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井上 弘司(いのうえ ひろし)

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最終更新日:2010年4月12日

前CRC地域再生診療所所長
井上 弘司(いのうえ ひろし)

主な経歴

1952年
長野県下伊那郡上郷町生まれ
1964年
長野県飯田長姫高校 卒業
1971年
長野県県下伊那郡上郷町立 高松病院勤務
1975年
同上郷町役場 建設課
1981年
同 産業課 新農業構造改善係
1989年
同 土地改良係長
1993年7月
(飯田市へ合併)      
長野県飯田市役所農村整備課 調査計画係
1997年
同 産業経済部農政課 経営相談係長、農業委員会振興係兼務
1999年
同 農政係長兼務

カリスマ名称

「ワーキングホリデー等多様なアイディアを取り入れた「都市農村交流」のカリスマ」  
都市農村交流事業の先駆的な手法による地域活性化のパイオニアとして活躍。

選定理由

他地域に先駆けて「無償ボランティアでのワーキングホリデー」を企画し、農作業の手伝いのお礼に農家の生活を教えるという「心と心の交流」をセールスポイントとすることにより、本当の農家の家族のように素朴で温かな田舎の生活が体験できるということで好評を博すなど、農業を素材とする新しい観光の形を示した。 

具体的な取り組みの内容

徹底した現場主義からの挑戦

井上氏は、平成 10年、現場を歩いているうち、農家の担い手不足が顕著となり、兼業化や離農するケースが増加、さらには集落機能が低下し伝統の祭りすら出来なくなるという状況に直面。危機を打開し、農村を元気にする手だてとして、都市部で農業を指向する者に対象を絞ってボランティアで農家に応援に来てもらうという、当時としては全く新しい手法だったワーキングホリデーを他地域に先駆けて立ちあげた。

このワーキングホリデーは、リンゴや梨の摘花・摘果や収穫作業、干し柿の収穫、皮むき、吊しなど、短期間で作業を終わらせることが必要であるが、人手の確保が出来ないという、農家の声をヒントとして生まれた。農業・農村に関心を持って真剣に農業をやってみたい、就農を考えているものの手探り状態でいる人と、担い手不足が顕著となり繁忙期の手助けや後継者が欲しい農家を結ぶという、都市部の人と農村部の人とのパートナーシップによる新しい手法の都市農村交流事業に挑戦したもの。

手さぐり状態で実施されたが、実際に実施してみると、適期作業の能率が上がり、生産性と品質の向上が見られるなど、農業振興効果があったばかりでなく、子どもたちの体験旅行だけであった同市への旅行形態を一般都市住民にまで拡大するなど、観光振興効果をもたらした。

特に、参加者の中から、3組の夫婦の定住、2組の夫婦、数名の男性の就農、2人の男性が農家の婿養子となるなど、定住促進にも予想以上の効果をもたらしている。現在、全国から約700人が参加。50%以上がリピーターというのも特徴となっている。スタート以前は、「そんなことをしても…」という声もあったというが、予想以上の成果と、その後の事業の継続は、井上氏の徹底した現場主義に支えられている。「新たな事業を生み出すのも、その後の事業の継続も、全て現場の声にヒントがある」と明快だ。井上氏は、農家の時間に合わせて、夜間や土、日に訪問をして声を吸い上げて形にすることに情熱を注いでいる。
ワーキングホリデーに参加する人々
ワーキングホリデーに参加する人々
畦塗り
畦塗り
縄結び
縄結び
いろりの使い方体験
いろりの使い方体験
”農教育は農村の使命”という信念で ワーキングホリデーの定着後、平成13年には、全国の教師・大学生・体験指導者を対象に、「南信州あぐり大学院」を開校し、農村文化への理解を深める人材育成を行っている。「南信州あぐり大学院」は、指導者は農家の人たち。
11月を除く毎月2泊3日の日程で開催され、全国から毎回約30人が参加。農業・農村の理解と、交流、情報発信の場となっている。さらに、農村に外部からの視点を与えているという貴重な場にもなっている。

この他にも、氏の発想は留まるところを知らず、ラーニングバケーションの先駆けになる「農村まるごと体験モニターツアー」や「里山再発見ツアー」を企画実施し、一般都市住民のニーズ把握と新たなツーリズムの情報発信、企画、運営のノウハウを蓄積し、南信州観光公社に引き継いだ。小学3年生から中学3年生を対象に夏休み長期滞在する「南信州こども体験村」(平成11年~)、都市部の小学生と地元とが共に里山を保全する「どんぐりの森づくり」(同12年~)などの新しい企画を展開、継続させている。
南信州こども体験村
南信州こども体験村
「食農教育は命の大切さを体で知ることであり、農業や豊かな食文化、人材資源を持つ地域が行わなければならない使命だ」という井上さんの信念が、いずれもの新規事業に裏打ちされ展開されている。

さらに、同市の体験教育は、人と人との心の交流を基礎におき、生業としている人の生き様を伝えることで本物を知り、人の温かさを感じさせる「人間回復のプログラム」だとし、農家と子供、先生と生徒の関係を再構築する手段として、お互いの共通体験こそがいちばんと位置づけ、事業の展開に反映している。それはまた、都市と農村の関係の再構築にもつながっている。

農村と都市の両棲による再生

同市では、都市農村交流の受け入れ体制整備のため、市内13地区(旧村)に交流推進グループを結成。受け入れ農家の資質向上のため毎年インストラクター講習会も開催。受け入れの推進母体となる集落・地域・人づくりにも積極的に取組み、地域の魅力の再発見と自信につなげている。

さらに、荒廃した棚田を復活するため、地区で保全委員会を設立。保育園から一般市民、県内外の参加者を加え、保全活動を展開。日本の棚田百選に選定される。その後、体験教育旅行の現場としても活用し、好評を得ている。また、案山子コンテストを実施する中で、地区の新しいお祭りを作り上げた。また、都市農村交流事業と合わせて、朝市、直売所、農参加工所、地域の食文化の聞き取り、夏休みの子供たちの現況を教える「寺子屋」など、それぞれの集落、地域を魅力的にする動きが展開されている。

井上氏は、「飯田市の都市農村交流の最終目標は、農業そして集落が元気を取り戻すことにある。都市にこびない。むらの豊かさと魅力を、都会へおすそわけする」を基本の構えとし、「食農教育を軸に、農村と都市が両棲する地域づくり」を掲げて意欲的に取り組んでいる。 このような多様で重層的な都市農村交流プロジェクトの企画・運営を担っており、現役の役場担当者として今後の展開へのキーパーソンでもある。
このページに関するお問い合わせ
井上氏ご連絡先
電話 050-3584-2384

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