最終更新日:2010年4月12日

左が今井氏
主な経歴
1950年
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群馬県伊勢崎市生まれ |
1972年
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東京写真大学卒業
資生堂宣伝部
音楽之友社
講談社 を経て |
1979年
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スタジオ29設立 |
1985年
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(株)ライフスタイル研究所スタジオ29設立 代表取締役社長 |
1994年
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「海の学校」代表 |
2003年
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雑誌「ちゃんぷる~」編集長
NPOチャンプルーツーリズム協会理事長 |
カリスマ名称
「漁村の持つ癒し力を活用した都市と漁村との交流カリスマ」
選定理由
豊かな漁業資源と自然環境を活用して、これまで漁業と農業しかなかった村に、体験漁業や海洋スポーツと滞在を組み合わせた「海の学校」を開校し、マリンビジネスという新しいタイプの産業を創出、地域の人々が中心となった活動を展開することで、村づくりの道筋を付けるなど、離島地域の活性化に大きく貢献している。
具体的な取り組みの内容
伊平屋村は、沖縄県の最北端に位置し、東シナ海に浮かぶ離島の村である。村は伊平屋島と野浦大橋でつながれた野浦島の2つの島からなり、年間を通じて安定した温暖な気候で、水産業と農業を基幹産業とした人口約1,600人の村で琉球王朝発祥の地でもある。
東京から島(伊平屋村)までは約9時間を要し、沖縄県最後の秘境と言われ、以前は観光客もほとんど訪れなかった。島の産業は、農業と漁業しかなくそのほとんどが半農半漁が中心で「海の学校」が開校するまでは観光産業がなかった島と言っても過言ではなく、沖縄県の観光地図にもほとんど登場しない知名度のない村だった。
平成7年「海の学校」の開校により、参加者の口コミとマスコミ取材から伊平屋島が話題となり沖縄県観光コンベンションビューローに問合せが急増し、沖縄県の観光地図に島が載るようになった。
伊平屋村に始まった「海の学校」は、「宮古伊良部分校」(伊良部村)、「国頭校」(国頭村)、「やんばる校」(宜野座村)の4校となり、参加者数は平成7年開校時の年間60人から、平成15年には600人、団体受け入れ実績も9団体となるなど、延べ2,000人以上の参加者となっており、それぞれの地域の自然と伝統文化などの特色を生かした活動を行っている。
「もずく収穫の援漁隊」からスタート
平成5年ころ、旅行ニーズの多様化による島の手つかずの自然や歴史・文化への評価の高まりと都会の人達が第一次産業に精神的な癒しを求める状況が始まっていた。
そのような中で、東京でダイビングビジネスをしていた今井氏は、伊平屋漁協の漁協長西銘氏と出会い、沖縄で漁獲される漁種は約1,500種類あるが、売れる漁種は少なく、海の資源がなかなか活用できないこと、 沖縄漁業の主力産業は「もずく」であり、「もずく生産」が終わった後の網を海底から引き上げる作業が、地元の漁師の人たちにとって大変であることを知った。
今井氏は、沖縄漁業の生きる道は体験・滞在型の「ブルー・ツーリズム」しかないのではないかと考え、自分が代表のMISSマリンライフクラブ(会員数約5,000名)で、先ず「もずく収穫の援漁隊」の参加者を募り約10名で、年6回の体験漁業を主催した。
参加者は、現地で2名づつの5グループになり、人手の足りない漁家のもずく畑で収穫作業を手伝った。結果は、都会では経験できない「伊平屋村」ならではの人情と自然を満喫した参加者と漁家共に反応が良く「海の学校」の基盤作りに成功した。
「海の学校」の開校
平成7年「もずく収穫の援漁隊」の成功から、今井氏は、伊平屋村と漁協の協力を得て、「自然との対話・人と人との心の触れあい・第1次産業で気持ちいい汗をかく」をコンセプトとし、「魅力あふれる人間創り」を目的とした「海の学校」を開校した。
現在、「海の学校」は、伊平屋村など沖縄の自然と環境を最大限に活かしたカリキュラムで構成され、学校の先生は、今井氏を除き伊平屋島など地域に在住し、日常、海と深い関わりを持つ漁師(海人(うみんちゅ))と島民(島人(しまんちゅ))となっており、豊かな自然の中で脈々と島の人々が先祖から受け継いできた「遊び」や「伝統芸能」などを地域の生活を基にした基本コースと特別コースに分けて天候、参加者の体力・現地の状況により様々に組み合わせて実践している。
(1)「海の学校」の7つの基本コースと8つの特別コース
[1]基本コース
ア) 体験漁業教室 「もずくの収穫」、「いざり漁(手長ダコ捕り)」、「シャコ貝の移植」、「追い込み漁」など行い、漁業を知ることで、日本人の基本にある魚文化と海産物資源の大切さを理論と実践を通して学ぶ。

もずくの網上げ作業/体験漁業教室
イ) 海洋スポーツ教室 参加者のレベルに合わせ、必要と思われるスポーツテクニックを指導し、スノーケリング、スクーバーダイビングやシーカヤックなどの海洋スポーツの楽しさと海の魅力を理論と実践を通して学ぶ。
ウ) 海洋生物調査観察教室 食物連鎖や生物と生物との共生シーンなどを観察することで、人間も一生物であることを認識してもらい生命の大切さを学ぶ。また、体験漁業教室で放流・移植した稚貝、もずくなどの成長調査などを行う。

テーブルセッティング/海鮮料理教室
エ) 海鮮料理教室 魚介類のおいしい食べ方と海で捕れる食材を無駄なく利用する料理を理論と実践を通して学ぶ。
オ) 琉球民俗芸能文化教室 伊平屋島や沖縄諸島に古くから伝わる「三線(さんしん)」や民謡の唄と踊りなどのエキゾチックな伝統芸のに触れたり、島内に残された文化遺産を訪ねたり、生活道具を手作りしたりして、沖縄文化の一端を学ぶ。
カ) ブックコレクション教室 個人の力では成し得ない大きな共通テーマをみんなの力で具体化する喜びと楽しさを学ぶ。

海藻の押し葉アート作り/メモリアル教室
キ) 海の学校メモリアル教室 「海の学校」に参加した記念としてビーチコーミング(浜辺でものを拾う)を行い自然を利用したアート作品&クラフト作品を手作りして、手作りの楽しさや思いでの記録方法を学ぶ。
[2] 特別コース
ア) 永住希望者体験教室
イ) 海洋性気候浴教室
ウ) 写真教室
エ) 亜熱帯の森林・銘木観察と山遊び教室
オ) 島遊び教室
カ) 漁師養成教室
キ) 絵画教室
ク) 環境考察・定点観測教室

米崎海岸でのゴミ拾い(修学旅行)/島の環境教室
(2)地域経済への波及効果 「海の学校」の開校により、今までに伊平屋村へ延べ2,000人以上が参加して いる。参加者は「海の学校」と提携している民宿等に宿泊しており、地元の観光宿泊 施設等への経済波及効果も大きいものとなっている。 また、「海の学校」に地元の漁師の方や漁協の方が参加することによって、漁業者へ安定的な兼業機会を提供している他、漁協の収入増にもつながっている。
「海の学校」の活動により伊平屋村の漁業者や民宿業者に対して新たに年間1,000万円近くの追加の収入を生んでいる。 これまで、「海の学校」はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、PR誌などの取材を200回以上受けており伊平屋村などのPRにも大きく貢献している。 「海の学校」の効果により、村外から伊平屋村に定住した者が10名程度みられる。
今後の取り組み
今井氏はこれまで、沖縄の豊かな自然「海」を中心とした「ブルー・ツーリズム」的なコンセプトを中心として主に活動を実践してきたが、今後は、今まで以上に島(地元・地域)の人材、自然環境、伝統文化及び歴史的な資源をより一層活用し、漁業協同組合の方のみならず、役場をはじめ、農業関係者、商工会などを含めた地域全体の方々と連携した「海の学校」の新たなプログラム開発を考えている。
あくまでも、活動の中心(主役)は、地域で生活している海人(うみんちゅ)と島人(しまんちゅ)であることにこだわり、沖縄県下の地理的ハンディを持った離島を中心に、最終的には10校の「海の学校」を開校し、年間120億円以上の売り上げを目指して地域経済の支援をしていきたいと考えている。