最終更新日:2010年4月12日
(株)鶴田ホテル(ホテルニューツルタ)代表取締役社長
NPO法人ハットウ・オンパク 代表理事
主な経歴
1977年3月 (昭和52)
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成蹊大学経済学部経営学科卒業 |
1977年4月 (昭和52)
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日本貿易振興会(JETRO)入社 |
1990年9月 (平成2)
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(株)鶴田ホテル(ホテルニューツルタ) 代表取締役社長に就任 |
カリスマ名称
「大型温泉地再生のカリスマ」
別府温泉を新しい保養滞在型の温泉地に変える取組みを行っている。
選定理由
宴会歓楽型ではない新しい別府の温泉地としての姿を創造することを目指し、別府温泉の各地区を束ねたイベントを実施する一方、各地区の自主性を育てることにより、各地区で独自の新しい企画が立ち上がり、観光客数も増加に転ずるなど、新しい別府温泉の活性化を先導した。
具体的な取り組みの内容
別府温泉の冬を代表するイベント
「クリスマスHANABIファンタジア」を、9年前から取組み、大イベントに育て上げた。昨年は2日間で20万人の参加客を集めている。
また、各地域の町づくりグループをまとめ、新しい別府の温泉地としての姿を創造する取組み、
「別府八湯温泉泊覧会(ハットウオンパク)」を13年秋に開始し、各方面から注目を集めている。第1回開催によって厚生労働大臣賞を受賞した。14年6月のワールドカップサッカー時に再び開催し、サポーターとして日本を訪れた外国人も多数参加した。14年秋には1ヶ月間の長きにわたって実施し、別府八湯にて新しい温泉の楽しみ方を提案、2万人の参加者でにぎわった。
2000年から毎年出版される別府八湯の詳しい紹介本
「別府八湯温泉本」(発行部数6万部)の編集リーダーでもある。

別府八湯のポスター

別府八湯・別府温泉の一つ、竹瓦温泉
クリスマスHANABIファンタジアの仕掛人として。
クリスマスHANABIファンタジアは、クリスマスの時期に別府温泉に来るお客さまを増やす名物イベントを、という声から始まったイベントである。行政からの財政支援が少ない中、数多くのボランティアスタッフや団体をまとめ、多くの企業・団体に出向き、資金を集めて作り上げた。
今では、クリスマスの時期の2日間に県内外から約20万人のお客さまを集める名物イベントに育ち、会場周辺の旅館ホテルは見物客で満員になり、商店街には人が溢れるという効果をもたらした。
2年前から、当初の目的を果たしたという事で、別府冬の祭典の運営責任者の座を降り、後身の育成を図っている。
厳しい自己評価
鶴田氏によると、クリスマスHANABIファンタジアの自己評価は50点だという。市民の評価は、新しいイベントが誕生し、人が溢れているので満点に近いのだが、本人にすればそうでは無いという。
鶴田氏によると、イベントとしての成功は認めるが、町づくり事業としての成功は認められないという。つまり、瞬間的な効果であり、別府の町の体質そのものを大きく変える事ができなかったという厳しい自己評価を持つ。
温泉ウェルネス産業の提唱
鶴田氏は4年ほど前にヨーロッパの温泉地の視察に出かけた。そして、その各地が保養滞在型の温泉地として成功し、温泉を軸に様々な産業をつくり出しているという事に着目した。温泉ウェルネス産業とでも言うものかも知れない。
宴会歓楽型のイメージの強い別府だが、豊かな環境と温泉資源、そして人的資源に恵まれた場所であると常々思っていた鶴田氏は、このヨーロッパ視察に将来の別府の姿を思い描いたのかも知れない。
その頃から鶴田氏は別府の将来像として、「地域固有の文化に根ざした、保養滞在型温泉地にして、温泉ウェルネス産業の創出を」という事を関係各方面に提唱している。
別府八湯温泉泊覧会(ハットウオンパク)の取組みを開始
時を同じくして、別府市内の各所では、地域固有の文化に根ざした町づくりの活動や、温泉の見直し、温泉泥を使った美容への取組み、温泉による健康増進のプログラム開発等が様々なグループにより始まっていた。
鶴田氏は、そのほとんどのグループの活動に関わりながら、時には主導的役割、時には側面的なサポートを行っており、グループからの厚い信頼を得ていた。
2年前に、大分県から「インターネット博覧会にて温泉をテーマにしているが、それに相応しいリアルなイベントを考えてくれないか?」という打診を受け、鶴田氏は、それらグループの活動を一同に集め、一般の方々が広く参加できる体験交流型のイベント「別府八湯温泉泊覧会(ハットウオンパク)」のコンセプトを提示し、責任の全てを負う実行委員長として取組みを開始する事になった。
第一回ハットウオンパクの成功
平成13年秋、10日間のロングランイベントとして、第一回のハットウオンパクが実施された。キャッチフレーズは「世界一の温泉地で元気+綺麗に!」となった。別府八湯エリアの各所では、温泉/健康・癒し・美/歩く/食をテーマにしたおよそ200の体験交流型イベントが繰り広げられ、10,000人近い住民や観光客が参加するとてもユニークなイベントとなった。このハットウオンパクは、近未来の別府の新しい保養滞在型の温泉地の姿を10日間だけ切り取った形のイベントである。参加者は別府八湯各地域の固有の文化に触れ、温泉の持つ潜在的な力を体感し、別府八湯の未来の姿を感じたはずである。鶴田氏は、イベント終了後、すぐに「ハットウオンパクはいずれ無くなる。なぜならば、別府は1年365日がハットウオンパクの世界にならなくてはいけないからだ。」とのメッセージを流している。

オンパクの健康系講座・温泉水中エクササイズ
町づくり活動活性化へのこだわり
ハットウオンパクは平成14年にも2度開催され、特に秋の第三回はおよそ1ヶ月におよぶロングラン開催となり、メッセージのとおり、より日常的で具体的な新しい別府八湯の姿に近づいていったものとなる。
オンパクの取組みで評価できるのは、イベント企画会社に丸投げせずに、それぞれの町づくりグループに役割と責任を分担、町づくりの活動を更に活性化させる仕掛けを導入した事にある。
実行委員会の作業は大変に煩雑なものになるが、イベント会社丸投げでは、この企画の意味がまったくなくなると言う鶴田氏のこだわり、そして何より、鶴田氏に対する行政機関や町づくりグループからの厚い信頼が無ければ実現しなかった事であろう。
新しい温泉ウェルネス産業の萌芽
オンパクの取組みを通じて、いくつかの新しいウェルネス産業の萌芽が別府の各エリアで見られるようになった。別府温泉地区では、地域の住民がお客さまをご案内するウオーキング事業が本年2月からNPO団体の主催により、毎日開催される事となった。鉄輪(かんなわ)温泉地区では、温泉泥(ファンゴ)を使用した美容サービスが生まれ、温泉の噴気を利用した地獄蒸し料理のお店も誕生した。
山の手エリアでは、歴史的な別荘「聴潮閣」における温泉染め講座等も開始されている。
また、別府市でも重要なテーマとして、温泉を予防医学的に活用する取組みが検討され始め、今後もますますこの分野におけるハットウオンパク、そして鶴田氏の役割は大きくなると思われる。
第5回オンパクは5月9日から25日まで開催され、新たなテーマとして「エコ」が加わった。
真のカリスマへ
鶴田氏の活動はまだまだ道半ばである。
確かに、様々な策が功を奏し、別府への観光客数のうち、福岡方面などからの日帰り客数は着実に伸びている。平成12年度の数字では約780万人であり、5年前と比べると約10%の伸びとなった。だが、鶴田氏らが待ち望む宿泊客は約400万人であり、依然として微減傾向が続いている。
(統計はこちら:別府市役所の統計・資料のページ)
しかしながらハットウオンパクは平成13年度の「人に優しい地域の宿作り賞/厚生労働大臣賞」を受賞する等、関連業界からの注目を集め、久しぶりに別府温泉が評価される雰囲気をつくり出した。
別府の様な大型の温泉地が体質を一挙に変えるのは大変に困難な作業であるが、逆に別府の取組みが成功し、別府が再生すると日本全体の疲弊した温泉地にはとても大きな励みになる筈である。その時、彼はどこにでも出向き、惜し気も無く情報を提供し手助けをするであろう。21世紀、高齢化社会の到来は間違いないが、別府を始めとするこれらの温泉地が、これからの社会に求められる新しい保養滞在型温泉地として再生できれば、日本の経済にも大きなインパクトを与える事になる。

鉄輪湯煙のライトアップ