大田楽」の公演

山代大田楽
山代大田楽

かつての主な町の祭りは、6月4~5日に開催される南加賀屈指の集客イベント「菖蒲湯祭り」と、秋祭りである9月1日の「八朔祭り(はっさくまつり)」の二つが有名だったが、地域の再活性化を担う祭りとして、祭り自体の再活性化が必要であった。1996 年(平成8年)を機会に、21世紀に繋がる祭りの創出が必要との思いが強くなり、伝統芸能として残る祭り、地域の残る祭り、若者がその祭りがあるから地元に戻って来て参加する祭り、自慢できる町の祭り等、次世代に残せるイベントを探している中、狂言師野村万之丞氏氏との出会いがあった。きっかけは、同じ組合員の伝だったが、協会長及び萬谷氏本人の働き掛けで、野村氏の演出した大田楽を山代温泉で取り組むこととなった。

当初、祭りの演舞者は東京をはじめ各地からの応援者が多く、「20数人が地元、110人が応援者」と言う按配だったが、現在は、その比率が「逆転」し、名実共に山代温泉の祭りとなっている。かつては、この祭りの事業費が少額でないことから、地元の旅館組合等から費用対効果による是非の指摘も多々あったものの、大田楽のスタッフ・演舞者の思いと萬谷実行委員長他協会執行部の努力で継続し、多数の宿泊観光客や地域住民の支持を得て、2004年(平成16年)には「第9回目」の「山代大田楽」を迎えた。2005年(平成17年)には、節目の10年目を迎える予定で、石川県を代表する祭りの一つに成長している。 2004年(平成16年)残念ながら、このイベントの生みの親、野村氏は若くしてこの世を去ったが、その意志は確実に山代温泉に受け継がれている。また、この大田楽に携わったスタッフは、その後、町の活性化やイベント等の各方面において次のようなフィールドで大きな力を発揮している。

  1. 2002年(平成14年)度より、加賀市が建設した山代温泉の中心街の旅館跡地に大正・昭和初期の山代の町屋を再現した「はづちを楽堂」の運営グループ「はづちを」(非営利市民団体)の中心メンバー
  2. 2001年(平成13年)度から毎年実施しているYOSAKOIソーラン日本海加賀会場の実施ボランティアスタッフの中核メンバー(2004年度の参加チーム数は67チーム、踊り手は延べ3,000名)
  3. その他観光協会や区長会、商工振興会が実施するイベントの企画運営スタッフ

まちづくりと旅館施設の開放化事業、商店街の活性化推進

 山代温泉では、2000年(平成12年)度と2001年(平成13)度に、石川県商工労働部観光推進総室が打ち出した「温泉旅館経営革新支援制度」を一つの機会として、日帰り客や長期滞在型の顧客、更には地元の顧客にも利用してもらえる旅館施設作りに入った。同氏は、旅館組合員へ、地域の魅力づくり・町の賑わい創出を図ることの重要性を訴えかけるため、観光協会・旅館組合の総会等多数の関係者が集まる機会を通じ、観光セミナーやまちづくりセミナーを数多く開催し、事業着手への促進を図った。その成果もあり、山代温泉旅館協同組合員22旅館の内、13軒の旅館が同制度の申請・工事に着手する結果となった。 

一方、山代温泉の中心、湯の曲輪・総湯に集合する温泉通り商店街・女生水商店街・万松園商店街・桔梗が丘商店街の5つの商店街が実施している石川県活性化モデル商店街支援事業(2000年~2002年度)における空き店舗対策事業として、同氏は自館前の空き商店を活用し、ギャラリー&ビストロ「べんがらや」をオープンさせている。これは、同氏自らが通り・商店街の活性化を実践することで、商店(街)が観光客を意識した店作りをする際の模範となっており、大きな意義がある。
ギャラリー&ビストロ「べんがらや」
ギャラリー&ビストロ「べんがらや」

山代温泉新CIコンセプトブック

 山代温泉観光協会会長(当時)である同氏の努力により、徐々にではあるものの、街中の風情が大正時代・昭和初期の山代温泉の町屋風景の様を呈し始め、観光客を意識した商店作りが一つ一つ、出来上がってきていた。だが、1996年(平成8年)度に宣言した「開湯1300年祭キャンペーン」における将来ビジョンには、具体的なまちづくり計画の提案はなく、イベントやサービス等のソフト面についての取組が多かったため、同氏は当時の基本コンセプトの修正が必要と感じていた。そこで、同氏は山代温泉の目指すビジョンの指針づくりの必要性を協会員・旅館組合員・商店関係者等に説き、2003年(平成15年)12 月に「山代温泉新CIコンセプトブック」制作するに至った。コンセプトブック完成後、同氏は、指針の必要性及び内容の周知・共有化を図るため、指針の説明に歩きまわった。コンセプトの内容は、次の5つの骨子からなっており、山代温泉全体で進めるハード・ソフト関係のポイントを挙げ、現在短期的事項から精力的に着手している。

(1) ビジュアル・アイデンティティ
  • ロゴマークの改訂(「ひらがな」から「漢字」へ)
  • 「あらや滔々庵(とうとうあん)」の協力で、魯山人作の「暁烏屏風絵(あかつきからすびょうぶえ)」の烏をシンボルエレメントとして使用し、山代の歴史観・文化性を表す。

(2) ビヘイビア・アイデンティティ
  • 観光ボランティアガイド員の発掘・育成
    ボランティアガイド員の人員増強(現在1名のみ登録)に努める。
  • 道番屋システムの充実
    通りを歩く観光客への利便を提供するために、商店の軒先に道番屋サイン(直径30センチほどの木製丸型サイン)を設置し、道案内や観光情報提供、さらに雨傘の無料貸出等のサービスを実施。
  • 達人ガイド(加賀山代フリーコンシェルジェシステム)の活用・充実
    山代温泉ホームページ内において、観光情報の事前提供を行うために、自称「町内の達人」に協力を依頼し、質問などに対しメール等で対応する。また、旅行当日、日程が合えば、実際にガイド役として案内する。
  • 山代温泉マイスター制度の実施
    (温泉と仲良く付き合うことを伝えるスタッフの養成)
    日頃、何気なく恩恵を受けている「温泉」。この財産の効用を、再度見直し、温泉地本来の魅力を出せるようなスタッフ・人材の育成に努める。
     
(3) エンバイロンメント・アイデンティティ
  • 案内サインの整備(車両系、歩行者系、併用型)
    出来るだけ、民間作成の案内の必要性が無くなるように域内のサインを整備する。
     
(4) タウン・アイデンティティ
  • 街並みの修景(中心商店街の修景、陶芸の小径、五彩の小径、あいうえおの小径等)を実施し、散策できる魅力ある通りに整備する。
  • 九谷広場の整備(北陸鉄道東口バスターミナル跡地を休憩ゾーンやイベント広場として暫定活用しており、今後の整備方法を検討している)
  • 既存イベントの強化・育成(菖蒲湯祭り、山代大田楽、芸妓さんの稽古見学、湯の曲輪コンサート、一館一芸のおもてなし、男生水(おとこしょうず)・女生水地蔵尊(おんなしょうずじぞうそん)、魯山人・食の祭典他)
     
(5) サービス・アイデンティティ
  • アドバイザリー制度の実施(様々なジャンルのキーマンに旅館や町を覆面で審査してもらい、チェック結果を調査対象者に指摘して、サービスの改善と顧客のニーズを掴んだサービス提供の促進を図る。)
  • 共通する項目については、地域や旅館の課題として、経営者・従業員教育のテーマとして、サービスのレベルアップに努める。
九谷広場案内
九谷広場案内
これらの取組は、山代温泉が目指す団体遊興型温泉観光地からスローツーリズムで本物の観光を提案できるワンランク上の観光地づくりを意識しており、地域全体でその実現に動き出し、まちの再活性化に向けて邁進している。

参考資料

・北国新聞 2004年6月18日他 関連記事
このページに関するお問い合わせ
 山代温泉観光協会 事務局長 安念 義浩様
電話 0761-77-1144
FAX 0761-77-2109
E-mail info@yamashiro-spa.or.jp

関連情報はこちら→山代温泉観光協会ホームページ

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