最終更新日:2012年9月20日
NPO法人ほんまもん体験倶楽部 事務局長 (和歌山県海南市)
観光ビジネス総研 代表
主な経歴
1960年
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和歌山県生まれ |
1994年
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「ジャパンエキスポ世界リゾート博」運営参加 |
1999年
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「南紀熊野体験博」アドバイザー |
2001年
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(有)ロコウィッツ入社 |
2002年
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「和歌山ほんまもん体験倶楽部」事務局 |
2010年
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「観光ビジネス総研」代表 |
カリスマ名称
選定理由
自然豊かな農山漁村に訪れ、ほんものの田舎を体験したい都市住民のニーズに応え、各地域の体験インストラクター等の人材育成に取り組むとともに、県の推進する体験交流型観光の充実を図るため、民間有志により設立された「和歌山ほんまもん体験倶楽部」の事務局として体験プログラムのコーディネートや体験受け付けの窓口などを担い、農山漁村部の潜在的な価値の再認識等による体験交流型観光の定着を図るなど、地域の活性化に貢献している
具体的な取り組みの内容
和歌山県は、美しい海・山・川、温泉、温暖な気候など豊かな自然環境に恵まれた県であり、また高野、熊野文化をはじめとする歴史文化遺産にも恵まれ、観光、レクリエーションの場として広く親しまれている。観光客は平成7年の3,043万人をピークにほぼ横ばい状態であり、平成15年には2,937万人とやや減少している。
このような中で、刀根氏は、地域資源の再発見と活用に取り組むため、平成13年度から、和歌山県の「新ふるさと観光づくり推進事業」(和歌山ほんまもん体験)の受託事業者として活動をはじめ、豊かな自然環境と田舎でしか体験できないことにこだわった「ほんまもん体験」を各地域に展開することで地域の活性化に大きく貢献している。
また同氏は、平成13年に県の「和歌山ほんまもん体験」の推進が始まる以前から同様の取組を県下日置川町において展開しており、体験参加者数は平成13年開始時の年間3,000人から平成15年には77,000人を超え、団体受け入れも21団体になるなど、大きな実績を上げている。このように刀根氏は、それぞれの地域の自然や歴史、伝統文化などの特色を生かした体験交流型観光のコーディネート活動を展開し、各地域で観光入り込み客数が減少傾向にある中で、地域資源を最大限に活用した体験型観光を推進し、入り込み客の増大に大きな役割を果たしている。
「和歌山ほんまもん体験倶楽部」の設立
刀根氏は、平成11年「南紀熊野体験博」を契機に紀南地域で体験型観光の活動が芽生える中で、まず平成13年に日置川町にて、体験型観光を推進するため「ネクスト日置川まちづくり協議会」という組織を立上げ、行政等の支援もない中、自分達でパンフレットも作り、旅行者との交流を核にした体験プログラムをアピールし、体験目的に数千人の旅行者が訪れた。
さらに、同じ熊野地域の三重県や奈良県南部において、同じような目的を持って活動していたグループの方々に呼びかけ、ネットワーク組織「熊野コミュニケーションズ」も立上げた。
このような自ら行う取組と合わせ、平成14年度からは県が推進する「和歌山ほんまもん体験」を民間べースでの充実を図ることを目的に、刀根氏が中心となって体験プログラムのコーディネートや体験の受け付け等を行う組織「和歌山ほんまもん体験倶楽部」が設立された。

和歌山ほんまもん体験倶楽部設立総会
「和歌山ほんまもん体験倶楽部」の活動
(1)地域産業、自然、歴史文化等の素材を観光資源としての体験プログラム確立

教育旅行(紀州備長炭炭焼体験)日置川町

教育旅行(漁業 はえなわ漁体験)

教育旅行(農業 桃の袋かけ作業)>

教育旅行(林業 間伐体験)
県内8つのエリア(和歌山、海草、那賀、伊都、有田、日高、西牟婁、東牟婁)の観光スポットや四季折々の自然の特徴を十二分に活かし、「体験型観光」の受け入れ体制の確立を図っている。
(2)ユーザーの視点に立った窓口の一本化への取り組み
各体験施設単位の問合せ先を一元化し、悪天候時の代替プログラムの手配や精算業務を一カ所で対応するなど、ユーザーの使いやすいシステムの構築を試みている。
(3)「体験をさせることが目的の体験」ではない取り組み
交流を通じて訪れた旅行者がその体験を通じ、来る前よりも高まって帰る「ほんまもん体験」の作成。それによって新たな人間関係が形成され、信頼や安心が生まれる。
(4)質の高いインストラクターの育成
その地域の「ほんものの価値」を伝える事のできる、質の高い体験内容を作るために、会員であるインストラクターの体験に対する姿勢やコミュニケーション能力、ホスピタリティの向上など、人材育成に力を入れ、常に資質向上に取り組んでいる。
また、会員相互の情報交換やスキルアップセミナーなどの場を設け、常に進化する体験プログラムの提供を行っている。
成果
「和歌山ほんまもん体験」は、平成15年度からエリアが拡大され、全県下にその取組が広がるとともに体験プログラムも当初の94プログラムから現在では286プログラムに増え、体験インストラクターは約290名、サブも含めると600名を超えるなど、これら受け入れ体制の整備により体験客数は着実に増加している。
また、労働組合の若手組合員の研修や高校生、中学生の農林漁業体験では、その後送られてきた感想文に、「和歌山に来て、そこに暮らす人々と身近にふれ合ってみて、初めて自然の大切さやその人たちの仕事の価値・物の価値を知ることができた」という内容のものが多数寄せられるなど反響が大きく、その取り組みは着実に成果を出している。

企業による社員研修旅行

教育旅行(まぐろ市場体験)

修学旅行(藍染め体験)I
このように体験交流型観光は単に交流人口の拡大にとどまらず、体験の先にある「地域の自信の再生」と「交流から生まれる物流と定住」を生み出していくことで、地域全体の活性化に結びついており、その波及効果は大きい。

ふるさとホームステイ
各種講演活動への取り組み
平成15年度に長野県飯田市において開催された「第1回全国ほんもの体験フォーラム」や「紀伊山地の霊場と参詣道」をテーマに農林水産省、経済産業省、国土交通省が連携して開催した「世界遺産を生み出した歴史と文化」シンポジウムにおいてパネリストとして出席するなど各地で開催される研修会等において事例発表、講師として活躍するなど、都市と農山漁村の交流推進のコーディネーターとして寄与している。また、本年度11月に開催される「第2回全国ほんもの体験フォーラム」にもパネリストとして参加している。

刀根氏講演の様子

和歌山県主催体験リーダー養成セミナー(講師:刀根氏)
今後の取り組み
刀根氏が取り組む体験型観光は、わが地域で「住民の誇り」と「自信の回復」を願い進めるもので、結果として「交流」や「体験」が新規雇用や季節雇用の創出に繋がっていくものであり、それらが地方での新しい生き方「ながら所得」や「真に心豊かな暮らし」などとして認識され始めている。

副収入「ながら所得」としての体験型観光
今後は本事業を地域産業の太い柱として定着させるべく、コーディネーターの養成や質の高い体験リーダーの育成にも努めていくこととしている。コーディネーターについては、「勇気」と「向上心」の資本はそのままに「ありのまま」や「らしさ」、「受け継がれてきたもの」などにもっと目を向けて付加価値を足し、「新しい旅の魅力」として「地域の本物」を商品化できるものを目指し、体験リーダーについては、「体験をさせること」が目的ではなく、その先にあるものを伝えられることを目指している。
さらに、今年度、和歌山県ほか奈良県、三重県を含む地域が世界文化遺産に登録されたことを受け、官民が一体感を持って受け入れ体制を強化し、広域によるさらなる観光力アップを目指していきたいと考えている。

熊野古道自然観察ウォーク(世界遺産)