市内には22もの神楽団があり、神楽専用施設を有する「神楽門前湯治村」での金・土・日の公演をはじめ、県内外、各地で盛んに上演されています。
安芸高田市に伝わる神楽は、出雲流神楽が源流で、石見神楽として石見地方に伝わったものが、安芸高田市内各地に伝わったものと言われています。
また、その過程で九州の八幡系の神楽や高千穂神楽・備中神楽、さらに中国山地一帯に伝わる農民信仰などの影響も受けたと言われています。様々な要素が合わさった安芸高田市の神楽は、分かりやすい内容と八調子のテンポの軽やかな囃子(はやし)と合わさって、演劇性の強い、極めて大衆的でのびのびした伝統芸能になりました。
かつては、氏神社の神職が「舞人」の中心であったようですが、いつの頃からか、氏子自身が神楽の「舞人」となりました。多くの人々が神楽を舞うということが、神社・神に対する信仰心を繋ぎ止め、自然や神への畏敬・恩恵に対する先人の心を今に伝える大きな役割を果たしました。
安芸高田市の神楽には、大衆に喜ばれる演劇性が高いものに変化する長い過程の中で、「神人和楽(しんじんわらく)」―神も人も一体になって楽しむ―という、神楽の考え方の原形が形づくられていきました。
一年の辛い農作業を終え、収穫の喜びに沸く秋、この「楽しむ神楽」は人々を元気づけるため、各地で盛んに舞われました。